集中治療専門医制度における小児循環器領域の課題
東京大学医学部小児科
背景:小児重症例の約半数を占めている小児循環器疾患の集中治療は歴史的に小児循環器医および小児心臓外科医が中心で診療してきた一方で,社会的に集中治療の専門性整備の必要性が増加している.
目的:小児循環器診療における集中治療専門性に関する現状調査・解析を行うことで,集中治療専門性の整備状況を評価し,今後の重要な課題を明確にする.
方法:本研究では2019年10月現在の公的ホームページに掲載されている利用可能の専門医・研修施設・厚生労働省保険算定・人口統計の情報を用いて,全国における①小児科医・小児循環器医の集中治療専門医取得状況・分布,②小児循環器診療施設の集中治療専門研修施設状況,③集中治療室管理料算定数と専門医数の比較を行い,小児循環器領域における集中治療専門性の課題を描出した.
結果:集中治療専門医を有する医師は小児科専門医の0.6%(99/16,545名),小児循環器専門医の1.1% (6/538名)であり,地方21県においていずれも不在であった.小児循環器関連施設(170施設)中,集中治療専門医研修施設認定は56%(96/170名)と低値であり,大学病院・総合病院においては専門医取得困難な環境が推察された.都道府県別の小児年齢の特定集中治療室算定数と集中治療専門医を有する小児科専門医の医師数との比較では都市部に医師が多く,小児特定集中治療室管理料は全国の約20%の普及にとどまるのみであった.
結語:日本の小児循環器領域の集中治療専門診療環境は,専門医診療と診療報酬算定において施設・地域間格差があり,集中治療体制の整備は小児循環器診療の重要な課題と考えられる.
Key words: intensive care; critical care; specialist; pediatric cardiologist; pediatric cardiac surgeon
© 2020 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
小児循環器疾患は集中治療を必要とする小児重症例の約半数を占めている1, 2)
.小児循環器疾患の血行動態の把握には専門的知識が必要であることから,歴史的に術前・術後を含めた小児循環器集中治療は小児循環器医および小児心臓外科医が中心で診療してきた.一方で,日本でも系統的集中治療医学の発展により集中治療の専門性が整備されて,基本診療報酬である特定集中治療室管理料の要件には集中治療専門医が必要とされてきているが,日本のPICU病床は欧米と同等の水準に比べると約7割と依然不足している1)
.このように,今後の小児循環器診療において医療の質および経済的に診療における集中治療専門医の必要性が高くなってきている.
日本における少子高齢化の社会構造により小児人口および就業人口は減少し,同時に小児循環器診療に携わる医師の減少も予測される一方で,医療の進歩による診療の質の向上は社会的要求として増加していく現状となっている.このように,労働人口減少が予測されるなか,働き方改革の社会的要請に応えながら,社会福祉の維持・充実を果たすという矛盾した状況を迎えており,業務効率の具体的対策・将来像の可視化が重症診療に多く携わる小児循環器診療の重要な課題と考えられる.日本専門医機構による公的専門医制度の整備により専門性資格認定の厳格化がすすむなか,小児循環器診療における実態にあった小児循環器診療の集中治療環境の現状評価による分析と対策は,重症を多くとり扱う小児循環器診療の効率化や負荷軽減の対策の道標になると考えられる.
その背景のもと日本の現状では,小児循環器診療の日常診療で集中治療医が介入している状況は一部の大学病院や小児病院のみで,全国的には集中治療専門診療体制は未だに整備が不十分であると推測される.
本論文では,小児循環器診療における集中治療専門性に関する現状調査・解析を行うことで,集中治療専門性の整備状況を評価し,今後の重要な課題を明確にすることである.
対象は2019年10月1日現在で,WEB上で公開されている情報をもとに下記の項目において調査・検討を行った.
2019年10月時点の日本小児科学会HP3)
の専門医名簿16,545名,日本小児循環器学会HP4)
の専門医名簿538名および日本集中治療医学会HP5)
の専門医名簿1,824名を対象とした.集中治療専門医を有する小児科専門医,および集中治療専門医を有する小児循環器専門医を集計し,都道府県別に人口6)
と集中治療医数の比較検討を行った.またJCVSD小児施設に属する心臓血管外科専門医で,かつ,集中治療専門医と重複する医師を調査し,その人数を集計した.
