Online ISSN: 2187-2988 Print ISSN: 0911-1794
特定非営利活動法人日本小児循環器学会 Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery
Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 42(1): 3-12 (2026)
doi:10.9794/jspccs.42.3

ReviewReview

先天性心疾患児をはじめて自宅に迎える親の体験におけるMeta-synthesisA Meta-Synthesis of the Experiences of Parents During the Initial Transition from Hospital to Home Care for Children with Congenital Heart Disease

1大阪公立大学大学院 看護学研究科 博士後期課程Doctor Program, Graduate School of Nursing, Osaka Metropolitan University ◇ Osaka, Japan

2鈴鹿医療科学大学 看護学部School of Nursing, Suzuka University of Medical Science ◇ Mie, Japan

3大阪公立大学大学院 看護学研究科Graduate School of Nursing, Osaka Metropolitan University ◇ Osaka, Japan

受付日:2025年3月23日Received: March 23, 2025
受理日:2025年12月9日Accepted: December 9, 2025
発行日:2026年2月28日Published: February 28, 2026
HTMLPDFEPUB3

目的:先天性心疾患児をはじめて自宅に迎える親の体験を文献から抽出し明らかにすることである.

方法:メタエスノグラフィーを用い質的研究結果を統合した.

結果:PubMed 237件,医学中央雑誌236件が抽出され,最終的に国内外文献21件を対象とした.統合した結果から,【先天性心疾患のわが子の命を背負う負担があった】【退院後のサポート体制が不十分と感じた】【退院に関して医療者のサポートを感じた】【退院までの準備に不足があった】【親役割を見失う】【退院後に孤立を感じた】【子どもと自分の生活の意味を考える】【移行期をわが子と過ごすことで得た経験があった】【退院後の生活を上手く送る】の9つの側面が明らかになった.

結論:児の成長発達,療養生活がイメージできるよう働きかけること,退院準備支援について整えることが今後の小児循環器医療の課題であると考える.

Objective: To extract and clarify the experiences of parents during the initial transition from hospital to home care for children with congenital heart disease as reported in the literature.

Methods: We used meta-ethnography to synthesize and integrate the findings from qualitative studies.

Results: Altogether, 237 and 236 articles were extracted from PubMed and Ichushi-Web, respectively. Ultimately, 15 domestic and foreign literature articles were subjected to analysis. The integration results revealed the following nine key aspects: “There was a burden of having to take care of my child with congenital heart disease”, “I felt that the support system after discharge was insufficient”, “I felt supported by medical staff during my child’s discharge from the hospital”, “There was a lack of preparation for discharge”, “I lost sight of my role as a parent”, “I felt isolated after discharge”, “I thought about the meaning of my life and that of my child”, “I gained experience while spending the transition period with my child”, and “I was able to live well after discharge”.

Conclusion: Encouraging parents to envision their child’s growth, development, and life as a patient, as well as providing sufficient discharge support, will be the major challenges in pediatric cardiovascular medicine in the future.

Key words: congenital heart disease; discharge transition; neonatal; parents; meta-synthesis

研究背景

先天性心疾患をもつ児は,100人に1人の割合で出生する.2023年の発生率は約1.51%と報告されており,2015年から2019年調査結果(1.3~1.4%)と比較してやや上昇傾向である1).新生児期に行われる心臓手術は過去20年間で急速に発展したものの,Blalock–Taussigシャントの死亡率は約5%,肺動脈絞扼術は約5%,総肺静脈還流異常症の死亡率は約11%,Norwood手術は約16%,大動脈スイッチ手術は約6%と比較的高いことが現状である2)

新生児心臓手術の進歩と同時に画像診断技術が発達し,現在先進国の大多数の妊婦に胎児心エコー検査が提供されている3).日本における胎児心エコー検査の目的は,診断名を確定するのみならず,疾患の重症度,予後予測,出生後の緊急性の有無について診断を行うこと,また家族へのカウンセリングや出生後のチーム医療において中心的役割を担うこととされている4).日本における単一施設での調査によると,出生前に先天性心疾患と診断された症例数は2001年から2010年にかけて増加し,2010年には全症例の55.6%が診断されたと報告されている5).北米とヨーロッパでも,重大な先天性心疾患の出生前検出率は25~53%とされている6–9)

外科的治療と胎児診断の進歩により,胎児期に疾患が発見された児の親は,出生前より児の生命について考える必要が生じている.また,児は出生後すぐに専門病院や新生児集中治療室(Neonatal Intensive Care Unit:以下NICU)に入院することとなり,母子分離を余儀なくされる.出生後早期にNICUや小児集中治療室(Pediatric Intensive Care Unit:以下PICU)に入院すると,母子相互作用に影響することが明らかになっている10).日本では集中治療の中でも親子間の愛着形成を促進することが必要とされているが11),呼吸器管理やカテコラミン投与,安静の保持などの集中管理体制が必要である場合,親が施す育児よりも安全確保が優先されることも多い.このような母子分離の期間があったにもかかわらず,児の退院後は,内服管理,酸素吸入,経管栄養などの療養行動や医療的ケアを両親が担っていく.

