成人期にtotal cavopulomonary connectionによるFontan手術を施行した症例の中期成績と効果の検討
1 公益財団法人 日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院 小児科
2 公益財団法人 日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院 心臓血管外科
背景:本研究の目的は,成人期TCPC(total cavopulmonary connection)の中期成績を小児期TCPCと比較することで明らかにするとともに,合併症のリスク因子および手術による血行動態への影響を検討することである.
方法:当院でTCPCを行った症例のうち,手術時18歳以上の25症例を対象とし,診療録を用いて後方視的に検討を行った.また,比較対象として,当院でTCPCを行った小児例(5歳未満,75例)を用いた.
結果:周術期合併症を13例に認めたが,周術期死亡は1例のみだった.術後の累積生存率は5年時96.0%で,小児期TCPCと有意差を認めなかった.一方,退院後の心血管イベントは小児期TCPCと比べて有意に高かった.観察期間内における手術後の総死亡は3例で,術前の心室拡張末期圧と平均肺動脈圧の上昇が共通していた.退院後の心血管イベントは心房内臓錯位症候群症例で頻度が高かった.また,周術期,退院後ともに成人期TCPC症例では上室頻拍の頻度が小児例に比べて高かった.手術前後では,酸素飽和度の有意な上昇と心胸郭比の有意な改善が見られた.一方,手術後の心係数は平均1.9 L/min/m2と低値であった.
結論:成人期TCPCの生存率は良好で,チアノーゼの改善と心拡大の改善が得られるため,成人期であってもTCPCによるFontan手術を行う意義はある.ただ,上室頻拍をはじめとした術後の合併症頻度が高いことや心拍出量低下などは念頭におく必要がある.
Key words: adult Fontan; total cavopulmonary connection; effectiveness; midterm prognosis; risk factors
© 2018 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
Fontan手術は1971年に三尖弁閉鎖症の治療としてFontan & Baudetにより報告され1),現在では単心室型心疾患の機能的根治術として広く行われている.Fontan手術では,体循環を直接肺動脈に還流させることで体循環と肺循環を独立させ,これによりチアノーゼの改善と体心室の容量負荷の軽減を図ることができる.当初は心房収縮が重要視され心房–肺動脈連結法(atrial–pulmonary connection; APC)が行われていたが,現在ではエネルギー効率のよいtotal cavopulmonary connection(TCPC)が主流となっている2, 3)
.Fontan手術の施行時期については当初4~16歳とされていたが,次第に低年齢化が進み現在では4歳以下でも安定した成績が報告されている4, 5)
.一方,年長例や成人例でのFontan手術の成績については,Burkhartらが18歳以上でFontan手術を施行した132例について報告している6).その成績は手術後早期死亡率8.3%,5年生存率89%,10年生存率85%であり,この結果は同時期に行われた小児期のFontan手術症例の成績と変わらないと結論づけている6).また,Veldmanらは18歳以上でFontan手術を行った61例について報告し,手術症例を選べば成人期のFontan手術であっても十分許容できる手術成績が得られるとしている7).これらの報告から,成人期のFontan手術についても基本的には小児例と同様の適応条件で行われることが多い.ただ,d’Udekemらは1,006例のregistry解析のなかで,手術時年齢7歳以上は遠隔期死亡率が上昇するリスク因子の一つであると報告しており8),成人期Fontan手術の遠隔期成績については議論の余地が残っている.また,Burkhartら, Veldmanらの報告は,大部分がAPCによるFontan手術についての検討であり,近年の主流術式であるtotal cavopulmonary conncetion(TCPC)をほとんど含んでいない.成人期のTCPCによるFontan手術については,Lyらが手術時年齢20歳以上の32例について検討を行い,術後早期死亡はなく1年生存率91.8%と報告している9).他の報告でも術後成績は概ね良好10, 11)
だが,いずれも術後早期の成績が主体であり,術後中期以降の成績についてはほとんどわかっていない.また,手術前後で酸素飽和度以外の血行動態指標を評価したものは術式によらず極めて少ないため,成人期のFontan手術が血行動態へ及ぼす影響についてはいまだに不明な部分が多い.
本研究では,成人期にTCPCによるFontan手術を行った症例の術後早期から中期にかけての手術成績を小児例と比較することで明らかにし,加えて合併症のリスク因子や手術による血行動態指標への影響を検討することで,成人期にTCPCによるFontan手術を行うことの意義とリスクを再考することを目的とした.
