先天性冠動脈疾患
静岡県立こども病院循環器科
先天性冠動脈異常には①冠動脈起始部位と走行形態の異常,②冠動脈開口部の狭窄・閉鎖,③冠動脈血管自体の異常,および④冠動脈終末端の異常の4種類が存在する.起始部位の異常には大動脈基部における異所性開口に加えて,肺動脈や腕頭動脈等,大動脈基部以外の血管からの起始異常も含まれる.これらの異常は常に単独で存在するわけではなく,様々な組み合わせで存在しうる.希少疾患とはいえ小児循環器に携わる医師は十分な知識を持つことが求められ,特に①と②の異常のなかには突然死の原因となる病態が含まれることを銘記しておく必要がある.ただ,これらを安静時心電図で捉えることは困難であり,現在日本で行われている学校心電図検診ではスクリーニングが困難な疾患の一つである.北米においても運動時突然死の原因疾患として心筋症に次いで重要な心構造異常として注目されてきており,スクリーニング方法の模索が始まっている.一方,先天性冠動脈異常は先天性心疾患にも合併しうる.これらのなかには術中・術後経過に大きく関わる病態も存在することから,術前の正確な診断が重要である.先天性冠動脈異常について最新の知見を加えるとともに概説を記した.
Key words: congenital coronary anomaly; coronary artery; congenital heart disease; sudden cardiac death
© 2016 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
冠動脈は爬虫類・鳥類・哺乳類の心臓において認められる心筋への血流供給システムである.魚類のなかでも捕食のために高スピードで泳ぐ魚においては冠動脈が発達しているものがいることから,このシステムは高心拍出を必要とする動物において発達してきたと考えられる.心臓発生の初期段階において心筋は心内腔の類洞と呼ばれる肉柱間の間隙から拡散によって心腔内血液から酸素供給を受ける.しかし心臓発生の進行とともに心筋の厚みが増すと心筋の外膜側は酸素供給不足となることから,心外膜側に冠動脈が形成され最終的には心筋への酸素供給は冠動脈が全て取って代わるようになる1).しかし冠動脈に正常と異なった発生が起こった場合には,大血管への開口部の位置異常や走行異常が起こりうる.また,純型肺動脈閉鎖における冠動脈の類洞交通は,発生過程での肺動脈弁閉鎖により右室内圧が高圧となったために,本来消失するはずであった類洞が残存し冠動脈との交通が残存した状態と考えられている.先天性心疾患に合併する冠動脈異常や乳児期早期に心不全症状で発症するある種の冠動脈異常は比較的早期に発見されることが多いが,ほとんどの先天性冠動脈異常は乳幼児期に診断されることは稀であり,大部分は冠動脈の画像診断や剖検よって偶然発見される2–5)
.本疾患群のなかには突然死の原因となりうるリスクの高い疾患が含まれることから重要な先天性心疾患の一つであるが,疾患の希少さに加えてイベント前の診断の困難さゆえに,あまり注意を払われてこなかったのも事実である.しかし,アメリカの新兵630万人を対象とした大規模調査では,1万人あたり0.2人の突然死が発生し,その半数が心臓関連死であり,更にこの4割が先天性冠動脈病変であった6).この頻度は心筋症や心筋炎を含む心筋疾患よりも多数を占めていた.また,American Heart AssociationのSudden Death Committeeから出された1996年の報告では,先天性冠動脈病変はアスリートの突然死の24%を占めており,またMinneapolis Heart Instituteからの2009年の報告でも心臓関連突然死の17%を占めていた7, 8)
.他の同様な調査においても心臓関連突然死の原因疾患の約2割が先天性冠動脈異常であり,約3割を占める心筋症に次いで多い原因疾患であった7–10)
.これらの報告は生来健康であると考えられていた児童の青年期における突然死の原因疾患の一つとして先天性冠動脈病変を心筋症等と同等に意識しておく必要があることを示唆する.また,近年における画像診断の進歩はこれまで診断が困難であったこの希少疾患についても重大なイベントが発生する前に発見できる可能性を広げており,疾患に対する理解を深めておくことが小児循環器医に求められている.
本総説では,以下の3つの項目について概説を記した.
人間の心大血管系の形成は胎生20日前後から開始される.心室壁厚が十分薄い間は心室内腔の肉柱間隙である類洞に存在する血液からの拡散により心筋細胞は酸素供給を受ける.しかし発生の進行とともに心室壁の壁厚が増してくると,類洞からの拡散だけでは心筋壁全層への酸素供給が不十分となることから,心筋壁内を貫く冠動脈が必要となる.冠動脈は一部の魚類を除いて爬虫類以上の上位種に備わる器官であり,哺乳類以外には鳥類にも存在する.ただ,その発生については未だ不明な点が多く,その起源となる細胞についても未だ特定されていない.心外膜前駆細胞(proepicardial organ: PEO)由来の細胞が発生に関わっているとの説が有力であるが,心室や静脈洞の心内膜細胞由来説も存在する11–15)
.PEO細胞と冠動脈発生との関連については,これまで鳥類胚を中心に研究が行われてきたことから,マウス等の哺乳類胚を使用した研究が今後進めば由来細胞についての決着がつく可能性がある.PEO細胞は原始心臓の背側に位置する中胚葉由来の横中隔(septum transversum)に存在し,その名の通り心外膜の原器となる.心臓のループ形成が進むにつれてPEO細胞から発生した心外膜上皮細胞の一部が多能性間葉細胞に形質転換(epitherial-mesenchymal transformation: EMT)し,心臓背側の房室接合部を中心に心外膜下組織から心筋層内に進入した後に,種々のシグナル因子の制御を受け血管内皮や血管平滑筋細胞へと分化していく.これらの血管内皮細胞や平滑筋細胞が連結を繰り返し,伸長していくことで原始冠動脈毛細血管叢が成立される(vasculogenesis).人間においては胎生25日前後に血管様構造物を心外膜下のスペースに認められるようになるが,この時点ではまだ血管は完全に連続性を形成しておらず,血管内に血流も認めない.この断続的な毛細血管叢が収束と連結を繰り返し,また血管平滑筋の内膜周囲への配列を得ることで心筋壁内と心外膜面に太い冠動脈原基が形成される11).一方,EMTを起こさなかったPEO細胞はそのまま心臓表面を覆い心外膜を形成する.このように先に末梢側から形成された冠動脈が,最終的にどのように上行大動脈へ接合するかについても未だ定説はないが,動脈幹基部に発生した複数の冠動脈原基のうち大動脈基部に発生したものが大動脈壁内へ入り込み,アポトーシス等により大動脈壁を吸収し開口を作ると考えられている.冠動脈開口部にはVEGF(vascular endothelial growth factor)受容体であるVEGFR-2および3の発現を高密度に認めることから,冠動脈本幹の形成と大動脈壁への開通のプロセスにはVEGFの役割が重要であると考えられている16, 17)
.胎生40日前後に冠動脈と大動脈の連結が完成し,上行大動脈からの血流が冠動脈へ流れ込むようになる.心室の流出路である円錐動脈幹の発生も胎生25日頃より開始され,胎生35日頃には動脈幹中隔が形成され大動脈と肺動脈が分離するが,左冠動脈肺動脈起始(BWG症候群:Bland-White-Garland症候群;ALCAPA: anomalous left coronary artery from pulmonary artery)は,左冠動脈原基と肺動脈が交通したことによる発生する異常と考えられる.
