Online ISSN: 2187-2988 Print ISSN: 0911-1794
特定非営利活動法人日本小児循環器学会
Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 32(6): 518-523 (2016)
doi:10.9794/jspccs.32.518

症例報告

経皮的経カテーテル動脈管閉鎖術を契機に急性発症し診断に至った左冠動脈肺動脈起始症の1例

1JCHO中京病院中京こどもハートセンター小児循環器科

2JCHO中京病院中京こどもハートセンター心臓血管外科

受付日:2016年9月1日
受理日:2016年11月4日
発行日:2016年11月1日
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10か月健診時の心雑音を契機に動脈管開存症(PDA),肺高血圧症(PH)と診断されて当院を受診した.12か月時に当院にて経皮的経カテーテル動脈管閉鎖術を施行したところ経胸壁心臓超音波検査にて心機能低下,血液生化学検査にて心筋逸脱酵素の上昇,心電図にて異常Q波が出現した.経胸壁心臓超音波検査再検にて主肺動脈からの左肺動脈起始を確認し左冠動脈肺動脈起始症(ALCAPA)と診断し,開胸手術を行った.ALCAPAは典型的には生後8週頃に肺血圧の低下に伴い左冠動脈の潅流が不良となり心不全を発症する疾患であるが,動脈管開存症(PDA)をはじめとした肺血流増多疾患を合併した場合,左冠動脈の潅流が維持されるため乳児期の心不全発症を免れうる.このためPDAを合併したALCAPAは動脈管閉鎖前の診断が極めて困難であるが,未診断下に動脈管閉鎖術を施行した場合に急激に左冠動脈潅流が悪化して心不全を発症することがある.PH合併PDAの症例では,経皮的経カテーテル動脈管閉鎖術前に冠動脈奇形も念頭に経胸壁超音波検査を行い,それでも否定できない場合は閉鎖前に左室造影や上行大動脈造影を考慮するべきである.

Key words: anomalous origin of the left coronary artery from the pulmonary artery; patent ductus arteriosus; acute myocardial infarction; catheter intervention; preoperative diagnosis

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