2005年1月から2016年12月の間に当院でTCPCによるFontan手術を行った症例のうち,手術時年齢が18歳以上の症例を対象とした.過去に行われたFontan手術からTCPCへのconversion症例は除外した.また,成人例との比較対象として,2008年1月から2010年12月の間に当院でTCPCによるFontan手術を行った小児例(手術時年齢5歳未満,21トリソミー症例を除く)を用いた.検討項目はFontan手術後の生存率,合併症の頻度,術前後の症状,心臓カテーテル検査による血行動態の比較とし,それぞれについて診療録を用いて後方視的に検討を行った.周術期合併症は,術後在院期間内で薬剤の追加あるいは侵襲的処置を要したものを対象とし,経過観察のみで軽快した不整脈や軽度の胸水・心嚢水の貯留は除外した.また,退院後の合併症は,退院後に死亡または入院加療を要した心血管イベントを対象とし,外来で経過観察が可能であった軽度の不整脈や心不全は含めなかった.
期間内で成人期にTCPCによるFontan手術を行った症例は25例で,周術期死亡を除いたFontan術後の観察期間は1.4~12.3年(中央値7.9年)であった.Fontan手術の適応については,当院における小児期Fontan手術の適応に準じて検討されていた.一方,比較対象とした小児期にTCPCによるFontan手術を行った症例は75例で,周術期死亡を除いた術後の観察期間は1.0~9.9年(中央値7.9年)であった.
心臓カテーテル検査時の心拍出量は,心係数(L/min/m2)=酸素消費量/{(大動脈酸素飽和度−中心静脈酸素飽和度)×1.36×Hb(g/dL)×10}(Fick法)から算出した.酸素消費量の推定にはLa Farge & Miettenの報告した表12)を用いた.混合静脈血の酸素飽和度SMVO2については,肺動脈酸素飽和度を用いると症例により左右差の影響を大きく受けてしまうことから,今回は上大静脈酸素飽和度SSVCO2および下大静脈血酸素飽和度SIVCO2からFlammらの式13)を用いてSMVO2=(SIVCO2+SSVCO2×3)/4を算出した.術後に複数回の心臓カテーテル検査を行っている症例では術後初回の検査を術前検査と比較した.予後の解析はKaplan–Meier法を用いて行い,生存率および心血管イベント回避率についての各群間の比較にはlog-rank検定を用いた.周術期合併症頻度の比較にはFisherの直接確率検定を,退院後の合併症に関与する因子の検討にはCox比例ハザードモデルを用いた.また,術前後の心臓カテーテル検査値の比較にはWilcoxonの符合順位和検定を用いた.いずれもp<0.05を統計学的な有意水準とした.本研究は当院倫理委員会の承認を得た上で行った.
成人期にTCPCによるFontan手術を行った25例の性別は男性15例,女性10例で,主要診断は単心室が14例(56.0%,右室性=12例,左室性=2例)と最も多かった.主心室は右室の症例が19例(76.0%)と多数を占めていた.5例は基礎疾患として心房内臓錯位症候群を有していた(右側相同3例,左側相同2例).小児期に行われた最終手術はsystemic-pulmonary shunt(SP shunt)が13例と最も多く,小児期にbidirectional Glenn(BDG)手術まで施行されていた症例は7例であった.その他は,肺動脈絞扼術が3例,心房中隔欠損作成術が1例で,小児期未手術の症例が1例存在した.小児期にFontan手術を行わなかった理由としては,小児期にFontan手術の適応外と判断されていた症例が最も多かった(11例,44.0%).その他,患者の状態が安定していたためFontanへ進まず経過を見ていた症例(4例,8.0%)や,家族・患者が手術を希望しなかったためFontanを行わなかった症例(2例,4.0%)を認めた.その後,Fontan手術を目指して治療を行うことになった時点での年齢は16.9~36.2歳(中央値27.3歳)で,その際の経皮的酸素飽和度(SpO2)は73~92%(中央値83%)であった.Fontan手術へ向けた治療の再開時,ほとんどの症例(20例,80.0%)でNYHA II度以上の心不全症状を有していたが,明らかな腎不全や肝不全を有していた患者はいなかった(Table 2).治療再開時にBDG手術未施行の症例では,1例を除きBDG手術を経て段階的にFontan手術が行われていた.BDG手術からFontan手術までの期間は0.4か月~18.0年(中央値1.7年)で,治療再開後にBDG手術を行った17例では0.4か月~14.8年(中央値1.1年)であった.また,半数以上の症例では薬物治療の強化や大動脈肺動脈側副血管に対するコイル塞栓術がFontan手術前に追加されていた(Table 2).
