日本小児循環器学会雑誌 Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 34(4): 205-206 (2018)
doi:10.9794/jspccs.34.205

Editorial CommentEditorial Comment

4D flow MRIによるFontan循環の血流解析と臨床への応用Blood Flow Imaging Using 4D Flow MRI and Clinical Application in Fontan Circulation

慶應義塾大学医学部小児科Department of Pediatrics, Keio University School of Medicine ◇ Tokyo, Japan

発行日:2018年12月20日Published: December 20, 2018
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心臓MRI(magnetic resonance imaging)は心臓の形態を表示するほか,位相コントラスト(phase contrast: PC)法を用いて,血流量を計測することが可能である.従来PC法は2次元断面で行われてきたが,近年,3次元方向での計測を多断面で行い,解析ソフトウエアを用いて積算することで,4次元表示,すなわち3次元構造の経時的観察が可能となった.このfour-dimensional(4D)flow MRIにより,検査後に任意の断面を設定して,乱流,渦流やそれらが心腔や血管壁に及ぼす血流の影響を可視化し,血流量や流速を定量することが可能となった.4D flow MRIは,弁逆流や狭窄,大動脈疾患の他,先天性心疾患においても心内短絡や体肺側副血管,Fontan型術後症例の血流解析に用いられている1, 2)

Fontan手術適応症例に対しては,コンピュータを用いた流体シミュレーションや,プレッシャーワイヤーを用いた血管内の圧,速度の実測値を基に血流のエネルギー損失(flow energy loss: FEL)を算出し,FELの少ない上大静脈と心外導管の肺動脈への吻合位置のデザインや導管のサイズの選択,横隔神経麻痺の及ぼす影響の評価が行われている3, 4).近年,4D flow MRIにおいても解析技術の進歩により,FELや,壁ずり応力(wall shear stress: WSS)などの流体力学的な指標も測定できるようになり,Fallot四徴症やFontan循環を対象とした血流解析の報告が散見される5–7).心臓MRIを用いて,複雑な先天性心疾患の血行動態を非侵襲的に,より詳細に評価することが可能になりつつある.

藤田らの論文は,Fontan術後遠隔期に発症した蛋白漏出性胃腸症(PLE)に対して,4D flow MRIによるFELやWSSに基づいて治療方針を決定したという貴重な報告である8).報告症例では,造影CTおよび下大静脈造影により,心外導管に石灰化を伴う明らかな狭窄が認められており,PLEの治療として,導管交換によりFontan循環の適正化を図るという選択肢が考えられる.一方,狭窄部位前後の圧較差が0 mmHgであったこと,またPLE発症時の心臓カテーテル検査では狭窄が認められなかったことから,手術による導管交換はPLEに対して効果的でない可能性もありうる.さらに低圧の静脈系における圧較差の評価は困難な場合があり,Fontan循環において圧較差を認めない導管狭窄がまれではないことも過去に報告されている9).藤田らは,4D flow MRIの解析により,造影CT上50%以上に及ぶ導管狭窄であっても,Fontan回路内の血流は保たれFELが低値であることを示し,導管交換よりも,内科的治療により心室拡張末期圧を低下させる方がPLEの改善につながるという結論に至った.一方,狭窄部周囲におけるWSS上昇が認められ,今後内膜増生による導管狭窄の進行が懸念された.また,単心室では,痕跡的心室の収縮同期不全により主心室の効率的な収縮が阻害され,心拍出量が低下し,ひいてはPLEを惹起することも考えられる.しかし4D flow MRIによる心室間血流の解析では,心室内乱流形成はなく,FELも低値であり,痕跡的心室の同期不全がPLEを招来する可能性は低いことが示唆された.

