Online ISSN: 2187-2988 Print ISSN: 0911-1794
特定非営利活動法人日本小児循環器学会 Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery
Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 32(6): 527-533 (2016)
doi:10.9794/jspccs.32.527

症例報告Case Report

Melody valve留置術後9年目にvalve-in-valveを実施した一成人例A Case of Valve-in-valve Procedure 9 years after Initial Melody Valve Implantation

1東邦大学医療センター大森病院小児科Department of Pediatrics, Toho University Omori Medical Center ◇ Tokyo, Japan

2東邦大学医療センター大橋病院循環器内科Department of Cardiology, Toho University Ohashi Medical Center ◇ Tokyo, Japan

3Cardiac Catheterization Lab, CHOC Children’s HospitalCardiac Catheterization Lab, CHOC Children’s Hospital ◇ Orange, CA, USA

受付日:2016年3月3日Received: March 3, 2016
受理日:2016年11月4日Accepted: November 4, 2016
発行日:2016年11月1日Published: November 1, 2016
HTMLPDFEPUB3

症例は米国籍の32歳男性で,息切れを主訴に来院した.米国で出生し完全大血管転位の診断でRastelli手術,2度の右室流出路再建術および胸郭形成術の既往がある.その後再び右室流出路狭窄が高度になったため,24歳の時ニューヨークでMelody valve留置術を受けた後に来日した.当院受診時,第三肋間胸骨左縁を最強点とするLevine 3度の収縮期駆出性雑音を聴取し,胸部単純X線では胸郭形成術の際に植え込まれた3枚の金属プレートを認めた.心エコーでは心室中隔の奇異性運動と圧排された左室を認め,右室–右房圧較差は55~60 mmHgであった.血漿hANPとBNPは各々54.1,54.7 pg/mLと軽度上昇していた.数度の手術歴から外科的右室流出路再建術は危険性が高いと考えたが,幸いロサンゼルスでvalve-in-valve法によるMelody valve再留置術を受けることができ,1ヶ月後に再度来院した.術前胸部単純X線正面像では明らかではなかったが,カテーテルインターベンション時にステント損傷が右室流出路再狭窄の原因であることが確認された.本邦においてもMelody valveの認可が待たれる.

A 32-year-old American man visited our outpatient clinic for a chief complaint of exertional dyspnea. His medical history was remarkable for the diagnosis of d-TGA, Rastelli operation, right ventricular outflow tract (RVOT) reimplantation of the conduit twice, and plastic surgery for a thoracic deformity. Because of the progression of RVOT stenosis, a Melody valve was implanted when he was 24 years old and living in New York. On physical examination, harsh systolic ejection murmur of Levine 3/VI at his third left sternal border was audible. Chest X-ray demonstrated three metal plates bridging his bilateral thorax. Echocardiography revealed paradoxical movement of the interventricular septum, flattened left ventricular cavity, and 55–60 mmHg pressure gradient due by tricuspid regurgitation. The stenotic site of his RVOT was not apparent because of the artifact. The plasma hANP and BNP levels were 54.1 and 54.7 pg/ml, respectively. Because of his past medical history of multiple cardiovascular and thoracic surgeries, surgical reconstruction of his stenotic RVOT was assessed to be too risky. A Melody valve-in-valve implantation was performed in Los Angeles, California, and he returned to our hospital 1 month later. His quality of life has significantly improved, and his heart murmur changed to a soft murmur. During the procedure, the stent fracture was confirmed to be responsible for RVOT restenosis, although the frontal view chest X-ray failed to reveal it. Approval is awaited for clinical use of the Melody valve in Japan.

Key words: melody valve; valve-in-valve; catheter intervention; right ventricular outflow tract stenosis

はじめに

重篤な先天性心疾患の手術成績が格段に向上し先天性心疾患患者に占める術後患者の割合が急速に増多しつつある.ファロー四徴症に代表される右室流出路(RVOT)狭窄性病変を伴う疾患の術後遠隔期には,右室流出路再狭窄(RVOTS)や逆流を呈し再治療介入を要することも稀ではない.今回,米国で経皮的Melody valve留置術(PMVI)を受けた後来日し,再度増悪したRVOTSに対する治療方針に苦慮した症例を経験した.今後類似の症例が増えると予想され,文献的考察を加え報告する.