このような家族への支援を検討するためには,家族がどのような体験をしているのか理解する必要がある.そこで,先天性心疾患児をはじめて自宅に迎える親の自宅環境への移行期における体験に焦点を当てた論文に着目し,退院支援への示唆を得たいと考えた.

研究目的

本研究の目的は,先天性心疾患児をはじめて自宅に迎える親の自宅環境への移行期における体験を文献から抽出し明らかにすることである.

用語の定義

Meleisは,移行の期間を移行の最初の予測から新しい状態の安定が達成されるまでと述べている12).また,安定とは,物事が落ち着いて激しい変化のないことである13).そこで,先天性心疾患児の親における自宅環境への移行期を,「先天性心疾患児の親が,自宅で児との生活が始まると予測することに始まり,親が自律して心疾患の児の特性に合わせたケアを生活に統合し,児に起こる疾患由来のイベントに対応できる力を身につけるまでの期間」と定義する.

研究方法

PubMed,医中誌Webを使用し,2024年12月までに掲載された学術論文を検索した(Table 1).検索式は,研究者が所属する施設の図書館司書と協力して作成した.先天性心疾患の治療が目覚ましい進歩を遂げているのがこの20年であることから,検索期間は2004年以降とした.対象文献は原著論文とし,対象言語は日本語と英語に限定した.参加者の語りを十分に用いて家族の経験を記述した発表論文の結果を統合するため,生データが直接引用されている,現象学,グラウンデッド・セオリー,エスノグラフィ,アクション・リサーチ,その他の質的方法論を用いた研究を対象とした.抽出した論文のタイトルと抄録を精査し,先天性心疾患児をはじめて自宅に迎える親の体験について論じられている論文のみを抽出した.

Table 1 検索式とストラテジー
PubMed医中誌Web
((“heart defects, congenital”[MeSH Terms] OR “congenital heart”[Title/Abstract] OR “CHD”[Title/Abstract]) AND (“child”[MeSH Terms] OR “infant”[MeSH Terms] OR “child*”[Title/Abstract] OR “infant*”[Title/Abstract]) AND (“patient discharge”[MeSH Terms] OR “home nursing”[MeSH Terms] OR “hospital to home transition”[MeSH Terms] OR “transitional care”[MeSH Terms] OR “discharge*”[Title/Abstract] OR “home”[Title/Abstract] OR “homecare”[Title/Abstract] OR “transition*”[Title/Abstract]) AND (“Parents”[MeSH Terms] OR “Caregivers”[MeSH Terms] OR “parent*”[Title/Abstract] OR “mother*”[Title/Abstract] OR “father*”[Title/Abstract] OR “famil*”[Title/Abstract]) AND (“parents/psychology”[MeSH Terms] OR “caregivers/psychology”[MeSH Terms] OR “adaptation, psychological”[MeSH Terms] OR “stress, psychological”[MeSH Terms] OR “emotions”[MeSH Terms] OR “anxiety”[Title/Abstract] OR “adaptation*”[Title/Abstract] OR “experience*”[Title/Abstract])) AND (2004/1/1 : 2024/12/31[pdat])(((((心臓疾患-先天性/TH) or(先天性心疾患/TA or先天性心臓疾患/TA)) and ((両親/TH) or(親/TA or母/TA or父/TA)) and ((退院/TH or在宅医療/TH or在宅介護/TH or在宅移行/TH or移行期ケア/TH) or(退院/TA or在宅/TA or自宅/TA or家庭/TA)))) and (DT=2004 : 2024 and PT=原著論文))
包含基準
2004年~2024年に出版されている
原著論文である
日本語または英語で記述されている
生データが直接引用されている質的研究である
先天性心疾患児をはじめて自宅に迎える親の体験について論じられている

本研究の分析は,質的研究結果を解釈するNoblit & Hareのメタエスノグラフィー14, 15)を参考にして行った.メタエスノグラフィーは質的統合のうちの解釈的統合であり,研究参加者の解釈(一次構成要素)が研究著者の解釈(二次構成要素)につながり,レビュー者(本論文著者)の統合(三次構成要素)を通じて現象のより高いレベルの解釈につながることを図式化する質的統合の方法論である16).解釈的統合の目的は,個々の研究を超えた解釈を生み出すことである17).そのため,質的なデータを分析した先行研究の文脈から,先天性心疾患児をはじめて自宅に迎える親の体験が捉えられると考えた.

分析は以下の手順で行った.各論文を精読し,先天性心疾患児をはじめて自宅に迎える親の体験が表されているテーマとその内容(二次構成要素)を抽出した.また,テーマの抽象度が高い場合,論文中に引用されているナラティブに戻り,家族の体験を理解するために必要な背景を抽出した.初回退院に関する体験以外の所見(2度目の退院の体験,入院中に解決した問題に関する体験など)については除外した.抽象化され,統合されている内容に入院中の体験を含む場合,論文中の生データと研究著者の解釈を確認し,退院に関するデータを抽出した.混合研究である場合,質的研究結果のみを対象とした.次に,抽出した各記述間の類似点や相違点に着目しながら整理し,比較を行い,二次構成要素を統合した.そして,比較検討して統合した家族の体験を三次構成要素として記述,構造化した.