心外膜面を走行している冠動脈の本幹から心筋壁内へ鋭角方向に血管を分枝する.心筋壁内に分枝した血管には2種類存在し,①心外膜下から心筋壁の外・中・内層のそれぞれの層に分枝を繰り返し細動脈へ移行するものと(branching artery);②分枝を出さずに心筋壁を穿通し,肉柱や乳頭筋で細動脈を分枝する血管(straight type artery)が存在する18).心筋壁内へ分枝した血管は心筋内小動脈と呼ばれ,その径は0.5~0.7 mm程度であり,他の心筋内小動脈との吻合を有する.小動脈から更に細い細動脈(径12~15 µm)に分枝した後に筋繊維束に入り,それぞれの細動脈から更に分枝した毛細血管網は円柱状の塊状に分布し,この円柱内に存在する心筋細胞へ酸素を供給する.この毛細血管が分布する円柱塊は径が約130 µm/長さが約350 µmのサイズを有しており心筋への血流供給の最小単位となる.心筋壁内ではこの円柱状の毛細血管塊がブロック状に3次元配列を繰り返す構造をとっており,この構造により心筋壁内へ血流供給が均等に行われる19–21)
.毛細血管網を還流した血液は細静脈へ集合し,冠静脈システムとへ流れていく.冠静脈システムには2系統存在し,①大心静脈系(great cardiac venous systems)と②小静脈系(smaller venous systems)に分類される.小静脈系は更に前心静脈(anterior cardiac vein)とThebesian静脈の2系統が存在する.
これは最終的に冠静脈洞へ還流する静脈系を指し,領域としては左冠動脈と右冠動脈3番以降の灌流領域から還流する.大心静脈は前室間溝の心尖部近くから始まり,左冠動脈前下行枝に並走して上行し左側房室間溝へ至る.その後,鈍角枝(left obtuse marginal vein)が合流し,次いで左心耳と左肺静脈間を走行するMarshall静脈(またはMarshall腱索)が合流して冠静脈洞(coronary sinus)となる.Marshall静脈との合流部にはVieussen弁と呼ばれる非常に薄い膜状の構造物が約9割の剖検心で存在し,電気生理検査にて電極カテーテルを挿入する際の抵抗となることがある22, 23).冠静脈洞へは下左室静脈(inferior left ventricular vein)と後室間溝を上行した中間静脈(middle cardiac vein)が順に合流する.また,右冠動脈3番領域からの静脈血は右側房室間溝背側を走行する右冠静脈(right coronary vein)に還流し,冠静脈洞の右房開口部近くで冠静脈洞へ合流する.通常の右冠静脈は非常に細い血管であるが,約2割の症例において鋭角枝(acute marginal vein or right marginal vein of Galen)や右室全面の静脈枝が合流することがあり,この場合にはかなり太い血管となる.なお,冠静脈洞の右房開口部には8割以上においてThebesian弁と呼ばれる膜様ないしは索状の隔壁が開口部を囲むように存在する.この弁は時にChiari-networkと連続性のある網状構造として存在する.
これには前述の通り前心静脈とThebesian静脈系が存在する.前心静脈は右側房室間溝に位置し,右冠動脈1~2番領域からの血液が還流し右房(右心耳基部頭側)に直接開口する.鋭角枝も同様に直接右心房に開口することが多い22).Thebesian静脈は細静脈と心内腔を直接連結する開口部径0.5 mm以下の微少血管であるが(Fig. 1),その意義は冠静脈還流の代替通路と考えられている24).Thebesian静脈はいずれの心内腔にも開口を認めるが,心室よりも心房に多くの開口が認められ,特に冠静脈洞開口部周囲の右房側へ開口するものが多い.また,心室への開口は少数であるが,羊心を用いた実験によると,左冠動脈領域からのThebesian静脈を介した左心室への開口は0~7箇所であり,右心室へは0~10箇所,一方,右冠動脈領域からの開口箇所は右心室のみに認められ4~7箇所であったと報告されている24).
