Online ISSN: 2187-2988 Print ISSN: 0911-1794
特定非営利活動法人日本小児循環器学会
Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 39(4): 236-243 (2023)
doi:10.9794/jspccs.39.236

症例報告

拡張型心筋症に対し体外設置型補助人工心臓を装着し,心臓移植に至った男児のリハビリテーション

1東京大学医学部附属病院 リハビリテーション部

2東京大学医学部附属病院 小児科

3東京大学医学部附属病院 心臓外科

受付日:2023年9月15日
受理日:2024年1月5日
発行日:2023年12月31日
HTMLPDFEPUB3

体外設置型補助人工心臓(ventricular assist device: VAD) EXCOR Pediatric (EXCOR)装着後,心臓移植に至った小児患者のリハビリテーション(リハビリ)の経験を報告する.拡張型心筋症の7歳男児.上気道症状,腹痛にて近医を受診,左心の著明な拡大と収縮不良を認め当院転院.転院後7日目に持続性心室頻拍(ventricular tachycardia: VT)へ移行しVAD (Rota flow)装着,翌日EXCORへ移行した.術後4日目よりリハビリ開始.著しい筋力低下を認めていたため段階的に離床を進め,術後140日目には1 kmの連続歩行も可能となった.術後7カ月に倦怠感が増悪,術後11カ月には重度の大動脈閉鎖不全症(aortic insufficiency: AI)と両心不全の増悪を合併,術後20カ月からは持続性VTのまま経過,AIと持続性VTによりフォンタン循環様の病態となり,リハビリにおける運動負荷の調整を要した.持続性VTとなって以降は自覚・他覚症状,心・肝機能の状況に応じて運動負荷を調整した.術後716日に心臓移植術を実施,移植術後は速やかに離床を進め,1日1.5 km程度の歩行能力,体力を獲得し,移植術後34日で自宅退院に至った.長期の移植待機期間中に右心不全,不整脈といった合併症に伴い,VADサポート下であっても心不全が増悪する可能性がある.リハビリにより更なる心不全増悪を招かないよう,運動負荷の調整を行うことが重要であった.

Key words: severe heart failure; ventricular assist device; pediatric; complication

背景

移植を目指す小児重症心不全患者の橋渡し治療として,体外設置型補助人工心臓(ventricular assist device: VAD)EXCOR Pediatric(EXCOR)を用いた治療が定着し,国内での心臓移植待機が可能となった.しかし,国内における小児心臓移植は年間10例前後1)

と近年のドナー数は少数にとどまっており,移植到達まで非常に長期にわたる待機を強いられる現状にある.

本邦の小児VAD装着患者は,移植まで平均で約680日の待機を必要とする1)

.成人を主体としたVAD装着患者の装着後3年の主要合併症の発生割合は,感染48%,脳血管障害に伴う神経機能障害32%,不整脈12%にのぼり,3年間で76%の患者が再入院での加療が必要となる状況である2).近年のドナー数増加が進まない状況に鑑みると待機期間のさらなる延長も予想され,遠隔期合併症への対応は重要な課題と言える.よってVAD装着による移植への橋渡しが可能となった現在においても,患者・家族及び医療者にとって長期の待機期間は決して平穏な道のりではない.これらの合併症に対処しながら,移植術を乗り越える体力を獲得することがVAD装着患者のリハビリテーション(リハビリ)目標となる.

小児は体格が小さいことから植込型VAD装着が難しく,乳児から学童患者のほとんどがEXCORを選択され,入院加療を継続し移植を待機する.よって,患者・家族の生活環境は非常に制限された状況であり,患者・家族のQOL,VAD装着に伴う体動制限・活動範囲の狭小化に伴う乳幼児の発達遅滞も大きな問題となる.

今回,拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy: DCM)に対し,EXCORを装着後に心臓移植に至った小児患者のリハビリを経験した.本稿では,長期療養期間中の合併症や精神的要因により生じた課題についてまとめる.

倫理的配慮・説明と同意

本発表に関し,本人・保護者に説明を行い,同意を得た.

