Non-HDLコレステロール値からみた家族性高コレステロール血症児頻度の考察
1 JCHO高岡ふしき病院小児科
2 高岡市医師会
背景:幼少期から動脈硬化が進行する家族性高コレステロール血症(FH)に関し,小児生活習慣病予防健診結果から小児の頻度を考察する.
方法:2006~2015年度の10年間に高岡市健診を受診した小4児14,609名(男7,461名,女7,148名)を対象に,non-HDLコレステロール(non-HDL-C)値の分布から超高値児を抽出し,小児FHの頻度との関連を考察した.
結果:対象のnon-HDL-Cと肥満度とは弱く相関した(r=0.30)が,散布図上概ね200 mg/dL以上に関連の弱い超高値児が散在し,その多くがFHと推察された.Non-HDL-C 200 mg/dLはほぼ+4SD値,かつガイドライン上の小児FH治療閾値に相当した.10年間でnon-HDL-C 130 mg/dL以上の高値児割合は減少したが,超高値児割合には有意な変化なく,全体での0.38%は小児の要治療FH頻度に近似する値と考えられた.
結論:Non-HDL-C測定は小児要治療FH抽出に有用である可能性が示唆され,その頻度は日本成人FHの推定頻度とも矛盾しない.
Key words: familial hypercholesterolemia; non-high-density lipoprotein cholesterol; cardiovascular risk factor; children; universal screening
© 2019 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
動脈硬化はLDLコレステロール(LDL-C)値と年齢とを掛け合わせた累積LDL-C値増加に比例して進行するとされる.家族性高コレステロール血症(FH)に関しては,ホモ接合体はもとよりヘテロ接合体であっても乳幼児期からLDL-C値が高く,累積LDL-C値の傾きが急峻となることから,より若年で心血管イベントを発症する危険性が高まることになる.そのため,FHをより早期に発見し,早期の治療介入をすることでその危険性を低減することが必要と考えられるようになってきている1).2017年には日本小児科学会と日本動脈硬化学会合同で「小児家族性高コレステロール血症診療ガイド2017」(以下,診療ガイド)が発表され,小児FHの診断,治療基準が明確となった2)
.しかし,小児FHはその頻度や早期発見・治療の有用性に関してエビデンスに乏しいのも実状である3).今回我々は,小児生活習慣病予防健診におけるnon-HDLコレステロール(non-HDL-C)値の分布や年次推移等から超高値の児童を抽出し,小児FHの頻度との関連を考察した.
富山県高岡市では,毎年市全域の小学4年生と中学1年生を対象に小児生活習慣病予防健診を実施している.今回の研究では,2006年度から2015年度の10年間に健診を受診した小4児14,609名(男7,461名,女7,148名)を対象に解析を行った.10年間の市小4全員に対する受診率は94%であった.
当健診では,身長,体重測定による肥満度算出,血圧測定,および給食後採血による総コレステロール(TC),HDLコレステロール(HDL-C),血糖の測定を行っている.肥満度は性別・年齢別・身長別標準体重を用いて算出し,各脂質測定は高岡市医師会臨床検査センターにおいて協和メデックスの各測定キットを用いて一律に実施している.脂質値の二次検診抽出指標としては,TC値とHDL-C値の差にあたるnon-HDL-C値を用いており,今回はこの値を,小児FH頻度を推計する上での指標として用いることとした.本来はFHの病態からLDL-C値を用いることが妥当であるが,コスト面から当健診では測定していないこと,試験的にLDL-C値を測定した2010年度の健診者2,961名において,non-HDL-C値とLDL-C実測値との相関が極めて強い(non-HDL-C=1.076×LDL-C+7.85, r=0.982)と確認されていることから4),non-HDL-C値を指標として代用することが可能と判断した.
まず,non-HDL-C値に関し,その分布や肥満度との関係を観察し,FHが高率に含まれると推定される閾値を求めた.次に,研究期間10年間を前半(2006~2010年度)と後半(2011~2015年度)とに区分し,non-HDL-C平均値や高non-HDL-C血症児割合の変化を比較するとともに,推定閾値以上の超高non-HDL-C血症児頻度を算出した.当健診における高non-HDL-C血症抽出基準は,2010~2011年度健診全データ解析の結果5),90パーセンタイル値にあたる130 mg/dL以上としている.