結果

文献の抽出

文献検索の結果,PubMed 237件,医中誌Web 236件の計473論文が抽出された.論文を精読し,生データの記載がなく結果を導き出した過程が曖昧である論文,先天性心疾患児の初回退院に関する親の体験が明確に論じられていない論文を除外し,PubMed 18件,医中誌Web 3件の計21件を対象論文とした.

文献の特徴

21件の論文をTable 2に示す.研究が実施された国は,日本が3件,イギリスが7件,アメリカが5件,スイスが2件,オーストラリアが1件,イタリアが1件,中国が1件,インドネシアが1件であった.文献番号12,17,21は,同じ面接データから異なる特徴をもった内容を抽出し分析したものであった.質的データ収集の方法は,1件がブログ記事,1件がオンラインフォーラムによるグループディスカッション,1件が非構造化面接,1件が質問紙調査の自由記載,16件が半構造化面接であり,1件は面接方法の記載がなかった.半構造化面接のうち,1件は夫婦合同面接が行われていた.文献番号8は祖父母2人のデータが含まれていたため,祖父母の体験は除外した.21論文全体で405人の参加者から得られたデータであった.

Table 2 先天性心疾患児をはじめて自宅に迎える親の体験に関する論文の概要
No.論文題名出版年雑誌著者国名目的対象者研究デザインデータ収集方法
1Signs of deterioration in infants discharged home following congenital heart surgery in the first year of life: a qualitative study2016Arch Dis Child. 101(10): 902–908.Tregay J, Brown KL, Crowe S, et al.イギリス児の症状に対する認識と判断,援助を求めた際の経験について説明する母親14人 
両親6組
質的記述的研究 
フレームワーク分析
半構造化面接
2Parents’ preparedness for their infants’ discharge following first-stage cardiac surgery: development of a parental earlywarning tool2016Cardiol Young. 26(7): 1414–1424.Gaskin KL, Barron DJ, Daniels A.イギリス単心室の姑息術後,退院に対する親の心構えと,退院経験について調査する両親6組 
母親15人 
父親1人
混合研究 
質的記述的研究
質問紙調査
3在宅療養を受けている先天性心疾患児の母親が感じる不安や困難感と訪問看護師の関わりについての一考察2016小児保健研究 75(2): 247–253.造田亮子,高橋亮,山本恵子日本在宅療養を受けている先天性心疾患児の母親が感じている不安や困難感と,訪問看護師に求めている援助内容を明らかにする母親3名質的記述的研究半構造化面接
4先天性心疾患でNICUへ入院し,循環器病棟へ転棟した子どもを養育する母親の気持ちの変化2017小児看護 40(1): 120–125.濱松彩,田中詩穂,澄あずさ,他日本NICUから循環器病棟へ転棟した児を療育する母親の気持ちの変化を明らかにする母親4人質的記述的研究半構造化面接
5Parenting a child at home with hypoplastic left heart syndrome: experiences of commitment, of stress, and of love2017Cardiol Young. 27(7): 1341–1348.Cantwell-Bartl AM, Tibballs J.オーストラリア左心低形成症候群の児が退院した後の子育て経験を評価する母親16人 
父親13人
混合研究の中の質的記述的研究半構造化面接
6“I was so worried about every drop of milk” - feeding problems at home are a significant concern for parents after major heart surgery in infancy2017Matern Child Nutr. 13(2): e12302. doi:10.1111/mcn.12302.Tregay J, Brown K, Crowe S, et al.イギリス複雑なケアを必要とする先天性心疾患児のケアをする親の経験について理解する20人の児の両親質的記述的研究 
フレームワーク分析
半構造化面接
7Psychosocial impact on families with an infant with a hypoplastic left heart syndrome during and after the interstage monitoring period - a prospective mixed-method study2017J Clin Nurs. 26(21–22): 3363–3370.Stoffel G, Spirig R, Stiasny B, et al.スイス左心低形成症候群の児を自宅で見守る両親の経験,対処能力,QOLを調査する母親1人 
両親9組
質的記述的研究 
質的内容分析
半構造化面接
8出生前に先天性心疾患の診断を受けた子どもに関する母親の時間的展望 「普通」という意味の経時的な変容とその契機2018家族看護学研究 24(1): 62–73.丸山暁子,福澤利江子,大友英子,他日本出生前に先天性心疾患の診断を受けた子どもに関する母親の時間的展望を経時的に記述する母親8人質的記述的研究半構造化面接
9Transition experiences between hospital- and home-care for parents of children with hypoplastic left heart syndrome2018J Spec Pediatr Nurs. 23(3): e12225. doi:10.1111/jspn.12225.March S, Keim-Malpass J.アメリカ闘病ブログを通して記述された,児のはじめての退院で経験する状況に対する両親の反応を検討する父親2人 
母親4人のブログ
質的記述的研究 
主題分析
ブログ記事の分析
10Mothers and Fathers Experience Stress of Congenital Heart Disease Differently: Recommendations for Pediatric Critical Care2018Pediatr Crit Care Med. 19(7): 626–634.Sood E, Karpyn A, Demianczyk AC, et al.アメリカ先天性心疾患児の世話による両親のストレス,また病院や地域社会の支援の利用方法を調査する母親20人 
父親14人
質的記述的研究 
主題分析
半構造化面接
11Parents’ Experiences of Caring for Their Child at the Time of Discharge After Cardiac Surgery and During the Postdischarge Period: Qualitative Study Using an Online Forum2018J Med Internet Res. 20(5): e155. doi:10.2196/jmir.9104.Wray J, Brown K, Tregay J, et al.イギリス先天性心疾患児を手術後の退院以降に世話した親の経験を引き出す両親89人質的記述的研究 