症例

症例は7歳男児.X年2月上旬より上気道症状が出現,腹痛が増悪したため近医を受診し虫垂炎の疑いで前医を紹介受診した.心胸郭比(cardio thoracic ratio: CTR)64%,左心の著明な拡大と収縮不良を認めたため,心不全の管理目的に当院転院となった.左室駆出率(left ventricle ejection fraction: LVEF)13%,非持続性の心室頻拍(ventricular tachycardia: VT)を認めたため内科的集中治療を開始した.転院後7日目に持続性VTへ移行し直流除細動器(direct current: DC)にて除細動を施行したが不整脈の制御に難渋し,左室VAD(Rota flow)装着,転院後8日目にEXCOR(30ccポンプ)へ移行した.

理学療法経過

VAD装着時

理学療法は転院後13日目(EXCOR装着術後3日目(post operative day: POD 3))より開始した.術後介入時,EXCOR装着下,カテコラミン使用にて収縮期血圧90 mmHg,脈拍(heart rate: HR)90台と循環は安定していた.BMI 13.2とるい痩が著明であり,筋力は徒手筋力検査(manual muscle test: MMT)で2–3レベルと低下を来しており,体位交換を含めて基本動作は全介助,ADLはBarthel Index(BI)0点であった.脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide: BNP)は495.5 pg/mLと高値であり,胸部レントゲンではCTR 57.2%,軽度の体動で呼吸促迫を認めるなどNYHA心機能分類はIII度の心不全状態であった(Table 1

).VAD身辺機器の安全を確保するために,送脱血管刺入部にて管が可動しストレスがかからないようバストバンドで固定し,専用のポンプカバーを装着,立位・歩行時にはポンプの重さを軽減できるようサスペンダーを用いた.段階的に離床を進め,POD 7より歩行練習を開始した.運動負荷の目安としてHRはKarvonen法でごく軽度の運動負荷(K=0.3)から開始して適宜漸増していき,自覚的疲労度(Borg指数)13以下で運動が行えるよう,理学療法中はモニタリングを継続した.歩行距離は順調に延長が行え,POD 145には筋力がMMT 4レベルまで向上し,1日1,300 mの歩行が可能となった(Fig. 1).

Table 1 身体機能評価
理学療法開始時(POD 4)心臓移植術前(POD 716)心臓移植後退院時(TPOM 1)
身長/体重/BMI126 cm/21 kg/13.2131.0 cm/21.1 kg/13.3131.0 cm/20.7 kg/13.1
血圧/脈拍95/55 mmHg 90 bpm85/45 mmHg 150–180 bpm VT90/50 mmHg 100 bpm
心機能NYHA III BNP 495.5 pg/mL
LVEF 20% RVFAC 30%
NYHA III BNP 494.9 pg/mL
TR severe MR severe AR moderate
心収縮ほぼ認めず A弁開放なし
NYHA II BNP 138.8 pg/mL
LVEF: 74.8% RVFAC 34.6%
筋力MMT 2–3レベルMMT 3–4レベルMMT 4レベル
ADL Barthel Index070
歩行:独歩連続200 m程度可
95
歩行:独歩連続1800 m可
階段昇降:軽介助 可
胸部レントゲン
AR, aortic valve regurgitation; BMI, Body Mass Index; BNP, brain natriuretic peptide; CTR, cardio thoracic ratio; LVEF, left ventricle ejection fraction; MMT, manual muscle test; MR, mitral regurgitation; NYHA, New York Heart Association functional classification; POD; post operative day; Press, pressure; RVFAC, right ventricular fractional area change; TPOM, transplant post operative day; TR, tricuspid regurgitation; Vac, vacuum; VAD, ventricular assist device; VT, ventricular tachycardia.
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Fig. 1 理学療法経過 <VAD装着時>

EXCOR装着術後4日目よりリハビリを開始し,順調に離床を進め術後3カ月で1,300 m歩行が可能となった.その後,両心不全が増悪し倦怠感増強,活気不良となり運動量を漸減して対応した.同時期よりBNP, γ-GTPが上昇し,他臓器不全も懸念された.術後12カ月頃よりVTが頻発し内科治療・除細動実施でも改善せず,VT継続の循環となった.同時期より運動時の倦怠感が一段悪化し,300 m歩行がかろうじて可能なレベルの運動量に留まった.AR, aortic valve regurgitation; BNP, brain natriuretic peptide; MR, mitral regurgitation; POD, post operative day; POM, post operative month; TR, tricuspid regurgitation; TRPG, tricuspid regurgitant pressure gradient; TTE, transthoracic echocardiography; VAD, ventricular assist device; VT, ventricular tachycardia; γ-GTP, γ-Glutamyl Transpeptidase.