症例提示

症例

32歳,男性(米国籍)

主訴

労作時息切れ

現病歴

米国内で出生し,完全大血管転位の診断で3歳の時にRastelli手術を受けた.詳細な経過は明らかではないが,8歳の時RVOT導管置換術,15歳で導管弁形成術を受けた後,手術による胸郭変形に対して18歳の時胸郭形成術を受けた.

その後RVOTSが再度増悪したため,24歳の時PMVIを米国コロンビア大学で受けた後に27歳で来日し,現在に至るまで都内に居住している.米国からの紹介状によれば心エコーで計測した右室–右房圧較差(TRPG)は来日直前まで約40 mmHgで推移し,当院初診時に計測した時点でも41 mmHgであった.内服薬はアスピリンをPMVI後1ヶ月間のみ服用したが以後は無治療のまま経過していたので,当院においても投薬せずに経過観察した.1年半前に施行した心エコーでは,左室流入血流速度における拡張早期最大流速(peak E波),心房収縮期最大流速(peak A波),E波減衰時間(DcT)は各々89.4 cm/sec,46.7 cm/sec(E/A比=1.92),218 msecで拡張障害を示唆していた.さらに半年前からは労作時息切れが増悪し2階まで階段を上がるのも辛くなってきたと訴えるようになった.

診察所見

身長184 cm,体重70 kg,血圧118/66 mmHg,心拍数70/分・整.チアノーゼ・ばち状指は認めなかった.呼吸音清,1音正常,2音は幅広く分裂し,胸骨左縁第3肋間に最強点を有する粗な収縮期駆出性雑音(Levine 3/VI度)を聴取したが拡張期雑音は聴取しなかった.その他,特記すべき所見はなかった.

検査結果

末梢血血算には特記すべき異常を認めなかった.生化学検査では,軽度の黄疸と肝逸脱酵素の上昇(T. Bil 2.4 mg/dL, AST 63 U/L, ALT 42 U/L)を認め,尿潜血陽性であった.また血漿hANP 54.1 pg/mL, BNP 54.7 pg/mLと軽度の上昇を認めた(Table 1).

Table 1 Laboratory data
Blood Cell Counts
WBC7700/mm3
Neutr 69.8%, Lymph 21.0%, Mono 4.7%
Eos 4.1%, Baso 0.1%
RBC447×104/mm3
Hgb14.2 g/dL
Hct41.5%
Plt17.5×104/mm3
Biochemistry
T.P.7.0 g/dL
Alb4.4 g/dL
T. Bil2.4 mg/dL
AST63 U/L
ALT42 U/L
γ-GTP19 IU/L
CK188 U/L
T. Chol132 mg/dL
T.G.63 mg/dL
BUN16 mg/dL
Creat0.75 mg/dL
UA3.9 mg/dL
hANP54.1 pg/mL
NT-proBNP97 pg/mL
BNP54.7 pg/mL
Caogulation & Fibrinolysis
PT12.6 sec
PT INR1.0
PT %96%
APTT26.6 sec
APTT cont30.0 sec
Fibrinogen196 mg/dL
FDP<2.5 µg/mL
AT III99%
Urinalysis
pH7.0
Sugarnegative
Proteinnegative
Occult blood2+
Acetonenegative
Biliribuinnegative
Urobilinogennegative
Specific Gravity1.020
Urine sediments
Red blood cell>100/HPF
While blood cell1–4/HPF

胸部単純X線では胸郭形成時に留置した金属製プレート3本が左右胸郭を跨ぐように存在していた.CTR 44.3%,肺血流量は正常で左右差がなく,心陰影にも特記すべき異常を認めなかった(Fig. 1).心電図は心拍数67回/分,正常洞調律で不整脈なく,QRS平均電気軸−55度,不完全右脚ブロックパターンを示した.QRS幅は108 msecでQTc 432 msecであった(Fig. 2).

