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特定非営利活動法人日本小児循環器学会 Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery
Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 39(3): 126-131 (2023)
doi:10.9794/jspccs.39.126

ReviewReview

バルーン弁形成術・血管形成術Balloon Valvuloplasty and Angioplasty

埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科Department of Pediatric Cardiology, Saitama Medical University International Medical Center ◇ Saitama, Japan

発行日:2023年12月1日Published: December 1, 2023
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小児の先天性心疾患に対するバルーン弁形成術および血管形成術は,現在では心臓カテーテル治療の中で最も確立された治療となっている.なかでも,バルーン肺動脈弁形成術,バルーン肺動脈形成術,およびバルーン大動脈弁形成術は,臨床現場において特に治療頻度が高い手技である.この総説では,まずバルーンカテーテルの性質およびバルーンカテーテルの基本的操作につき説明する.これらは,治療対象となる病変部位にかかわらず,術者が知っておくべき共通事項となる.次いで肺動脈弁,肺動脈,大動脈弁,シャント術後狭窄に対するバルーン形成術について概説する.これら治療対象となる部位により,治療適応,選択すべきバルーンの種類,適切なバルーンサイズ,バルーン拡張圧,バルーンの拡張方法が異なる.有効かつ安全なバルーン形成術を行ううえで,これら治療対象部位による違いを押さえておくことが重要である.

In cardiac catheterization therapy, balloon valvuloplasty and angioplasty are currently the most established treatments for congenital heart diseases in pediatric patients. Balloon pulmonary valve valvuloplasty, balloon pulmonary angioplasty, and balloon aortic valvuloplasty are common procedures in clinical practice. This review first explains the characteristics of the balloon catheter and the fundamental techniques for its use. These are essential pieces of information for the operator regardless of the lesion. Subsequently, the review presents an overview of interventional procedures for the pulmonary valve, pulmonary artery, aortic valve, and postoperative shunt stenosis. Depending on the targeted treatment site, the indications, types of balloons to be selected, appropriate balloon size, balloon inflation pressure, and balloon inflation methods vary. Thus, understanding these differences based on the targeted treatment site is crucial for effective and safe balloon valvuloplasty and angioplasty procedures.

Key words: balloon valvuloplasty; balloon angioplasty; balloon pulmonary valvuloplasty; balloon pulmonary angioplasty; balloon aortic valvuloplasty

はじめに

小児の先天性心疾患に対するバルーン弁形成術および血管形成術は,1982年のKanらの肺動脈弁に対するバルーン形成術の報告に始まり1),その翌年にはLockらによる肺動脈に対するバルーン形成術の有効性が報告されて以降,約40年の歴史を経て現在では心臓カテーテル治療の中で最も確立された治療となっている.対象となる部位も,肺動脈弁・大動脈弁などの半月弁,肺動脈・大動脈・大静脈などの大血管,さらにはシャント術後の狭窄病変や導管狭窄など,多岐にわたっている.

本邦においては,小児の先天性心疾患に対するバルーン形成術の適応・方法について2つのガイドライン,すなわち日本小児循環器学会とJapan Pediatric Interventional Cardiology(JPIC)学会が作成した「先天性および小児期発症心疾患に対するカテーテル治療の適応ガイドライン」2)および,日本循環器学会や日本心臓病学会など複数の学会が共同で作成した「先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(Structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン」3)が示されている.本項では,まず先天性心疾患に対するバルーン形成術の基本となるバルーンカテーテルの性質および,バルーンカテーテルの基本的操作につき説明する.これらは,治療対象となる病変部位にかかわらず,術者が知っておくべき共通事項であり,安全かつ有効なバルーン形成術を行ううえで是非押さえておきたいポイントである.次いで,前述のガイドラインや文献から,特に治療頻度の多いバルーン肺動脈弁形成術,バルーン肺動脈形成術,バルーン大動脈弁形成術,およびシャント術後狭窄に対するバルーン形成術について概説する.これらの手技は,バルーン形成術として全ての手技に共通する点がある一方で,それぞれの治療手技に応じて注意すべき特有のポイントがある.カテーテル治療を行う術者は,これら全ての手技に習熟する必要がある.それ以外の手技については,紙面の都合上割愛するが,成書があるためそちらを参考されたい.