主題分析
グループディスカッション
12Patterns of Transition Experience for Parents Going Home from Hospital with their Infant after First Stage Surgery for Complex Congenital Heart Disease2018J Pediatr Nurs. 41: e23–e32. doi:10.1016/j.pedn.2017.11.013.Gaskin KL.イギリス先天性心疾患に対する姑息術後,病院から家庭への移行時点における両親の経験を調査する母親12人 
父親4人
混合研究 
主題分析
半構造化面接
13The lived experience of parents whose children discharged to home after cardiac surgery for congenital heart disease2018Acta Biomed. 89(Suppl 4): 71–77.Simeone S, Platone N, Perrone M, et al.イタリア手術を受けた先天性心疾患児が退院した直後の両親の生活体験を理解する母親18人 
父親6人
質的記述的研究 
現象学的手法
非構造化面接
14Having to Be the One: Mothers Providing Home Care to Infants With Complex Cardiac Needs2019Am J Crit Care. 28(5): 354–360.Imperial-Perez F, Heilemann MV.アメリカ複雑な先天性心疾患の手術後に退院したが,その後再入院した乳児の母親の認識と生活体験を記述する母親10人グラウンデッドセオリー半構造化面接
15Parental emotional and hands-on work-Experiences of parents with a newborn undergoing congenital heart surgery: A qualitative study2019J Spec Pediatr Nurs. 24(4): e12269. doi:10.1111/jspn.12269.Thomi M, Pfammatter JP, Spichiger E.スイス新生児の先天性心疾患の診断から心臓手術後の最初の退院までの両親の経験を調査する両親9組質的記述的研究 
主題分析
半構造化面接
16Home care experience and nursing needs of caregivers of children undergoing congenital heart disease operations: A qualitative descriptive study2019PLoS One. 14(3): e0213154.Ni ZH, Lv HT, Ding S, et al.中国心臓手術前後の先天性心疾患児の世話をする親の在宅ケアの経験を調査する母親17人質的記述的研究半構造化面接
17Parents’ Experiences of Transition From Hospital to Home After Their Infant’s First-Stage Cardiac Surgery Psychological, Physical, Physiological, and Financial Survival2021J Cardiovasc Nurs. 36(3): 283–292.Gaskin KL, Barron D, Wray J.イギリス姑息術を受けた乳児の病院から自宅への移行に関する親の経験を調査する母親12人 
父親4人
混合研究 
主題分析
半構造化面接
18Defining a new normal: A qualitative exploration of the parent experience during the single ventricle congenital heart disease interstage period2021J Adv Nurs. 77(5): 2437–2446.Elliott M, Erickson L, Russell CL, et al.アメリカ単心室の先天性心疾患をもつ乳児の姑息術後における両親の移行体験を探る母親8人 
父親3人
質的記述的研究 
テーマ分析
半構造化面接
19Developing a sense of self-reliance: caregivers of infants with single-ventricle heart disease during the interstage period2022Cardiol Young. 32(3): 465–471.Imperial-Perez F, Heilemann MV, Doering LV, et al.アメリカ児の世話が親へ移行する際の経験について親の認識を調査する母親10人 
父親4人
グラウンデッドセオリー記載なし
20The Experience of Uncertainty in Mothers Caring for Children at Home after Palliative Heart Surgery2023Indian J Palliat Care. 29(1): 46–50.Puriani D, Allenidekania A, Afiyanti Y.インドネシア自宅で姑息術から回復中の子どもを世話している母親の経験を調査する母親15人質的記述的研究 
現象学的手法
半構造化面接
21Parents’ Journeys of Mastery and Knowledge Construction After Their Infant’s First Stage of Surgery for Complex Congenital Heart Disease2024Compr Child Adolesc Nurs. 47(1): 68–81.Gaskin KL, Barron D, Wray J.イギリス姑息術後の先天性心疾患児を連れて病院から自宅へ移行する際の両親の経験を調査する母親12人 
父親4人
混合研究 
主題分析
半構造化面接

先天性心疾患児をはじめて自宅に迎える親の自宅環境への移行期における体験

1)体験の概観

21論文から抽出された309の二次構成要素から著者らが9つの側面に統合し,図式化した(Fig. 1).

Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 42(1): 3-12 (2026)

Fig. 1 先天性心疾患児をはじめて自宅に迎える親の自宅環境への移行期における体験

退院後の生活の前置きとなっていた【先天性心疾患のわが子の命を背負う負担があった】を土台として表し,対象や期間が限定されている体験や認識である【退院後のサポート体制が不十分と感じた】【退院に関して医療者のサポートを感じた】【子どもと自分の生活の意味を考える】【退院後に孤立を感じた】【親役割を見失う】【退院までの準備に不足があった】を四角で表した.それらの体験が【移行期をわが子と過ごすことで得た経験があった】を取りまいていることを円で表した.経験を得ながら【退院後の生活を上手く送る】が,児の状態により行きつ戻りつする様相を両矢印で表した.

