大量ガンマグロブリン療法不応の川崎病に対するインフリキシマブ療法:A single-institute study
1 国立成育医療研究センター総合診療部
2 国立成育医療研究センター循環器科
3 国立成育医療研究センター研究所高度先進医療研究室
4 国立成育医療研究センター臨床研究開発センター開発企画部臨床研究企画室
5 国立成育医療研究センター教育研修部
6 横浜市立大学大学院医学研究科発生成育小児医療学
背景:大量ガンマグロブリン(IVIG)療法不応川崎病に対するインフリキシマブ(IFX)療法が増加している.
目的:IFX療法の有効性,安全性を明らかにする.
方法:2008年12月~2016年9月にIVIG不応川崎病に対して,IFX療法を行った55例を後方視的に検討した.
結果:男34名(62%),月齢は,中央値31か月(4~131),IFX投与病日は,中央値は第10病日(7~24)であった.IFX療法は40例(73%)が3rd line以内に行った.投与48時間以内に38例(69%)が解熱した.10例(18%)でIFX療法後に追加治療を行った.IFX投与前後で白血球数,好中球(%),CRPなどの炎症マーカーが有意に低下した.IFX解熱例(n=38)と非解熱例(n=17)の2群間では,性,月齢,投与病日の有意差を認めなかった.冠動脈病変(CAL)は,IFX投与時にすでに7例で認め,投与後新たに認めた症例は4例で,そのうち1例で巨大瘤を認めた.有害事象は13例(23%)で,過去にIFXの投与経験がある1例でinfusion reactionを認めた.
考察・結語:IFX療法はIVIG不応川崎病に対して有効な治療法である.CAL合併の頻度は過去のIFXの有効性を論じた報告と比べて同程度だった.重篤な有害事象は認めなかったが長期的な影響については今後も注視する必要がある.
Key words: Kawasaki disease; infliximab; intravenous immunoglobulin; coronary artery lesions; infusion reaction
© 2017 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
川崎病は1967年に川崎富作らにより初めて報告1)
された小児期に発症する原因不明の血管炎症候群である.その初期治療は,大量ガンマグロブリン(intravenous immunoglobulin: IVIG)とアスピリン(aspirin: ASA)の併用療法が標準的である.しかし,約20%がIVIG初回終了後24時間以内に37.5°C未満の持続的解熱が得られない,いわゆるIVIG不応例であり,それらの患者では冠動脈病変(coronary artery lesions: CAL)を高率に合併する2).IVIG不応川崎病に対しては,川崎病急性期治療ガイドライン(平成24年度版)3)
では,少量ステロイド療法,ステロイドパルス療法,インフリキシマブ(infliximab: IFX)療法,シクロスポリン(cyclosporin: CyA)療法,ウリナスタチン(ulinastatin: UTI),血漿交換療法(plasma exchange: PEX)が記載されているが,保険適応となっているのは,PEXと,IFX療法のみである.
川崎病に対するIFX投与の歴史は,2004年にWeissらが,IVIG不応の川崎病例に対して使用し,その有効性が報告された4)
.2005年にBurnsらが,IVIG不応川崎病に対するIFX療法のケースシリーズを報告し5),その後も多数のIFX療法に対する報告が散見されている.そして,2015年12月にはIFXの点滴静注用製剤であるレミケード®が本邦において難治性川崎病での保険適応に追加された.レミケード®が難治性川崎病への保険適応が拡大されたことにより,今後その使用が増加することが予想される.当センターでは,2008年12月からIVIG不応例に対して独自のプロトコールに従いIFX療法を行っている.今回,その有効性と安全性およびその成績について検討したので報告する.
2008年12月から2016年9月までに,国立成育医療研究センターで加療したIVIG投与終了後24時間以内に37.5°C未満の解熱が得られない川崎病児に対してIFX療法を施行した.多くは保険適応承認以前であり,本研究は,国立成育医療研究センター倫理委員会の承認(承認番号321, 822)を受け,保護者の同意を得て行った.また,本研究は,小児循環器学会が定める「医学研究および学会・研究会における研究発表に関する倫理指針」(平成26年12月改訂)に則り実施した.