Adults | Children | ||||
---|---|---|---|---|---|
N | % | N | % | ||
Total numbers | 25 | 75 | |||
Sex | Male | 15 | (60.0) | 31 | (41.3) |
Main diagnosis | SV | 14 | (56.0) | 13 | (17.3) |
SRV | 12 | (48.0) | 10 | (13.3) | |
SLV | 2 | (8.0) | 3 | (4.0) | |
DORV | 5 | (20.0) | 14 | (18.7) | |
Complete AVSD | 2 | (8.0) | 10 | (13.3) | |
HLHS or HLHS variant | 0 | (0.0) | 13 | (17.3) | |
MA or TA | 0 | (0.0) | 9 | (12.0) | |
Others* | 4 | (16.0) | 16 | (21.3) | |
Main ventricle | Right | 19 | (76.0) | 48 | (64.0) |
Left | 6 | (24.0) | 27 | (36.0) | |
Heterotaxy | Right isomerism | 3 | (12.0) | 15 | (20.0) |
Left isomerism | 2 | (8.0) | 2 | (2.7) | |
Arrhythmia before Fontan procedure | 6 | (24.0) | 6 | (8.0) | |
Regurgitation | Moderate or severe AVVR | 5 | (20.0) | 15 | (20.0) |
Moderate or severe AR | 1 | (4.0) | 0 | (0.0) | |
* Other main diagnoses include Tetoralogy of Fallot, complete transposition of the great arteries, Ebstein anomaly, congenital corrected malposition of the great arteries and pulmonary atresia with intact ventricular septum. AR: aortic valve regurgitation, AVSD: atrioventricular septal defect, AVVR: atrioventricular valve regurgitation, DORV: double outlet right ventricle, HLHS: hypoplastic left heart syndrome, MA: mitral atresia, SLV: single left ventricle, SRV: single right ventricle, SV: single ventricle, TA: tricuspid atresia |
Median | Range | ||
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Age at Fontan procedure (years old) | 28.3 | (18.3–45.5) | |
Duration between BDG and Fontan procedure (years) | 1.7 | (0.0–18.0) | |
Follow up period after Fontan procedure (years) | 7.9 | (1.4–12.3) | |
Preoperataive laboratory data | Hemoglobin (mg/dL) | 18.9 | (12.9–25.0) |
Platelet (104/µL) | 16.9 | (8.1–59.2) | |
Albumin (g/dL) | 4.2 | (2.9–4.9) | |
Creatinine (mg/dL) | 0.74 | (0.49–1.04) | |
ALT (U/L) | 19 | (9–81) | |
γGTP (U/L) | 36 | (16–212) | |
Preoperative catheterization data | EDP (mmHg) | 9 | (5–15) |
Mean PAP (mmHg) | 12 | (6–19) | |
PA index (mm2/m2) | 300 | (104–608) | |
N | % | ||
Additional medical therapy before Fontan procedure | ACE-I | 12 | (48.0) |
Β blocker | 13 | (52.0) | |
Coil embolization for APCAs | 13 | (52.0) | |
PMI | 2 | (8.0) | |
ABL | 3 | (12.0) | |
HOT | 4 | (16.0) | |
ABL: myocardial ablation, ACE-I: angiotensin-converting enzyme inhibitor, ALT: alanine transaminase, APCA: aorto-pulmonary collateral artery, BDG: bidirectional Glenn shunt, EDP: end-diastolic pressure of main ventricle, HOT: home oxygen therapy, PA index: pulmonary artery index, PAP: pulmonary artery pressure, PMI: pacemaker implantation, γGTP: gamma-glutamyl transpeptidase |
成人期にFontan手術を行った25例の手術施行時年齢は18.3~45.5歳(中央値28.3歳)であった.Fontan手術前の心臓カテーテル検査は全例術前半年以内に施行されており,平均肺動脈圧6~19 mmHg(中央値12 mmHg),中田らによる肺動脈index14)
104~608 mm2/m2(中央値300 mm2/m2)と,肺動脈の条件はよい症例が多かった(Table 2).Fontan手術は全例extracardiac conduit法によるTCPCが行われていた.手術時に追加術式として,房室弁形成または置換術(4例),Damus–Kaye–Stansel吻合(2例),MAZE手術(2例),ペースメーカ植込み(2例),大動脈弁置換(1例)が行われていた.手術時にfenestrationを作成したのは1例のみであった.