バルーンカテーテルの性質

小児のバルーン形成術で用いられるバルーンは,そのコンプライアンスから大きく“Semi-compliant”と“Non-compliant”に分けられる.Semi-compliantバルーンは,比較的柔軟な素材でできており,加圧に伴いバルーン径が変化する.概ね通常耐圧~高耐圧に対応しており,Non-compliantバルーンと比較し血管損傷のリスクも低い.一方で,硬い病変においては狭窄が解除しきれず,病変部前後のバルーンが過拡張してdog-bone様形態を呈する場合がある.Semi-compliantバルーンは,主に弁形成術や一部の血管形成術で用いられる.一方,Non-compliantバルーンは,Semi-compliantバルーンよりも硬い素材でできており,Semi-compliantバルーンと比較して狭窄病変の拡張に優れるが,標的血管への追従性はやや劣る.概ね高耐圧~超高耐圧に対応しており,拡張の際にSemi-compliantバルーンよりも均等にバルーンが拡張されるため,dog-bone様形態になりにくく,そのため高度な狭窄病変や石灰化病変の拡張に用いられることが多い.これらのバルーン特性から,臨床現場ではそれぞれ弁拡張用のバルーン,血管拡張用のバルーンが各メーカーから出ており,適応に応じて使い分けが行われている.

バルーンの耐圧は,素材の違いからそれぞれ通常耐圧(6気圧以下),高耐圧(6~15気圧),超高耐圧(15気圧以上)に分けられる.それぞれのバルーンには,メーカーにより推奨拡張圧(Nominal pressure: NP)と最大拡張圧(Rated burst pressure: RBP)が定められている.RBPは,バルーンが破裂することなく安全に拡張できる限界圧とメーカーが判断しているものである.そのため,バルーン拡張の際にはあらかじめRBPを確認し,これを超えて加圧しないよう留意する必要がある.

バルーン操作

バルーンカテーテルを標的部位に到達させるためには,ガイドワイヤーを使用する必要がある.バルーンカテーテルには構造上の違いにより,カテーテルの全長にわたりガイドワイヤーを通すover the wire typeと,カテーテルの先端部分にのみガイドワイヤーを通すrapid exchange type(monorail typeとも呼ぶ)がある.Over the wire typeの場合,バルーンの支持に優れ,カテーテルを留置したままワイヤーの入れ替えが可能である.また,カテーテルを挿入する際の追従性にも優れる.一方,rapid exchange typeは,その名のとおり短いワイヤーで速やかなカテーテルの入れ替えが可能である.ただし,追従性という点ではover the wire typeと比較しやや難がある.ガイドワイヤーにはそれぞれサイズがあり,0.014インチ,0.018インチ,0.035インチなどと記載される.バルーン形成術を行う際には,それぞれのバルーンサイズに適合するワイヤーサイズを選択する必要がある.例えば,0.014インチ対応のバルーンであれば,0.035インチのワイヤーにカテーテルを通すことはできない.反対に,0.035インチ対応のバルーンであれば,0.014インチや0.018インチのワイヤーでは十分にバルーンを保持することができない.そのため,使用するバルーンに適合するワイヤーサイズを事前に確認し準備しておく必要がある.

バルーンのinflationとdeflationには,インデフレーターを用いる.手動によってもinflationやdeflationの操作は可能だが,適切なバルーン拡張圧をかけるためにもインデフレーターの使用が勧められる.これは,治療効果および安全性の面からも重要である.特に,前述のRBPを超えない圧で十分な拡張を行うためにはインデフレーターの使用は必須である.インデフレーターは,十分にエア抜きを行い,生理食塩水で希釈した造影剤で満たす.エア抜きの際には,まずインデフレーターと三方活栓をバルーンポートに接続し,三方活栓に生理食塩水で希釈した造影剤を入れたシリンジを接続する.インデフレーターを引いて造影剤をシリンジからインデフレーター内に引き込む.インデフレーターを陰圧にした状態で三方活栓を開放/閉鎖させ,バルーンシステム内にあるエアをインデフレーター内に引き込む.その後,インデフレーターの陰圧を解除しエアをシリンジ内に入れ,シリンジを外してエアを抜く.この操作を数回繰り返し,バルーンシステム内から十分にエア抜きされたことを確認する.また,造影剤の希釈は,使用するバルーンのサイズにもよるが概ね2~4倍希釈で行うことが多い4)

バルーン肺動脈弁形成術(PTPV)

先天性肺動脈弁狭窄症の多くはドーム状の肺動脈弁であり,弁尖が癒合している5).これらの多くはバルーン肺動脈弁形成術(PTPV)が有効であるが,10~20%の頻度で認める異形成肺動脈弁や狭小肺動脈弁においては,その有効性は低くなる.異形成肺動脈弁は,Noonan症候群に合併することが多い.