IFX療法を施行したのべ55名を対象として,IFX療法の有効性,CAL発症状況,IFX投与前後での血液検査所見,有害事象について,電子診療録を用いて後方視的に検討した.IFX療法前のIVIGの投与回数に関しては,担当医の判断および家族との同意が得られた状況で決定した.除外規定は,(1)IFX療法前にBCG接種から6か月以内の症例,(2)心エコーで左室駆出率が60%未満の症例,(3)HBs抗原またはHCV抗体が陽性の症例,(4)胸部レントゲン検査,胸部CT検査,周囲の結核感染の問診により結核感染が疑われる症例,(5)重篤な感染症が疑われる症例,(6)家族からIFX療法に対する同意が得られない症例とし,IFX療法を施行しなかった.対象患者は,期間中78例おり,そのうち除外規定でIFXが投与されなかった患者は23例だった.内訳はBCG未接種だが低月齢(6か月未満)のため担当医の判断でIFX投与を見合わせた症例が10例,感染症疑い4例,同意取得困難3例,心不全1例,発熱の遷延・症状の再燃を認め担当医の判断でIVIGを再投与した症例が5例であった.
レミケード® 5 mg/kg(最大投与量:100 mg)を使用した.IFXの投与方法は,生理食塩水100 mLで希釈し,2時間以上かけて点滴静注で単回投与し,アナフィラキシーおよびinfusion reactionの予防のために,IFX投与30分前にアセトアミノフェン10 mg/kg(経口または挿肛)またはASA 17 mg/kgを経口投与,そしてヒドロキシジン1 mg/kgを経静脈的に投与した.投与後24時間は注意深い観察を行った.IFX前後の血液検査のタイミングは,IFX投与前はIFX投与2日前~当日,IFX投与後はIFX投与2~4日後とし,検査結果が複数回ある場合は,IFX投与前はIFX投与に近い日の値,IFX投与後は投与に遠い日の値を採用した.
解熱効果は,IFX療法開始後48時間以内に37.5°C未満の解熱を持続的に得られたものを解熱効果ありと定義し,得られないものを解熱効果なしとした.IFX療法後の追加治療は,IVIG療法またはPEXのいずれかとし,IFX療法後の患者の状態に応じて,担当医の判断で加療を行った.CALの定義は,川崎病心臓血管後遺症の診断と治療に関するガイドライン(2013年改訂版)6)
の定義を使用した.
IBM SPSS ver22を使用し,記述統計,Wilcoxon signed-rank test, Mann–Whitney U testを行った.p値が0.05未満を有意差ありと判定した.
IFX投与症例はのべ55名(男33名うち再発時2回投与1名,女21名)だった.川崎病初発時にIVIG不応でIFX療法を行い,7か月後に川崎病が再発した際もIVIG不応でありIFXを再投与した症例が1例あった.川崎病発症時月齢は,中央値31か月(range: 4–131),うち1歳未満が5例(9.1%)で,その内訳は生後4, 8, 9, 10, 11か月であった.小林スコアは中央値6点(range: 0–10)で,5点以上が41例(75%)であった.初期治療はIVIG単独投与が46例(84%),IVIGと少量ステロイド併用療法が8例(15%),IVIGとステロイドパルス療法が1例(1.8%)であった.IFX療法前の総IVIG投与量は,中央値4 g/kg(range: 2–8)であった.全例で初期治療としてASAが併用されていた.IFX療法前にIVIG以外の治療を受けたのは18例でその内訳は,ステロイド:17例,UTI: 4例,CyA: 1例,PEX: 1例であった.IFX投与病日の中央値は第10病日(range: 7–24)であリ,2nd lineでの使用が3例,3rd lineでの使用が37例と3rd line以内が73%を占めた.
