日本小児循環器学会雑誌 Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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特定非営利活動法人日本小児循環器学会 Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery
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Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 36(1): 1-2 (2020)
doi:10.9794/jspccs.36.1

巻頭言Preface

One Teamへの想いTo Grow into One Team

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科心臓血管外科Department of Cardiovascular Surgery Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry and Pharmaceutical Science ◇ Okayama, Japan

発行日:2020年3月1日Published: March 1, 2020
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ラグビーワールドカップでの日本チームの大活躍は記憶に新しいところである.私はラガーマンではないが,スポーツを愛する一人としてテレビ観戦に釘付けになり,全員が一つのボールに込めた想いや魂(命)を見せつけられ,大きな勇気をいただいた.また,ニュージーランドのオールブラックスのハカを見たり国歌斉唱を聞いたりするたびに,熱い思いをさらにかき立てられた.それと言うのも私の約4年間のニュージーランドでの生活ではスポーツといえば,ラグビーの話でいつも持ちきりだったからである.日本のプロ野球のように12のチームがリーグ戦を戦うわけであるが,その中から代表チームであるオールブラックスの選手が選出される.私もニュージーランドでの生活当初はあまり気に留めなかったが,太い,子供の腰回りもありそうな腕を持った黒ジャージの集団が,家の近くをランニングしていたのを度々目撃していた.この方達がオールブラックスの選手であることが判明するのにはそれほど時間がかからなかった.子供たちも学校で,ニュージーランド国歌をマオリ語と英語で習い,さらにハカまで習い披露してくれたので,この想いが強いのかもしれない.ラグビーでの合言葉one for all, all for one「一人はみんなのために,みんなは一つの目的のために」が思い浮かぶ.我々の世代は,京都市立伏見工業高等学校ラグビー部を題材としたテレビ番組のスクールウォーズを見て,感動した思いがあるが,その当時もこの言葉が強く残り,辞書を開いてもよくわからず,図書館で調べた思い出がある.この目的というのはトライを意味する.ラクビーというスポーツは,ポジションごとの役割が定まっており,体格もスキルもパワーもそれぞれが違う15人が,仲間を信頼して始めてチームが成り立つというわけである.誰が一番うまいか?という質問はラクビーでは難しくて,それぞれが,それぞれの役割とちゃんとやり,またお互いをリスペクトし合わないと勝てないスポーツなのだ.このようなこと書くと,ラグビーの何がお前にわかるのかとお叱りを受けそうである.我々の仕事もチームワークにおいては「誰が優秀か」などではなく,それぞれの役割をきちんと果たしながら,チームが一つの目的に向かって機能し,お互いリスペクトし合い,フォローしていく,ということが前提の思想である.こういう考え方なので,トップダウンはではなく「自分の考え」をもって仲間を信頼して進むことが重要であると思う.

ところで,日本チームの顔ぶれを見ると多くの国籍の方々がいることがわかる.日本チームに入ることを希望して一定の基準をクリアーし,桜のジャージを身に纏い日本代表として戦うわけである.しかもone teamとして世界を相手にしてこのチームをまとめ上げた監督も日本人ではない.他国出身者なのである.多くの人的なサポートが必要であったことは想像の域を出ないが,出身地も違う人たちが一つの目標に向かってone teamとして,しかも立派な成績をおさめたと言うことはこういった側面からも本当に感慨深い.これは我々の医局にも関わることではないかと思う.医療の世界においてもチーム医療が叫ばれて久しいが,このラグビー日本代表のようにone teamとして果たして戦っているのであろうか?アイサインだけで十分に気持ちが伝わるのであろうか?患者を中心として,真剣にしかも真摯に取り組んでいるのであろうか?専門医制度により,若手医師の囲い込みがよりさらに強固になったように感じる.多くの違う大学出身者が自由に研修制度に進むのであるが,その途中では各プログラム間の移動は困難になってきた.その中でチーム医療を構築していかなければならないのである.多科にわたる医師だけでなく,看護師,臨床工学士も含めた医療チームが目標をしっかり定め,臨床,教育,研究に突き進んでいかなければならない.様々な困難もあろうかと思うが,one teamになったときの力は計り知れず,強固なチーム力は岡山大学の掲げるSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)のための戦略になると考える.我々の施設では全国に23の関連施設があるが,様々な医局出身者が顔をそろえる.ここにもone teamの考えが必要なのだ.

私は佐野先生から引き継いで以来,多くの講演会で,『過去からの継承と新たな展開』と題して話をさせていただいている.この過去からの礎の上に我々は立っている.先人の経験(現在よりもはるかに苦難であったことと思うが),を生かしながら我々は前に突き進んでいかねければならない.1958年11月26日に当時の岡山大学第二外科の砂田教授が15歳の心房中隔欠損症に対し,岡山大学第1例目の人工心肺使用下に根治術を行った.それから60余年の時を経て,2019年3月4日に人工心肺手術10,000例を経験することができた.20,000例目はいつ行われるのであろうか,その時代の手術はどのようになっているのであろうかと思いを馳せるとワクワクするとともに,次の世代にどのように引き継いでいくのかと,より高みを目指して突き進んでいこうと決意を新たにしている.

私は平成元年の卒業であり,卒後30年,そして岡山の地に足を踏み入れて早20年が経過致した.2020年の岡山大学医学部創立150周年を前に,先人達の努力によって築き上げられた偉業を,新たな気持ちで後世に伝えるべく努力したいと思う.強い,揺るぎのないone teamを作りたい.かく言う私も岡山大学以外の出身者なのである.

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