なお,当健診は保護者からの申込により実施されており,申込時には児童生徒データ集計結果の学術的利用があり得ることを文書で説明した上で承諾を得ている.本研究に関しては,当院倫理審査委員会において承認を得た.
統計学的解析にはSPSS ver.23を用い,non-HDL-Cと肥満度との関係解析にはPearsons相関係数検定を,各データの前期,後期比較にはt検定およびカイ二乗検定を行った.
2006年度から2015年度10年間全体の対象児童のプロフィールをTable 1に示す.体格や血圧の男女差は軽度であったが,TCは女児が,HDL-Cは男児が大であるため,non-HDL-C平均値および標準偏差(SD)は男児103.6(23.7)mg/dL,女児107.5(24.0)mg/dLと,女児が有意に大であった(p<0.001).また,10年間のnon-HDL-C平均値,高non-HDL-C血症児割合の年次推移をみると,男児女児いずれにおいても漸減傾向が認められた(Fig. 1).
all | male | female | P | |
---|---|---|---|---|
n | 14,609 | 7,461 | 7,148 | |
height(cm) | 136.6 (6.1) | 136.4 (5.8) | 136.9 (6.3) | <0.001 |
weight(kg) | 32.1 (6.7) | 32.4 (6.9) | 31.9 (6.5) | <0.001 |
POW(%) | 0.5 (14.6) | 0.8 (15.1) | 0.2 (14.0) | 0.008 |
BMI(kg/m2) | 17.1 (2.7) | 17.3 (2.8) | 16.9 (2.5) | <0.001 |
SBP(mmHg) | 102.8 (11.5) | 102.9 (11.4) | 102.8 (11.7) | 0.61 |
DBP(mmHg) | 61.8 (8.6) | 61.5 (8.7) | 62.0 (8.6) | 0.003 |
TC(mg/dL) | 170.8 (25.0) | 169.8 (24.6) | 172.0 (25.4) | <0.001 |
HDL-C(mg/dL) | 65.3 (13.6) | 66.1 (13.4) | 64.5 (12.5) | <0.001 |
non-HDL-C(mg/dL) | 105.5 (23.9) | 103.6 (23.7) | 107.5 (24.0) | <0.001 |
Values were presented as mean (standard deviation). The difference was determined by unpaired t-test between values of male and female and p<0.05 was considered significant. BMI; body mass index (weight/height2), DBP; diastolic blood pressure, HDL-C; high-density lipoprotein cholesterol, non-HDL-C; non-high-density lipoprotein cholesterol (TC−HDL-C), POW; percentage overweight, SBP; systolic blood pressure, TC; total cholesterol |
今回は小児FH頻度の考察という目的のため,男女を区別せず全体としての解析を行った.まず10年間全児童のnon-HDL-C値と肥満度との関係をみたところ,弱い相関が認められる一方,概ねnon-HDL-C値が200 mg/dL以上の超高値部分に,相関の一群からはやや外れた児が散在している様子が観察された(Fig. 2).non-HDL-C値のヒストグラムは正規分布の形状を示したが,右側尾部はスムーズに減衰せず,変節点は明確でないものの,なだらかな丘状分布が観察された(Fig. 3).次にnon-HDL-C値における外れ値を検討したところ,正規分布で外れ値とされる+3SDは,平均値(SD)が105.5(23.9)mg/dLであることから177 mg/dL, +4SDが201 mg/dLと算出された.また,外れ値検定法のスミルノフ・グラブス検定では213 mg/dLという値が得られた.さらに,前述のLDL-C実測値とnon-HDL-C値との単回帰式から換算すると,診療ガイド上の診断基準LDL-C 140 mg/dLはnon-HDL-C 158 mg/dL,治療考慮基準LDL-C 180 mg/dLはnon-HDL-C 202 mg/dLに相当した.以上を総合的に判断し,散布図から視覚的に判断したnon-HDL-C値200 mg/dLが正規分布上ほぼ+4SDで十分外れ値に相当し,外れ値検定の値にも近いこと,それ以上の児(超高値児)の多くが診療ガイド上は治療を考慮するレベルのFH(要治療FH)と推定され,抽出が必須と考えられることから,以降この数値を閾値として用いることとした.
