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特定非営利活動法人日本小児循環器学会 Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery
Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 31(6): 360-361 (2015)
doi:10.9794/jspccs.31.360

追悼文追悼文

追悼 石澤瞭先生

こどもの木クリニックKodomonoki Clinic ◇ 〒224-0007 神奈川県横浜市都筑区荏田南三丁目1番7号Eda-Minami 3-1-7, Tsuzuki-ku, Yokohama-shi, Kanagawa 224-0007, Japan

発行日:2015年11月1日Published: November 1, 2015
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石澤先生のご逝去に対し心よりお悔やみ申し上げます.

石澤先生に初めてお会いしたのは,私が国立小児病院(現国立成育医療研究センター)のレジデントの時でした.小児循環器科のレジデントとして小児病院に勤務して半年後に,循環器科の医長だった永沼先生が急逝され,浜松医大におられた石澤先生が新しい医長として赴任されることになったと伺った直後のことでした.その時まで石澤先生のお名前は存じ上げず,実際お目にかかったのもその時が最初でした.石澤先生が,フロアーから演題に対して質問に立たれ,マイクに進まれてきた時に,隣に座っていた高野良裕先生に「あの人が新しい医長として来られる石澤先生だよ.厳しい人だから,頑張りな」と耳打ちされたのを覚えています.

その後,暫くして石澤先生が医長として赴任され,最初はかなり緊張していたのを覚えています.しかし,実際に一緒に働いてみると,非常に温厚な先生で,私は循環器医として未熟だったにもかかわらず,ほとんど怒られた記憶はありません.確かに診療に関しては,厳しく指導して下さいましたが,上から押し付けるといった教え方ではなく,我々が考えた治療方針や検査の選択に対して「それも一理あるけど,こういう考え方もあるよ」というような指導でした.

臨床では,石澤先生は常に新しいものへの挑戦をされた方です.日本の小児循環器の世界においては,そのパイオニア的存在でした.特にインターベンションに関しては,その大切さを誰よりも先に訴えて,日本小児インターベンションの基礎を作られ,学会の発足に尽力されました.いろいろな新しいデバイス(装置)の導入にも積極的に参加され,日本の小児インターベンションの基礎を作られた先生です.また,インターベンションのみならず,成人先天性心疾患に対しても,日本の中においていち早くその重要性を提唱され,学会に発表されました.私は小児病院での研修が終わった後,東京大学の小児科に入り,小児科及び小児循環器を専門として仕事をしました.その後,カナダのトロント小児病院循環器科に留学し,そこで成人先天性心疾患を学び「この分野は日本ではほとんど注目されていない.今までは小児循環器および心臓外科は,先天性心疾患の子供達を助けることが主だったけれど,これからは助かった子供達が成人になった時に,どのような問題が出てくるのかを知ることが大切だ」と実感し,この分野での世界的パイオニアである先生のおられたロサンゼルスに移りました.しかし,もう日本では,石澤先生はその重要性に気づかれて学会で発表されていました.そして,ロサンゼルスに日本から電話をいただき「国立小児病院に帰ってきて,日本の成人先天性心疾患をつくりあげよう」と言っていただきました.本当にありがたいお言葉でした.

帰国後,旧国立小児病院循環器科で石澤先生と一緒に働かせていただきました.先生は,心臓カテーテル検査を直接されることはあまりなく,検査室の横のモニター室で画像を確認され,いろいろアドバイスをされることが多かったのですが,なかなか血管にカテーテルが入らない時などに「かしてごらん」とおっしゃり,一発で血管に導入され,「流石です」と拍手喝采の場面を鮮明に覚えています(写真1).

Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 31(6): 360-361 (2015)

写真1 小児病院の心臓カテーテルモニター室で.中央が石澤先生.

旧小児病院から現国立成育医療研究センターに移ってからは,第一専門部の部長になられ,病院の運営にご尽力されていました.それと平行し,循環器科医として外来診療もされ,第7回成人先天性心疾患研究会,第41回小児循環器学会の会長も務められ,微力ながらそのお手伝いをさせていただいたのも,楽しく懐かしい思い出です(写真2).

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写真2 第41回小児循環器学会の会長をされた時の石澤先生.

一方,石澤先生は,多くの趣味を持った方でした.音楽の才能もお持ちで,ギターの腕前もなかなかのものと伺ったこともありますが,特に先生の写真の腕前はプロ顔負けのものでした.奥様の故郷の新潟県水原の瓢湖は,毎年10月になる頃から白鳥がやってきます.その鳥たちを撮った写真は,素晴らしいの一言に尽きます(写真3, 4).

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写真3, 4 石澤先生が撮られた瓢湖の白鳥.

石澤先生,長い間本当にありがとうございました.これからは,先生の教えを受けた多くの循環器医が先生の意思を継いで,小児循環器の発展に寄与することを祈念申し上げまして追悼の辞とさせていただきます.

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