成人期にFontan手術を行った症例の周術期管理について小児例との比較を行った.結果,人工呼吸器管理日数,ICU滞在日数,胸腔ドレーン留置日数,在院日数いずれにおいても有意差を認めなかった(Table 3).また,死亡率についても,成人期Fontan症例で周術期に死亡した症例は1例のみであり,周術期死亡率は小児期Fontan症例と有意差を認めなかった(成人4.0% vs小児1.7%,p=0.439).成人における死亡例はFontan手術時18歳の左室性単心室の女性で,小児期の肺動脈絞扼術後は本人と家族が治療を希望せず経過観察となっていた.一期的にTCPCを施行し術後1日目に抜管していたが,術後2日目に血圧低下・乏尿となり,再挿管の上で循環作動薬の増量や一酸化窒素投与が開始となった.その後も循環不全は改善せず術後3日目にショック状態となり,PCPSを装着したが術後6日目に死亡した.成人期Fontan症例25例のうちBDG手術を介さずにFontan手術へ進んだのはこの1例のみであった.
Adults (N=25) | Children (N=75) | p Value | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
Perioperative managements | Median | Range | Median | Range | ||
Mechanical ventilation (day) | 2 | (1–54) | 2 | (1–45) | 0.364 | |
ICU stay (days) | 3 | (2–61) | 2 | (2–77) | 0.427 | |
Chest tube drainage (days) | 8 | (4–14) | 7 | (3–78) | 0.911 | |
Hospital stay (days) | 23 | (6–106) | 22 | (10–88) | 0.638 | |
Perioperative complications | N | (%) | N | (%) | p Value | |
Total | 13 | (52.0) | 28 | (37.3) | 0.197 | |
Supra ventricular tachycardia | 7 | (28.0) | 3 | (4.0) | 0.002 | |
Pleural effusion | 4 | (16.0) | 12 | (16.0) | 0.753 | |
Renal failure | 2 | (8.0) | 0 | (0.0) | 0.061 | |
Infection | 1 | (4.0) | 9 | (12.0) | 0.444 | |
Thrombosis | 1 | (4.0) | 1 | (1.7) | 0.439 | |
Fontan failure (death) | 1 | (4.0) | 1 | (1.7) | 0.439 | |
Phrenic nerve palsy | 0 | (0.0) | 3 | (4.0) | 0.571 | |
Mild pleural effusion, non sustained supra ventricular tachycardia or other conditions, which didn’t need any additional therapy, were excluded from perioperative complications. |
合併症については,成人期Fontan症例の半数以上(52.0%)で周術期に何らかの合併症を認めていた(Table 3).周術期合併症として最も頻度が高かったのは上室頻拍(7例)で,小児例と比べても有意に合併頻度が高かった(成人28.0% vs小児4.0%,p=0.002).不整脈についで多かったのが胸水の貯留(4例,16.0%)で,1例では胸膜癒着療法が施行されていた.死亡例を除いた24例の術後在院日数は11~106日(中央値23日)であった.
周術期合併症のリスク因子を成人期Fontan症例,小児期Fontan症例それぞれにおいて検討した(Table 4).結果,小児期Fontan症例では男性および術前肺動脈圧高値(15 mmHg以上)の症例で周術期合併症が多かったのに対し,成人期Fontan症例では左室性・右室性を合わせた単心室症例において周術期合併症の頻度(71.4%)が有意に高かった(p=0.047).