先天性心疾患児をはじめて自宅に迎える親の自宅環境への移行期における体験は,先天性心疾患のわが子の命を背負う負担が常に土台として存在していた.求められる療養行動の数が多く,普通の生活とかけ離れているために,親役割を見失ったり,先天性心疾患児を育てることでの心理的・社会的孤立を感じていた.退院に関するサポートの不十分さや退院指導のあいまいさ,また自分自身の準備不足を感じる一方,退院に関して医療者や地域のサポートを感じ,持ちうる資源で新しいサポート体制を整え,子どもと自分の生活の意味を考えていた.わが子と過ごしながら学び,わが子との生活とはどのようなものであるのか実感するなど,移行期をわが子と過ごすことで得た経験があり,困難と安定を行きつ戻りつしながらやがて適応し,退院後の生活を上手く送れるようになっていた.

2)体験の詳細

統合した9つの側面について,詳細な内容を述べる.なお,二次構成要素を『 』で表し,末尾の番号はTable 2の文献番号を表す.

(1)先天性心疾患のわが子の命を背負う負担があった

抽出された体験は,療養行動を担う負担に関するものが最も多く,80の二次構成要素が含まれた.そのうち,単心室や複雑心奇形の児をもつ親の体験を明らかにした文献2,7,14,18から抽出された二次構成要素が21項目,姑息術後の児の親を対象とした文献18,20,21から抽出された二次構成要素が14項目と,約半数が根治術を終えないまま退院となった児の親の体験であった.

退院後の生活には負担が絶えず存在した.『未知の物事への不安(文献2)』,『次の手術を待っている間に子どもが死んでしまう可能性を心配していた(文献20)』より,いつ何が起きてもおかしくない恐怖に苛まれながらも,子どもの安全を確保するために世話や療養行動に追われていたことが表されていた.『他の親たちとは違うレベルで仕事をこなさなければならないというプレッシャーを感じていた(文献18)』,『経管栄養を必要とした(文献5)』,『栄養と投薬計画の遵守のため,規定の授乳と投薬のスケジュールに合わせ,母親は目覚まし時計を使用して睡眠を確保する必要があった(文献14)』のように,求められる療養行動が多い現状が明らかとなった.加えて『子どもの周りで起こること,取り巻くすべてを常にチェックする必要性を感じていた(文献13)』,『慢性疲労に関連する症状は,集中力の欠如から完全な疲労まで多岐にわたる(文献7)』というわが子と生活するために求められる緻密な管理に疲労を感じていた.『子どものベースラインが非典型的であった場合,変化を特定することが困難であった(文献1)』,『嘔吐は重大な関心事であり,子どもの体重増加や再度投薬を行うかどうかが心配になり,親のストレスが高くなった(文献6)』という子どもに合わせて難しい判断をする負担も表されていた.

先天性心疾患児の親が担う自宅での仕事は『退院は,乳児の世話に加え,家計を切り盛りし,限られた資源で他の子どもたちの世話をするという役割の全責任を再開することを意味する(文献18)』によく表されている.先天性心疾患児の世話のみでなく,家族の生活とわが子の療養生活の多重課題に追われていた.課題は多岐にわたり『きょうだいへの「愛情と配慮」を確保する(文献12)』という同胞児のケアや,『必要な器具が多いため家庭の物理的環境の変化に適応することが困難(文献17)』という物理的な課題を抱えていた.さらに両親は『家事や介護の負担が大きいため,しばしば他の家族と摩擦を起こす(文献16)』という家族構成員間での不和も経験していた.

『母親は複数の役割の要求に直面していたが,配偶者が仕事に復帰する必要があると,それはさらに困難になった(文献14)』で表されているように,母一人にかかる責任の重さがあった.また,父親が休暇を取得し療養生活に協力したとしても『父の職場から何ももらえず,経済的に生活に影響し,さらにストレスが高まった(文献17)』のように,経済的な困窮も存在した.

移行期において『突然の生活の変化に耐える能力は低く,精神的健康に大きな影響を与えた(文献16)』に表されているように,環境の変化による大きな負担が退院時の感情にも影響した.さらに,『医学的に脆弱な子どもを世話することの厳しさが圧倒的でストレスフルであるにも関わらず,そこから立ち去ることも無視することもできない(文献14)』と,逃げ場がないことを感じていた.

(2)退院に関するサポート体制が不十分と感じた

親は,専門の施設と地域の連携不足や地域の医療機関や保健に関わる行政の知識・経験不足を感じ,退院後の負担があるにもかかわらずサポートが十分でないと認識していた.連携不足が生じると『医療者とのコミュニケーションによるストレス(文献10)』を感じていた.そして『地域のチームが必要なケアを理解し,両親の知識に頼ることなく悪化の兆候を特定できるように,効果的に準備する必要がある(文献2)』という地域の医療機関への不満につながっていた.『言語療法士や栄養士などの専門家への紹介に時間がかかりすぎることもあり,支援が遅すぎた(文献6)』に表されているように,地域のサポート体制が親のニーズや求めるスピード感と合っていない状況もあった.