冠動脈狭窄がない場合には,冠循環の血流抵抗を主に規定するのはその径が0.15 mm以下の小動脈や細動脈である.冠循環は生理的な還流圧範囲内では血流量が一定になるよう制御され,これを自己調節機能(autoregulation)と呼ぶ25).しかし,冠動脈灌流量や灌流圧が自己調整機能以下まで低下すると収縮期左室壁厚増加率や収縮期局所長短縮率が著明に低下する(=虚血による壁運動低下)26, 27)
.このような低い冠動脈灌流量や圧の状態においては冠動脈からの血流供給量と心臓の収縮(仕事量)との相互関係が直接的に観察されるようになる.言い換えれば,虚血状態では心臓は供給された血液量(酸素供給量)応分の仕事しかできなくなり,このように示される相互関係を灌流–収縮適合(perfusion-contraction matching)と呼ぶ28).心臓の圧仕事量は心室の圧—容積関係を用いて外的仕事量(圧容積面積)と内的仕事量の総和として合理的に説明され,また局所心筋の仕事量は局所壁張力—面積関係で算出される29).冠動脈灌流量低下により心臓全体の虚血が起こると心室圧—容積関係において容積軸(X軸)切片であるV0は不変であるが,Emaxが低下し心臓の収縮性と仕事量が低下する.ただし,この変化は冠動脈枝が閉塞した場合の局所心筋虚血の場合には様相が異なり,収縮末期圧容積関係はもはや直線関係を示さなくなり,下に凸の曲線となる.またVoは拡大し容積軸切片が右側へ移動する30).逆に,冠動脈灌流量もしくは灌流圧を増加させた場合には心収縮性が増加しEmaxが増加することが知られており,これはGregg現象と呼ばれる31).
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Cx: left circumflex artery; LAD: left anterior descending artery; LCA: left coronary artery; NF: non-facing sinus; PA: pulmonary artery; RCA: right coronary artery. |
冠動脈の走行には当然ながら個人差があり,先天性冠動脈異常をどのように定義するかは報告によって異なる.いわゆるnormal variantと異常所見との境界が不明な点も多いことから,報告によっては検査対象の1%未満でしか認められない希少所見を解剖学的異常と定義している32–34)
.ただ,冠動脈が稀な走行パターンをとることと,病的意義を持つこととは同義ではなく,循環動態的に無害の冠動脈異常が存在する.一方において,これらのなかには運動による心筋酸素需要増加時に冠循環の正常な応答を伴うことができずに虚血に陥り,不整脈等による突然死をきたす冠動脈異常も含まれる.虚血を引き起こす原因には冠動脈開口部の形状と冠動脈中枢側の走行形態が主に関与しており,このような虚血のリスクのある走行形態をmalignant courseと呼ぶ.先天性冠動脈異常の頻度と種類については,これまで成人領域における冠動脈造影検査を中心とした報告が多くなされてきているが,これらの報告における対象の平均年齢はいずれも50~60歳であることから,冠動脈肺動脈起始などの乳児期早期に重篤な心不全症状で発症する疾患や冠動脈対側冠動脈洞起始などの青年期に突然死をきたす可能性のある疾患については,研究対象から除外されてしまっている可能性がある3, 35, 36)
.また小児科領域からの冠動脈造影検査の報告に関しても,対象は無作為に抽出されたものではなく,何らかの冠動脈病変が疑われたために検査が施行されており,ある程度偏った対象における検査結果と認識しておくべきである37).検査対象における無作為性の点で限界を有するものの,先天性冠動脈異常の頻度は成人では0.4~1.3%,小児では0.9%とほぼ同様の値であった3, 35–37)
.一方,検査のモダリティによる違いも存在し,経胸壁心エコーによるスクリーニングでは,無症状の被験者を対象とした場合の先天性冠動脈異常の頻度は0.17~0.39%であった38, 39)
.経胸壁心エコー検査による冠動脈異常の検出感度は他のモダリティよりも若干劣る可能性はあるが,対象の偏りが少ないことから実際の頻度をより正確に表している可能性がある.
ここで,冠動脈異常についての各論に進む前に3本の主要冠動脈枝である前下行枝,回旋枝,そして右冠動脈の定義を示す40)
.
1本の冠動脈本幹から全ての冠動脈が分枝する異常を指し,先天性冠動脈異常の3~20%を占める3, 32, 39)
.Liptonらの提唱した分類は単一冠動脈における全ての走行・分枝パターンを網羅できていない欠点を有するものの,簡便な分類であることからよく使用される(Fig. 2)41).Lipton分類におけるL1とR2型が最も頻度が高く,それぞれ単一冠動脈の約1/3を占める3).また,冠動脈が大血管間(interarterial course)もしくは流出路中隔壁内(intraseptal course)を走行する場合は心筋虚血を生じるリスクがあり,malignant courseに含まれる.
冠動脈起始部がsinotubular junction(STJ)よりも頭側にある場合を指す.小児において明確な定義はないが,成人領域ではSTJよりも1 cm以上離れて起始する場合と定義されている2, 42).血行動態的な意義は乏しいが,選択的冠動脈造影の際にカテーテル挿入が困難になることや,開心術における大動脈切離の際に誤って損傷する恐れがあることなどの点で注意が必要である.
C) 冠動脈交連起始(commissural ostium)大動脈弁交連に近接して冠動脈が開口する場合を指す(成人においては開口部と交連間の距離が5 mm未満)42).
左冠動脈が右冠動脈洞,右冠動脈が左冠動脈洞から起始する異常を指す.また,非常に稀ではあるが,無冠動脈洞から冠動脈が異常起始する場合も含まれる.
A) 左冠動脈右冠動脈洞起始(anomalous aortic origin of left main coronary artery: AAOLCA);前下行枝右冠動脈洞起始(anomalous aortic origin of left anterior descending artery: AAOLAD)成人の先天性冠動脈異常に占める頻度は4~10%3, 35)
,小児を含めた報告では5~7%である37, 39)
.左冠動脈の走行パターンにより以下の4種類に分類される(Fig. 3)2, 43)
.
AAOLCA: anomalous aortic origin of left coronary artery; AAORCA: anomalous aortic origin of right coronary artery; AF: anterior free wall course; IA: interarterial course; IS: intraseptal course; RA: retroaortic course.
左回旋枝右冠動脈洞起始,左回旋枝右冠動脈起始
左の回旋枝が右冠動脈洞もしくは右冠動脈から起始し,大動脈の背側を走行し回旋枝領域に至る.頻度は先天性冠動脈異常の30~50%を占め,先天性冠動脈異常のなかで最も遭遇する機会の多い異常所見である3, 35, 44)
.単独で存在する場合は病的意義に乏しいが,心房中隔二次孔欠損を合併し,これに対してAmplatzer septal occluderによる経皮的心房中隔欠損閉鎖術を行う場合には閉鎖栓のdiskによる回旋枝の圧迫・虚血が起こりうる45).また,大動脈弁置換を含む大動脈弁基部の手術の際には冠動脈の損傷・圧排のリスクが高くなる.単一冠動脈のL2-P, R2-PおよびR3においても大動脈背側を冠動脈が通過することから,AAOLCA-RAと同様に前述の治療前には経食道心エコー等による大動脈背側の冠動脈について確認が必要である.