POD 260頃より運動時のVital Signは著変なかったが活気が低下,倦怠感の訴えが増加し,内服時に時折嘔吐を認めた.リハビリはHRに加え自覚症状や他覚症状(顔色,活気)を目安に運動負荷を決定し,歩行距離を短縮するなど運動量を漸減して対応した.心エコーでは三尖弁逆流(tricuspid regurgitation: TR),僧帽弁逆流(mitral regurgitation: MR)がsevereとなり,心不全が増悪しBNPは上昇,また,ガンマグルタミルトランスペプチターゼ(γ-Glutamyl TransPeptidase: γ-GTP)も上昇し肝機能障害を認めた(Fig. 1

).この頃より精神的に塞ぎ込みがちとなり,家族とは会話をするものの医療者とはほとんど会話をせず,本人へ声かけをしても応答は乏しく家族が代弁する機会が増加した.

術後11カ月(post operative month: POM 11)の心エコーではTRに伴う右心不全が増悪したため,EXCORの駆動設定を変更して循環サポートを継続し,わずかに心不全症状の改善を得たが,同時期よりVTが頻発した.抗不整脈薬静注,複数回の除細動を実施するも洞調律には回復せず,HR 150–180台/分の持続性VTのまま経過した(Fig. 1

).胸部レントゲンではCTR 75%と著明な心拡大を認め,心エコーでは右心・左心ともに心収縮をほとんど認めず,重度の両心不全であり,フォンタン循環様の血行動態であった.さらに重度の大動脈閉鎖不全症(aortic insufficiency: AI)も合併し,慎重なVAD管理を必要とした(Table 1).

持続性VT下では運動時の倦怠感が強く,NYHA III度の心不全状態であり,自覚・他覚症状,心・肝機能の状況に応じて運動負荷を調整した.体調把握に難渋しながらも心不全の増悪を助長しないよう運動時は酸素投与を行いながら実施し,運動量を漸減しつつ体力維持を図った.少しでも興味を持って歩行できるよう保育士と協働してゲーム性,遊びの要素を持たせたプログラムとしながらリハビリが継続できるよう工夫をしたことで,移植術まで200 m程度の歩行能力を維持できた(Fig. 1

).

心臓移植後

POD 716心臓移植術を実施,移植術後2日目(transplant post operative day: TPOD 2)よりリハビリを再開した.循環は安定しており,速やかに離床を進めることが可能であった.除神経心であるため運動中のHR・血圧・呼吸の反応が乏しいことに配慮し,血圧は収縮期血圧120 mmHg以下,HRは術前低体力であったことを踏まえて安静時プラス10%程度,呼吸数が安静時より20回以上増加しないこと,Borg指数13以下を目安として運動負荷を決定した.状態に応じて運動負荷を漸増し,退院前には筋力はMMT 4レベル,1日1.8 kmの歩行持久力を獲得,BNP 138.8 pg/mL,胸部レントゲンではCTR 58.9%,心エコーでは左室駆出率74.8%と良好な循環動態を維持し,NYHA II度の状態でTPOD 34に自宅退院に至った(Table 1

