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特定非営利活動法人日本小児循環器学会
Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 31(3): 80-87 (2015)
doi:10.9794/jspccs.31.80

Review

CD34陽性細胞移植による血管・組織の再生治療

1公益財団法人先端医療振興財団先端医療センター病院診療部再生治療ユニット ◇ 〒650-0047 兵庫県神戸市中央区港島南町二丁目2番

2公益財団法人先端医療振興財団先端医療センター研究所再生医療研究部血管再生研究グループ ◇ 〒650-0047 兵庫県神戸市中央区港島南町二丁目2番

受付日:2014年11月14日
受理日:2015年1月16日
発行日:2015年5月1日
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CD34は様々な体性幹細胞の表面マーカであり,骨髄由来の造血幹細胞/血管内皮前駆細胞,骨格筋衛星細胞,毛包幹細胞,脂肪組織間葉系幹細胞などに発現している.骨髄または顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte colony stimulating factor: GCSF)動員CD34陽性細胞を用いた血管再生療法は,慢性重症下肢虚血,治療抵抗性狭心症,急性心筋梗塞,拡張型心筋症など様々な心血管疾患患者を対象に開始され,高い安全性と良好な初期成績が報告されている.当研究グループでは,慢性重症下肢虚血患者に対する第I/II相,第II相臨床試験を終え,現在第III相試験の準備中である.最近では,心血管疾患以外に,肝硬変や難治性骨折など,その病態に局所の血流障害が関与する疾病に対しても,GCSF動員CD34陽性細胞移植治療が行われ,良好な初期成績が示されている.

本総説では,骨髄由来CD34陽性細胞を用いた血管再生治療について,前臨床試験および初期臨床試験の成績を紹介し,将来の展望についても言及する.

Key words: CD34; cell therapy; clinical trial; ischemia; regeneration

はじめに

CD34とは細胞膜を貫通する表面抗原であり,骨髄・末梢血の造血幹細胞および血管内皮前駆細胞(endothelial progenitor cell: EPC),骨格筋の衛星細胞,上皮の毛包幹細胞,脂肪組織の間葉系幹細胞などに発現している.つまり,CD34とは生体内における様々な幹細胞のマーカであると考えられている1)

.これらCD34を発現する細胞をCD34陽性細胞と称している.

1997年にAsaharaら2)

がヒト末梢血単核球中のCD34陽性細胞がEPCを豊富に含む分画であることを明らかにして以来,骨髄由来EPCが末梢血への動員,血管形成部位への生着,分化,増殖などを介した「血管発生」に重要な役割を果たすことが知られるようになった(Fig. 1).EPCによる血管再生メカニズムとして,EPC自身による血管発生に加えて,vascular endothelial growth factor (VEGF),basic fibroblast growth factor (bFGF),hepatocyte growth factor (HGF),insulin-like growth factor (IGF)-1,stromal cell-derived factor (SDF)-1などの血管新生因子・サイトカインの発現(paracrine効果)も報告されている3)

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Fig. 1 Schematic differentiation cascade of bone marrow stem/progenitor cells

これらの病態生理学的役割を背景として,難治性虚血性疾患に対するEPC投与による血管再生治療が試みられるようになった(Fig. 2

).治療に用いるEPCは,1)骨髄または末梢血の単核球から,各表面抗原に対する抗体を用いて,CD34陽性細胞またはCD133陽性細胞として分離する,あるいは2)単核球を血管新生因子などとともに培養することによって得ることができる.このうち,CD34またはCD133陽性細胞は,臨床用の細胞分離機器がすでに開発されており,分離工程で細胞培養も要さないことから,その有用性に期待が寄せられている(Fig. 3).

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Fig. 2 Vascular regeneration by transplantation of EPCs

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Fig. 3 Principle of the magnetic isolation of CD34+ cells and the medical device for cell isolation

S, stem cell.

本稿では,骨髄または末梢血のCD34陽性細胞を中心に,EPC移植による各種循環器疾患に対する血管再生治療の前臨床および臨床試験の成績を紹介する.また,CD34陽性細胞移植による血管再生効果を生かした,循環器領域以外の疾患に対する再生治療についても概説する.