次に,当健診10年間を前半(2006~2010年度)と後半(2011~2015年度)に区分して比較すると,肥満度,血圧,non-HDL-C値等において後半で有意な低下が認められた(Table 2).高non-HDL-C血症児割合に関しても,前半15.1%から後半12.1%へと有意な減少が認められたが,その内訳を見ると,130~149 mg/dLの軽度高値群,150~199 mg/dLの中等度高値群は共に減少が有意であるのに対し,200 mg/dL以上の超高値群は,前半0.35%,後半0.42%と有意な変化なくむしろ微増しており,10年間全体の割合は0.38%と算出された.
2006–2015 | 2006–2010 | 2011–2015 | P | |
---|---|---|---|---|
M/F | 7,461/7,148 | 3,951/3,774 | 3,510/3,374 | |
height (cm) | 136.6 (6.1) | 136.7 (6.2) | 136.6 (6.0) | 0.43 |
weight (kg) | 32.1 (6.7) | 32.3 (6.9) | 31.9 (6.5) | <0.001 |
POW (%) | 0.5 (14.6) | 1.0 (14.9) | −0.1 (14.3) | <0.001 |
BMI (kg/m2) | 17.1 (2.7) | 17.2 (2.7) | 17.0 (2.6) | <0.001 |
SBP (mmHg) | 102.8 (11.5) | 103.7 (11.7) | 101.9 (11.3) | <0.001 |
DBP (mmHg) | 61.8 (8.6) | 62.0 (8.6) | 61.4 (8.7) | <0.001 |
TC (mg/dL) | 170.8 (25.0) | 171.8 (24.9) | 169.7 (25.1) | <0.001 |
HDL-C (mg/dL) | 65.3 (13.6) | 64.3 (12.6) | 66.4 (13.3) | <0.001 |
non-HDL-C (mg/dL) | 105.5 (23.9) | 107.5 (23.6) | 103.3 (24.0) | <0.001 |
prevalence | ||||
≥130 mg/dL | 13.9% | 15.2% | 12.1% | <0.001 |
130–149 mg/dL | 9.4% | 10.7% | 8.3% | <0.001 |
150–199 mg/dL | 4.1% | 4.4% | 3.4% | <0.001 |
≥200 mg/dL | 0.38% | 0.35% | 0.42% | 0.30 |
Values were presented as mean (standard deviation). The difference was determined by unpaired t-test or Chi-squared test between values of 2 periods and p<0.05 was considered significant. BMI; body mass index (weight/height2), DBP; diastolic blood pressure, HDL-C; high-density lipoprotein cholesterol, non-HDL-C; non-high-density lipoprotein cholesterol (TC−HDL-C), POW; percentage overweight, SBP; systolic blood pressure, TC; total cholesterol |
当健診では家族歴を含めた簡単なアンケートも実施しているが,高non-HDL-C児に関し,高コレステロールや心血管イベントの家族歴を正確に確認することは困難であった.よって,これまでに二次検診で当院を受診した小4の高コレステロール血症児のうち,non-HDL-C値が200 mg/dL以上であった7名につき検討を行うこととした.それらのプロフィールを調査したところ,すべての児童にLDL-C値180 mg/dL以上の高コレステロール血症,および問診による高コレステロール血症の家族歴を認めたが,家族がFHと確定診断されていたのは1例のみであった(Table 3).
