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特定非営利活動法人日本小児循環器学会
Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 39(3): 132-143 (2023)
doi:10.9794/jspccs.39.132

Review

QT延長症候群

1国立病院機構鹿児島医療センター

2医療福祉センターオレンジ学園

発行日:2023年12月1日
HTMLPDFEPUB3

QT延長症候群(LQTS)はイオンチャネルあるいはイオンチャネルに影響を与えるタンパクをコードする遺伝子の遺伝子変異による心筋細胞の再分極異常により,心電図上,QT時間の延長,倒錯型心室頻拍(torsade de pointes)を示し,失神,けいれん,心臓突然死,救命された心停止を主症状とする疾患である.責任遺伝子として17種が報告されているが,見直しが始まっている.主要なタイプはLQT1,LQT2,LQT3の3型である.遺伝子変異が見つかるのは約2,000人に1人,学校心臓検診(心臓検診)でLQTSの診断基準を満たすのは中学1年時で約1,000人に1人である.治療は遺伝型と表現型(症状)との関連に基づいて行われる.生活指導の徹底,薬物療法の改善等によりLQTS, 特に心臓検診で診断されるLQTSの予後は著明に改善されつつある.

Key words: long QT syndrome; screening program; electrocardiogram

はじめに

QT延長症候群(LQTS)はイオンチャネルあるいはイオンチャネルに影響を与えるタンパクをコードする遺伝子の遺伝子変異による心筋細胞の再分極時間の延長により,心電図上,QT間隔の延長,倒錯型心室頻拍(torsade de pointes: TdP)を示し,臨床的には失神,突然死を起こしうる不整脈疾患の中でも注意すべき疾患の一つである1–3)

.同時に,遺伝学的検査,変異の機能解析が進み,遺伝型と表現型(症状)との関連の解明が最も進んだ遺伝性心疾患の一つでもある.学校心臓検診(心臓検診)があり,多くを症状出現前に診断できる日本は,症状出現防止を可能な限り最小にできる唯一の地域である.本稿ではBazett補正{(QT)/(RR)(1/2)}によるQTc値をQTcB,Fridericia補正{(QT)/(RR)(1/3)}によるQTc値をQTcFと記載する.

疫学

歴史4–12)

1957年にJervell & Lange-Nielsenが両側性難聴とQT延長を伴う症候群として4)

,1963年,1964年には聾を伴わないQT延長がRomanoら5),Ward6)によって発表されたことに始まっている.1979年にはpropranololによる治療が導入され7),1982年には乳児突然死症候群の中にLQTSが含まれている可能性があることが発表された8).1995年,1996年には主要な3タイプの責任遺伝子が相次いで発見された9–11).遺伝型と表現型(症状)との関連の解明が進んだ理由はいくつもあると考えられるが,1979年には既にInternational LQTS registryが開始されていたこと12),主要3型のイオンチャネルの分子量がそれほど大きくなく,変異遺伝子を組み込んだチャネルタンパクの機能解析が進んだことも理由にあげられる.QT延長症候群の歴史については文献13が参考になる.

頻度

LQTSの頻度については大体確立されてきた.心電図と遺伝学的検査を組み合わせたイタリアでの大規模studyからLQTSの責任遺伝子変異を持つ頻度は2,000人に1人程度14)

,日本での研究で心電図による三大陸不整脈学会(HRS/EHRA/APHRS)の基準を満たすのは小学生で約3,300人に1人,中学生で約1,000人に1人程度と報告されている15)

遺伝学的検査の診断率は報告によって異なっている.日本の最近の報告では,次世代シークエンサで行うと69%16)

,欧米の論文でも遺伝子変異の判明率は80%程度17)と書いてあるのが多いが,これは対象者が絞られている時と考えられる.イタリアでの44,596人の健康新生児のうち,心電図上QTcB>470 msを示す新生児で責任遺伝子変異を持つのは43%(12人/28人)と報告されている14).一般集団から心電図でQT延長症候群と診断された人に責任遺伝子変異が証明される頻度は50%程度ではないかと推測される.

責任遺伝子変異が判明しなくても,心電図でQT延長と診断できたら,責任遺伝子変異が判明した患児と同様にしっかりフォローしていく必要がある.