日本小児循環器学会HP4)
に公開されている小児循環器専門研修施設(のべ142施設)および日本心臓血管外科手術データベース機構(Japan Cardiovascular Surgery Database: JCVSD)HP7)
に公開されている小児対象施設(のべ121施設)の計170施設を対象とした.対象施設を「大学病院・総合病院・小児病院」の3つに分類し,小児専門ICU(Pediatric Intensive Care Unit: PICU)の有無,および集中治療研修施設の実態調査を行った.集中治療専門医の取得環境は,日本集中治療医学会HP5)
に公開されている専門医研究施設から情報を得た.集中治療専門医研修施設は,施設単位ではなくユニット単位で認定されており,「術後を含めた重症患者全般を診療する成人中心の“総合ICU”」「救急重症患者全般を診療する“救命ICU”」「小児重症患者を診療する“PICU”」において,各ユニットの集中治療専門医研修施設認定の有無を調査した.総合ICUとPICUは,術後を含めた小児循環器疾患の集中治療が行われるユニット,救命ICUは行われないユニットとした.PICUを有する施設においては認定期間を調査した.
厚生労働省NDBオープンデータ8)
に掲載された第4回NDBオープンデータ,A基本診療料平成29年度(平成29年4月~平成30年3月)の特定入院料_性年齢別算定回数および都道府県別算定回数を資料とした.0歳から14歳を小児年齢とし,新生児特定集中治療室管理料および総合周産期特定集中治療室管理料を除いた,特定集中治療室管理料1~4および小児特定集中治療室管理料を取得した件数を算出・比較検討した.日本における小児人口に対する小児重症数の発生頻度は一定と仮定し,平成30年10月1日の小児年齢における全国平均の集中治療室管理料算定率と小児人口統計6)
から,都道府県別の小児年齢の集中治療室管理料算定数を算出し,集中治療専門医を有する小児科専門医および集中治療専門医を有する小児循環器専門医と都道府県別に比較検討した.また特定集中治療室管理料の重症患者診療の比較対象として,NDBオープンデータを使用して小児年齢と成人年齢の救命救急入院料・ハイケアユニット入院料の件数を算出した.小児における集中治療室管理料算定数の半数を小児循環器疾患と仮定し,年間の小児循環器に必要と考えられる集中治療算定数を算出した.
統計的解析はスピアマン相関分析法を使用し,相関係数の算出および有意差検定をp値0.05を基準として解析した.本研究は医学研究および発表される医学研究論文・演題発表に関する倫理指針1—③の「後方視的な症例検討(症例報告)や人口統計に関する研究では倫理委員会の審議を必要としない」と同等の内容にあたるものであり,倫理審査を必要としなかった.
集中治療専門医1,824名において小児科専門医を有する医師は99名であった.都道府県別小児人口と集中治療専門医を有する小児科専門医の比較では,小児人口あたりの集中治療専門医数は一定の値を示さず,4都府県で1.4以上を示したが,21道府県において1.1名以下,21県において0名であった(Fig. 1).小児循環器専門医538名中,集中治療専門医資格を有する医師は6名(千葉2名,東京・静岡・山梨・大阪各1名),JCVSD小児施設に勤務する心臓外科専門医かつ集中治療専門医を有する医師は2名(北海道・兵庫各1名)であった.
Number of specialists for per 100,000 children. Large variation is found especially in local area and no specialist is there in 21 prefectures.
小児循環器関連施設170施設のPICUの有無,および集中治療専門研修施設認定取得状況を示す(Table 1).大学病院は71施設で,PICUを有する施設が10施設,PICUがない施設61施設であった.集中治療専門医研修施設のうち,総合ICU 54施設・PICU 5施設の計59施設(83%)が認定され,救命ICUのみ認定が5施設,認定のない施設が2施設であった.総合病院は82施設あり,PICUを有する施設が5施設,PICUがない施設77施設であった.集中治療専門医研修施設のうち,総合ICU 24施設・PICU 2施設の計26施設(32%)が認定され,救命ICUのみ認定もしくは認定のない施設が53施設(65%)であった.小児病院17施設はすべてPICUを有し,11施設(65%)で集中治療専門医施設として認定されていた(Table 2).小児病院における集中治療専門医施設認定は2010年以降に増加し,一部の施設では継続できない時期を有する施設もあった.