狭窄の重症度は,右室収縮期圧から軽症(50 mmHg未満),中等症(50 mmHg~体血圧未満),重症(体血圧以上)に分けられる3).ガイドライン上でのPTPVの適応は,肺動脈弁前後で40 mmHg以上の圧較差を認める肺動脈弁狭窄とされている2, 3).また,右室機能障害を有する臨床的に明らかな肺動脈弁狭窄も適応となる.

PTPVでは,通常耐圧のバルーンが選択される.バルーン径の選択については,従来は肺動脈弁輪径に対し140~150%の径が選択されていたが,弁輪損傷および右室流出路損傷予防の観点から,現在は肺動脈弁輪径に対し120%程度の径が推奨されている4)

PTPVおよび,後述するバルーン肺動脈形成術に共通する注意点として,バルーンカテーテルによる三尖弁腱索の損傷がある.これは,肺動脈弁形成/肺動脈形成後にバルーンをdeflateして抜去する際に,ガイドワイヤーが三尖弁腱索の間隙を通っていることによりバルーンが三尖弁腱索を損傷する合併症である.これを避けるためには,ガイドワイヤーが三尖弁腱索の間隙を通らないようにワイヤー操作を工夫する必要がある.具体的には,肺動脈にアプローチする際にはバルーン付きのカテーテルを用いることが推奨される.これにより,ワイヤーが三尖弁腱索の間隙を通過することなく肺動脈へのアプローチが可能となる.当院でも,ガイドワイヤーを肺動脈に進める場合には必ずバルーン付きのカテーテルを使用している.

シングルバルーン法によるPTPVでは,inflation中は肺動脈血流を完全に遮断することになるため,バルーンのinflationとdeflationの操作は可能な限り短時間で行う必要がある.Inflationにより狭窄が消失したら,速やかにdeflationを行う.Deflationに要する時間は,バルーンのサイズや造影剤の濃度によっても影響される.また,手技中の血圧の変化を観血的動脈圧モニタリングで評価することが推奨されている.なお当院では,治療効果を確実にするため,狭窄消失後にさらに1回の追加拡張を行っている.

Fig. 1に先天性肺動脈弁狭窄症に対しPTPVを行った8か月男児例を示す.弁尖はドーム状となっており,弁輪径は9.1 mmであった.径12 mmのバルーンをNPで拡張し,狭窄の消失を確認した.PTPV後,右室–肺動脈圧較差は42 mmHgから25 mmHgに改善した.

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Fig. 1 An 8-month-old male infant with pulmonary valve stenosis

(a) The pulmonary valve appears dome-shaped. (b) Percutaneous pulmonary valvuloplasty using standard pressure balloon (12 mm). The waist is no longer present. (c) Right ventricular angiography after percutaneous pulmonary valvuloplasty. The pressure gradient between the right ventricle and pulmonary artery has improved from 42 mmHg to 25 mmHg.

肺動脈弁輪径が大きい症例(20 mm以上)では,ダブルバルーン法を用いる6).バルーンサイズの選択については,Raoの換算式を簡略化したNarangの式:0.82×(D1+D2)(D1,D2は2つのバルーン径)が臨床の現場においてしばしば用いられる7).ダブルバルーン法の利点として,大きなシングルバルーンと比較し小さなシースサイズで済むこと,inflation中に完全には肺血流を途絶させないため,徐脈や血圧低下をきたしにくいこと,などが挙げられる.

バルーン肺動脈形成術

肺動脈狭窄の多くは,Fallot四徴症など他の先天性心疾患に合併することが多い.特に,術後の瘢痕性肺動脈狭窄は実臨床の場においてしばしば遭遇する病態である.一方,先天性の末梢性肺動脈狭窄はAlagille症候群や先天性風疹症候群,Williams症候群,Noonan症候群,Ehlers-Danlos症候群との合併が知られている8).狭窄部位は,左右肺動脈分岐部から末梢性肺動脈狭窄まで様々である.

肺動脈狭窄の機序として,大きく3つの病態が挙げられる.すなわち,①:術後の瘢痕性狭窄,②:血管壁の形成異常による組織学的狭窄,③:周辺組織からの圧排ないし肺動脈の屈曲である.これら病態の違いにより,バルーン形成術の方法や有効性も異なる.

肺動脈近位部の狭窄においては,右室収縮期圧/左室収縮期(または大動脈)圧≧2/3の場合にバルーン形成術の適応となる3).末梢性肺動脈狭窄においては,狭窄部前後の圧較差15~20 mmHg以上ないし,肺血流シンチグラフィでの患側/健側比0.5未満が適応となる3).ただし,両方向Glenn手術後やFontan型手術後など圧較差による肺動脈狭窄の判断が困難な症例においては,造影での肺血管形態も参考に適応を決定する必要がある.