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Fig. 1 The chest X-ray at the time of initial visit

Chest X-ray demonstrated three metal plates bridging the bilateral thorax in addition to the stent of the initial Melody valve (the arrow). The cardiothoracic ration was 44.3%.

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Fig. 2 The electrocardiogram at the time of initial visit

ECG shows normal sinus rhythm heart rate of 67 beats/min, QRS axis of −55°, and incomplete right bundle branch block.

心エコーでは心室中隔の奇異性運動と左室扁平化を認め,TRPGは55~60 mmHgであった.アーチファクトのためRVOTは描出困難で,正確な狭窄部位の同定と流速測定はできなかったが左右肺動脈分岐部には明らかな狭窄病変を認めなかった.計測上,左室拡張末期容量107.0 mL,左室収縮末期容量38.6 mL,左室駆出率63.89%,左室内径短縮率34.8%,心拍出量68.4 mLであった.

経過

上述のごとく心エコーによる狭窄部位の同定はできず,MRIは金属プレートのため不可能なので造影CT施行を検討したが,患者の了解が得られなかった.しかし聴診所見や心エコー所見などから,約9年前に留置されたMelody valveのステント内ないし上縁に狭窄があり,右室圧亢進を来していると考えられた.有意な右室圧亢進と労作時息切れなどの自覚症状を認めることから狭窄解除術の適応であるが,過去数回の手術に加え胸郭形成術に用いられた3本のプレートのため再度の開心術は危険性が高いと判断された.したがって再度のPMVIが最も有用だが本邦では実施できないため対応に苦慮していたところ,突然米国内での実施が決まり,2015年12月23日に再度PMVIをいわゆるvalve-in-valve法1, 2)で受けることができた.

即ち,鼠径部の局所麻酔後に静脈に7F,動脈に5Fシースを挿入し両心カテ・造影検査を行った.その結果,Melody valveステント内における37 mmHgの圧較差を確認し,造影所見からMelody valveの肥厚とステント損傷による狭小化(最小径16 m)を確認した.そこで静脈シースを10Fシースに入れ替えた後,Atlas Gold PTA用カテーテル(22 mm, 4 cm)を用いて7気圧で拡張後,12 Fシースに入れ替えてPalmaz P3110ステントを挿入して3気圧で拡張した.次に段階的にサイズアップしてシースを22 Frに入れ替えた後,専用のデリバリーシステムを用いて22 mmのMelody valveを留置し3気圧で拡張した.最後に圧測定を行い右室圧の有意な低下を確認して手技を終了した.透視時間は15.6分,手技時間は3時間16分,ACTは181~198秒であった(Table 2Fig. 3).

Table 2 Summary of the hemodynamic results
Pre-reimplantation
RAa/v/m6/5/3mmHg
RVs/d/ed54/3/7
mPAs/d/m17/7/9
LVs/d/ed88/0/7
Aos/d/m100/56/74
Post-reimplantation
RVs/d/ed16/1/2mmHg
mPAs/d/m10/0/3
Ao: aorta, LV: left ventricle, mPA: main pulmonary artery, RA: right atrium, RV: right ventricle
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Fig. 3 Valve-in-valve procedure using the Melody valve

(A) Before reimplantation. Stent deformity is apparent (arrowheads). (B) After placing the second stent. (C) After reimplantation of the Melody valve. The second stent is placed in the pre-existing stent (valve-in-valve implantation).

その後,再来日して術後4週目に当院を受診したが術後経過は順調で運動耐容能も著しく改善し,TRPGは25 mmHgに減少していた.またHgb 14.8 g/dL,T. Bil 1.2 mg/dL,AST 22 U/L,ALT 17 U/L,血漿BNP 17.9 pg/mLと血液生化学検査が正常化した.一方,心エコー指標ではpeak E波,peak A波,E/A比とDcTは各々71 cm/sec,55 cm/sec,1.29,150 msecであった.

