Online ISSN: 2187-2988 Print ISSN: 0911-1794
特定非営利活動法人日本小児循環器学会 Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery
Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 37(3): 250 (2021)
doi:10.9794/jspccs.37.250

次世代育成シリーズSeries: Training the Next Generation

私が皆さんにお話しできることHello, Young Guys, This Is What I Really Want to Tell You, The Future Diamonds

自治医科大学とちぎ子ども医療センター・成人先天性心疾患センター小児・先天性心臓血管外科Pediatric and Congenital Cardiovascular Surgery, Jichi Children’s Medical Center Tochigi, Jichi Adult Congenital Heart Center, Jichi Medical University ◇ Tochigi, Japan

発行日:2021年11月1日Published: November 1, 2021
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自分が匠であるかどうか,はなはだ心もとないが卒後40年,自分の志したこの道を歩き,任期終了直前にも術者として大きな手術を担当し(おそらく現役の小児・先天性心臓血管外科医としては最高齢の部類に入るのではと想像しているが),現場に身を置くことができている(賛否の意見はさまざま,多様であることは充分知っているつもり)立場で読者の方々にお伝えできることはないかと考えてみる.本学会誌の編集にも一時期参加させていただき,さまざまな論文を拝見し,査読し,あるいは徐々に後進に指導する立場にもなって感じたことをいろいろと考えてみる.基礎の習得・反復の大切さ,学習の継続などさまざまなことがあるが,なかでもとりわけ強く感じているのは,先天性心疾患に携わるには「まず,絵(図)を描こう」である.自分で術者となる,あるいは助手となる外科医であれ,外科医に患児の手術を託すあるいは自分でカテーテル操作やアブレーションを行う小児科医であれ,先天性心疾患については形態・機能の理解・修復には立体的イメージの構築が不可欠であることは経験を積めば積むほど強く意識される.特に心内reroutingを行う両大血管右室起始や多脾症候群などでは治療成績に直結する.近年発達している軟質素材を用いた3Dモデルの作成は極めて優れた支援ツールと言えるが,この支援をイメージできるかどうか,また実際の術野でさまざまな材料を用い,あるいは手順を組み立て手術を完遂できるかどうかなど,必要な情報や完成した結果について図示できることは極めて知的であり生産的な作業である.心エコー画像の飛躍的進歩によりさまざまな筋性部VSDも描出可能となったがどのように到達し,閉鎖できるか,適切な視野展開ができるか,適切なパッチのサイズは…など「ある」「ない」でなく「どのように」あるのか,「どうすれば」適切な対処が可能となるのか,その図を見ると頭の中,手術に向かう意識などさまざまなことがわかってくる.図を描くことは若手がより短時間で術者となるためのカギと考える.きちんと絵(図)が描ける若手は上達が早い,手術の進行も円滑で,周囲へのストレスも少ない,もちろん結果も良好で合併症も少ない.術前イメージしながら注意点なども想定し,対処を考えているからである.こうした若手にはもっと経験を積ませたい,チームを任せたい,将来を任せたい…と期待が膨らむ.

現場ではさまざまな原石の存在を感じる.それぞれが輝きを増すことを願いながらこれからも応援を続けたいと思う.

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