病態生理

分類

LQTSには現在17の責任遺伝子が報告されている(Table 1

).ただし,責任遺伝子の見直しが行われており18),最初に発見された3型と最近報告されたCalmodulin,Triadin遺伝子がdefinitiveとされている.他にmoderate,limitedとされているKCNE1KCNJ2CACNA1Cも責任遺伝子として含まれることが多い.同時に,記載方法としてAdlerらはLQT1~LQT3以外は責任遺伝子名での記載,たとえばLQT14ではなくCALM1-LQTSを推奨している18)

Table 1 QT延長症候群のタイプと責任遺伝子
タイプ染色体責任遺伝子蛋白イオン電流Causality18)
LQT111p15.5KCNQ1Kv 7.1 (KVLQT1)IKs (α subunit)Definitive
LQT27q35–36KCNH2Kv 11.1 (HERG)IKr (α subunit)Definitive
LQT33p21–24SCN5ANav 1.5INa (α subunit)Definitive
LQT44q25–27ANK-2Ankyrin-2ICaDisputed
LQT521q22.12KCNE1minKIKs (β subunit)Limited
LQT621q22.12KCNE2MiRP 1IKr (β subunit)Disputed
LQT717q23KCNJ2Kir 2.1IK1 Andersen症候群Limited
LQT812p13.3CACNA1CCav 1.2ICa Timothy症候群Moderate
LQT93p25–25.3CAV3caveolin-3INa (Naチャネルと共発現)Limited
LQT1011q23.3SCN4BNavβINaDisputed
LQT117q21–22AKAP9AKAPsIKsDisputed
LQT123q41SNTA1α1-syntrophinINaDisputed
LQT1311q23.3–24.3KCNJ5Kir 3.4IKAchDisputed
LQT1414q32.11CALM1Calmodulin 1Impaired Ca2+-dependentDefinitive/Strong
LQT152q21CALM2Calmodulin 2inactivationDefinitive/Strong
LQT1619q13.32CALM3Calmodulin 3Definitive/Strong
LQT176q22.31TRDNTriadinDysfunctional Ca2+ handlingDefinitive/Strong
文献18のTable 1,2を改変.

このうち,LQT1,LQT2,LQT3を主要3型と称されることが多く,LQT1,LQT2はKチャネルの異常,LQT3はNaチャネルの異常によって出現する.

イオンチャネルの構造と機能および心電図との関係

イオンチャネルのうち,LQT1およびLQT2の原因遺伝子であるKCNQ1KCNH2は膜を6回貫通する領域をもつタンパクになる(Fig. 1

).膜を貫通する部分を膜貫通領域(transmembrane region)という.5番目と6番目の間はpore regionといい,イオンを選択する部分になる.pore regionの部位に変異があると症状出現のリスクが高くなる.このpore regionを一番内側にして膜貫通領域が並び,同じタンパクの4量体でなりたっている.

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Fig. 1 HERGチャネルタンパク(LQT2)

LQT2の構造(テキスト参照).

主要3型はイオンチャネルの異常と述べたが,心室筋の活動電位とそれぞれのタイプのイオン電流を理解していると心電図がわかりやすい.心室筋の活動電位は第0相(脱分極相),第1相(早期再分極相),第2相(プラトー相),第3相(再分極相),第4相(拡張期)になる(Fig. 2

).内向き電流はCa2+イオンとNaイオン,外向き電流はKイオンになる.LQT1は緩徐活性化遅延整流性Kチャネル(IKs)の機能喪失によるタイプになる.IKsは緩徐な活性化と長い活動電位が特徴であり(Fig. 3a),その機能を喪失した場合,幅広い裾野を持ったT波になることが予測される.LQT2は急速活性化遅延整流性Kチャネル(IKrチャネル)の機能喪失になる(Fig. 3b).活動電位終末部の外向き電流が低下するので,T波がもう一度高くなり,2相性またはnotchを形成することが予想される.本来の電位依存性Naチャネルでは,早い活性化と早い不活化が特徴で,0相以降の遅延電流はほとんど流れないが(Fig. 4a),SCN5Aの機能獲得変異によるLQT3では不活性化の障害により比較的大きな遅延電流(late Na current),持続性電流(persistent current)が出現する(Fig. 4b).活動電位の終了する頃にも流れるので,心電図T波では終了付近に波高が高くなることが予想される.

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Fig. 2 心室筋の活動電位

文献19の図6より転載.

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Fig. 3 Kチャネルの電流

緩徐活性化遅延整流性Kチャネル(IKsチャネル)(a)と急速活性化遅延整流性Kチャネル(IKrチャネル)電流の模式図.文献19の図25,27より転載.

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Fig. 4 電位依存性Naチャネル

本来の電位依存性Naチャネル(a)とLQT3変異型Naチャネル(b)の電流の模式図.文献19の図15,61より転載.

