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特定非営利活動法人日本小児循環器学会 Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery
Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 38(1): 61-62 (2022)
doi:10.9794/jspccs.38.61

Editorial CommentEditorial Comment

大動脈縮窄の治療戦略Treatment Strategy of Coarctation of Aorta

岩手医科大学小児科Department of Pediatrics, Iwate Medical University School of Medicine, Iwate, Japan

発行日:2022年2月1日Published: February 1, 2022
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未手術の大動脈縮窄症(COA)に対する治療は本邦では外科治療が標準治療である.低出生体重児など外科手術が困難な症例に対しバルーン拡張術による治療が報告されているが,未手術の単純型COAに対するバルーン拡張術には再狭窄や動脈瘤形成の頻度が高いとされ議論の余地がある.宮本論文1)は極低出生体重児に対する姑息的治療としてのバルーン拡張術について言及しており,COAの管理,治療方針を検討するうえで貴重な報告である.著者も述べているとおり低体重のCOAは施設の経験により治療方針が異なると考えられるが,いずれの治療においても最終的には残存狭窄を残さず,遠隔期の高血圧に関連した合併症を避けることが重要である.本稿では未手術COAに対する治療方法と遠隔期合併症について再考する.

未手術COAに対する外科手術とバルーン拡張術について比較したメタアナリシスでは,外科手術はバルーン拡張術と比べ周術期死亡率や合併症,術後早期での圧較差の残存には有意差はなかったものの,再狭窄の発生率や遠隔期での圧較差の残存が有意に低値であると報告されている2).一方で未熟児など手術リスクが高い症例ではバルーン拡張術やステント留置も検討される.本邦では先天性および小児期発症心疾患に対するカテーテル治療の適応ガイドライン3)では安全にステント留置できる体格(25 kg以上)で成人の大動脈径まで拡大留置できる場合,未手術COAに対するステント留置はクラスIIaの推奨である.新生児期には大腿動脈の血管損傷のリスクが問題となるが.細いシースでは小さいサイズのステントしか使用できないというジレンマがある.海外では未手術COAおよび術後再狭窄の新生児や乳児に対し4Frシースの使用で12 mmまで拡張可能なステントを使用し,短期的には良好な治療効果が得られている4).また本邦でも異型大動脈縮窄の3か月の乳児に対し10 mmのミディアムサイズのステントをリマウントすることにより6Frシースの使用で血管損傷を避けステント留置可能であった症例報告がある5)

COAの術後遠隔期には高血圧に関連した疾患を合併しやすく予後に影響を与える.COA修復後の高血圧に関するシステマティックレビューでは高血圧の平均有病率は47.3%で,標準的な血圧測定に加え24時間血圧を記録した研究のみを対象とした場合,高血圧の発生率は57.8%に上昇した6).一方でCOA術後の血行動態評価と長期予後を検討した報告は数例しかなく詳細も未だに不明な点も多い.COA患者は椎骨動脈の低形成の頻度が高く,脳血流低下を補うために血圧が上昇することとの関連などが示唆されている7).今後,更なる検討が蓄積されることで血行動態評価を指標とした生涯にわたる適切な治療戦略を計画できることを期待する.

注記:本稿は,次の論文のEditorial Commentである.宮本智成,ほか:極低出生体重児の大動脈縮窄症に対して経皮的大動脈バルーン拡張術後に外科治療を行った1例.日小児循環器会誌2022; 38: 54–60

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