Malignant courseのなかでも最も心筋虚血のリスクが高く,突然死をきたす可能性のある冠動脈異常として認識しておくべき疾患である36).左冠動脈本幹が右冠動脈洞から鋭角に起始し,大動脈壁内を走行(intramural)した後に,左右冠尖の交連を越えてから大動脈壁から離れる.大動脈壁内走行を伴わない症例もあるが,稀である.心エコーにて診断する際には,必ず大血管間走行部位にカラードプラを当てて異常冠動脈血流の有無を確認する必要がある.二次元画像のみではあたかも左冠動脈が正常位置から起始しているように見えることがあり誤診につながりやすい.本病変は青年期のアスリートやアメリカの新兵等における心臓関連突然死の原因の約1/3を占める6, 47)
.しかし,稀ではあるが,突然死は青年期や運動時だけに限らず,より若年においては非運動時に発生するケースも報告されている48).この冠動脈異常において特に運動時に心筋虚血を引き起こす機序としては,①心拍出量増加に伴って両大血管が拡大し,間を走行する冠動脈を圧排;②運動による血圧上昇や冠動脈入口部での血流加速に伴ったVenturi効果によるスリット状開口部の狭窄・閉塞;③鋭角に起始する冠動脈開口部内壁の血圧上昇に伴った外側への圧排による狭窄・閉塞;④壁内走行(intramural)部位,特に交連部での狭窄等が考えられている43, 49, 50)
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Fig. 4に16歳男児の自験例(AAOLCA-IA)を示す.この症例は学校でのマラソン中に心室細動から心肺停止となり自動体外式除細動器(AED)による蘇生を受けた後に当院へ搬送された.神経学的後遺症なく回復し,冠動脈の大動脈壁内走行部位に対してunroofingを施行した.
(A): Trans-esophageal echo: Note the flow acceleration at the entrance of the intramural course of the left main coronary artery (white arrow head).(B): Enhanced CT: left coronary artery arises from the right aortic sinus at an acute angle and courses intramurally and interarterially (black arrowhead).(C): Enhanced CT: left main coronary branches into left anterior descending and circumflex artery.Cx: left circumflex artery; LAD: left anterior descending artery; L: left aortic sinus; NF: non-facing sinus; R: right aortic sinus.
右冠尖や右冠動脈から起始した左冠動脈や前下行枝が右室流出路腹側(前方)を左方へ横走し,その後に左前下行枝へつながる.この走行異常は特にファロー四徴に合併して認められることが多い.
(4)右室流出路円錐部中隔内走行(intraseptal(transeptal/intramyocardial/tunneled/intra-conal)course: AAOLCA-IS)左冠動脈が右冠動脈洞起始後に室上稜の頭側において心室中隔筋層内を貫通し,心外膜側に出た後に前下行枝と回旋枝に分岐する36).この病態の予後についての見解は報告によって異なるが,Corradoらは突然死症例の剖検において冠動脈起始異常と診断された9例のうち6例が中隔内走行であったと報告しており,突然死のリスクのあるmalignant courseと考えられている47).
B) 右冠動脈左冠動脈洞起始(anomalous aortic origin of right coronary artery: AAORCA,またはR-ACAOS: right anomalous coronary arteries originating from the opposite sinus46))右冠動脈が左冠動脈洞から鋭角に起始し,両大血管間を走行する異常を指す.AAOLCA-IAと同様に,開口部近位部の大動脈壁内走行を合併しやすい.Intravascular ultrasound(IVUS)等による観察では,壁内走行部位は側方から押される形でスリット状に狭窄しており,狭窄の程度は拍動性に変化し,収縮期に狭窄が最大となる.最狭窄部位は開口部近くの壁内走行近位部であり,狭窄率は面積比で平均50%(最大80%)であった50).本病態はAAOLCA-IAよりもリスクは低いと考えられているが,突然死を引き起こす可能性のある冠動脈異常の一つであり,malignant courseに分類される51).Fig. 5に15歳女児の自験例を示す.本症例は運動時胸痛を主訴に来院.経胸壁心エコー検査にて左冠動脈洞から起始した右冠動脈が両大血管間を走行しているのがカラードプラにて確認できる.AAOLCA-IAの症例と同様に,カラードプラにより両大血管間の異常な血流信号を丹念に評価することが本疾患の発見につながる.
(A): Trans-thoracic echo: right coronary artery arises from left aortic sinus and runs the intramural course. Note the red-colored Doppler flow in the intramural course (white arrowheads).(B): Enhanced CT: right coronary artery arises from the left aortic sinus at an acute angle and courses intramurally and interarterially (black arrowheads).(C): Three-dimensional CT.L: left aortic sinus; NF: non-facing sinus; R: right aortic sinus.
極めて稀な冠動脈異常であり,左・右冠動脈いずれについても散発的な症例報告があるのみである.完全大血管転位に伴うこともあるが,この場合はnon-facing sinusから冠動脈が起始するものを指す.開口部に問題がなければ病的意義に乏しいが,左冠動脈無冠動脈洞起始にslit状の冠動脈開口部狭窄を伴った症例において運動中突然死の報告がある43)
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AAOCAの治療方針については疾患が稀であることから,これまでエビデンスの構築が困難で,治療方針については施設間の差異が大きかった.介入に積極的な施設では大血管間走行を伴うAAOLCA-IAについては発見され次第手術をすることを推奨しているが49),無症状で負荷検査にても心筋虚血が認められない場合は経過観察を行っている施設もある48).しかし,本疾患により突然死した27例(AAOLCA-IA=23; AAORCA=4)を解析した報告によると,約半数の12例は生前に運動負荷を含む何らかの生理機能検査を受けていたが,検査所見は全く正常であった51).このことは既存の検査では大血管間走行を伴うAAOCAによる心筋虚血や突然死のリスクを検出できない可能性を示唆する.このような現状を踏まえて,2011年にAHA/ACCより血管再建術のガイドラインが発表されている.これによれば,AAOLCA-IAに対しては一律手術介入を行うべきであるとされている(Class I(Level of Evidence B)).一方,AAORCAについては心筋虚血の所見があれば介入すべきであるとされている(Class I(Level of Evidence B)).また,前下行枝が大血管間走行をするAAOLAD-IAに対しても手術介入は妥当な選択肢の一つとされている(Class IIb(Level of Evidence C))52).治療法についての詳細は次章に譲るが,壁内走行部のunroofingやステントの有効性が報告されている49, 50)
.内胸動脈等を用いたバイパス術は,安静時に比較的良好に流れている順行性血流との拮抗作用のためにグラフト閉塞をきたす可能性があることから,適応については慎重に判断する必要がある.