1. 重症下肢虚血

下肢虚血の原因疾患として,動脈硬化を主病態とする閉塞性動脈硬化症(atherosclerosis obliterans: ASO),血管炎によるバージャー病・膠原病などがあるが,虚血が高度に進行し,下肢安静時疼痛または潰瘍・壊死を呈するに至った病態は重症下肢虚血(critical limb ischemia: CLI)と称されている.CLI発症後1年の転帰は,死亡25%,大切断後生存30%,CLI持続25%であると報告されており,いくつかの進行性悪性腫瘍に匹敵するほど予後不良である.一般に,下肢虚血に対する治療は,まず薬物療法が試みられ,症状改善が認められない場合には外科的バイパス手術や血管内治療による血行再建が試みられるが,およそ25~40%のCLI患者においてこれら血行再建術の適応がない4)

.CLI患者に対する治療の最大の目的は救肢・救命であるが,現行の血行再建術の適応がない,あるいは治療抵抗性の患者においては,きわめて予後不良である.このようなNo option CLI患者に対する新たな血行再建治療として,EPC移植による血管再生治療が注目されている.

Kalkaら5)

は,健常人の末梢血単核球を培養して得られたEPCを用いて,ヌードマウスの下肢虚血モデルに対する血管再生治療を試みた.EPCを下肢虚血2日後に静脈内投与すると,移植された細胞が虚血部位に集積し,マウス由来の血管内皮細胞と共同して血管再生に貢献していることが組織学的に確認された.組織学的な毛細血管密度やレーザードプラ法による虚血肢の血液灌流も,細胞移植後に有意に改善した.この結果,重症虚血後壊死に対する下肢温存率が,対照群で7~8%にすぎなかったのに対し,EPC移植群では59%と著明に改善した.Losordoらは,健常人への顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte colony stimulating factor: GCSF)皮下注射後に末梢血から採取・分離したCD34陽性細胞を下肢虚血ヌードラットに移植し,同様に良好な成績を確認した(未発表データ).

以上の前臨床試験成績を基に,筆者らは6)

,2003年から「慢性重症下肢虚血患者に対する自家末梢血血管内皮前駆細胞(CD34陽性細胞)移植による血管再生治療に関する第I/IIa相試験」を実施した.全17例の患者背景は,男性9例,女性8例,平均年齢50歳,ASO 5例(うち1例は維持血液透析患者),バージャー病12例,Rutherford分類では4群6例,5群9例,6群2例であった.細胞の採取・分離法であるが,5日間のGCSF製剤の投与により末梢血に動員された単核球をアフェレシスで採取し,さらに磁気細胞分離装置(CliniMACS®)を用いてCD34陽性細胞を分離した.分離されたCD34陽性細胞は,純度が平均93%,生存率が平均87%の高い品質を示した.得られたCD34陽性細胞は,腰椎麻酔下で虚血下肢筋肉内へ移植した.全症例で治療後1年以内の死亡・下肢大切断は発生せず,自立歩行機能を温存し得た.また,潰瘍・壊死の治癒,虚血性疼痛の改善,足趾上腕血圧比(TBI),経皮的酸素分圧(TcPO2)などの生理学的血流指標の経時的改善が認められ,CLIからの離脱率は治療後1年で88%の高率であった.また,治療後4年におよぶ長期成績についても検討した.死亡は移植後2年まで発生せず,それ以降に4例が心疾患により死亡したが,本細胞治療との関連は否定された.下肢大切断は治療後4年間発生しなかった.CLI離脱率は,治療後4年まで80%以上の高率を維持した.TBIは治療後4年,TcPO2は治療後3年まで,治療前に比して有意な改善を示した(Fig. 47)

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Fig. 4 Potential efficacy of CD34+ cell therapy in patients with critical limb ischemia (CLI)

a: Representative recordings of brachial and toe blood pressures before and 4 weeks after CD34+ cell therapy. Improvement in lt. toe pressure can be observed (arrows). b: Serial changes in various efficacy parameters such as ankle brachial pressure index (ABI), toe brachial pressure index (TBI), and transcutaneous partial oxygen pressure (TcPO2). * p<0.05; ** p<0.01. c: Long-term outcome of CD34+ cell therapy; CLI-free ratio until 4 years after cell injection.

