Online ISSN: 2187-2988 Print ISSN: 0911-1794
特定非営利活動法人日本小児循環器学会
Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 31(5): 254-264 (2015)
doi:10.9794/jspccs.31.254

原著

先天性心疾患に対して手術介入を行った18トリソミーの検討

1大阪市立総合医療センター小児医療センター小児循環器内科 ◇ 〒534-0021 大阪府大阪市都島区都島本通二丁目13番22号

2大阪市立総合医療センター小児医療センター小児不整脈科 ◇ 〒534-0021 大阪府大阪市都島区都島本通二丁目13番22号

3大阪市立総合医療センター小児医療センター小児心臓血管外科 ◇ 〒534-0021 大阪府大阪市都島区都島本通二丁目13番22号

4大阪市立総合医療センター総合周産期母子医療センター新生児科 ◇ 〒534-0021 大阪府大阪市都島区都島本通二丁目13番22号

受付日:2015年2月16日
受理日:2015年8月14日
発行日:2015年9月1日
HTMLPDFEPUB3

背景:18トリソミーでは先天性心疾患を高率に合併するが,その生命予後から従来は積極的な治療は行われてこなかった.

目的:先天性心疾患に対して手術介入を行った18トリソミーにおいて,心不全症状の改善や在宅移行への効果および予後を検証すること.

対象と方法:対象は1994年から2012年までに当院で治療した18トリソミー46例.このうち,先天性心疾患に対して手術介入を行ったのは16例で,14例はNICU入院中に在宅移行を目的に姑息術を行い(A群),2例は手術介入なしで退院後,心内修復術を行った(B群).手術介入を行わなかったのは30例(C群).A群,B群の心疾患の内訳,手術術式や成績,在宅移行率,退院後の予後を検討した.また在宅移行率,生命予後については,C群と比較検討を行った.

結果:A群14例で,周術期死亡はなかった.全例で術後心不全症状の改善が得られ,10例(71%)は在宅移行した.退院時,経腸栄養は全例で確立されており,在宅人工呼吸管理を要した例はなかった.在宅移行できた10例中3例は現在生存中であるが,残り7例は,退院後呼吸器感染等を契機に死亡した.A群の在宅移行率は71%,C群は23%であった.経時的生存率はA群では生後1,3,6,12ヶ月で100,86,71,29%,C群では47,37,13,3%であった.生存期間の中央値は,非手術例(C群)で24日に対し手術例(A群)で234日であった.B群2例(心室中隔欠損+肺動脈弁狭窄,心室中隔欠損)は生後7, 5ヶ月に心内修復術を行い経過良好で,明らかな肺高血圧の所見もない.

結論:心疾患以外の重大な合併疾患のない18トリソミーでは,心疾患の姑息術により在宅移行率の向上が見られた.心内修復術を行った例では,心不全症状の改善が得られ,比較的長期生存の可能性も示唆された.18トリソミーの心疾患に対する手術介入は,症例によっては治療の選択肢となりうる.家族との十分な話し合いのうえ,手術介入を含め,個々の症例の状況に応じた対応を行うことが重要である.

Key words: trisomy 18; congenital heart defect; cardiac surgery; hospital discharge; prognosis

This page was created on 2015-08-28T16:27:03.507+09:00
This page was last modified on 2015-09-28T14:04:05.955+09:00


このサイトは(株)国際文献社によって運用されています。