症状

LQTSの症状は,失神,けいれん,心臓突然死,救命された心停止になる.失神を起こす疾患は多種に亘るため,鑑別診断が重要である.

主要3型のそれぞれの頻度はLQT1が50%前後,LQT2が40%前後,LQT3が10%程度になる20)

.主要3型の日本での症状発現頻度はLQT1で28%,LQT2で31%,LQT3で18%になっている20).LQT3の頻度は低いが,症状が出現した場合,重症であることが多いと言われている21)

累積症状出現率を日本のデータ(Fig. 5a

),米国のデータ(Fig. 5b)でみるとLQT1は5~10歳から,LQT2は15~20歳から出現が急上昇することがわかる20, 22).LQT3は15歳頃からなだらかであるが持続的に症状出現が続いている.心臓検診で6歳,12歳で診断した場合,drop outしないように定期的に経過観察していく必要があることを示している.症状出現には性差もある(Fig. 620, 22).図は左からLQT1,LQT2,LQT3,上段が日本,下段が米国になる.性差はLQT2に特徴的で女性は15歳頃から症状が出現し始めることがよくわかる.LQT3ではLQT2ほどではないが,やはり15歳頃から症状出現が多くなる.

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Fig. 5 タイプ別の累積症状出現率

文献20のFigure 1および文献22のFigure 1より転載.

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Fig. 6 累積症状出現率の性差

文献20のFigure 2および文献22のFigure 2より転載.

症状出現の誘因もタイプ別に特徴がある(Fig. 7

23).LQT1は運動,水泳,LQT2は,突然の騒音,感情の変化,LQT3は安静時・睡眠中が多い.しかしLQT2の20%,LQT3の13%は運動中にも起き得る.LQT2の28%は安静時・睡眠中に起きている.またLQT2の症状は分娩後授乳期に多いことが知られている24).出現時刻にも差があることが知られている(Fig. 823).LQT1は午後が最多,午前中に起きた場合でも8時~12時に90%起きている.LQT2の場合は午前中,それも起床直後(6時~8時)に起きることが多くなる25)

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Fig. 7 症状出現の誘因

文献23のFigure 3を改変.

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Fig. 8 症状出現の日内変動

文献23のFigure 2を改変.

検査方法

鑑別診断のために著者らは初診時,胸部X線(2次検診で撮影されていたら中止),心エコー検査,電解質を含めた生化学検査も行っている.

LQTSを診断・経過観察するための検査としては安静時心電図,運動負荷心電図{マスター二階段試験(Master two-step test: MTT),トレッドミル運動負荷試験},ホルター心電図になる.MTTは施行可能な年齢なら全員に行うが,MTTで運動負荷後にQTc値が高値になる場合および運動選手の場合はトレッドミル運動負荷まで行う.ホルター心電図検査を行っている施設は少ないと考えられるが,ホルター心電図も全員に行うことを著者は勧めている.Fig. 9

のTdPが記録されたLQT2の18歳女児の前日の外来時心電図がFig. 10になる.もし,ホルター心電図記録をしていなければ治療は開始されず,なんらかの症状が出現していたかもしれない.ただし,ホルター心電図記録を行う理由はTdPの検出の目的ではなく,夜間睡眠中(おおよそ2:00~4:00),起床前後(6:00~8:00),活動時{午前(10:00~12:00),午後(14:00~16:00),夜(20:00~22:00)}でのQTc値の変化をみるためである25)

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Fig. 9 LQT2女性に記録された倒錯型心室頻拍

中学1年時心臓検診でスクリーニングされ,18歳時の定期検診時のHolter ECGで睡眠中(早朝5:57 a.m.)に倒錯型心室頻拍が記録され,治療が開始された.それまで症状は全く認めていなかった.○印のついたQT/RR間隔は0.62/0.82秒,QTcB/QTcFは0.685/0.662と極めて長くなっている.

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Fig. 10 TdPが記録されたLQT2女性の外来受診時の安静時心電図

Fig. 9と同一の18歳女性.TdPが記録された前日の外来受診時心電図.○印のQT/RR間隔は0.44/1.08秒,QTcB/QTcF値は0.428/0.432と正常範囲である.Fig. 9のようにQTcB/QTcFが0.685/0.662になる,あるいはTdPが出現するとは想像もできない.治療は開始されず,なんらかの症状が出現していたかもしれない.