Hospital count (Total 170) | PICU or no PICU | Authorization as training center for Intensivists specialists | |||
---|---|---|---|---|---|
University hospital | 71 | PICU | 10 | PICU | 5 |
no | 5 | ||||
no PICU | 61 | GICU | 54 | ||
EICU only | 5 | ||||
no | 2 | ||||
General hospital | 82 | PICU | 5 | PICU | 2 |
なし | 3 | ||||
no PICU | 77 | GICU | 24 | ||
EICU only | 12 | ||||
no | 41 | ||||
Pediatric hospital | 17 | PICU | 17 | PICU | 11 |
no | 6 | ||||
no PICU | 0 | ||||
EICU, Emergency Intensive Care Unit; GICU, General Intensive Care Unit; PICU, Pediatirc Intensive Care Unit. |
Children’s Hospital | Currrent authorization | Past authorization |
---|---|---|
National Center for Chilld Health and Development | 1994– | |
Osaka Women’s and Children’s Hospital | 1995– | |
Tokyo Metropolitan Children’s Medical Center | 2012– | |
Nagano Children’s Hospital | 2013– | 2004–2010 |
Miyagi Children’s Hospital | 2014– | 2007–2010 |
Aichi Children’s Health andi Medical Center | 2016– | |
Hyogo Children’s Hospital | 2016– | |
Kanagawa Children’s Medica Center | 2017– | 2006–2011 |
Shizuoka Children’s Hopital CCU | 2017– | |
Okinawa Prefectural Children’s Medical Center | 2017– | |
Saitama Children’s Medical Center | 2018– |
平成29年度の小児(0~14歳)の特定集中治療室管理料算定は57,154件,15歳以上987,709件であり,小児の半数の約28,000~29,000件が1年間の小児循環器疾患における集中治療算定数と推定した(Table 3).救命救急入院料・ハイケアユニット入院料の算定件数は,小児で15,764件,成人で1,733,617件であった.都道府県別の小児年齢の特定集中治療室算定数と集中治療専門医を有する小児科専門医の医師数との比較では,算定数と正の相関を認めたものの(R=0.90 p<0.01),地方と比べ東京・大阪では多くの医師数が認められた(Fig. 2).小児の小児特定集中治療室管理料は8都県9施設で12,286件が算定されており,日本全体の小児年齢の特定集中治療室算定数の21%(12,286件/57,154件)であった.
Management fee for medical insurance | Counts of medical insurance | |||
---|---|---|---|---|
0–14 y | more than 15 y | |||
計 | ||||
Specific management fee | Intensive care 1–4 | 44,868 | 57,154 | 987,709 |
Pediatric intensive care | 12,286 | 0 | ||
Management fee for emergency or high care | 15,764 | 1,733,617 |
安定した全身管理や重症患者の合併症の対応のために,系統的集中治療を習得・実行することは,診療の質が向上し,結果として患者の予後改善に寄与することが期待される.循環器疾患は小児集中治療において臓器別に最も多い疾患群であり,その診療に携わる医師が集中治療専門医の資格を有することは,診療の向上・医学管理料の適正申請・個人の専門性向上といった,有益な環境を提供することにつながると考えられる.さらに専門性を向上することで,診療の役割分担が明確化し,より効率的な診療体制構築につながると推察される.PICU各都道府県の10万人あたりの小児人口に対する集中治療専門医を有する小児科専門医の数は自治体間で大きな差が見られ,比較的小児人口の少ない県の21県で不在であることから,自治体により小児診療における集中治療体制整備が不十分であることが考えられた.集中治療専門医を有するものは小児科専門医の0.6%(99/16,545名)であり,2019年の日本におけるPICU調査報告からすると実際にPICUに勤務する専門医は37名とその一部しか現在勤務していない1)
.また,小児循環器領域で多くの小児循環器医・小児心臓外科医が集中治療の現場で実働しているにもかかわらず,小児循環器専門医の1.1%(6/538名)および小児を専門とする心臓外科医では2名のみといずれも低い値を示しており,小児循環器診療に携わる集中治療医は少なく,実際の診療と資格取得の現状に大きな差があることが判明した.これらのことから,全身管理の質の向上・個人のキャリアアップの面から,小児循環器診療において集中治療専門医が診療に関わる環境を整備し,実際に診療を行っている施設に適切な数を適切に配置することで,自治体間の差を軽減することが重要な課題と考えられる.