NO. | age | gender | POW(%) | non-HDL-C (mg/dL) | LDL-C (mg/dL) | family history of hypercholesterolemia |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 10y | F | −5.7 | 214 | 195 | mother (FH)/sisteres |
2 | 10y | M | −14.2 | 218 | 200 | father/sister |
3 | 10y | F | 10.7 | 206 | 194 | sister |
4 | 9y | F | −1.1 | 212 | 197 | brother |
5 | 10y | M | −14.1 | 239 | 224 | grandmother/mother |
6 | 9y | F | −9.6 | 254 | 244 | father |
7 | 9y | F | 21.0 | 213 | 187 | mother/sister |
FH; familial hypercholesterolemia, LDL-C; low-density lipoprotein cholesterol, non-HDL-C; non-high-density lipoprotein cholesterol (TC−HDL-C), POW; percentage overweight |
成人の生活習慣病対策において,脂質異常症は重要な心血管危険因子と認識されており,近年はより早期の介入の必要性が唱えられるようになっている.2016年度の日本循環器学会では金沢宣言「ストップCVD」として,成人の循環器医側から,子どもや若者に対する対策が喫緊の課題との提言がなされた.実際には小児科において1980年代後半からすでに小児生活習慣病予防の形での健診が始められており,地域による偏りはあるものの現在も各地に広がりつつある.1994年に開始された高岡市小児生活習慣病予防健診においても,健診継続により,今回示したように肥満児の減少やコレステロール値の低下など,その成果が着実に現れている.しかしFHに関しては,小児では症状に乏しいことから,小児医療の中での関心が薄いのも事実である.
今回我々は,高岡市健診のデータを用いて小児FH頻度の考察を試みた.まず研究対象期間10年間の小学4年生全体のnon-HDL-C値と肥満度との関係を観察すると,概ね200 mg/dL以上に相関の一群から外れた超高値児の散在が観察されたが,その多くがFHの可能性があると考えたことを発端に,まずこの値が閾値として妥当であるか検証を試みた.その結果,200 mg/dLは正規分布上+4SDという外れ値にあたること,換算上診療ガイドにおけるLDL-Cの治療閾値180 mg/dLにほぼ等しいことなどから4),抽出閾値として妥当と判断した.ヒストグラムではこの200 mg/dL以降,変節点は不明確ながら低い丘状の分布が存在しており,FHのLDL-C値分布が正常群とは別のピークを有することから6),その所見と考えた.さらに当健診では,non-HDL-C 130 mg/dL以上の高値児割合自体は継続の効果として漸減してきているにもかかわらず,200 mg/dL以上の超高値児割合に有意な変化がなかったが,この事実は,超高値児の多くは遺伝が関与するFHとの推定を裏付けるものといえる.これらから,超高値児の10年間全体での0.38%という割合は,小児の要治療FH頻度に近似すると判断した.
成人FHの頻度に関しては,1989年Mabuchiらが北陸におけるホモFHの発生数と北陸の人口から推定した約1/500(0.2%)が長らく通説となってきたが7),近年ではより頻度が大きいとする報告が多くなっている.ドイツでは0.73%8),アメリカでは0.40%9)との報告があるが,両方ともDutch Lipid Clinic Network score(DLCNS)というLDL-C値や既往歴,家族歴などによるスコア制に基づくものである.Mabuchiら自身も2017年には1/199(0.5%)という頻度を改めて報告しているが6),これも実際のカウント値ではなく前述同様の推定値である.よって,今回北陸の一都市である当市の小児に0.38%に近い要治療FHが存在する可能性があるという事実は,Mabuchiらの推定を裏付けるものといえる.小児~若年者における頻度に関しては,近年になりオーストラリアからの0.37%10),ブラジルからの0.49%11)という数値の報告が見られるが,文献それぞれにFH抽出の方法論が異なるため単純に比較はできない.このうちブラジルからのKaestnerらの報告は,12~17才の75,000人に関し,LDL-C 160 mg/dL以上,もしくはnon-HDL-C 190 mg/dL以上例の頻度を算出して0.49%と推計しており,我々の頻度と矛盾しない.我々の方法で抽出した超高値児0.38%の中には肥満児も散見され,非FH例が紛れ込んでいる可能性はある.試みに全対象から30%以上の肥満児を除いて200 mg/dL異常児割合を計算すると0.35%となり,若干の低下が見られた.しかし肥満かつFHの児も存在し,より深刻な治療対象となるため除外は適切でないと考える.加えて200 mg/dL未満にも治療域には達しないFH例が相当数存在するはずであることから,0.38%は小児FH頻度の最低ラインと考えるべきであろう.