心電図所見

LQTS score診断に必要な心電図所見

LQTS scoreに出てくるQTc値以外の心電図所見については下記のとおりになる.

1)倒錯型心室頻拍(TdP)

心室期外収縮が3拍以上続いたものを心室頻拍という.QRSの先端が上下に揺れ動いていくような心室頻拍を倒錯型心室頻拍(TdP)という.Fig. 9

は18歳のLQT2女性に記録された倒錯型心室頻拍になる.Fig. 11は生後2か月のCACNA1C-LQTSの女児に記録された倒錯型心室頻拍になる.胎児,新生児,乳児のQT延長症候群の心電図の特徴に,TdPと2 : 1房室ブロックがあり,high riskな所見になる26, 27).2 : 1房室ブロックは新生児期の早い心房レートと著明なQT延長があり,伝導障害が加わった時に起きているという症例報告がある28).日本の胎児期・新生児期・乳児期のLQTSの中ではVT/TdPおよび2 : 1房室ブロックの出現頻度はLQT1で0%,9%,LQT2で91%,51%,LQT3で100%,83%となっており,遺伝型により差があることが知られている26)Fig. 11の2か月の乳児も著明なQT延長,2 : 1房室ブロックの後に倒錯型心室頻拍が出現している.

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Fig. 11 2か月女児に記録された倒錯型心室頻拍

生後2か月時,夜間突然顔面蒼白,意識消失を起こしているのを母親が気づき,背部叩打で回復.その後も頻回に起こるため救急搬送された.搬送時の心電図.○印のついたQT/RR間隔は0.55/0.67秒,QTcB/QTcFは0.672/0.629と,この乳児でも極めて長い.

2)T波交互脈(T wave alternans: TWA)

T波交互脈はT波の極性が1拍ごとに変化している状態である(Fig. 12

).一般的に重症の所見と考える必要がある.貫壁性(すなわち,心外膜,M層,心内膜間)のaction potentialの差が増大した時に起こるとされている29)

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Fig. 12 T波交互脈(T wave alternans: TWA)

Fig. 11の患児の治療経過中に出現した.下向きの矢印,上向きの矢印でわかるように,T波が1拍毎に変化している.この心電図の場合,逆転している.

3)切れ込みのあるT波(notched T wave)

T波が一相性ではなく,途中に切れ込みが入っているものをいう.診断基準に記載があるように3誘導以上にある時に1ポイントとする.

タイプ別の心電図所見

本稿134頁「イオンチャネルの構造と機能および心電図との関係」にも記載したが,主要3型の特徴的な心電図をFig. 13

に示した.緩徐活性化のIKsの障害されたLQT1では幅広い裾野をもつT波(broad based T wave)になる(Fig. 13a).急速活性化のIKrチャネルの障害されたLQT2では二峰性T波(bifid T wave)あるいは切れ込みのあるT波(notched T wave)が特徴である(Fig. 13b).切れ込みの部分は胸部誘導で垂線を引くと一致することがわかる.Naチャネルの機能亢進のLQT3では,遅延電流が特に終了付近で目立つので,遅く出現するT波(late appearance T wave)になる(Fig. 13c).

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Fig. 13 LQT1, LQT2, LQT3の心電図

(a) LQT1の心電図.18歳男子(治療前).broad based T wave(幅広いT波)を呈している.○印の心拍のQTcF=0.517,QTcB=0.506.(b) LQT2の心電図.12歳男子(治療前).bifid T wave(二峰性T波)あるいはnotched T wave(切れ込みのあるT波)が特徴である.切れ込みの部分は胸部誘導で垂線を引くと一致することがわかる.○印の心拍のQTcF=0.512,QTcB=0.546.(c) LQT3の心電図.2か月男児(治療中).late appearance (onset) T wave(遅く出現するT波)が特徴である.○印の心拍のQTcF=0.434,QTcB=0.491.

ただし,notched T waveを呈するのはLQT2だけではないことも覚えておく必要がある.notched T waveはLQTSのSchwartz score(Table 2

)に入っており,Table 2の原型に近いものは1993年に発表されているので,責任遺伝子がわかる1995年以前からLQTSの特徴と捉えられていたと考えられる.