IFX療法後は,55例中38例(69%)で48時間以内に解熱を認めた.解熱効果を認めなかった17例のうち,明らかな川崎病症状の改善とCRPの著明な低下を認め追加治療を要さなかったのは8例だった.解熱効果を認めた症例と追加治療を要さなかった症例を加えると計46例(84%)であった.追加治療を要した9例の内訳はIVIGが8例,PEXが1例だった.解熱効果を認めた38例のうち1例でIFX投与後に追加治療を行った.この症例はIFX投与後に解熱を認めたが,その後も炎症反応が遷延し,IFX投与の19日後に再度IVIG投与を行い,炎症の終息を認めた.IFXの解熱効果あり群(38例)と効果なし群(17例)の2群間の比較をTable 1に示す.性別(男24 vs 10,p=0.76),月齢(33 vs 25,p=0.31),小林スコア(6 vs 6,p=0.73)では有意な差は認めなかった.また,IFX後の追加治療あり群(45例)と追加治療なし群(10例)の比較でも,性別,月齢,小林スコア,IFX開始病日で有意差は認めなかった.
Responders n=38 | Non-responders n=17 | p value | |
---|---|---|---|
Male (%) | 24 (63) | 10 (59) | 0.76 |
Age (month) | 33 (4–131) | 25 (8–64) | 0.31 |
Kobayashi Score | 6 (0–10) | 6 (0–10) | 0.73 |
IVIG dose before IFX (g/kg) | 4 (2–8) | 4 (2–6) | 0.85 |
Treatment other than IVIG before IFX | Steroid 10 UTI 3 CyA 1 | Steroid 7 UTI 1 PEX 1 | — |
Days of illness at beginning of IFX | 10 (7–23) | 10 (7–24) | 0.69 |
Additional treatment | 1 (IVIG 1) | 9 (IVIG 8, PEX 1) | <0.001 |
IVIG: intravenous immunoglobulin, IFX: infliximab, UTI: ulinastatin, CyA: cyclosporin A, PEX: plasma exchange |
CALの経過をFig. 1に示す.IFX投与の段階で,55例中7例(13%)ですでにCALを認めていた.投与時に正常だった48例中4例でIFX投与後1か月時にCALを認めた.小動脈瘤・拡大が1例,中等瘤が2例,巨大瘤が1例だった.その4例の詳細をTable 2に示す.4例とも第10病日未満でIFX投与を行った.また4例中3例で,IFX療法不応のため,更なる追加治療が必要だったが,IFX解熱例でもCALの発症を認めた.巨大瘤に進展した1例は,IFX投与終了後,48時間以内に解熱しなかったが,明らかな炎症反応の低下,症状の改善を認めたため,追加治療はせずに経過観察した.しかし,IFX投与2日後から冠動脈の拡張を認め,下がったCRPも完全には陰性化せずに遷延した.遷延している炎症反応に対して,IFX投与の17日後にIVIG療法を行い,速やかに炎症反応の低下を認めたが,同日に実施したMRI検査にて,右冠動脈に8 mm大の冠動脈瘤を認めた.発症1年後までの経過で,11例中7例がCALの残存を認めた.
No. | Sex | Age (months) | Days of illness at initiation of IFX | Effects | Process of treatment (Days of illness) | CALs |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | F | 25 | 8 | Non-res | IVIG (4) + PSL (4-)→mPSL pulse (5–7)→IVIG (6)→IFX (8)→IVIG (25) | RCA #2 8.0 mm |
2 | F | 27 | 8 | Non-res | IVIG (5)→IFX (8)→IVIG (11) | LMT 3.8 mm |
3 | F | 39 | 9 | Non-res | IVIG (3)→IVIG (7)→IFX (9) →PEX (21–25)→IVIG (25) | LAD 4.8 mm |
4 | F | 55 | 9 | Res | IVIG (3)→IVIG (6)→IFX (9) | RCA #1 4.8 mm |
F: female, Res: responders, Non-res: non-responders, IVIG: intravenous immunoglobulin, IFX: infliximab, PSL: prednisolone, mPSL: methylprednisolone, CALs: coronary artery lesions, RCA: right coronary artery, LMT: left main trunk, LAD: left anterior descending coronary artery |
IFX投与前後で,白血球数,好中球(%),ビリルビン,CRP, D-ダイマーはIFX投与前後で有意に低下し,血小板,Na,アルブミンはIFX投与前後で有意に上昇を認めた(Table 3).