, Fig. 2).退院時の体力は外出1時間程度可能なレベルではあったが,退院後は屋外歩行や通学路を用いた散歩を少しずつ行い,体力向上を図るよう指導した.退院時には除神経心の説明や運動目標と注意点を,説明資料を用いて患児・家族へ説明した(Fig. 3-1).退院時に体調,歩数を記載するカレンダー型の日誌を記載してもらい,心筋生検検査入院の際に状況を確認し,フィードバックと運動の再指導を行った(Fig. 3-2).復学に向けては,退院前に医療スタッフ(医師,看護師,理学療法士,コーディネーター),学校関係者,患者,家族が参加し,オンラインにて復学支援カンファレンスを開催し,患児の治療経過と現状,運動や栄養を含めた注意点と復学時期などの目標を共有した.新型コロナウィルス感染が流行している間の移植術実施であったこともあり,術後2カ月目から自宅でのオンライン授業の受講を開始,退院後も家族とともに積極的に活動量を増加させたことで,術後3カ月後には時間短縮での復学,6カ月後には完全な復学を果たすことができた.体組成計測ではPOM 21には身長130 cm,体重22.4 kg,筋肉量7.1 kg,体脂肪率24.6%であったが,TPOD 31では身長131 cm,体重20.9 kg,筋肉量7.1 kg,体脂肪率18.0%と改善を認めた.ハンドヘルドダイナモメーターを用いて測定した筋力は,退院時(5.83 Nm/kg)と比較し移植後6カ月(9.25 Nm/kg)では筋力は増強し,復学も果たしたことから1日の歩行距離は6.7 kmまで延長した(Fig. 4).

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Fig. 2 理学療法経過 <心臓移植後>

移植術後2日目よりリハビリを再開.循環動態は安定しており,順調に運動量を漸増でき,退院時には1日1,800 mの歩行が可能な体力を獲得し,移植術後34日目に自宅退院に至った.BNP, brain natriuretic peptide; LVEF, left ventricle ejection fraction; POD, post operative day; RVFAC, right ventricular fractional area change; TPOD, transplant post operative month; TTE, transthoracic echocardiography; VAD, ventricular assist device; VT, ventricular tachycardia; γ-GTP, γ-Glutamyl Transpeptidase.

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Fig. 3 心臓移植後リハビリテーション指導

1)退院に向けて,患児・家族に対して除神経心の特徴,運動の注意点の説明を行った.2)退院後の運動量と体調の把握に向けて,カレンダー型の日誌を配布して記入してもらった.体調は3種類の顔のマーク(泣き顔,平静,笑顔)に近い体調・気分に丸をつけてもらう形とし,簡便に記入できるように工夫した.運動は入院中より万歩計を用いて1日の歩数を計測しており,自宅退院後も継続して計測してもらうことで活動量の把握に努めた.

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Fig. 4 身体機能推移

1)身体組成:移植前は筋力低下に伴い骨格筋量7 kgであったが,移植後6カ月で9 kgまで増加した.2)筋力:膝伸展筋力は移植後半年で退院直後よりも向上した.3)歩行距離:移植前は1日200 m程度の歩行距離をなんとか維持していたが,移植後退院6カ月で6.7 kmまで延長した.BMI, Body Mass Index.

考察

VAD装着と合併症

VAD装着患者は脳血管障害,感染,出血といった主要合併症2)

に加え,長期間補助に伴い,右心不全やAIといった心不全の再増悪が起こりうる.そのような状況においても,移植術に向け体力の維持・向上を図ることが課題となる.また,体外設置型VADが選択される小児VAD装着患者は補助装置装着に伴う行動範囲の狭小化,療養環境が限定するなどの環境要因の影響への配慮が必要であり,特に乳幼児においては発達遅滞を招く可能性も考えられ,安全を確保したうえで積極的な介入が求められる.

VAD装着患者におけるAIは,過剰な左室アンロードや弁尖変形により発症するとされている3, 4)

.植込型VAD装着患者においては,術後1年以内に25%の患者で中等度以上のAIを発症すると報告されている3).危険因子は高齢,小さい体表面積,高血圧,長期のVADサポート期間が挙げられており,拍動流よりも連続流VADで優位にAIは増加し,再入院率,死亡率を有意に上昇させると報告されている3, 4).また,植込型VAD植込み後の右心不全発症頻度は7~45%であり,急性期のみならず慢性期にも発生し,その合併により運動耐応能,QOLを低下させ,死亡率が上昇すると報告されている5–9)

これら合併症発症患者のリハビリにおいては,過負荷により心不全症状が悪化する可能性が考えられる.本症例は,装着期間の長期化に伴い重度のAIを含む弁膜症,右心不全を呈した.リハビリ実施によりさらなる心不全悪化を招かないよう,心エコー,血液検査(BNP,肝機能)などの結果に加え,顔色,表情などの他己評価から運動量を調整し,移植術に向けた最低限の体力を維持できるよう介入した.移植到達時には限界に近い循環動態・心理状態であったが,移植術後の循環動態は良好であり,早期離床によりさらなる廃用を招くことなく歩行能力・体力の獲得が可能であった.また,移植後は患児の精神面・活気がかなり改善したことで,リハビリ意欲も増加し,早期の退院が可能であったと考える.