FHの診断に関しては,2017年に出された診療ガイドにおいて,高LDL-C血症,およびFHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴の2項目を満たした場合とされている2)
.しかし成人では今日FHと診断されないままに治療されている例が多いことから,家族のFH診断を必須とすると,小児では確定診断が困難となる.実際,当院二次検診におけるnon-HDL-C 200 mg/dL以上例7例においては,全例に高コレステロールの家族歴は認めたものの,家族がFHと診断されている例は1例のみであった.ただし,同じ健診を受けた兄弟例の存在や児の家族に関する詳細な問診から,逆にFH家系疑いの認識を得られる場合も少なくなかった.文献的には,小児FHの診断方法として,成人FH例からその家系を芋づる式に調査するカスケードスクリーニングが効率的と奨励している報告もあるが6),近年は悉皆調査,すなわちユニバーサルスクリーニング推奨の方向にある10).当健診での高non-HDL-C血症児抽出はまさにユニバーサルスクリーニングであり,時代の要請に合致したものと考える.さらには,小児の早期診断から,前述のようにその家族への逆方向のカスケードスクリーニングも可能と考えられる.ただ現状では,日本においてユニバーサルスクリーニング可能な方法で小児健診が行われている地域は極めて少ない.
FHの予後は,スタチンその他薬剤の登場に伴い著しく改善している.先のMabuchiらのグループは,ヘテロFHにおける狭窄病変出現開始年齢に関し,1989年の男17才,女25才から6),その後のスタチン治療普及の結果,2015年には男23才,女34才まで後退していることを示した12).スタチン治療は2016年から小児にも正式に適応が拡大されたため,より早期からの治療を行えば,動脈硬化の進行をさらに遅らせることができるかもしれない.しかし小児期の早期発見とスタチンによる早期治療に関しては,有効性や安全性は報告されているものの13),将来の心血管イベントの発症を抑えるかどうかのエビデンスは現時点では存在しない3).今後のエビデンス構築が急務であろう.
今回の研究の限界としては,健診からのFH疑い例の抽出にLDL-C値ではなくnon-HDL-C値を用いたこと,およびnon-HDL-C 200 mg/dL以上の超高値児割合を小児FH頻度の推計に用いたことが挙げられる.前者はnon-HDL-CとLDL-Cの強い相関から問題は少ないと考えるが,後者に関しては200 mg/dLが外れ値ではあるものの,診療ガイドの治療閾値に匹敵するという以外の根拠に乏しいのは事実である.しかし,そもそもFHと正常者との明確な閾値は存在せず,少なくとも要治療FHをほぼ抽出することができる意味で適切な抽出基準と考えられ,non-HDL-C 200 mg/dLという値は今後の小児健診において重要なスクリーニング値となるであろう.
小児生活習慣病健診におけるnon-HDL-C値分布から超高値児を抽出したところ,その頻度は要治療FHに近似すると推察され,かつ成人FHの推定頻度をも裏付ける結果となった.本研究で健診におけるnon-HDL-C測定が要治療FHの抽出に有用であると示唆されたことから,今後この結果がFH早期発見の参考となり,成人期の心血管イベント予防に寄与することを期待したい.
当健診実施に関わる高岡市教育委員会事務局,学校関係者,高岡市医師会事務局および臨床検査センター関係者各位,並びにこの研究への理解と貴重なアドバイスをいただいた藤田一会長,成瀬隆倫副会長はじめ乳幼児学校保健委員会小児生活習慣病委員各位,および前富山大学市田蕗子学長補佐に深謝いたします.
日本小児循環器学会の定める利益相反に関する開示事項はない.
宮崎あゆみは論文の構想,デザイン,データの収集・分析および考察を行い,論文を作成した.小栗絢子,市村昇悦はデータの収集・分析および考察を行い,論文作成の際に批判的校閲に関与した.
本論文の要旨は,第121回日本小児科学会学術集会(2018年4月,福岡),および第54回日本小児循環器学会学術集会(2018年7月,横浜)にて発表した.
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2) 斯波真理子,太田孝男,大竹 明,ほか:小児家族性高コレステロール血症診療ガイド2017.日本小児科学雑誌 2017; 121: 1–8
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4) 宮崎あゆみ,小栗絢子,市田蕗子:小児におけるトリグリセリドおよびLDLコレステロール測定の意義.日小児循環器会誌 2012; 28: 274–281
5) 宮崎あゆみ,小栗絢子,市田蕗子:小児生活習慣病予防健診におけるnon-HDLコレステロールの意義.日小児循環器会誌 2014; 30: 66–73
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