Adults | Children | |||||||
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Number of complications | Relative risk | p Value | Number of complications | Relative risk | p Value | |||
Male | 8/15 | (53.3%) | 1.07 | 1 | 16/31 | (51.6%) | 1.89 | 0.032 |
Older age (>30 years old) | 5/11 | (45.5%) | 0.80 | 0.695 | ||||
Heterotaxy | 2/5 | (60.0%) | 0.73 | 0.645 | 7/17 | (41.2%) | 1.14 | 0.930 |
Single ventricle | 10/14 | (71.4%) | 2.62 | 0.047 | 7/13 | (53.8%) | 1.59 | 0.299 |
Arrhythmia before Fontan | 4/6 | (66.7%) | 2.22 | 0.645 | 3/6 | (50.0%) | 1.38 | 0.665 |
NYHA 2–4 | 8/19 | (42.1%) | 0.51 | 0.162 | ||||
CTR>55% | 5/11 | (45.5%) | 0.80 | 0.695 | 14/28 | (50.0%) | 1.68 | 0.080 |
Mean PAP≧15 mmHg | 3/5 | (60.0%) | 1.20 | 1 | 23/41 | (56.1%) | 3.81 | <0.001 |
EDP≧10 mmHg | 7/11 | (63.6%) | 1.48 | 0.529 | 13/44 | (29.5%) | 0.61 | 0.097 |
Moderate or severe AVVR | 2/5 | (40.0%) | 0.73 | 0.645 | 6/15 | (40.0%) | 1.09 | 0.952 |
Additional procedure | 7/10 | (70.0%) | 1.75 | 0.288 | 11/24 | (45.8%) | 1.38 | 0.297 |
AVVR: atrioventricular valve regurgitation, CTR: cardio-thoracic ratio, EDP: end-diastolic pressure of main ventricle, NYHA: New York Heart Association classification, PAP: pulmonary artery pressure |
成人期Fontan症例における術後の累積生存率は5年時96.0%,8年時85.5%であり,小児期Fontan症例の生存率と有意差を認めなかった(Fig. 1).成人期Fontan症例で退院後に死亡したのは2例で,1例は術後に蛋白漏出性胃腸症(PLE)を発症し長期のステロイド投与と定期的なガンマグロブリン投与を継続されていた.もう1例は術後に肺動静脈瘻による低酸素血症が進行し,SpO2が安静時80%台前半となっていた.2例とも自宅で心肺停止の状態で発見され,1例は救急隊到着時に心室細動が確認された.周術期に死亡した1例を含め,死亡した3例はいずれもFontan手術前の平均肺動脈圧が18 mmHg以上と高値であった(Table 5).また,死亡した3例以外で,術前の平均肺動脈圧が18 mmHg以上の症例は存在しなかった.
Case 1 | Case 2 | Case 3 | |
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Sex | Female | Female | Male |
Diagnosis | SLV, SAS | SRV, PS | DORV, PS |
Heterotaxy | None | None | None |
Operation in childhood | PAB | BDG | BTS |
Age at Fontan operation (years old) | 18.9 | 18.5 | 28.3 |
Arrhythmia before Fontan | None | None | None |
Preoperative findings | |||
SpO2 (%) | 80 | 82 | 81 |
NYHA | II | II | II |
mean PAP (mmHg) | 18 | 19 | 18 |
PA index (mm2/m2) | 230 | 205 | 257 |
EDP (mmHg) | 13 | 13 | 11 |
Regurgitation | Moderate AR | None | None |
ALT (U/dL) | 38 | 26 | 36 |
Creatinine (mg/dL) | 0.53 | 0.59 | 1.04 |
Surgical procedure | TCPC, DKS, AVR | TCPC | TCPC, ASD creation |
Major complications after discharge | — | PAVF | PLE |
Duration from operation to death | 6 days | 7.2 years | 7.7 years |
Cause of death | Cardiac failure | Sudden cardiac death (VF) | Sudden cardiac death |
ALT: alanine transaminase, AR: aortic valve regurgitation, ASD: atrial septal defect, AVR: aortic valve replacement, BDG: bidirectional Glenn shunt, BTS: Blalock–Taussig shunt, DKS: Damus–Kaye–Stansel anastomosis, DORV: double outlet right ventricle, EDP: end-diastolic pressure of main ventricle, NYHA: New York Heart Association classification, PAB: pulmonary artery banding, PA index: pulmonary artery index, PAp: pulmonary artery pressure, PAVF: pulmonary arteriovenous fistula, PLE: protein-losing enteropathy, PS: pulmonary stenosis, SAS: subaortic stenosis, SpO2: percutaneous oxygen saturation, SLV: single left ventricle, SRV: single right ventricle, TCPC: total cavopulmonary connection, VF: ventricular fibrillation |
成人期Fontan症例について,退院後の死亡および入院治療を要した心血管イベントを周術期に死亡した1例を除く24例で検討したところ,心血管イベント回避率は1年時87.5%,5年時70.2%であった.小児期Fontan症例での心血管イベント回避率は1年時95.9%,5年時86.0%であり,成人期Fontan症例では術後の心血管イベント回避率が有意に低い結果であった(Fig. 1).成人期Fontan症例において,入院治療を要した合併症として最も多かったのは上室頻拍(6例,25.0%)で,それ以外では胸水貯留(3例,12.5%),心不全増悪(2例,8.3%)などを認めた.PLEを発症したのは死亡した1例のみであった.一方,小児期Fontan症例においては観察期間中に上室頻拍で入院加療を要した症例はおらず,心血管イベントの多くは胸水貯留やPLEなどFontan循環不全に起因するものだった.