運動量の決定

VAD装着後も治療期間が長期になることで,心不全増悪のリスクは常にあると考えられる.本症例のように,VAD装着後に重度の心不全,他臓器の機能低下を呈した場合,どの程度の運動負荷が適切であるかを担当医と十分にディスカッションし,適切なリハビリプログラムの検討と実施が求められる.特に小児患者においては自己表出が未熟であるため,何を指標にリハビリを実施するかの判断も重要である.VAD装着患者のリハビリ時の評価項目をTable 2

にまとめた10).長期VAD装着による合併症を呈した場合,また,小児患者においてはTable 2に示したものに限らず,患者の状態に応じた全身管理・運動負荷決定の指標となる評価指標を設定し,安全管理へも配慮する必要がある.本症例ではAI,重度の右心不全を合併後,主にBNP,肝機能,心エコー結果といった右心不全の指標を評価項目としてリハビリを進めた.これら指標は患者がどのような全身状態であるかによっても変化しうることが考えられ,個々での検討が必要である.また,患児の代弁者ともなりうる家族とよくコミュニケーションをとり,日々の様子をよく聴取すること,家族の不安から過大・過小評価になっていないかを踏まえて話を聞くことも重要である.

Table 2 小児体外設置型VAD装着患者リハビリテーション実施時の評価項目
循環を含めた全身状態の管理
血圧収縮期血圧 安静時より±20 mmHg以内
脈拍安静時脈拍+安静時脈拍20%以内 
*頻発する心室性不整脈の出現がある場合,主治医と相談
呼吸呼吸困難感・努力呼吸がない
自覚症状自覚的疲労(Borg指数 13以下),動悸,息切れ,倦怠感,眩暈,頭痛,腹痛,脱力感,浮遊感 など
他覚症状顔色,活気,機嫌 など
検査データ血液凝固,炎症反応 など 
*他臓器不全がある場合,関連データを参照
ポンプポンプフィリング(Flow)
その他補助循環装置装着に伴う合併症(脳血管障害・出血・感染・右心不全・大動脈弁閉鎖不全)発症の有無の確認
運動時の安全性確保
安全な身辺機器の取り扱いVADの仕組み・操作方法の理解 駆動チューブのキンク・牽引を引き起こさないチューブ取り回し
身辺機器の管理ポンプ保護(ポンプカバー装着),バストバンドでの送脱血管刺入部の固定
VAD, ventricular assist device. *文献10の表1を一部改変

長期体外設置型VAD装着小児患者のリハビリテーション

海外からの1年を超える長期EXCOR装着患者のリハビリ経過の報告はない.これは本邦における心臓移植事情から,他国よりも突出してVAD装着後の移植待機期間が長期化していることが背景にあると考える.そのような意味でも特に遠隔期に合併症を抱える症例においては,症例ごとに注意深く運動指標や適切な運動量の検討をしていくことが重要であり,本邦がその代表格として症例を重ねていく必要があると考える.

心臓移植後のリハビリと社会復帰

心臓移植後のリハビリは,医療者・患者ともに除神経心の特徴を十分に理解して実施する必要がある.心臓移植後は,運動に対して特有の反応をすることが知られている11)

.除神経心の主たる特徴が心拍出量低下(心拍応答不全,1回拍出量の減少,収縮障害,拡張障害)である.また,心拍応答に関連して呼吸応答の遅延を訴える患者も少なくない.移植後急性期のリハビリは前述の移植心の特徴を理解したうえで,通常の開心術後心臓リハビリと同様の指標で実施可能である.本症例は移植前の数カ月間,持続性VTを伴う重症両心不全を呈しており,最低限の移動能力は維持できていたが,るい痩と筋力低下が著明であったため,低負荷の運動からのリハビリ実施が妥当と考えた.HR応答もほとんどないことが予想されたため,運動時目標HRを低めに設定し,運動時に最も変化のある呼吸回を目安に運動負荷を決定したことで,順調に運動耐容能・ADL能力が向上でき,早期の自宅退院を果たすことができた.