Table 2 LQTSスコア(Schwartz score)
ポイントポイント
1. 心電図所見2. 臨床症状
A. QTc値(Bazett法補正)A. 失神
≧480 msec1/23ストレス時2
460–470 msec1/22非ストレス時1
450 msec1/2 (in males)1B. 先天性聾0.5
B. 運動負荷後4分QTc値≥480 msec1/213. 家族歴
C. 倒錯型心室頻拍2A. LQTSの家族歴1
D. 交互性T波1B. 30歳未満の突然死0.5
E. 切れ込みのあるT波(3誘導以上)1
F. 年齢不相応の徐脈1
≧3.5点;high probability of LQTS(確定例),1.5–3 points; intermediate probability of LQTS(疑い例),≦1 point; low probability of LQTS(否定的).

診断

1)QT間隔の測定法

QT間隔の測定にはV5誘導かII誘導を用いる.QT間隔を測定する場合,標準12誘導の中でQT間隔が一番長い誘導を用いることになるが,一番長い誘導は小学1年生,中学1年生ではV4かV5誘導,高校1年生ではV3かV4誘導になる.ただ高校生でもV5誘導はV3,V4誘導とそれほど変わらず,U波が入りにくいV5誘導を選ぶことになる30)

.胸部誘導で測定できない場合は,V3~V6誘導の次に長いのがII誘導になるのでII誘導を選ぶ30)

QT間隔の測定法には接線法と微分法がある.マニュアル測定の時は接線法を用いる.自動機器では微分法を用いていることが多い.T波下降脚の最も急峻な部分に接線を引き,この線と基線との交点をT endとする.基線は活動電位の静止膜電位に相当する部分,T波終了部からP波開始直前までの部分になる.臨床的にはP波の開始直前の点と次心拍のP波の開始直前の点を結んだ線とする.RR間隔の変化の少ない連続3心拍で測定し,3心拍の平均値を使用する.微分法ではT波が最終的に基線に戻る点をT endとしているので,微分法の方が若干長くなる.補正式に用いるRR間隔は先行RRとする.臨床では,心電図に示されたQT間隔を使わずに,接線法で測定することが重要である.

2)心臓検診での抽出基準

Bazett補正は高心拍数帯では過剰補正することが知られている31)

.小・中学生では心拍数が高値であることが多い.心臓検診1次検診でのQT延長抽出基準はFridericia補正を用い,小学校1年生男女0.43,中学1年生男女0.44,高校1年生男子/女子0.44/0.45とする32)

3)診断基準

LQTSの診断基準は下記の(1)~(3)のいずれかを満たす時とする33)

.(4)は疑い例とする.

  1. (1) LQTSスコア(Schwartz score)が3.5点以上(二次性QT延長を起こす理由がないこと)
  2. (2) LQTS責任遺伝子の変異の証明
  3. (3) 繰り返し記録された12誘導心電図でのBazett補正QTc値が500 ms以上(二次性QT延長を起こす理由がないこと)
  4. (4) 原因不明の失神を起こした患者でQTc値が480–499 ms(二次性QT延長を起こす理由がなく,LQTS責任遺伝子変異がないこと)

LQTSスコア(Schwartz score)はTable 2

のとおりである1).心電図所見,臨床症状からなっており,それぞれにポイントがついている.ポイントの合計点が≧3.5点をhigh probability(確定例),1.5–3 pointsをintermediate probability(疑い例),≦1 pointをlow probability(否定的)と判断する.

4)診断後のアルゴリズム

心臓検診抽出,症状出現,家族検診,偶然見つかった心電図所見などで受診した場合,アルゴリズムに基づいて診断・治療を行っていく(Fig. 14

).

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Fig. 14 診断後のアルゴリズム

治療

生活管理,薬物治療,非薬物治療に分けられる1, 3, 34–36)

1)生活管理

初診時に,心電図上のQT延長,QT延長症候群についての説明,生活指導,治療開始基準等について十分な説明をしておくことがその後の良好な患者・医師関係を築くもとになると思われる.

水泳時・激しい運動時の注意,QT延長作用を持つ薬物の服用禁止等が重要になる.水泳は厳重な監視下で行うか,禁止する.激しい運動は一人で行わない,救急救命のできる指導者の下で行う等の指導を行う,競争的スポーツをする場合,体外式除細動器(AED)のある場所で行うようお願いする.病院受診時には服薬禁止薬リストを提示するよう指導する.服薬禁止薬リストは初診時に渡しておく.LQT2では音刺激で症状を誘発するので,目覚まし時計や電話を近くに置かないようにする.

遺伝学的検査によるタイプと変異部位の決定は治療方針,予後の推定に役立つことが多いので,必要に応じて検査を行う.