有害事象を認めたのは55例中13例(24%),のべ16件で認めた(Table 4).発疹が5例(9.1%),関節痛が5例(9.1%),infusion reactionを1例(1.9%)認めた.infusion reactionの1例は,IFX療法の2回投与が行われた症例であった.再発時のIFX投与48時間後に悪寒戦慄を伴う40°Cの発熱を認めた.2回目の投与であったことも考えるとinfusion reactionであった可能性が示唆された.
Pre-IFX | Post-IFX | p value | |
---|---|---|---|
WBC (×103/µL) | 17.6±9.2 | 13.5±7.2 | <0.001 |
% Neutrophils | 70.8±15.1 | 53.2±17.4 | <0.001 |
Platelet (×104/µL) | 54.8±22.5 | 75.8±25.5 | <0.001 |
T-bilirubin (mg/dL) | 0.5±0.3 | 0.4±0.2 | <0.001 |
AST (IU/L) | 33±21 | 35±17 | 0.07 |
ALT (IU/L) | 29±26 | 26±17 | 0.22 |
Na (mmol/L) | 135.0±2.3 | 136.3±2.0 | 0.001 |
Albumin (g/dL) | 2.3±0.4 | 2.8±0.4 | <0.001 |
CRP (mg/dL) | 9.9±5.4 | 2.5±2.3 | <0.001 |
D-dimer (µg/mL) | 5.5±4.4 | 3.0±2.3 | <0.001 |
IFX: infliximab, Mean±SD, Wilcoxon signed-rank test |
Symptoms | Case |
---|---|
Skin rash | 5 (9.1%) |
Arthritis | 5 (9.1%) |
Itching | 2 (3.8%) |
Fever | 1 (1.9%) |
Vomiting | 1 (1.9%) |
Persistent cough | 1 (1.9%) |
Infusion reaction | 1 (1.9%) |
IFXは抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体であり,Matsubaraらは,川崎病の急性期にTNF-αが上昇していることを示し7),Furukawaらは,CALを認める患者は可溶性TNF受容体濃度が高いことを報告8)しており,これらの報告をもとに,川崎病に対して,IFX投与が行われている.IFXがTNF-αを抑制する機序としては,可溶型TNF-αへの結合・中和,受容体に結合したTNF-αの解離,TNF-α産生細胞の傷害が挙げられている.
川崎病に対するIFX療法の過去の報告をTable 5に示す.IVIG不応川崎病に対するIFX治療の有効性は,Burnsら5)は13/16例(81%),Songら9)は13/16例(81%),Sonら10)は17/20例(85%),Moriら11)は18/20例(90%),Sonodaら12)は70/76例(90%)と報告している.IFXの投与病日や投与前の治療内容,有効の判断基準などの条件は異なるが,おおむね80~90%である.また,日本川崎病学会の全国アンケート調査でも,臨床的効果は約80%で認められたと報告13)
している.今回の検討でも55例38例(69%)は,IFX解熱効果があり,解熱効果がなくても追加療法を行わなかった症例を有効例に加えると46例(84%)であり,既知の報告と同等の結果であった.本研究では,IFXの解熱有効例と無効例の比較で,IFXの投与時期やリスクスコアなどに依存しないことが示唆された.
Year | Author | Effective/total | Days of illness at initiation of IFX | Developed CALs before IFX | Developed CALs after IFX |
---|---|---|---|---|---|
2005 | Burns | 13/16 (81%) | 19 (8–53) | 12/17 (71%) | 0/5 (0%) |
2010 | Song | 13/16 (81%) | 16 (6–29) | 15/16 (94%) | 0/1 (0%) |
2011 | Son | 17/20 (85%) | — | 7/20 (35%) | |
2012 | Mori | 18/20 (90%) | <10 d | 0/20 (0%) | 1/20 (5%) |
2014 | Sonoda | 70/76 (92%) | 8.5 (6–11) | 6/76 (7.9%) | 9/70 (13%) |
This study | — | 46/55 (84%) | 10 (7–24) | 7/55 (13%) | 4/48 (8.3%) |
KD: Kawasaki disease, IFX: infliximab, CALs: coronary artery lesions |
CALの発症に関しては,Burnsら5)やSongら9)の報告はIFX投与病日の中央値がそれぞれ19病日,16病日と遅く,IFX投与前にすでに12/17例,15/16例でCALを発症していたので比較できない.2012年のMoriらの20例の報告11)では,全例IFXは第10病日以前に投与されていた.その結果,18例で解熱を認め,第30病日の時点では1例のみにCALを合併したと報告している(5.0%).Sonodaらは,IFX投与前に6/76例でCALを認めており,投与後に9/70例(13%)で新規発症を認めた.IFX投与病日の差もあり,一概にIFX療法とCALの関連を比較することはできないが,本研究ではIFX使用前にCALを発症していた症例を除くと,1か月時のCALの発症率は4/46例(8.7%)であり,Sonodaらの報告と同程度であった.川崎病急性期治療ガイドライン3)
でも,第10病日未満であれば,CAL合併の頻度が低いとされている.