術後の瘢痕性狭窄に対するバルーン肺動脈形成術においては,高耐圧ないし超高耐圧バルーンが使用されることが多い.バルーン径は,最狭窄部径の300~350%で参照血管径の150%を超えないこととされているが8),病変により狭窄率が異なることから,当院では主に参照血管径≦150%を指標にバルーン径を決定している.また,超高耐圧バルーンを使用する際には,最狭窄部径の300~350%は過大であり,合併症予防の観点から200~250%程度にとどめたほうがよいと思われる.未治療の末梢性肺動脈狭窄に対するバルーン肺動脈形成術においては,最狭窄部径の300%を超えず,かつ参照血管径の110~115%を超えないようにする必要がある9).バルーン肺動脈形成術の際には,バルーンを遠位側から近位側に向かってずらしながら数回にわたって拡張する.Inflationの際は,前述のPTPVと異なりバルーン肺動脈形成術では対側への血流が保たれていることから,血流が途絶するリスクは低い.拡張後,ガイドワイヤーは残してover the wireで操作を行う.ガイドワイヤーをいったん抜去して病変部を再度ワイヤーで探るという操作は,バルーン拡張後の病変部を損傷するリスクを高めるため厳に慎むべきである.バルーン肺動脈形成術後,最狭窄部径の50%以上の拡張,または圧較差の50%以上の低下を以て成功と判断される3).手技の成功率は,概ね70~80%とされているが,各種症候群における末梢性肺動脈狭窄では50%前後と低くなる.

Fig. 2にファロー四徴症術後に左肺動脈狭窄をきたした1歳女児例を示す.最狭窄部径3.5 mm,参照血管径6.1 mmの左肺動脈狭窄に対し,径9 mmの超高耐圧バルーンによるバルーン肺動脈形成術を行った.バルーン肺動脈形成術後の造影では,左肺動脈狭窄の解除が確認された.

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Fig. 2 A 1-year-old female infant with left pulmonary artery stenosis following repair of Tetralogy of Fallot

(a) Severe stenosis is observed in the proximal portion of the left pulmonary artery. The diameter of the stenotic site was 3.5 mm, and the diameter of the distal left pulmonary artery was 6.1 mm. (b) Pulmonary artery angioplasty using an ultra-high-pressure balloon (9 mm). The disappearance of the waist was observed. (c) Pulmonary artery angiography after pulmonary artery angioplasty. The stenosis in the proximal portion of the left pulmonary artery has improved.

バルーン大動脈弁形成術(PTAV/BAV)

先天性大動脈弁狭窄に対するバルーン大動脈弁形成術(PTAV)は1983年のLababidiの報告に始まった.PTAVは,外科手術と比較し治療成績に遜色なく,また低侵襲であることから,現在は先天性大動脈弁狭窄に対する第一選択となってきている.

先天性大動脈弁狭窄の治療適応は,心エコー図検査での左室–上行大動脈の最大圧較差70 mmHg以上,ないし心臓カテーテル検査での左室–上行大動脈の最大圧較差(peak to peak)50 mmHg以上で,大動脈弁逆流が軽度にとどまるものとされている2, 3).アクセスルートは,乳児期以降であれば大腿動脈アプローチで対応できるが,乳児期までの症例は右総頸動脈アプローチがしばしば用いられる.総頸動脈アプローチでは,カテーテルが直線的となることからガイドワイヤーの左室への挿入が容易になること,大腿動脈への太いシース挿入を回避できることなどの利点がある.大動脈弁を通した左室へのアプローチには,右Judkinsカテーテルが用いられることが多い.

PTAVにおけるバルーン径は,大動脈弁輪径の90~100%のものを選択する10).バルーン径が大動脈弁輪径の100%を超えると,大動脈弁逆流のリスクが高くなるため,避けるべきである.使用するバルーンは,PTPVと同様通常耐圧のバルーンが選択される.バルーンをinflationする際に,左室の収縮によりバルーン位置が弁位で固定されずにずれてしまうことがある.その際には,右室のrapid pacingないしアデノシン三リン酸の急速静注を用いる11).当院では,心機能が低下している症例を除いてPTAVの際には必ず右室のrapid pacingを併用しながら手技を行うようにしている.安全かつ有効な手技を行ううえで,重要な処置であると考えている.PTPVと同様に,PTAVにおいてもバルーン拡張中は左室からの血流は一時的に途絶される.そのため,inflationとdeflationは速やかに行う必要がある.Fig. 3に先天性大動脈弁狭窄症の5歳男児例を示す.弁輪径13.5 mmの大動脈弁に対し,90%のサイズにあたる12 mmのバルーンをNPで拡張している.この時,心拍動に伴うバルーンの移動を最小限にするため,150 bpmで右室のrapid pacingを併用している(Fig. 3b).拡張後,左室–大動脈圧較差は82 mmHgから47 mmHgに改善している.