この冠動脈起始異常は,左右いずれか,もしくは両方の冠動脈が肺動脈から起始する異常を指す.以下の5種類が存在する.
A) 左冠動脈肺動脈起始(anomalous left coronary artery from the pulmonary artery: ALCAPA)(Bland-White-Garland症候群)1886年にBrooksにより本疾患の最初の剖検報告が行われた53)
.その後1933年にBland, WhiteおよびGarlandらにより本疾患の系統だった報告が最初になされたことから,彼らの頭文字をとってBWG症候群とも呼ばれる54).本疾患の頻度は1/30万生産児と稀であり,また特殊な病態では学童期や成人期に発見される(成人型)こともあるが,ほとんどの症例は生後2~3カ月で発症する(乳児型)55).初発症状が重度の循環不全によるショックのことが多くあり,大動脈弁狭窄や大動脈縮窄等を除外した上で拡張型心筋症との鑑別が重要になる.心エコーによる左冠動脈血流の描出が非常に重要になるが,左冠動脈の肺動脈還流部は症例によっては確認困難なことがある.しかし,末梢左冠動脈は比較的容易に描出でき,カラードプラのスケールを下げることにより冠動脈内の血流を確認し,拡張期もしくは連続性の逆行性血流を確認できるようであれば診断は確定的となる(Fig. 6).左冠動脈還流領域の虚血性変化,特に左前乳頭筋のエコー輝度上昇や前中隔から左室前壁の心内膜エコー輝度上昇なども支持所見として有用である.また,心拡大と乳頭筋機能不全に伴った重度の僧帽弁閉鎖不全を合併する(Fig. 6).右冠動脈の拡大も支持所見として有用であるとされるが,この所見は側副血管の発達が未熟な乳児期早期には顕著でないことが多い.左冠動脈の肺動脈への開口部は肺動脈背側(facing sinus)が多いが,前肺動脈洞や左右肺動脈分岐部等の大動脈基部から離れた場所へ還流する場合もあり,還流部位の診断は手術法の選択の上で術前情報として必要である56).エコーでの診断が不可能な場合には造影検査を行う.なお,成人型おいては,左冠動脈の肺動脈還流部に狭窄が存在し,肺動脈へのcoronary stealが起こりにくい血行動態に加えて,右冠動脈から左冠動脈灌流領域への側副血行路が非常に発達していることが多い.また,ほとんどのALCAPA症例は単独の心疾患であることが多いが,動脈管開存症等の短絡性心疾患を合併することにより肺高血圧が維持されている場合や末梢性肺動脈狭窄により主肺動脈圧が高圧に維持されている場合などもcoronary stealを軽減し症状が緩和されていることがある.これらの症例では合併心奇形の治療後に急速に心筋虚血が進行しALCAPAの症状が出現することがある.治療については,乳児型においては診断が確定次第,全例速やかに手術介入を行う必要がある.一方,成人型においても突然死の発生率が8割を越えることから,たとえ無症状で虚血所見を欠く症例に対しても手術介入を行うことが推奨されている2).手術には左冠動脈の大動脈への移植やTakeuchi法等が知られているが,詳細については他章に譲る.なお,合併する僧帽弁閉鎖不全に対して僧帽弁の形成術を同時に行うかどうかについては未だ統一された見解はない.
(A): Left coronary artery: Note the retrograde flow in the left coronary artery (white arrowheads) that drains into the posterior aspect of the pulmonary artery.(B): Right coronary artery at the normal position of the right aortic sinus with antegrade flow.(C): Short axis view of the left ventricle: Note the increased brightness of the endocardium of the anteroseptum and anterolateral papillary muscle (arrow).(D): Apical chamber view displays moderate mitral regurgitation.AO: aorta; LCA: left coronary artery; PA: pulmonary artery; RCA: right coronary artery.
右冠動脈が肺動脈から起始する異常を指す.頻度的にはALCAPAの1/10程度とされ,非常に稀な疾患である.これまでに文献上70例の報告があるのみである.本疾患の約1/3において何らかの先天性心疾患(大動脈肺動脈中隔欠損,ファロー四徴,両大血管右室起始等)を合併する.ALCAPAと比して症状は軽く,約半数が心雑音(主に連続性心雑音)で発見され,次いで胸痛で発見されることが多い.しかし,心不全で発症する症例が約1割存在し,心筋梗塞や突然死の報告もあることから原則手術介入が行われる.心エコーでは左冠動脈の拡大と側副血管を認める.右冠動脈は側副血管から逆行性に充満され,肺動脈に結合する.肺動脈への短絡量が多い症例では左室の拡大に加えて右冠動脈も拡大していることが多い.手術はほとんどの症例で右冠動脈の大動脈基部への移植が行われている.移植の適応に何らかの問題があり,側副血管が発達している症例では例外的に右冠動脈の結紮が行われる57)
.
左前下行枝が肺動脈から起始する異常を指す.非常に稀であるが,症状や所見はALCAPAに類似する.
D) 左回旋枝肺動脈起始(anomalous left circumflex coronary artery from the pulmonary artery: ALCxPA)左回旋枝が肺動脈から起始する異常を指す.ALCAPAと異なり,肺動脈への開口部は末梢肺動脈が多い.