血液検査による炎症マーカーに関しては,IFX投与前後で,既存の報告の通り,著明な改善を認めており,IFX投与により炎症反応が抑制された.
今回,有害事象は13例(24%)で認めた.過去の報告では,川崎病に対するIFX治療では,重篤な有害事象はなかったとの報告4, 5)
が多い.Burnsらは好酸球増多を伴う薬疹や一過性肝腫大を報告5, 14)しているが,本研究では認めなかった.川崎病が対象ではないがIFXの本邦における市販後調査で,IFXを使用し2年間以上の中断の後に再投与を行った症例で重篤なinfusion reactionの頻度が有意に高かったと使用の手引きにも記載されている.infusion reactionを認めた症例はIFXの投与間隔は7か月で,IFX使用後48時間とやや時間が経っているが,症状はinfusion reactionと矛盾しない.IFXの再投与症例には厳重な経過観察が必要である.IFXの再投与の症例に関しては,川崎病以外の使用であるが,結核,B型肝炎などの潜在性感染の顕在化かつ重症化についての報告例も多く注意を要する15–17)
.また,IFX投与前の前投薬を使用することによるinfusion reactionの予防効果は明らかではないが,本研究は,安全性に十分配慮し,前投薬を使用するプロトコール治療を実施した.川崎病に対するIFX治療に際する前投薬の必要性に関しては,今後検討する必要があろう.さらに,今後は初期治療でIVIG+ステロイド併用療法の不応例に対してIFX療法を行う機会も増加すると推測される.IFX療法を行う前には,各種ウイルス検査,培養検査,胸部CT検査,HBs抗原,HBe抗原,HCV抗体を必ず行い,これらの感染症を除外する必要もある.また,IFXはギラン・バレー症候群あるいはフィッシャー症候群を誘発することも報告18)されており,小児では髄鞘化の遅延による成長・発達障害が危惧される.今回は慎重なインフォームドコンセントのもとに,1歳未満の5名の児にIFXを投与した.現在まで明らかな精神運動発達に問題はないが,今後も引き続き経過観察を継続する予定であり,長期的な安全性に関しては,継続したフォローが必要である.
現在,川崎病に対するIFX療法は,IVIG不応のレスキューの治療法として,川崎病急性期治療ガイドライン(平成24年度版)3)
では位置付けられており,また2015年12月の保険適応もレスキューとして認められたばかりである.今後,2nd lineで使うか3rd lineで使うか,それ以降に使用するかに関しては,まだ議論の余地がある.また,その一方で,Tremouletら19)は,初期治療として,IVIG vs IVIG+IFXを比較するランダム化比較試験を報告した.この研究では,治療抵抗性には有意差はなかったが,川崎病の重症度を層別化されて比較された結果ではなく,今後,重症度を予測し層別化してのランダム化比較試験を用いて,初期療法でIFXを使用する研究なども検討課題である.
本研究のlimitationは,後ろ向きの観察研究のため,IFX投与前の治療に差を認めている.さらに正確なデータ解析をするためには,前方視的な介入研究が必要である.
IFX療法は,IVIG不応の川崎病に対して,有効な治療法の1つであり,安全性に関しても十分な忍容性も高い.IFX投与の長期的な合併症については今後も検討する必要がある.
日本小児循環器学会の定める利益相反に関する開示事項に則り開示します.益田博司は血液製剤機構から受託研究費600万円.
本研究は厚生労働省科研費10103467および厚生労働省成育研究開発費(24-14, 25-12)の助成を受けた.
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