成人期Fontan症例について,退院後の心血管イベントの発生率に関与する因子を検討したところ,心房内臓錯位症候群症例および術前に中等度以上の房室弁閉鎖不全を有する症例において退院後の心血管イベント回避率が有意に低かった(Fig. 2).また,Cox比例ハザードモデルでは心房内臓錯位症候群症例(ハザード比=12.5,p=0.008)と術前肺動脈圧(ハザード比=1.27,p=0.020)が退院後の心血管イベントの発生に関与していた.
AVVR: moderate or severe atrioventricular valve regurgitation, PAP: pulmonary artery pressure, SV: single ventricle
Fontan手術前後でSpO2を比較すると,術前81.2±4.7%から術後93.7±4.3%へ有意に上昇を認めた(p<0.001)が,Fontan手術時にfenestrationを作成した1例はFontan術前後でSpO2の改善が見られなかった(術前84%,術後80%).手術前後の心不全症状については,NYHAI度の症例の割合は術前20.0%(5/25例)から66.7%(10/15例)へ増加していた.ただ,術前後で比較が可能であった15例のみに限って検討すると有意差は見られなかった.胸部X線における心胸郭比(CTR)を比較すると,術前に比べて術後1年時では有意な心拡大の改善が見られた(術前54.8±7.4%,術後1年時51.7±6.0%,p=0.017).
N | Pre | Post | p Value | |
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NYHA≧II | 15 | 10 (66.7%) | 5 (33.3%) | 0.143 |
SpO2 (%) | 24 | 81.2±4.9 | 93.7±4.3 | <0.001 |
CTR (%) | 24 | 54.8±7.4 | 51.7±6.0 | 0.017 |
IVCP (mmHg) | 21 | 7.0±3.2 | 11.3±3.2 | 0.002 |
EDP (mmHg) | 21 | 8.8±2.7 | 8.7±3.3 | 0.94 |
SSVCO2 (%) | 17 | 61.3±7.0 | 58.7±6.9 | 0.287 |
SIVCO2 (%) | 18 | 64.4±8.5 | 66.9±6.0 | 0.463 |
SAoO2–SSVCO2 (%) | 17 | 22.8±8.8 | 35.7±64 | <0.001 |
SAoO2–SIVCO2 (%) | 18 | 19.3±7.8 | 26.7±6.8 | 0.005 |
Cardiac index (L/min/m2) | 21 | 1.9±0.4 | ||
CTR: cardio-thoracic ratio, EDP: end-diastolic pressure of main ventricle, IVCP: inferior vena cava pressure, NYHA: New York Heart Association classification, SAoO2: oxygen saturation of aorta, SIVCO2: oxygen saturation of inferior vena cava, SpO2: percutaneous oxygen saturation, SSVCO2: oxygen saturation of superior vena cava |
Fontan手術後の心臓カテーテル検査は21例で施行されており,術後初回の心臓カテーテル検査施行時期は術後4.7か月~3.1年(中央値10.8か月)であった.術後初回心臓カテーテル検査時の下大静脈圧は11.3±3.2 mmHg, Fick法で算出した心係数は1.9±0.4 L/min/m2であった.術前後の比較では,下大静脈圧は術前7.0±3.2 mmHgから術後11.3±3.2 mmHgへ有意に上昇(p=0.002)し,心室の拡張末期圧は変化が見られなかった(術前8.8±2.7 mmHg,術後8.7±3.3 mmHg,p=0.94).心拍出量については,BDG手術時とFontan手術時で比較することができないため,大動脈と上大静脈の酸素飽和度の差,大動脈と下大静脈の酸素飽和度の差をそれぞれ算出して比較した.結果,いずれの酸素飽和度の差もFontan手術後に有意に開大しており,Fontan術後の心拍出量の低下が示唆された.