E) 総冠動脈肺動脈起始(total anomalous origin of coronary artery from the pulmonary artery: TACAPA)左右冠動脈がともに,もしくは単一冠動脈が肺動脈から起始する奇形を指す.生理的肺高血圧が消失すると急速に心筋虚血が進行することから,乳児期早期に死亡することが多い.約7割において何らかの先天性心疾患(心房中隔欠損,心室中隔欠損,ファロー四徴,肺動脈閉鎖等)を合併する58).
これらの開口部狭窄は冠動脈対側冠動脈洞起始に合併することが多いとされているが,正常の冠動脈洞起始症例にも合併しうる.突然死のリスクとなりうる先天異常であり,Corradoらによる剖検報告の3例のうち2例は小児であり,いずれも繰り返す失神の既往を有していた47).
左右冠動脈いずれにおいても先天性開口部閉鎖が報告されている59–61)
.これは単一冠動脈とは異なり,左右冠動脈の主幹部が形成されているにも関わらず大動脈内腔との交通が閉鎖しており,血流は対側の冠動脈からの側副血管によって供給されている状態を指す.左冠動脈閉鎖(left main coronary artery atresia: LMCAA)はこれまで文献上54例の報告がある59, 60).これらのうち約半数は小児例であり,発症は生後7週から17歳にわたり,症状は体重増加不良などの心不全症状に加えて,失神,突然死など重篤なものが多い.一方,成人においては報告の65%以上が50歳以上であり,大多数の初発症状は胸痛であった.小児期発症の症例においては左前下行枝が低形成のことが多く,側副血管の発達も十分でないことが多いことから,虚血による心機能障害が症状の前面に出やすいと考えられる.これに反して成人では,右冠動脈の円錐枝や鋭角枝がよく発達し,左前下行枝への良好な側副血管を形成していることが多い.側副血管の発達状態が発症時期や症状に大きく関与すると考えられる.また,右冠動脈閉鎖は更に稀であり,文献上の報告は4例しか存在しないが,動脈硬化性病変による右冠動脈完全閉塞と混同されている可能性があり,頻度については過小評価されていると考えられる61).
冠動脈のある区間が心外膜脂肪組織中から心筋壁内に埋没して走行する状態を指す.この冠動脈区間においては冠動脈の表層を心筋組織が被覆する状態となる.剖検において15~85%の頻度で認められており,特に左前下行枝に最もよく観察される2).左前下行枝の約50%に認められ,右冠動脈と左回旋枝にはそれぞれ約5%の頻度で認められるとの報告もある.収縮期に架橋部分の心筋が収縮することにより冠動脈が圧排を受けるが,成人領域ではよく観察される所見であり,一般的に良性所見と考えられている.しかしごく稀に虚血所見を呈することがあり,虚血による症状を呈する場合や収縮期の架橋部分の冠動脈狭窄が75%を超える場合には手術による架橋心筋の切除が推奨される62)
.
2本の冠動脈が同一の大動脈洞より起始し,平行して走行する状態を指す.例えば重複左前下行枝であれば,2本の血管が左冠動脈洞より起始し,前心室間溝を並走する状態を指す.通常2本の血管のうち1本は低形成のことが多い.左前下行枝や右冠動脈に認められることが多く,左前下行枝の0.13~1%に認められる2).基本的に良性の冠動脈異常であるが,冠動脈バイパス術の際に問題となることがある.
冠動脈といずれかの心内腔,もしくは毛細血管床を介さずに冠静脈,肺動脈などの血管系と直接交通する先天奇形を指す.冠静脈系・右房・右室と交通する場合は肺体血流量比(Qp/Qs)が増大し,両心への容量負荷となる.一方,左房・左室と交通する場合は左心系への容量負荷となりQp/Qsは増大しない.冠動脈瘻が左房に交通する場合は左房・左室への容量負荷となり僧帽弁閉鎖不全症に類似した血行動態となり,左室へ開口する場合は左室のみへの容量負荷となり大動脈弁閉鎖不全に類似した血行動態となる.頻度的には右心系と交通する冠動脈瘻が全体の9割を占め,左室と交通する冠動脈瘻は最も頻度が少ない.先天性心疾患に冠動脈瘻を合併する頻度は0.3%,一方,正常心構造においては0.08~0.67%と報告されている40, 63)
.左冠動脈と主肺動脈間の軽微な冠動脈瘻は臨床的によく遭遇する所見であり,短絡量も少ないことからほとんどの場合で放置可能である.実際,冠動脈瘻の75%は偶然発見され,そのほとんどは臨床的に無害であるとされている64).しかし,なかには多短絡のために心不全症状を呈する症例や,経年的に冠動脈が瘤状拡大してくる症例,または心筋虚血所見を呈してくる症例があり,これらは治療対象となる.2014年に日本循環器学会から発行されたカテーテル治療のガイドラインによると,有症状の場合は治療適応とされている(Class I(Level of evidence B)).また,無症状の場合でも中等度以上の冠動脈瘻であれば治療の適応とされている(Class IIa(Level of evidence C))65)
.しかしガイドラインではどのような症例が中等度以上の冠動脈瘻に相当するかについての明確な規定が示されていない.Latsonらは冠動脈瘻の程度を以下のように分類しており重症度分類の参考となる.
また,Angeliniは以下のような治療適応の基準を挙げている.
ただしこれらの基準のなかで,本疾患による感染性心内膜炎のリスクについては十分なエビデンスがないと先のガイドラインでは指摘している.また,冠動脈の瘤状拡大を伴った冠動脈瘻に対して瘻孔閉鎖を施行した場合には,術後に瘤内の血流停滞による血栓形成のリスクが高くなる.このことは無症状の症例に対する治療介入の際のジレンマとなる.このような症例に対する治療に関しては,術前の十分な説明と治療後の十分な抗凝固療法と慎重な経過観察が必要になる.なお,カテーテル治療には各種コイルやAmplatzer Vascular Plug等が使用される.成人においてはcovered stentを使用した報告があり,特に瘻孔部に近接して動脈硬化性病変を合併する場合に有用である66).