集中治療専門医研修において,大学病院では,71施設中10施設がPICUを持つ一方で,大多数の61施設が成人中心の総合ICUで診療されていた.その約9割(54/61施設)は集中治療専門医研修施設であり,約1割(7/61施設)は総合ICUで集中治療専門医の研修施設認定を取得していなかった(救命ICUのみ認定5施設,認定なし2施設).一見,PICUがなくても大学病院では集中治療専門医の取得環境は整っているように見えるが,多くの総合ICUは成人中心の集中治療科・救急科・麻酔科がclosed体制で診療しており,このような状況下で小児循環器診療に携わる医師が集中治療専門医としてのキャリアを積み上げていくことは,実際には難しいと考えられる.PICUは小児循環器診療を行う医師にとって日常の仕事の場であり,集中治療専門医の研修期間として適した環境であると思われるが,10施設あるPICUを有する大学病院において集中治療研修医研修施設は半数のみであった.以上から,大学病院では現実的に小児循環器診療において集中治療専門性取得可能な環境は大多数で整備されておらず,成人集中治療と協力して集中治療専門医取得環境を整備するなどの理解と改善をしながら,小児循環器診療において集中治療の環境を整備していく必要があると考えられる.
総合病院82施設は大学病院に比べてさらに厳しい状況にある.総合病院においてPICUを有する5施設のうち2施設のみが,残りの77施設で成人診療中心の総合ICUの31%のみが集中治療研修医施設であった.これは総合病院では大学病院と大きく異なり,小児循環器診療の約7割が集中治療専門医研修を受けることができない状況を示しており,各病院で解決の方向性があるかどうかを検討する必要があると考えられる.現状ではPICUで施設認定を得ている2施設(2%)のみしか実質に小児循環器診療において集中治療専門医を整備する体制がないこととなり,総合病院では小児循環器診療を行う医師にとって集中治療専門医を整備しがたい状況であると言わざるをえない.
小児病院17施設では小児循環器集中治療はPICUで行われ,小児循環器医・小児心臓外科医が直接集中治療に関わる機会が多いと推察される.小児病院における集中治療専門医研修施設数は2010年以降から増加し,2019年4月時点で11施設(65%)となってきており,各施設でのPICU整備により集中治療専門医の特性を活かした体制づくりが進んできていることが要因の一つと考えられる.一方で3施設において集中治療専門医が不在となり,集中治療専門医研修施設認定が一時的に途絶えた過去があり,各施設において認定維持のための継続した専門医診療体制整備の必要性が考えられた.大学病院・総合病院と合わせたPICU全32施設においては,集中治療研修施設は18施設(56%)であり,残りの14施設において集中治療専門医取得環境を整備することが小児循環器診療の目の前の課題の一つと考えられる.
特定集中治療室管理料の算定件数は,実際に算定された管理料の実績を示しており,集中治療がどれくらい行われたかの一つの尺度と考えられる.日本全国で小児循環器疾患における年間の算定数は28,000~29,000件と1日あたり約80件の算定数であった.この件数は日本全国で年間約7,500件行われている小児先天性心臓手術と比較すると少なく,新生児特定集中治療室管理料による算定不能件数や重症長期化による算定不能件数が計上されていないことにより過小評価となっている可能性が示唆され,今後,小児循環器診療における集中治療室稼働数と管理料の算定の実情調査が必要と考えられた.また小児年齢の算定数は成人の約17分の1(57,154/987,709件)であった一方で,救命救急入院料・ハイケアユニット入院料の小児の算定数は約110分の1(15,764/1,733,617件)であることから,成人では救命救急部門と集中治療部門の両方で重症患者診療が多く行われているが,小児では重症診療は集中治療室が主体で行われていると考えられ,成人と異なる重症診療体制の構築の必要性が示唆された.
都道府県別の小児年齢の特定集中治療室管理料の算定数と集中治療専門医を有する小児科専門医の数との比較では,算定数に比して集中治療医が東京・大阪に多い都市集中傾向があり,算定数の少ない地方においては集中治療医数にばらつきが見られた.また小児重症診療において,小児に特化した小児特定集中治療室管理料は8都県のみ(17%:8/47都道府県)で算定数全体の21%を占めるのみであった.これは,施設基準・第(8)項の「急性期治療中の患者に関する要件」または「転院してきた患者に関する要件」を満たすことができない現状によるもので,日本において小児重症診療体制の整備・普及は一部の施設にしか浸透していないことを示している9)
.これらのことは,小児重症診療において地域差が大きいことを示しており,集中治療専門医・集中治療研修施設の普及だけでなく,診療報酬の施設格差・地域間格差を改善することは,小児重症診療の半数を占める小児循環器診療体制整備において極めて重要な課題と考えられる.
