石川から眺める日本の小児心臓医療Pediatric Cardiac Practice in Japan: How Does It Look Like from a Rural University Hospital?
金沢医科大学Kanazawa Medical University Hospital ◇ Ishikawa, Japan
© 2020 特定非営利活動法人日本小児循環器学会© 2020 Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery
コロナ禍の真っ只中である.本巻が世に出る頃にはどのような状態なのであろうか.この非常事態を金沢という地方都市で迎えた.石川県は人口あたりの感染者数が東京に次いで2番目に多い.感染が蔓延する少し前に県知事が都市部からの観光を誘致するような発言をするなど,危機管理に問題を抱える地方自治体である.当然感染対策も後手後手であり,指定機関である県立,私立病院の先生方の苦労を思うと心苦しいものがある.
私は一昨年まで所属した榊原記念病院より昨年金沢医科大学に赴任した.榊原は現在では小児科医が多く所属し,働き方改革にも確実に対応していたが,こちらのマンパワーたるや散々たるものである.これは本学に限ったことではなく,北陸地方のどこの施設もそうであり,若手医師の地方離れに歯止めがかからず,残された年配の医師を多く含んだ面々は青息吐息のところが多い.
私自身,手術が2年ほど停止して当時小児循環器に携わっていた医師・パラメディカルがほぼ全員いなくなった大学病院で手術の再稼働を行った.そうすると,外科医としてではなく,小児科医の仕事までカバーすることとなる.心臓カテーテル検査を含めた術前検査から手術,そして術後管理とすべて一人でこなした.手術は成人の外科医に助手となってもらい,時には卒後1年目の内科研修医と二人で手術もした.電子カルテからのこまごまとしたオーダーを出すのには流石に閉口したが,榊原では手術に特化して職人化していた頃と比べ,一人の医者に戻ったようで妙に楽しかった.50歳を過ぎて小さな命を診断から治療まですべてこなすという特殊な体験をしてみると,自分がまだまだ知らない,あるいは気づいていないことが沢山あるということがわかった.思えば術後管理も若手医師に任せて帰っていた.朝患者を診察すると状態があまり良くないこともしばしば,でも仕方ないと思っていた.しかし,自分で毎日病院に泊まって細かいケアをしていると患者は夜間でも驚くほど状態が上向きになるものである.今まで若手の指導を怠けていたことを改めて反省した.
こんな風にがむしゃらにやっていると周囲も少しずつ協力してくれるようになる.今では小児科が年間50例以上のペースでカテーテルをこなしてくれるようになった.手術もTGA, HLHSとなんでもくるようにもなった.今から思えば無謀な挑戦であったが,がむしゃらにやっていると何とかなるものである.
これはでき上がった施設では決して経験できないものだと思う.ベテランの外科医の先生方も,たまにはカテーテルでもしてみたらいろいろなことが見えてくるので是非お勧めしたい.
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