(3)退院に関して医療者のサポートを感じた

一方,親は退院後に地域のサポートを感じていた.『地元の病院とオープンアクセスの取り決めをしている親も多く,それは明らかに高く評価されており,親を安心させるのに役立っている(文献11)』,『訪問看護師はケアする母親の精神的フォローも担っていた(文献3)』という状況に合わせた地域のサポートを実感していた.また,行政の経済的サポートにおいても『関連する手当の重要性(文献17)』が語られた.地域のサポートに加えて専門の施設からのサポートも感じ『いつでも心臓担当の看護師または病棟に電話できることが支えになった(文献2)』と表されていた.

また,入院中の退院準備期には『赤ちゃんの徴候や症状について具体的な情報を得た(文献11)』,『初回にはその症状に気づかなかったが,一度自分の子どもについて指摘されると,次回以降はその症状を識別するのがずっと簡単になった(文献1)』に表されているように,退院後に役立つ効果的なサポートがあったと感じていた.

(4)退院までの準備に不足があった

先天性心疾患児の親が感じた退院までの準備の不足には,親自身の退院準備不足と,医療者が行う退院支援の曖昧さがあった.『親自身の退院準備不足には,長い入院生活の後,子どもが自宅で一緒に過ごせることに安堵の表情を見せたが,何人かの親は,自宅での子どもの世話がどれほど大変なものであるか,準備していなかった(文献6)』のように,わが子との生活がイメージできていないことや,『予期せぬ実際的な問題,たとえば呼吸困難の子どもをどのように搬送すればよいかなど,病院では生じなかった問題を経験した(文献15)』のように,疾患の管理における課題,そして『見慣れない先天性心疾患の診断の意味に対する戸惑いから,心臓手術後の子どもの外見,家庭での子どもの世話の複雑さまで,事実上あらゆる面で準備不足を感じている(文献10)』のように,疾患をもつわが子に関する全般にわたり,様々な準備不足があった.

一方,医療者による退院指導の曖昧さは『循環器病棟への移動がいいことか悪いことか分からない(文献4)』というNICUから循環器病棟への移動は退院に向けた準備の一環であるという認識を共有できていないこと,『摂食に関する心配事について親が受けたサポートはまちまちであった(文献6)』という統一感のない指導,『子どもの入院中に徴候や症状に関する情報を与えられたことを記憶しているが,自宅でこれらの症状を認識するには必ずしも十分ではなかった(文献1)』という自宅での生活に十分即していない指導があった.

(5)親役割を見失う

先天性心疾患児の親は求められる疾患管理や療養行動が多く『退院が決定すると,喜びの直後には,不安とも言える恐怖感があった(文献13)』,『単純な病気が左心低形成の子どもに影響を与える可能性があるため,両親は病児を保育する間,細心の注意を払っていた(文献9)』というわが子の命や安全が自分にかかっている恐怖があった.そのため『プレッシャーと,医療化された過酷な育児によって,母親としてのアイデンティティが失われ,看護師や介護士になったような気がする(文献6)』に表されているように,わが子にとって自分は「親」でなく看護師や介護士なのではないかという認識が生まれていた.看護師のような役割を担わざるを得ない親は,自宅を『薬,注射器,パルスオキシメーター,体重計,その他の医療器具を整理するための複雑なシステムがあり,必然的に自宅の空間が準医療環境へと変化した(文献18)』と認識し,『“医療的な親”になり,入院中に医療や技術に関するあらゆることを学び,家では看護の役割を果たすようになった(文献12)』.また『「健常な」赤ちゃんでなく「病気の」赤ちゃんを家に連れてきたため,自分たちの経験は衝撃的で順序が狂っている(文献14)』のように,明確なことは何もなく,まだ現実を受けとめきれない様相もあった.さらに『同胞と成長発達が異なることでの困難を感じていた(文献3)』に表されているように,家庭内外で健常児との違いを目の当たりにすることで普通を失ったと感じ,一方で『母親が家族の主な稼ぎ手になったが,自分以外の介護者が赤ちゃんの世話をする心配をし,別の種類のストレスを感じる(文献15)』のように,サポートに頼ることで母親としての無力感も抱いていた.

(6)退院後に孤立を感じた

先天性心疾患児を自宅で育児する親は孤立を抱えていた.先天性心疾患児の親であることでの心理的孤立は『他の親が自分と同じ経験をしていない世界に出ることは恐怖であり,苛立ちであり,孤立であった(文献21)』,『自分自身や他人の知識,あるいは知識の欠如を困難であり孤立したものであると感じる(文献11)』のように表されていた.先天性心疾患児を世話することでの社会的孤立は『子どもや家族全体が差別を受けることを恐れ,子どもの将来の成長に心理的・生理的な影響を及ぼすことを恐れて,子どもの状態を同僚や友人に公表したくない(文献16)』,『母子向けの活動に参加できないことで,母親は他の新米母親から孤立している(文献11)』というわが子が健常児であれば繋がりがあったはずの人々からの孤立もあった.