小児循環器診療において集中治療は欠かせない分野であるが,日本において「どのようにして診療体制を構築するのか?」については大きな課題がある.本研究で示したように,日本では小児循環器診療において集中治療専門医の取得環境は地域差・施設間格差・保険算定において未整備であり,多くの施設で小児循環器医・心臓血管外科医が集中治療を行っていることに関する整備の課題は大きい.元の専門性が何であれ,小児循環器診療に携わる集中治療専門医を養成する環境を整備していくことは,診療の質向上・役割の多様化に続くことになると考えられる一方で,専門医制度の観点からすると,サブスペシャリティーである小児循環器専門医や心臓血管外科専門医がサブスペシャリティーである集中治療専門医を並行して取得することは,個人のキャリアアップや管理料算定等のメリットとなる場合もあるが,専門性の高い診断・治療と全身病態管理を限られた時間で行うこととなり,さらなる業務負担を生じることで結果として専門診療が非効率的になる可能性がある.米国では小児診療における集中治療専門性の必要性が1970年代から始まり,1991年に専門医Boardの設立が学術団体によって正式になされており,今後さらに専門性認定が進んでいく日本において,日本専門医機構の制度設計にそって関連学会と共同して集中治療専門性を整備することが必要と推察される10)
.また,専門医制度だけではなく,小児循環器診療および集中治療の集約化は,今後日本で予想される少子化において,人材育成・診療の質の向上・労働効率向上が期待できる.専門医制度や集約化により診療における役割分担と労働環境を効率化することは,現在の日本の小児循環器領域において整備すべき重要な課題と考えられる.
この調査研究にはいくつかの限界が挙げられる.まずは情報が小児循環器診療を行っている施設から直接に取得したものではなく,各医学系学術団体のHPで公開された専門医制度情報を組み合わせて評価しており,現状の評価に必ずしも一致しない可能性がある.次に小児循環器診療の側面からの調査を行ったが,成人集中治療や小児集中治療との比較がされておらず,集中治療全体の中における小児循環器診療の位置付けがなされていない.また小児重症例の治療は自治体単位でなく,患者の集約化による近隣の自治体で治療を行われている場合もあり,地域単位での評価が今後必要である.さらに,小児循環器重症診療に携わる施設には,麻酔科医・成人集中治療医が主体となっている施設では,今回の結果が実際の臨床と解離している可能性がある.また今回利用した公的情報は利用できる最新のものを使用したが,データ期間の差(例えば人口統計は平成30年10月,NDBデータは平成29年データ,専門医情報は平成31年10月など)がある.最後に専門医制度の実態を評価することが,必ずしも実際の診療の方向性を評価するとは言えず,専門医制度自体の問題点が含まれていない点は今後の課題と考えられる.
日本の小児循環器領域の集中治療専門診療環境は,専門医診療と診療報酬算定において施設・地域間格差があり,集中治療体制の整備は小児循環器診療の重要な課題と考えられる.
本報告に関して利益相反はない.
松井彦郎:データ集計,データ解釈,論文原稿作成,研究結果発表決定
太田英仁:データ集計,データ解釈,論文修正
内田 要:データ集計,データ解釈,論文修正
林 健一郎:データ解釈,論文修正
犬塚 亮:データ解釈,論文修正
1) 清水直樹,志馬伸朗:わが国における小児集中治療室の現状調査.日集中医誌2019; 26: 217–225
2) Burstein DS, Jacobs JP, Li JS, et al: Care models and associated outcomes in congenital heart surgery. Pediatrics 2011; 127: e1482–e1489
3) 日本小児科学会ホームページ.https://www.jpeds.or.jp/modules/specialist/index.php?content_id=23(2020年4月1日閲覧)
4) 日本小児循環器学会ホームページ.http://jspccs.jp/specialist/list/(2020年4月1日閲覧)
5) 日本集中治療医学会ホームページ.https://www.jsicm.org/about/specialist.html(2020年4月1日閲覧)
6) 総務省人口統計.https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2018np/index.html(2020年4月1日閲覧)
7) 日本心臓血管外科手術データベース機構ホームページ.http://jcvsd.umin.jp(2020年4月1日閲覧)
8) 厚生労働省NDBオープンデータホームページ.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177182.html(2020年4月1日閲覧)
9) 特定入院料(基本診療料・第九)A301-4小児特定集中治療管理料.https://www.shaho.co.jp/shaho/shop/usr_data/sample/13511-sample.pdf(2020年4月1日閲覧)
10) Nichols DG, Shaffner DH: Rogers’ Textbook of Pediatric Intensive Care: The History of the Boards in Pediatric Intensive Care. Wolters Kluwer/Lippincott Williams & Wilkins, 2015, pp 5–6
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