先天性心疾患に合併する冠動脈異常は,大血管の発生異常である円錐動脈幹奇形(conotruncal malformation)に合併することが多い.また,大動脈弁疾患に合併することも多く,特に大動脈弁二尖弁や不均衡大動脈洞(asymmetry of the aortic sinus)に合併しやすいことが知られている.
本疾患における冠動脈走行パターンの代表的な表記法にShaher分類とLeiden大学の表記法(Leiden Convention)がある.1966年にShaherらはdTGAの冠動脈パターンを18種類に分類して報告した67).Shaher分類はよく使用される分類法ではあるが,30種類以上存在すると言われるdTGAの冠動脈パターンを全て網羅できない限界を有する.Leiden Conventionは大動脈弁のnon-facing sinus(肺動脈に近接しない大動脈洞)から肺動脈弁を観察したときに,右手側にある大動脈洞をsinus-1(right hand facing sinus),左手側をsinus-2(left hand facing sinus)として各大動脈洞から起始する冠動脈を記載する(左前下行枝=L; 左回旋枝=Cx; 右冠動脈=R).正常の冠動脈起始の表記は{1R; 2LCx}となる(Fig. 7).Fig. 8に静岡県立こども病院にて1998年~2010年の間にJatene手術を施行した66例における冠動脈走行パターンの内訳を示す68)
.dTGA1型においてはShaher1型{1LCx; 2R}とShaher2A型{1L; 2RCx}で9割を占めるが,dTGA2型とTBAではShaher2AとShaher4 {1LR; 2Cx}の割合が増加した(Fig. 8).また,Jatene術前の冠動脈診断で重要になるのが,高位起始と壁内走行(intramural)の有無である.Fig. 9に術前診断できなかった左冠動脈の高位起始と縦方向壁内走行の症例を示す.術中写真にて大動脈の切開線の延長上に高位起始した左冠動脈の開口部を認める.この冠動脈は高位起始だけでなく,縦方向壁内走行(vertically oriented intramural coronary artery)の異常も合併していた.右冠動脈がsinus-2から起始している断面では大動脈弁の交連が描出されているのに対して,左冠動脈が描出されている断面では大動脈弁の交連が描出されていないことからも高位起始が示唆される.冠動脈壁内走行の大部分は大動脈壁に対して接線方向に走行するが,本症例のように縦方向の壁内走行も存在する.
(A): Normal.(B): d-transposition of the great arteries: Shaher type-1.(C): d-transposition of the great arteries: Shager type-2A.Cx: left circumflex artery; d-TGA: d-transposition of the great arteries; L (LAD): left anterior descending artery; NF: non-facing sinus; R (RCA): right coronary artery.
DORV: double outlet right ventricle; dTGA1: d-transposition of great arteries-type A; dTGA2: d-transposition of great arteries-type 2; TBA: Taussig-Bing anomaly.
(A): A high take-off left coronary artery.(B): Right coronary artery arises from Sinus-2 with antegrade coronary flow at the orifice.(C): The picture during operation: Note the high take-off of the left coronary artery way above STJ. This coronary artery was associated with vertical interamural running.Cx: left circumflex artery; dTGA: d-transposition of great arteries; LAD: left anterior descending artery; LCA: left coronary artery; NF: non-facing sinus; RCA: right coronary artery; STJ: sinotubular junction.
ファロー四徴において冠動脈異常が合併する頻度は5~12%と報告されている.冠動脈異常の内訳は以下のようになる.前下行枝右冠動脈起始右室流出路腹側走行(AAOLAD-AF)(58%)(Fig. 10),右冠動脈の左冠動脈起始(17%),右冠動脈の左前下行枝起始(6%),単一右冠動脈(R2-A)(3%),また太い円錐枝(conal branch)の右室流出路走行(17%)である69, 70)
.いずれも血行動態的上の問題はないが,主要な冠動脈が右室流出路(肺動脈弁輪の下方平均10 mm)を横切ることから,心内修復術の際に右室流出路拡大が必要な症例において手術手技を困難にすることがある.心エコー検査にて右室流出路前面を横切る冠動脈が疑われた場合には,大動脈造影やCT等で冠動脈の走行を確認しておく必要がある.
(A): Selective right coronary arterial angiogram from the anteroposterior view: LAD (arrows) originates from the RCA.(B): Lateral view of the same selective right coronary arterial angiogram: LAD (arrows) runs on the anterosuperior side of the right ventricular outflow tract.LAD: left anterior descending artery; RCA: right coronary artery.
総動脈幹遺残は冠動脈異常を合併しやすい先天性心疾患であり,冠動脈起始部の異常に常に留意しておく必要がある.冠動脈の高位起始は比較的よく遭遇する所見であり31%に認められ,単一冠動脈も4~18%に認められる71).また,左右冠動脈は心尖方向から観察して時計方向に回転した位置から起始していることが多く,左冠動脈の開口部は動脈幹基部の背側に位置しやすい.左前下行枝の低形成を伴うこともあり,この場合は右冠動脈からの円錐枝が代償性に大きく発達し,右室流出路の広い範囲へ血流供給していることがある.なお,冠動脈開口部がtruncal valveの交連に近接している場合には,異型性の強い弁組織が開口部を被覆して冠血流障害を起こすこともある.Truncal valveに中等度以上の閉鎖不全を合併する場合には,拡張期血圧も低値となることから,冠動脈異常の合併は術後の冠循環に大きく影響する.このため,truncal valveの異型性が強い場合ほど冠動脈異常の術前診断が重要になる.
Dams-Kaye-Stansel(DKS)手術の術前検査の際には冠動脈の大血管間走行の有無を確認しておく必要がある.DKS術後に両大血管に挟まれた冠動脈が虚血を呈することがある.また,大動脈が前方(腹側)に位置する心構造の場合に,冠動脈高位起始を合併すると開心術での剥離の際に冠動脈を損傷する恐れがあることから,術前診断と外科への注意喚起が重要になる.
稀な病態であるが,左右短絡性心疾患や特発性肺高血圧により拡大した肺動脈により左冠動脈が圧排されることがある.肺動脈の拡大と肺高血圧に加えて左冠動脈起始部の解剖学的形態の特異性がこの病態の発生に関与していると考えられている.Kajitaらは冠動脈洞から左冠動脈が起始する際の起始角度がより急峻に頭側に向かう場合に肺動脈の圧排病変が起こりやすいと報告している72).