以上のように,初期臨床試験で良好な安全性・有効性成績が示されたが,筆者らは,さらにCD34陽性細胞分離機器(Isolex®)の薬事承認を目指し,2008年から医療機器Good Clinical Practice(GCP)に準拠した医師主導治験を開始した.本治験は,再生医療領域における本邦初の医師主導治験であった.対象は11例のCLI患者であり,その背景は,男性6例,女性5例,平均年齢49歳,ASO 4例(透析患者は除外),バージャー病7例,Rutherford分類では4群6例,5群5例であった.この医師主導治験においても,前述の第I/IIa相試験での良好な成績がほぼ再現された.すなわち臨床的イベントとしては,治療後1年間の死亡例なし,感染性壊疽による下肢大切断1例,予定外小切断なしであった.CLI離脱率は治療後6ヶ月で約80%の高率であり,各種の安静時疼痛スケール,生理学的血流指標,Quality of Life指標は治療後経時的に改善した8)

.現在,第III相の検証的治験に向けて準備を進めている.

最近,米国からもASOによるCLI患者28例に対するGCSF動員CD34陽性細胞移植の第I/II相プラセボ対照試験(ACT34-CLI試験)の成績が報告され,非切断生存率がプラセボ群に比してCD34陽性細胞群で有意に高かったという9)

.Dongら10)も,25例のCLI患者に対するGCSF動員CD34陽性細胞移植を試み,安静時痛スコアの軽減,足関節上腕血圧比(ABI)・TcPO2の改善を報告している.

また,Tanakaら11)

は,糖尿病性潰瘍患者に対してGCSF動員CD34陽性細胞移植を実施し,潰瘍の治癒,皮膚灌流圧の改善などの効果を報告している.

2. 急性心筋梗塞

急性心筋梗塞に対しては,緊急冠動脈インターベンションによる再疎通療法が普及し,その急性期予後は著しく改善されたが,発症6時間以降に再疎通療法が実施された場合には,左室機能温存効果が乏しいことが知られている.再疎通後にも左室機能低下が遷延する症例では,慢性期心不全,死亡などの予後不良イベントの発生率が高く,このようなハイリスク患者群に対して,細胞治療による心血管再生効果が期待されている.

筆者ら12)

は,ヌードラット急性心筋梗塞モデルに対して,健常人末梢血単核球を培養して得られたEPCを静脈内移植し,EPC移植による梗塞境界領域における毛細血管密度の増加,左室線維化面積の縮小,左室収縮能の改善などの効果があることを報告した.また,健常人のGCSF動員CD34陽性細胞の心筋内移植でも同様の効果があることを示した.この研究では,末梢血単核球の心筋内移植と安全性・有効性を比較したが,単核球移植では細胞用量が高くなると移植後に炎症細胞浸潤・心筋内出血が重篤化し,血管再生・心機能改善効果が低下したが,純化CD34陽性細胞移植ではこれらの副反応は認められず,高い有用性が示された13).CD34陽性細胞の単核球に対する優位性を示すもう一つの成績として,Hofmannら14)による臨床研究が挙げられる.FDG標識した単核球またはCD34陽性細胞を急性心筋梗塞患者の冠動脈内に移植し,その後の体内分布をPETでトレースしたところ,単核球移植の場合は移植細胞の多くが肝臓・脾臓に集積し,心臓でも梗塞部位の中心に認められたのに対し,純化したCD34陽性細胞移植では梗塞境界領域に特異性高く集積していた.これらの所見から,冠動脈内投与されたCD34陽性細胞は,効率高く虚血部に集積し,心血管再生に寄与しうることが示唆される.