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Fig. 3 A 5-year-old male with aortic valve stenosis

(a) Left ventricular angiography prior to percutaneous aortic valve intervention. Aortic valve diameter is 13.5 mm. (b) Percutaneous aortic valvuloplasty using a normal pressure balloon (12 mm), performed under the assistance of rapid pacing at a rate of 150 beats per minute. The disappearance of the waist was observed. (c) Left ventricular angiography after percutaneous aortic valvuloplasty. Improvement in the pressure gradient between the left ventricle and aorta from 82 mmHg to 47 mmHg was observed.

弁輪径の大きな症例に対しては,ダブルバルーン法を用いる場合がある.PTPVと同様,シースサイズを小さくできること,拡張中に左室からの血流が途絶しないなどの利点がある.バルーン径の選択は,前述したNarangの式7)を用いて行う.

シャント術後狭窄に対するバルーン形成術

Blalock–Taussig(BT)シャントをはじめとする体肺動脈シャント術後のシャント部狭窄は,著明な低酸素血症の出現とともに,時に致命的となりうる.このようなシャント部狭窄に対しては,バルーン形成術による狭窄解除が行われる.ここでは,臨床の場でも頻度の高い人工血管を用いたmodified BTシャント術後のシャント部狭窄に対するバルーン形成術について概説する.

シャント部狭窄に対するバルーン形成術は,1980年代から行われるようになり12),現在はシャント部狭窄に対する治療の第一選択である.シャント部狭窄は,人工血管内の屈曲性狭窄や血栓性狭窄により生じる場合もあるが,多くは肺動脈ないし大動脈と人工血管との吻合部狭窄である.そのため,バルーン形成術を行う際には人工血管の遠位部(肺動脈側)から近位部(大動脈側)にかけて順次複数回の拡張を行うことが必要である.

シャント部狭窄に対するバルーン形成術の際に,バルーン径は人工血管のサイズと同等ないしは+1 mm程度までとすることが望ましい.人工血管のサイズに対し過度に大きなバルーン径による拡張を行うと,吻合部付近の仮性瘤形成や出血の原因となる.そのため,手技の前に人工血管のサイズを手術記録などから確認しておく必要がある.バルーン形成術は,肺動脈と人工血管の吻合部にあたる遠位側から開始する.肺血流がシャント血流に依存している場合,バルーンが人工血管内を完全に閉塞している間は肺血流が途絶するため,バルーンのinflationとdeflationは速やかに行う.遠位側からバルーン拡張を開始し,バルーンをdeflateしたら少し手前にバルーンを引いて再度拡張を行う.この操作を繰り返し,最終的に大動脈と人工血管の吻合部の拡張まで行い手技を終了する.

まとめ

バルーン肺動脈弁形成術,バルーン肺動脈形成術,バルーン大動脈弁形成術,シャント術後狭窄に対するバルーン形成術を中心に,小児の先天性心疾患におけるバルーン弁形成術・血管形成術について概説した.いずれの治療も実施頻度が高く,先天性心疾患のカテーテル治療において重要な比重を占める.そして,これらの治療を行うにあたり安全性と有効性を十分に吟味して臨むことの重要性は,論を待たない.本稿が,治療を行う際の参考になれば幸いである.

利益相反

本稿について,開示すべき利益相反はありません.

引用文献References

1) Kan JS, White RI Jr., Mitchell SE, et al: Percutaneous balloon valvuloplasty: A new method for treating congenital pulmonary-valve stenosis. N Engl J Med 1982; 307: 540–542

2) 日本小児循環器学会,日本Pediatric Interventional Cardiology学会:先天性および小児期発症心疾患に対するカテーテル治療の適応ガイドライン(2012年).https://jspccs.jp/wp-content/uploads/GLCI2012.pdf

3) 日本循環器学会/日本心臓病学会/日本心臓血管外科学会/日本血管外科学会/日本胸部外科学会合同ガイドライン:先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン(2021年改訂版).https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/03/JCS2021_Sakamoto_Kawamura.pdf

4) Rao PS: Percutaneous balloon pulmonary valvuloplasty: State of the art. Catheter Cardiovasc Interv 2007; 69: 747–763

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