渡辺らは,大動脈弁尖の低形成および弁尖の大動脈洞癒合に伴った冠動脈開口部狭窄・閉塞の4症例を報告している.冠動脈が起始する大動脈洞の弁尖が低形成である場合には本病態に注意する必要がある73)
.
大動脈弁上狭窄には冠動脈開口部狭窄,冠動脈瀰漫性狭窄そして冠動脈拡張の3種類の病変が合併しうる.冠動脈開口部狭窄は大動脈弁上狭窄部組織の一部が冠動脈開口部へせり出すことにより発生する場合や,大動脈弁弁尖と弁上狭窄部の癒合により冠動脈開口部が大動脈弁組織で塞がれることにより発生する.Williams症候群の5%に冠動脈開口部狭窄を合併すると報告されている74).ただし冠動脈開口部狭窄の診断は困難であることから,この頻度は過小評価されている可能性があり,大動脈弁上狭窄に対する術中所見での報告では冠動脈開口部狭窄の頻度は45%に達する75).また,冠動脈開口部は弁上狭窄よりも中枢側に位置することから,冠動脈は常に高圧に曝されており,内膜の肥厚と動脈硬化性病変による瀰漫性の冠動脈狭窄を合併することがある.一方において,冠動脈に瀰漫性の拡張と蛇行が生じる場合もある.Kimらは弁上狭窄の形態が砂時計型の場合には冠動脈拡張を合併しやすく,その約8割に認められ,long-segment型の弁上狭窄形態の場合には冠動脈開口部狭窄を合併しやすいと報告している76).冠動脈拡張の機序については不明であるが,高圧に暴露されていることによる2次性変化と考えられている.
純型肺動脈閉鎖においては,胎生期に右室が高圧になることで正常な冠動脈の発生が障害され,類洞と冠動脈の交通が残存する結果生じると考えられている.類洞を介した右室から冠動脈への血流量が多い場合には,冠動脈の正常な発生を障害し,冠動脈の狭窄や離断を合併する.このように冠血流が大動脈からの順行性血流でなく,右室からの血流に依存する状態を右室依存型冠循環と呼ぶ.Fig. 11に右冠動脈と右室の著明な類洞交通を有する純型肺動脈閉鎖の症例を示す.左冠動脈造影の側面像において左前下行枝が離断しているのが分かる.純型肺動脈閉鎖183例を解析した報告によると,冠動脈異常は45.8%に認められ,7.6%は右室依存型冠循環を有していた77).
(A): Large sinusoidal communication between the right ventricular apex and right coronary artery (arrowhead).(B): Interruption of the left anterior descending artery (arrow).AO: aorta; Cx: left circumflex artery; LAD: left anterior descending artery; RCA: right coronary artery; RV: right ventricle.
剖検による報告では,左心低形成症候群の19%にLVCAFが認められる.このうちの97%は僧帽弁狭窄兼大動脈弁閉鎖の症例に合併しており,残りの3%が僧帽弁閉鎖兼大動脈弁閉鎖の症例に合併していた78).また,Boston小児病院からの剖検報告では,LVCAFは僧房弁狭窄兼大動脈弁閉鎖のみに認められ,このサブタイプの29%に認められた79).左室冠動脈瘻の発生機序は純系肺動脈閉鎖と同様に胎生期において左室内圧が高圧となることで類洞交通が残存する結果生じると考えられている.よって,高圧左室となりやすい僧帽弁狭窄兼大動脈弁閉鎖にLVCAFが多く合併する.また,僧帽弁狭窄兼大動脈弁閉鎖の左心低形成症候群の胎児に,卵円孔狭小ないしは早期閉鎖が合併する場合には,上昇した左房圧を駆動圧としてrestrictiveな左室へより多くの血液が押し込まれる血行動態となる結果,LVCAFの発達が助長され高度のLVCAFを形成すると考えられる80).また,非常に稀ではあるがLVCAFに冠動脈開口部閉鎖を合併する症例も報告されており,このような左室依存型冠循環症例では救命が非常に困難になると考えられる79).Fig. 12に左心低形成症候群(僧帽弁狭窄兼大動脈弁閉鎖)に卵円孔早期閉鎖と高度のLVCAFを合併した胎児例を示す.左室からLVCAFを介した血流が前下行枝を逆行して大動脈へ向かう所見を認める.
(A): Early premature closure of the foramen ovale. Note the increased thickness of the atrial septum (arrow) and enlarged left atrium.(B): Retrograde flow (arrowhead) in the left anterior descending artery.(C): Retrograde flow in the left anterior descending artery confirmed by pulsed Doppler.AO: aorta; LA: left atrium; LAD: left anterior descending; LV: left ventricle; RA: right atrium; RV: right ventricle; PA: pulmonary artery.
北米からの報告によると先天性冠動脈異常は人口の約1%に認められる先天性奇形であり,決して稀な疾患ではない.また,American Heart AssociationとAmerican College of Cardiologyによるガイドラインでは青年期の心臓関連の突然死はそのほとんどが心臓の構造異常に関連したものであり,構造異常を伴わないものは約3%にすぎなかったと報告している81).また,AAOCAは突然死のリスクのある疾患であり,Texas州ではこの疾患をスクリーニングによって発見する取り組みを既に開始している82)
.小児科領域における先天性冠動脈異常の報告は現時点では欧米からのものが中心であり,アジア圏からのまとまった報告は未だない.川崎病後の冠動脈評価をこれだけ熱心に行っている日本において,冠動脈の先天異常を目にする機会が少ないのは何故であろうか? もちろん,発症頻度については人種間差異が関与している可能性はあるが,エコー検査の際に冠動脈起始部の確認をカラードプラを用いて確認できているであろうか? 先天性冠動脈異常を肥大型心筋症に次ぐ突然死を起こすリスクのある心臓構造異常として,日常診療で診断に当たる必要がある.
この論文の電子版にて動画を配信している.
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