(7)子どもと自分の生活の意味を考える

先天性心疾患児の療養生活を支える親は,生活を営みながら,子どもと自分の生活の意味を考えていた.退院の目途が立つ段階や,自宅での生活が開始となった段階では『お世話できるので嬉しい(文献4)』,『自宅で子どもと「普通」の生活を送っており,子どもの成長・発達を感じている母親は,子どもの将来を「普通」の親と同じように具体的に考えていた(文献8)』のように,わが子と過ごすこれからを楽しみと感じていた.また『最初の退院で,ようやく自分の家で「本当の」家族になれることを楽しみにしている(文献7)』,『子どもの世話をする時間が増えたことで,先天性心疾患をもつわが子にとっての「普通」とはどういう状態なのかを探しつつ,日々新発見していた(文献8)』,『退院は,自分たちの空間と習慣の再獲得,癒しの再獲得を意味した(文献13)』のように,退院の意味付けをおこなっていた.そして『結果がどうあれ人生が与えてくれたものを尊重したい(文献5)』,『親個人の成長と思いやりが芽生えた(文献5)』のように,病気をもったわが子と生活しながら自分の人生の意味を探し,親自身の人生を充実させていた.

(8)移行期をわが子と過ごすことで得た経験があった

先天性心疾患児の親は,移行期に実際にわが子と過ごすことで様々な経験を得ていた.『小児心臓病棟に転棟し,ようやく,より深く関わり,より自立した子育てができるようになり,新生児のニーズについてより深く知ることができるようになった(文献15)』ことから始まり,『自分の知識や能力の不足を認識し,専門家に相談したり勉強したりすることを自分から望んだ(文献19)』,『疾患児にも他の赤ちゃんと同じような欲求がたくさんある(文献18)』というわが子との生活に必要な知識・技術・療養行動を獲得していた.症状マネジメントに対しても『自分で対処することを学び,他者から愛情やサポートを得ることを学び,乳児の個別のニーズに関する知識を身につけた(文献15)』,『危険サインへの対応方法を学ぶ(文献19)』のように,入院中に同室し児と過ごすことで様々なことを学んでいた.学びながら『退院が近くなり育児指導が始まると「普通」に近づいていると感じていた(文献8)』,『病院から家庭への移行は,安全で安心な場所から未知の不確かな場所への通過点であった(文献21)』のように,わが子との生活とはどのようなものであるか徐々に実感していた.一方『一人になることへの最初の不安,恐れ,心配は,時間の経過とともに幸福感と前向きさに取って代わられ,両親は快適な家庭環境に戻ること,新しい日課に慣れること,家族生活にリラックスすることに慣れた(文献9)』,『身体的・生理的な生活の改善は時間の経過による(文献17)』のように,時間が解決してくれたとも感じていた.

(9)退院後の生活を上手く送る

先天性心疾患児の親は『「日課の確立」と「整理整頓」は,家に帰る準備の重要な要素と考えていた(文献12)』という生活と両立するための物理的な方策や,『自分自身の日課を確立してモニターやアラームというセーフティネットなしで対処することを学んだ(文献21)』という自宅の環境に合わせた療養生活の方策,『親は他の親と話す覚悟が必要であり,それが誰にとっても正しいアプローチではない(文献11)』という自己に合った他の親との人付き合いに関する方策などを取り,親自身が主体的に学び,生活の中で工夫していた.また『子どもの回復と時間の経過がストレスを和らげるのに役立った(文献10)』,『ストレスがどのように軽減されたかの認識があった(文献14)』のように,自分が安心できる対処法を親自身が自覚することが助けとなっていた.そして『家族,友人,その他の人々は,入院や在宅療養の移行を経験する両親をサポートしてくれるが,最高のサポートをしてくれるのは,その状況を十分に理解できる他の親たちである(文献9)』,『祖父母は最大の支援源であり,その多くは近所に住んでいて,兄弟姉妹の世話や,父親が仕事に復帰した後の支援,また祖父母や両親の自信が増すにつれて,両親の買い物や予定に合わせて乳幼児の世話をして,短い休憩時間を提供してくれた(文献12)』と,ピアサポートを受け,家族からの支えを感じ,身近な人からのサポートを得ていた.『正常であろうとする努力というよりは,すでに存在する正常さを認識するようになった(文献18)』のように,目の前のわが子と向き合い,『初めて親になった人は,心臓に問題のある乳児がいたとしても,比較するものがなかったため,家に戻ってからのルーチンの確立に影響を与えなかった(文献12)』,『他の子どもを持つ親の中には,子育ては以前と変わらないと感じている人もいた(文献17)』のように,子育ての経験の有無にかかわらず,わが子の普通が子育ての普通になることもあった.さらに『自宅での療養生活や今後も続く治療について,親としての覚悟(文献4)』や,『前向きに考える(文献5)』という考えを切り替える方策もあった.

考察

診断からはじめての自宅退院までの親への支援

胎児診断が発達し,出生前からわが子の疾患について理解を促進できる可能性が生まれたにもかかわらず,親は退院までの準備に不足があると認識していることが明らかとなった.退院に関するサポートの不十分さや退院指導の曖昧さが語られているが,治療可能な先天性心疾患,標準的な治療という概念の施設差や18),親の体験の中で語られていた退院前指導を行うスタッフの個人差19),地域がもつ経験の差20)が影響している可能性がある.