移植小児患者においても術後の社会復帰が移植後の重要な目標であり,学童期以降の患児では復学を視野にいれ退院支援が必要である.長期入院を強いられることで学友との交流が途絶した期間も長く,人間関係,学業など不安を抱える患児・家族は少なくない.当院では医療チームと学校,患児・家族で退院前に復学支援に向けたカンファレンスを開催し,学校,患児・家族の不安や疑問を軽減して復学が円滑に進むよう取り組んでいる.本邦において心臓移植は認知の低い医療であり,医療者側から社会への働きかけを行い広く知ってもらうことで,小児心臓移植患者の社会復帰の架け橋ができることを期待している.

結語

小児EXCOR装着後,遠隔期に右心不全を呈し,24カ月後に心臓移植に到達した児のPT経過を報告した.VAD装着後,遠隔期に発生した合併症によりリハビリプログラム,運動負荷の決定に難渋したが,右心不全増悪を招かないよう配慮し,最低限の体力を維持することで,移植後は順調に身体機能回復を得られた.加えて,小児であるがゆえに自己表出が未熟であることで状態の把握が困難であったが,評価データや他己評価を統合し,全身状態の把握に努めた.長期の移植待機期間を乗り越えられるよう,状態に応じたリハビリ実施が重要であることを改めて認識できた症例であった.

謝辞

論文での報告をご了承いただきました患者さん,ご家族に心より感謝申し上げます.また,論文をまとめるにあたり,ご指導いただきました赤坂ファミリークリニック 伊藤明子先生にも深く感謝申し上げます.

利益相反

論文掲載にあたり,著者,共著者ともに公表すべきCOI関係のある企業・組織または団体はない.

引用文献

1) 日本心臓移植ネットワーク:http://www.jsht.jp/registry/japan/ (2023/6/3閲覧)

2) 日本臨床補助人工心臓研究会:https://www.jacvas.com/ (2023/6/3閲覧)

3) Bouabdallaoui N, El-Hamamsy I, Pham M, et al: Aortic regurgitation in patients with a left ventricular assist device: A contemporary review. J Heart Lung Transplant 2018; 37: 1289–1297

4) Truby LK, Reshad GA, Givens RC, et al: Aortic insufficiency during contemporary left ventricular assist device support analysis of the INTERMACS registry. JACC Heart Fail 2018; 6: 951–960

5) Imamura T, Jeevanandam V, Kim G, et al: Optimal hemodynamics during left ventricular assist device support are associated with reduced readmission rates. Circ Heart Fail 2019; 12: e005094

6) Tsiouris A, Paone G, Nemeh HM, et al: Factors determining post-operative readmissions after left ventricular assist device implantation. J Heart Lung Transplant 2014; 33: 1042–1047

7) Rich JD, Gosev I, Patel CB, et al: Evolving Mechanical Support Research Group (EMERG) Investigators: The incidence, risk factors, and outcomes associated with late right-sided heart failure in patients supported with an axial-flow left ventricular assist device. J Heart Lung Transplant 2017; 36: 50–58

8) Hatano M, Jimba T, Fujiwara T, et al: Late-onset right ventricular failure after continuous-flow left ventricular assist device implantation: Case presentation and review of the literature. J Cardiol 2022; 80: 110–115

9) Turner K: Right ventricular failure after left ventricular assist device placement: The beginning of the end or just another challenge? J Cardiothorac Vasc Anesth 2019; 33: 1105–1121

10) 天尾理恵:重症心不全により補助人工心臓を装着した11歳男児の理学療法—プログラム実施上の留意点—.理学療法ジャーナル2007; 41: 165–169

11) Squires RW: Exercise therapy for cardiac transplant recipients. Prog Cardiovasc Dis 2011; 53: 429–436

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