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特定非営利活動法人日本小児循環器学会
Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 31(6): 313-319 (2015)
doi:10.9794/jspccs.31.313

原著

先天性心疾患における不死化B細胞株由来induced pluripotent stem(iPS)細胞の樹立

1東京女子医科大学医学部循環器小児科教室 ◇ 〒162-8666 東京都新宿区河田町8番1号

2京都大学iPS細胞研究所初期化機構研究部門 ◇ 〒606-8507 京都府京都市左京区聖護院川原町53番地

3東京女子医科大学医学部病理診断科教室 ◇ 〒162-8666 東京都新宿区河田町8番1号

4若松河田クリニック ◇ 〒162-0054 東京都新宿区河田町10番7号 グリーンヒルズ河田町2階

受付日:2014年12月24日
受理日:2015年8月31日
発行日:2015年11月1日
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背景:先天性心疾患患者や遺伝性不整脈患者で観察される心電図の波形異常は,心筋細胞におけるチャネルの異常や細胞肥大などによって生じる.我々は,これまでに先天性心疾患患者や遺伝性不整脈患者からEpstein–Barr(EB)ウイルス感染により不死化したB細胞株を樹立し,疾患原因遺伝子ならびにその変異を同定し,マウスモデルなどを用いて変異に関する機能解析を行ってきた.

目的:疾患特異的induced pluripotent stem(iPS)細胞由来心筋細胞を作製して機能解析を行うため,心疾患患者由来の不死化B細胞株からiPS細胞の作製を行った.

方法:洞不全症候群患者の不死化B細胞株にマウスp53DD(dominant-negative),ヒトc-MYCLIN28SOX2KLF-4,OCT3/4を電気刺激により導入した.

結果:遺伝子導入から約3週間の培養後,iPS細胞の形状を示す細胞が観察された.この細胞は,免疫染色の結果,胚性幹細胞(Embryonic stem cell)のマーカーとされる,Oct4,TRA-1-60,SSEA4,Nanog陽性であり,アルカリフォスファターゼ活性が陽性反応を示した.iPS細胞化においても,患者が有する遺伝子変異は保持され,EBウイルスのゲノムはiPS細胞化により消失した.

考察:疾患特異的iPS細胞が得られた.iPS化においても,疾患遺伝子の変異が保持され,EBウイルスの遺伝子発現が消失することは,ウイルスが影響しない病態モデルが作製可能であると考えられる.

結論:山中4因子とmp53DD,hLIN28遺伝子を導入して患者由来不死化B細胞から疾患特異的iPS細胞が作製されたことから,病態モデルの作製が期待される.

Key words: induced pluripotent cells; in vitro disease model; cardiomyocyte; channel; mutation

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