以上の前臨床研究を基盤として,Quyyumiら15)

は,急性心筋梗塞患者31例を対象に自家骨髄CD34陽性細胞の冠動脈内移植に関する第I相用量漸増試験を実施した.CD34陽性細胞移植後に心筋シンチによる心筋灌流が改善し,MRIによる心筋梗塞範囲が縮小することを示し,これらの効果の用量依存性も報告した.これに引き続き,160例の急性心筋梗塞患者を対象にした第II相ランダム化プラセボ対照試験(PRESERVE試験)が実施中で,すでに全症例への治療および経過観察が終了している.本年中に判明する見込みの総括報告に注目が集まっている16)

3. 慢性虚血性心疾患

慢性虚血性心疾患は,冠動脈硬化を基盤とする,進行性で予後不良の疾患である.本疾患の予後(心臓死,心筋梗塞発症などの心事故発生率)は,狭心症の自覚の有無によらず,心疾患の客観的な重症度,例えば心筋シンチによる負荷時心筋灌流異常,冠動脈造影による冠動脈罹患枝数,心臓MRIによる左室駆出率などに規定される.慢性重症虚血性心疾患患者に対する薬物療法の効果は少なく,多枝疾患例の2年間の死亡率は18%,左室収縮能低下例では2~3年以内に20~25%の症例が心臓死に至ると報告されている.冠血行再建術(血管形成術やバイパス手術)の有効性については,可逆的な心筋虚血を有する多枝疾患例あるいは左室収縮能低下例では虚血の軽減を介して予後と心不全徴候を改善し得る(2~3年以内の心臓死発生率は1~6%)と報告されている.しかし,慢性重症虚血性心疾患患者の中には,冠動脈病変の解剖学的形態や,繰り返す再狭窄・グラフト閉塞のため,従来の冠血行再建術の適応にならない症例が存在し,現状ではこのような症例に対する有効な治療法は確立されていない.

筆者ら17)

は,ブタ慢性心筋虚血モデルを用いて,自家末梢血EPCの移植効果について検討した.EPCの分離には,抗ブタCD34抗体が市販されていないため,抗CD31抗体を用い,非特異的接着細胞の除去も行った.EPCを経カテーテル的に虚血心筋内へ注射したところ,虚血部毛細血管密度の増加,虚血部面積の減少,左室収縮能の改善を認めた.

臨床適用では,Stammら18)

が,慢性心筋梗塞患者に対する冠動脈バイパス術中に自家骨髄CD133陽性細胞の心筋内移植も併用し,術後に左室機能と心筋灌流の改善を確認した.

Losordoら19)

は,慢性重症虚血性心疾患(治療抵抗性狭心症)患者24例に対するGCSF動員自家CD34陽性細胞の経カテーテル的心筋内移植に関する二重盲検プラセボ対照用量漸増試験を行った.同細胞移植による重篤な有害事象は発生せず,各群の症例数が少ないため治療効果を統計学的には解析していないが,心筋虚血に関する自他覚所見(狭心発作頻度,運動耐容能など)はプラセボ群に比してCD34陽性細胞移植群で改善度が大きい傾向が認められた.この結果を踏まえて,167例の治療抵抗性狭心症患者を対象に,多施設共同第II相試験(ACT34-CMI試験)20)が実施され,この大規模試験でもCD34陽性細胞移植による心筋虚血所見の有意な改善効果が確認されている.また,移植後の心血管イベント(死亡,心筋梗塞,緊急再疎通療法など)の発生頻度も,プラセボ群に比してCD34陽性細胞移植群で低下する傾向が示された.

Jimenez-Quevedoら21)

は,治療抵抗性狭心症患者28例を対象にGCSF動員自家CD133陽性細胞の経カテーテル的心筋内移植に関する二重盲検ランダム化比較試験を行った.CD133陽性細胞の心筋内移植治療は安全に行われ,細胞治療群では狭心症重症度や心筋シンチにおける安静時・負荷時スコアの改善などが認められた.以上の成績から,次期大規模臨床試験の開始が期待されている.

