日本小児循環器学会雑誌 Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 36(3): 239-240 (2020)
doi:10.9794/jspccs.36.239

Editorial CommentEditorial Comment

集中治療専門医制度から切った小児循環器領域の課題Issues around Pediatric Cardiology and Critical Care Medicine in Japan, from Intensivist’s Perspective

静岡県立こども病院循環器集中治療科Department of Cardiac Critical Care, Shizuoka Children’s Hospital ◇ Shizuoka, Japan

発行日:2020年10月1日Published: October 1, 2020
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1950年代頃より成人領域では重症患者の管理には集学的治療が有用なことが報告されはじめ,それを提供する場としてICUが整備され,並行して集中治療医という専門性が確立されてきた1, 2).今では多くの施設で集中治療室が整備され,closed/openなどのシステムの違いはあるものの,重症患者は集中治療医を中心として麻酔科医,循環器医,外科医などが合同でチーム医療で対応する,というスタイルが一般的になっている.しかしながら小児においては,特に小児循環器疾患の周術期管理および急性期管理においては,疾患の特異性や希少性,その専門性の高さ(これらは同時に排他性ともなり得ることに留意)から,多くの施設で心臓外科医および小児循環器医に献身的な負担を強いて行われているのが現状である.

松井らは現在の小児循環器集中治療の問題点を専門医制度という観点から考察し,小児循環器医,小児心臓外科医が集中治療の現場で実際に働いているにもかかわらず,「集中治療専門医」を取得できる環境が十分でないことを明らかにした3)

個々の医師にとっては,頑張って診療を続けていても集中治療専門医を取得することができず,モチベーションの維持に影響することもあり得るだろう.また特定集中治療室加算には集中治療専門医が必要であるが,その専門医を自施設内で育成することができない状況となっており,実際にいくつかの小児病院では専門医不在のために専門医研修施設認定が途切れている.医師側から見ても施設側から見ても,決して望ましい状況ではなく早急な改善が求められる.

医療での集約化の必要性が言われるようになって久しく,小児集中治療の分野でも一定の規模があった方が治療成績がよいことが明らかになっており4),「さらに集約化を進めて云々…」という総論に反対する者は少ないだろう.だが具体的な各論になると諸々の事情から困難が伴い,小児循環器領域はもちろんそれ以外の分野を見渡しても,集約化はあまり進んでいないのが実情である.できることから始めるというスタンスで,一定の規模を有する集中治療専門医研修施設かつ小児循環器修練施設をトレーニングセンターとして利用する,などの方策を考えてもよいのではないか.本論文が提起した現在の小児循環器集中治療体制の問題点は,将来の日本の小児循環器診療の極めて大きな課題の一つであり,今後学会や行政の政策としての指針が整備されることが望まれる.

なお本稿は専門医制度という切り口からの考察であるが,根底には小児心疾患の重症児は誰がどのように診療するのがよいのか,という本質的な問いかけがある.もちろん正解は地域の事情やマンパワー,施設の状況に応じて一つではないだろうし,小児循環器領域だけで完結するものでもない.小児科全体の中での位置付け,集中治療の中での位置付け,地域の医療事情なども考慮する必要があろう.簡単に答えを出せるような問題ではないが,松井らはその手掛かりとなり得る新たな視点を提示したという点でも評価したい.

注記:本稿は,次の論文のEditorial Commentである.松井彦郎,ほか:集中治療専門医制度における小児循環器領域の課題.日小児循環器会誌2020; 36: 232–238

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