藤田らの論文で述べられているようにFELをFontan循環評価の指標として用いるためには,およその基準値の設定が必要となる.藤田らはFontan回路や心室内のFEL(各々0.33 mW, 0.54 mW)を,心臓カテーテル検査時の圧容積ループから得られた心室仕事量(663.9 mW)と比較して,十分低いと判断している.一方,Hondaらのプレッシャーワイヤーを用いたデータ解析では,心外導管を用いたFontan回路におけるFELは,明らかな血行動態異常のない症例で5.26~10.67 mWと報告されており4),測定法による差を認める.4D flow MRIでは,低い空間分解能や,検出速度,シグナルノイズ比などのパラメーター設定により,計測値が影響を受けている可能性が考えられ10),今後同一症例におけるFEL, WSSの経時的変化と臨床経過との比較,複数症例での比較による検証が必要であろう.

FELは乱流により生じる心負荷を,WSSは血管内膜の変性を反映し,現状よりもむしろ将来の心機能低下,血管内膜増生を予測する指標とされている10).これらは圧や容量負荷に対して心血管機能が代償されている時期から異常値を示し,症状が出現する前や現行の治療ガイドラインで提唱されている時期より前に,治療介入を考慮する指標となるかもしれない11).筆者の施設においても,Fallot四徴症などの右心系疾患の心内修復術後,肺動脈弁閉鎖不全に対して,右室拡大が明らかであるが無症状であったため,肺動脈弁置換術を行うタイミングに悩み,弁置換後も右室拡大が改善せず,右心不全,不整脈が残存した症例を複数経験している.今後4D flow MRIによる血流解析が普及し,EFLやWSSなどの流体力学的指標と予後に関する知見をさらに集積することによって,より適切な手術時期が明らかになり,ひいては先天性心疾患の予後が改善されることを期待したい.

注記:本稿は,次の論文のEditorial Commentである. 藤田周平,ほか:4D flow MRIを用いた血行動態評価が有用であったTCPC術後導管屈曲,蛋白漏出性胃腸症の1例.日小児循環器会誌 2018; 34: 197–204

引用文献References

1) Dyverfeldt P, Bissell M, Barker AJ, et al: 4D flow cardiovascular magnetic resonance consensus statement. J Cardiovasc Magn Reson 2015; 17: 72

2) Vasanawala SS, Hanneman K, Alley MT, et al: Congenital heart disease assessment with 4D flow MRI. J Magn Reson Imaging 2015; 42: 870–886

3) 板谷慶一,宮地 鑑,小原邦義,ほか:Fontan循環の流体シミュレーション—現状と展望—.日小児循環器会誌 2010; 26: 39–48

4) Honda T, Itatani K, Takanashi M, et al: Quantitative evaluation of hemodynamics in the Fontan circulation: A cross-sectional study measuring energy loss in vivo. Pediatr Cardiol 2014; 35: 361–367

5) Haggerty CM, Restrepo M, Tang E, et al: Fontan hemodynamics from 100 patient-specific cardiac magnetic resonance studies: A computational fluid dynamics analysis. J Thorac Cardiovasc Surg 2014; 148: 1481–1489

6) Hirtler D, Garcia J, Barker AJ, et al: Assessment of intracardiac flow and vorticity in the right heart of patients after repair of tetralogy of Fallot by flow-sensitive 4D MRI. Eur Radiol 2016; 26: 3598–3607

7) Sjöberg P, Heiberg E, Wingren P, et al: Decreased diastolic ventricular kinetic energy in young patients with Fontan circulation demonstrated by four-dimensional cardiac magnetic resonance imaging. Pediatr Cardiol 2017; 38: 669–680

8) 藤田周平,山岸正明,宮崎隆子,ほか:4D flow MRIを用いた血行動態評価が有用であったTCPC術後導管屈曲,蛋白漏出性胃腸症の1例.日小児循環器会誌 2018; 34: 197–204

9) van Brakel TJ, Schoof PH, de Roo F, et al: High incidence of Dacron conduit stenosis for extracardiac Fontan procedure. J Thorac Cardiovasc Surg 2014; 147: 1568–1572

10) Itatani K, Miyazaki S, Furusawa T, et al: New imaging tools in cardiovascular medicine: Computational fluid dynamics and 4D flow MRI. Gen Thorac Cardiovasc Surg 2017; 65: 611–621

11) Itatani K: When the blood flow becomes bright. Eur Heart J 2014; 35: 747–752

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