Online ISSN: 2187-2988 Print ISSN: 0911-1794
特定非営利活動法人日本小児循環器学会
Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 34(3): 143-152 (2018)
doi:10.9794/jspccs.34.143

原著

成人期にtotal cavopulomonary connectionによるFontan手術を施行した症例の中期成績と効果の検討

1公益財団法人 日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院 小児科

2公益財団法人 日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院 心臓血管外科

現所属先:東京医科歯科大学医学部附属病院 小児科〔Current affiliation: Department of Pediatrics, Tokyo Medical and Dental University, Medical Hospital, Tokyo, Japan〕

受付日:2018年3月17日
受理日:2018年5月18日
発行日:2018年9月1日
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背景:本研究の目的は,成人期TCPC(total cavopulmonary connection)の中期成績を小児期TCPCと比較することで明らかにするとともに,合併症のリスク因子および手術による血行動態への影響を検討することである.

方法:当院でTCPCを行った症例のうち,手術時18歳以上の25症例を対象とし,診療録を用いて後方視的に検討を行った.また,比較対象として,当院でTCPCを行った小児例(5歳未満,75例)を用いた.

結果:周術期合併症を13例に認めたが,周術期死亡は1例のみだった.術後の累積生存率は5年時96.0%で,小児期TCPCと有意差を認めなかった.一方,退院後の心血管イベントは小児期TCPCと比べて有意に高かった.観察期間内における手術後の総死亡は3例で,術前の心室拡張末期圧と平均肺動脈圧の上昇が共通していた.退院後の心血管イベントは心房内臓錯位症候群症例で頻度が高かった.また,周術期,退院後ともに成人期TCPC症例では上室頻拍の頻度が小児例に比べて高かった.手術前後では,酸素飽和度の有意な上昇と心胸郭比の有意な改善が見られた.一方,手術後の心係数は平均1.9 L/min/m2と低値であった.

結論:成人期TCPCの生存率は良好で,チアノーゼの改善と心拡大の改善が得られるため,成人期であってもTCPCによるFontan手術を行う意義はある.ただ,上室頻拍をはじめとした術後の合併症頻度が高いことや心拍出量低下などは念頭におく必要がある.

Key words: adult Fontan; total cavopulmonary connection; effectiveness; midterm prognosis; risk factors

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