今回,当施設で成人期にTCPCによるFontan手術を施行した症例について,手術成績(小児例との比較)および術後合併症のリスク因子の検討,手術前後の症状および血行動態指標の評価を行った.周術期の死亡はBDG手術を介さずにFontan手術を行った1例のみであり,小児期の手術症例と比べて周術期死亡率に有意差は認めなかった.累積生存率も小児例と有意差を認めず,成人期のFontan手術の成績は過去の報告と同様に良好であった.一方,半数以上の症例で周術期合併症を認めており,周術期合併症に関わるリスク因子の検討では心臓形態が単心室の症例で周術期合併症頻度が有意に上昇していた.特に周術期に胸水の遷延を認めた4例は全て単心室症例であり,成人単心室症例ではFontan循環への移行に時間を要する可能性が示唆された.
成人期のFontan症例の予後に関わる因子として,肺動脈圧高値(平均圧15 mmHg以上),高肺血管抵抗,高年齢(30歳以上),中等度以上の房室弁閉鎖不全などが過去に報告されている6, 10, 15)
.今回,死亡した3例で共通していたのは,術前の高い平均肺動脈圧(18 mmHg以上)と高い心室拡張末期圧(10 mmHg以上)であった.3例とも術前の肺動脈インデックスは200 mm2/m2以上と肺血管の発育自体は良好であったことから,肺動脈圧の上昇は心室拡張末期圧上昇に伴う受動的な要素を多分に含んでいると考えられた.一方,心室拡張末期圧が術前10 mmHg以上であった症例は死亡した3例を含めて10例存在したが,死亡した3例以外で術後の心血管イベントを認めたのは2例のみで,心室拡張末期圧10 mmHg未満の症例と比べて術後の心血管イベントの発生率に差はなかった.この結果から,術前の心室拡張末期圧の上昇のみであれば術後の心血管イベントの発生率は必ずしも上昇しないが,心室拡張末期圧上昇の結果として肺動脈圧が高値となってしまっている症例では死亡率が上昇する可能性があると推測された.Fontan手術前の肺血管抵抗については,3例中2例の術前血行動態がGlenn循環+additional flowであったため,肺動脈内での酸素飽和度が部位によって異なってしまうことから算出できなかった.
今回の検討において,成人Fontan症例で退院後に入院を要した心血管イベントの発生率は,基礎に心房内臓錯位症候群を有する症例と,術前に中等度以上の房室弁閉鎖不全を有する症例で有意に上昇していた.また,Cox比例ハザードモデルでは,心房内臓錯位症候群症例と術前肺動脈圧が退院後の心合併症に関与していることが明らかとなった.一方,周術期合併症の頻度が高かった単心室症例や周術期合併症を実際に認めた症例で,退院後の心血管イベントの発生率が高いということはなく,周術期の問題と術後遠隔期の問題は独立して考慮すべき事象と考えられた.
周術期,退院後いずれにおいても,成人期Fontan症例の術後経過の中で小児期Fontan症例と最も異なるのは上室頻拍の発生頻度であった.術後経過の中で上室頻拍を合併した症例の半数以上(周術期7例中4例,退院後6例中3例)は術前に不整脈の既往がない症例であり,術前の不整脈既往にかかわらず成人期Fontan症例では術後の上室頻拍に留意する必要があると考えられた.上室頻拍の発生が多い原因としては,加齢に加えて心房が長期の容量負荷および低酸素血症にさらされた影響が考えられた.