また,重症な先天性心疾患児の救命率向上に伴い在宅で高度な医療ケアを必要とする児が増加し,両親の負担が増大している可能性が考えられる.大きな負担は家族構成員間の不和を生じ,自宅への退院が必ずしも家族にとっての最善とは限らない場合がある.退院前に自宅での生活を具体的にイメージし,児および家族にとって安全で持続可能な退院先を検討することが重要である.また看護師は,在宅での医療的ケアを要する児と家族に対し,在宅移行が視野に入っても家族の障害受容が進んでいるとは限らないと意識して関わっている21).疾患の理解や医療的ケアの手技確立ばかりでなく,親の障がい受容など愛着形成を阻害する要因に着目し,児の安全や両親の精神的安寧が確保できるよう,児と家族に関わる全ての職種が留意しながら退院準備を進める必要がある.

根治術を終えないまま退院となった児の親は,退院後の負担を多く語る傾向にあった.日本においては近年医療的ケア児と家族について着目されており,今後も行政とともに支援の発展が期待できる.一方,先天性心疾患児は,利尿薬などを内服しながら心室中隔欠損や房室中隔欠損の自然閉鎖を期待したり,心不全症状の有無や体重増加などから外来で手術の必要性について検討する場合がある22, 23).このような児は,退院後に医療的ケアを必要としないものの心不全のリスクを抱え,感染予防や心不全兆候の観察を要する.親の負担が明らかになっているにもかかわらず支援制度が整っていないため,医療的ケアを必要としない先天性心疾患児とその家族が見過ごされないよう,退院前の密な地域連携,かかりつけ医との連携は必須であると考える.

また,親は退院後に心理的負担や孤立感を抱えるが,海外ではピアサポートが退院後の生活を上手く送る一助となっていることが明らかにされている24–26).水島は,日本での先天性心疾患児の親へのピアサポートについて,同じ病棟で過ごしているからといってそれだけでピアサポートが生じることはほぼなく,語りたいという人が集まり,語れる場を医療者が提供することが必要であると述べており27),ピアサポートの調整は医療者の重要な役割といえる.

胎児診断が発展したことで,児を担当する医療者が児の出生前から家族へ支援することが可能となっている.各国では胎児診断におけるガイドラインや声明が発表されており4, 28),先天性心疾患と診断された胎児の親に対する介入において,小児科医のみならず,児を担当する看護師によるケアを実施する施設が増えてきた29, 30).海外では,出生前に胎児異常と診断された患者に対する集団出生前ケアが開発され31),出生前カウンセリングと親のストレスについて言及されている28).しかし,胎児期からの看護介入は世界を見渡しても各施設が工夫して取り組んでいるのが現状であり,堕胎に関する法律の違いや,社会福祉制度の違いもあり,統一したケアは確立していない.プレネイタルビジットの機会を利用し,先天性心疾患児の親への説明や指導の差を減少させ,わが子の成長・発達,療養生活がイメージできるよう働きかけることは,退院後の生活にスムーズに適応することにつながると考える.さらに,出生前から小児科医や児に関わる看護師が介入することは,胎児期に両親が意思決定を行う一助となりうると考える.

成人に達する児の成長を見据えた支援

治療の発達により,複雑心奇形をもつ人が成人期に達するようになっている.新生児期・乳児期の親を対象とした質的研究を統合したが,親の不安の中には,先が見えない不安も語られていた.遠藤らは,同様の病気経験談の参照が難しい,医師からの病気説明を補う媒体が不足する,医学的専門知識が足りないなどの病気理解の追求困難に加え,医師母間の信頼形成困難があり,その結果母親の病気理解追求が停滞し不完全な病気説明理解につながったと述べている32).米国の関連学会の共同声明において,特別な医療ケアを必要とする子どもや青少年とその家族は,患者の具体的な状況に応じて,成人の移行に関する話し合いを12歳より早く始めることが有益であるとされている33).適切な時期に移行期支援が開始できるよう,診断時から親が子どもの病気を可能な限り理解することが必要である.診断時や周手術期は児の生命の危機が大きく移行期は療養生活に追われ,親にとって心身の負担が多い時期であるが,親のニーズに合わせ,将来を見据えた退院準備支援について整えることは喫緊の課題であると考える.

本研究の限界

先天性心疾患は疾患により経過が大きく異なるが,本研究は先天性心疾患全てを対象とした.疾患を特定することで,疾患特有の体験が明らかとなる可能性がある.また,両親双方を対象としたが,母親のみ,父親のみを対象とすることで,それぞれの体験の特徴が明らかとなる可能性がある.

過去20年を対象に論文検索を行ったが,先天性心疾患児をはじめて自宅に迎える親の自宅環境への移行期における体験に焦点を当てた質的研究は,2016年以降に行われたもののみが抽出された.治療の進歩や社会福祉制度の整備により自宅で生活できる児が増え,新たな問題として近年顕在化し研究対象となったためと考えられる.また,日本の研究論文が少なく,日本に限定した課題は明らかにならなかった.

謝辞Acknowledgments

大阪公立大学阿倍野医学図書館の司書の皆様には,文献検索にご協力をいただきました.皆様のご支援に心から感謝いたします.

利益相反

全ての著者は日本小児循環器学会の定める利益相反に関する開示事項はない.

著者の役割

澤田唯は筆頭著者として研究の着想・構想,データ収集や分析に関与し,論文を執筆した.仁尾かおりは研究の着想・構想に関与し,論文執筆を指導し,最終的な校正を行った.

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