4. 拡張型心筋症

いわゆる非虚血性心疾患に対しても,CD34陽性細胞移植の臨床的有用性が報告されている.Vrtovecら22)

は,拡張型心筋症患者110例を対象に,ランダム化オープンラベル試験(GCSF動員自家CD34陽性細胞の冠動脈内投与群55例および標準治療群55例)を実施した.治療1~5年後の左室駆出率および6分間歩行距離は,標準治療群に比してCD34陽性細胞移植群で有意に改善し,5年間のイベントフリー生存率も,標準治療群に比してCD34陽性細胞移植群で有意に良好であった.興味深いことに,心筋シンチで心筋への移植細胞生着率が高かった症例ほど,左室駆出率改善効果が大きかった.

拡張型心筋症におけるCD34陽性細胞移植の効果発現メカニズムは明らかではないが,拡張型心筋症の病態における微小循環障害の関与が報告されており,CD34陽性細胞による微小循環の改善が,左室機能改善に寄与した可能性がある.

5. 循環器領域以外への適用

心血管系以外の組織・臓器であっても,疾患の進展機序に血行障害が関与することがあり,また,各種の組織再生の過程において血管の再生が必須であることが知られている.これらの知見を背景にして,循環器疾患以外の疾病に対してもCD34陽性細胞移植が試みられ,その有用性が報告されはじめている.

整形外科領域では,難治性骨折に対する適用が試みられている.一般に,骨折の90~95%は初回手術で治癒するが,創部の血流障害を合併する例では治癒が遷延し,偽関節に至る.Fukuiら23)

は,ヌードラット偽関節モデルに対してヒトCD34陽性細胞または単核球の局所移植を行ったところ,CD34陽性細胞群でより優れた骨折治癒が得られ,その機序として創部の血管再生・骨再生効果に加え,単核球群に比して細胞移植部の炎症が軽微であることを報告した.この報告を基に,Kurodaら24)は,偽関節患者7例を対象として,GCSF動員自家CD34陽性細胞の骨折部局所移植のパイロット臨床試験を実施した.移植の際には細胞の局所への生着率を高めるため,アテロコラーゲンを足場に用いた.細胞移植は全例で安全に施行された.レントゲン的骨折治癒は,細胞治療後12週で7例中5例(71.1%)の高率で認められ,同研究グループによる自然経過観察例における治癒率(18.1%)に比して著しい高値を示した.

また,消化器内科領域では,肝硬変の再生医療に適用されはじめている.肝硬変の進展過程では,間質の線維化により,類洞細胞から肝細胞への血流が障害され,このため肝細胞の再生が阻害されることが知られている.Nakamuraら25)

は,ヌードラット肝硬変モデルに対してヒト末梢血CD34陽性細胞移植を試み,肝線維化の抑制,肝細胞再生の促進,死亡率の低下を認めた.さらに最近になって,10例の肝硬変患者を対象にGCSF動員自家CD34陽性細胞移植を実施したパイロット臨床試験の結果を報告26)した.それによると,細胞治療後にドプラエコーによる肝血流量の増加,中~高用量移植例における血清アルブミン値の上昇が認められた.

以上のように,循環器以外の領域でもCD34陽性細胞による血管再生治療が組織再生に貢献すると報告されはじめており,今後の研究の発展が期待される.

おわりに

上述したように,骨髄由来CD34陽性細胞の血管再生効果に注目が集まり,まず心血管疾患に対する前臨床試験,それに引き続き臨床試験が試みられてきた.下肢虚血,心筋虚血,拡張型心筋症のいずれの疾患においても,すでに初期臨床試験で良好な成績が報告されており,今後は検証的な第III相試験の実施とその成果が待たれるところである.

また,最近では,循環器以外の分野でも,その病態に局所の血流障害が関与する疾患に対してCD34陽性細胞移植が試みられ,前臨床研究,初期臨床試験で本治療の有用性が報告されている.今後は幅広い分野への治療展開が期待されている.

最後に小児疾患への適応の可能性についても触れておきたい.川崎病による虚血性心疾患,膠原病による末梢動脈血管炎,protein C欠損症,protein S欠損症,アンチトロンビン欠損症などによる血栓症発症後に残存する組織虚血,難治性骨折などは骨髄由来CD34陽性細胞移植の適応になる可能性があると考えられる.今後の研究の進展を期待したい.

この論文は,第17回日本小児心血管分子医学研究会における特別講演をもとに執筆されたものである.

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