成人期のFontan手術の効果については,術後のNYHAの改善が複数報告されている6, 7, 9)
.不整脈の頻度,心室機能,房室弁閉鎖不全についても,Fontan手術をしていない症例と比べて良好であったとの報告もある7).今回の検討でも,NYHA I度の症例は術後に増加し,術前後で有意な酸素飽和度の上昇と心拡大の改善を認めた.Fontan未施行症例との比較はできていないが,長期的にみれば心室機能の維持,房室弁閉鎖不全や不整脈の減少を期待できる結果と考えられた.また,Fontan手術後の大きな問題である下大静脈圧の上昇についても,術後1年時の下大静脈圧は11.3±3.2 mmHgとFontan手術後としては許容できる値であった.一方,心拍出量については,術前がGlenn循環のため術前後の比較を直接はできないものの,大動脈–下大静脈酸素飽和度較差,大動脈–上大静脈酸素飽和度のそれぞれが術後に有意な開大を認めた結果は,Fontan手術によって術後に心拍出量が低下したことを示唆するものであった.今回の結果を,当院でTCPC conversionを施行した19症例(初回Fontan手術時年齢6.2歳,conversion施行時年齢25.5歳,年齢はいずれも中央値)の術後初回心臓カテーテル検査結果16)と比較しても,Fick法で算出した術後の心係数は成人期にFontan手術を施行した症例で有意に低い結果であった(成人期Fontan症例1.9±0.4 L/min/m2 vs conversion症例2.8±0.8 L/min/m2; p<0.001).この結果からは,成人期のFontan手術で得られるNYHAの改善は多分に酸素飽和度の上昇によるものと考えられ,中心静脈圧については当然のことながら術後に上昇すること,心拍出量は術後に低下する可能性があることなど負の影響も十分に考慮して治療を選択する必要があると考えられた.
今回の術前後の比較では,心拡大の改善が見られたにもかかわらず,心室の拡張末期圧は術前後で変化しないという結果であった.成人期にFontan手術を行った症例の心室は長期の低酸素血症と容量負荷にさらされており,それによる心室のリモデリングおよび心室拡張障害の存在が術後に心室拡張末期圧が低下しなかった要因と推測された.心室の拡張障害のため心房圧の低下が得られないことはFontan循環への適応の妨げになり,結果として胸水の遷延や合併症の増加につながっている可能性があると考えられた.また,今回の検討の中では,術前の心室拡張末期圧10 mmHg以上かつ平均肺動脈圧18 mmHg以上の3例は全員死亡していた.症例が少ないためあくまで推測にすぎないが,長期の心房圧上昇により肺静脈のリモデリングが起きてしまった症例では,術後も肺動脈圧が下がらずにFontan循環不全へつながる可能性が考えられた.
総括すると,今回の検討では成人期に行うTCPCによるFontan手術の予後について,過去の報告と比べて長い観察期間での検討を行った.結果,術後の中期生存率は小児期の同手術と比べて遜色ない結果であった.手術の効果についても,過去に報告されている酸素飽和度の上昇と心不全症状の改善に加えて,X線におけるCTRの改善が確認された.チアノーゼの改善と将来的な不整脈や心不全リスクの軽減という点において,成人期であってもFontan手術を行う意義は十分にあると考えられた.一方で,成人期のFontan手術においては,術前の肺動脈圧が18 mmHg以上の症例では死亡率が高いこと,単心室症例では周術期合併症の頻度が高いこと,心房内臓錯位症候群および術前の平均肺動脈圧が高い症例では退院後の心血管イベントの頻度が高いことが明らかになった.また,上室頻拍は周術期・退院後ともに小児期のFontan症例と比べて有意に発生頻度が高く,成人期にFontan手術を行う上で特に留意する必要があると考えられた.心拍出量についてはFontan手術前後での低下が示唆される結果であり,症状の改善は酸素飽和度上昇に負う部分が大きいと推測された.
18歳以上でTCPCによるFontan手術を行った症例の中期的な予後は良好であった.術後には症状だけでなく心拡大の改善が見られており,成人期であってもTCPCによるFontan手術が有効であることが確認された.一方,小児期にFontan手術を行った症例と比べて術後に上室頻拍が発生する頻度は高く,経過に大きく影響することは術前から留意しておく必要がある.症状の改善については酸素飽和度上昇に負う部分が大きいと考えられ,術後の中心静脈圧上昇や心拍出量の低下も考慮した上で治療を選択する必要がある.
本論文について,開示すべき利益相反(COI)はない.
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