2)TdP発生時の急性期治療

TdPは自然停止する場合と心室細動に移行する場合がある.心室細動に移行する場合は電気的除細動が必要である.TdPの停止と再発予防には硫酸マグネシウムの点滴静注が有効である34, 35, 37, 38)

.β遮断剤(プロプラノロール),抗不整脈剤(リドカイン,メキシレチン)が有効な場合がある35)

3)薬物治療

(1)治療開始基準

LQTSと診断され,症状の既往/出現がある場合あるいは心室頻拍・心室細動が確認された場合は薬物療法を開始する33)

.無症状の場合,ガイドラインを参照することになるが,2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン35)ではQTcB≥470 msの無症候症例に対するβ遮断薬を推奨クラスIになっている(Fig. 15).これは三大陸不整脈学会が推奨したガイドライン33)に準拠していると思われる.Minds{日本医療機能評価機構医療情報サービス事業(Medical Information Network Distribution Service)}の推奨レベルではGrade Bに1ランク下げてある.家族歴もなく,無症候例が数多く抽出される日本においては,この治療開始基準は低すぎると感じている.実際,日本ではβ遮断剤の投与率が低いことが報告されているが39),家族歴もなく,無症状例が多く抽出される心臓検診抽出例への治療開始基準を確立する必要がある25)

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Fig. 15 先天性LQTSに対するβ遮断薬の推奨とエビデンスレベル

(2)治療薬の選択

β遮断剤が基本になる.β遮断剤の中ではβ非選択性のプロプラノロール,ナドロールの有効性が高いという報告が多い3, 24)

.特にLQT2にはナドロールが有効とされている.ナドロールでのQTc値の改善が思わしくない場合はメキシレチンを使用する40).LQT3の場合はメキシレチンを選択する.β遮断剤は目的量で開始すると血圧下降,気分不良等で服薬拒否にあうことがある.メキシレチンでは消化器症状(悪心,食欲不振,胃・腹部不快感,等),精神神経系(振戦,めまい,しびれ感,等)を伴うことがある.したがって,時間的余裕がある場合,少量(1/4量程度)で開始し,漸増して患児にあった量を決定する.新生児期,乳児期のLQTSにはLQT2,LQT3が多いので26),β遮断剤(プロプラノロール)とメキシレチンが併用されることが多い.

(3)使用量

実際の使用量は下記のとおりである.硫酸マグネシウムについては文献によりばらつきがある.

  • 硫酸マグネシウム3–12 mg/kg,1–2分間で静注37)
    硫酸マグネシウム10–20 mg/kg,1–2分間で静注38)
  • プロプラノロール2 mg/kg/day,適宜増減(1–3 mg/kg/day38))1日3~4回に分けて使用
  • ナドロール1 mg/kg/day,適宜増減(0.5–2.5 mg/kg/day38))1日1回(成人量30–60 mg/day)
  • メキシレチン5 mg/kg/day,適宜増減(5–15 mg/kg/day38))1日3回に分けて使用(成人量300–450 mg/day)

ナドロールは1日1回の投与となっているが,睡眠中,起床前後にQTc値が高い場合は朝・夕(夜)の1日2回投与にしている.反対にメキシレチンは1日3回食後分服41)

になっているが,半減期は約10時間であり41),昼間の服薬を忘れやすい患児には朝,夕食後の1日2回投与にしている.

4)非薬物療法

ペースメーカー,左心臓交感神経切除術,植込み型除細動器がある.不整脈非薬物治療ガイドライン31)

等を参考にする.非薬物療法を行うときは専門家に相談する.

左心臓交感神経切除術は日本ではまだLQTSに対する保険適応がなく普及していない治療であるが,欧米では既に一定の評価を受けている42)

.薬物療法で症状出現を抑えきれない場合,種々の理由で薬物を服用できない場合の治療法になる.

おわりに

LQTSは失神,突然死を起こしうる不整脈疾患の中でも注意すべき疾患の一つであることには変わりないが,適切な生活指導,薬物治療により,特に心臓検診で抽出された場合は症状出現を可能な限り低くすることが可能な疾患になっている25)

.初診時に適切な説明と指導を行うことができ,患児・家族がそれを受け入れてくれるなら症状出現予防が可能と考えている25)

利益相反

本稿について,開示すべき利益相反はありません.

付記

本稿は,日本小児循環器学会学術集会教育セミナー(2022年7月23日(土))の講演をもとに執筆した.

引用文献

1) Schwartz PJ, Crotti L, Insolia R: Long QT syndrome: From genetics to management. Circ Arrhythm Electrophysiol 2012; 5: 868–877

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