考察

かつては致命率の高かった先天性心疾患も早期診断と的確な治療介入,外科的修復術の著しい成績向上により先天性心疾患を有する患者の半数が成人である時代を迎えた3).しかし術後遠隔期には再手術やカテーテルインターベンションを必要とする症例も少なくない.術後RVOTSや逆流に対して欧米では弁付きステント留置術がしばしば実施され現在Melody valveとEdwards Sapien valveなどが使用されているが本邦では未だ認可されていない.Melody valveにより再開心術を回避できるメリットは大きいが,デバイスサイズを理由とした体格の制限,高い難易度,ステント損傷による再狭窄の危険性,比較的高頻度な感染性心内膜炎併発率等の点に注意が必要である4).米国FDAでは体重30 kg以上の小児への使用が認可されたが,Bermanらは体重20 kg未満の10症例を含む小児25例(最小3.4 kg, 13.8 kg)に対しMelody valveの有効性と安全性を報告しており5),今後デバイスの改良と共に適応範囲が広がると期待される.

本症例における再インターベンションの適応

当院初診時のTRPGは米国内での検査結果と同じ約40 mmHgであったが,最近半年間で労作時息切れが増悪し,心エコー上のTRPGも約60 mmHg程度にまで上昇していた.CTや心臓カテーテル検査について本人の同意が得られなかったが,米国からの紹介状で高度の肺高血圧は否定的であったこと,収縮期駆出性雑音を認めるものの拡張期雑音を聴取しなかったことなどから右室圧上昇の原因はRVOTSの進行と推測した.結果的に今回のvalve-in-valve法施行時の所見から,推測通りMelody valve内の狭窄が右室圧亢進の原因と確認できた.

一般に,先天性心疾患術後のRVOTに対するインターベンションの適応は症状を有する場合にはRVp>60 mmHg,TR velocity>3.5 m/sec,中等度以上の肺動脈弁逆流がある時などとされている3, 4, 6)Table 3).本症例においては,TRPGから計算される推定右室圧は少なくとも60 mmHg以上と評価され,かつ階段を登るなどの労作でも息切れを訴えることから治療介入が必要と判断された.数度の開胸・開心術に加え,胸骨裏面に留置された3本の金属プレートの存在などから,再度の導管置換術は極めて危険性が高いと判断され,可能であれば経皮的インターベンションを選択すべきであると考えた.しかし本邦ではPMVIは事実上不可能であるばかりか,渡米しての治療は多額の費用を要するため患者本人の説得に苦慮していた.米国内の主治医にコンタクトをとったところ「使用していたMelody valveがFDA認可直前である初期の製品であったから」との理由(後述)で,幸いにも入院費・治療費の本人負担を免除されPMVIを施行することができた.

Table 3 Indication and contraindication of Melody valve implantation
Indication1. SymptomaticAbsolute or relative contraindication
RVp>60 mmHgPreoperative RVOTS
TR velocity>3.5 m/secRVOTS after patch repair
Moderate to severe pulmonary regurgitationSmall RVOT conduit <16 mm
2. AsymptomaticActive infection
Severe RVOTS and/or pulmonary regurgitationCentral venous occlusion
Decreased exercise tolerancePossible coronary compression by the stent
Progressive RV volume overload, deterioration of RV dysfunction and TR
RVp>80 mmHg
Sustained ventricular or atrial arrhythmia
RV: right ventricle, RVOT: right ventricular outflow tract, RVOTS: right ventricular outflow tract stenosis,
RVp: right ventricular systolic pressure, TR: tricuspid regurgitation

PMVIの転帰

PMVIの転帰は最長7年の中期成績が報告され,再インターベンション回避率は1年90%,2年80~86%,4~5年70~80%程度と報告されている7, 8).しかしステント損傷回避率は1年80%,2年79%,3年60%とされ,かついったんステント損傷が生じると約半数は2年以内に再インターベンションが必要になるなど課題も多い9, 10)

米国内でPMVIを実施した医師(FB)により,本症例のMelody valve狭窄はステント損傷が原因であることが確認された.一般にステント損傷はPMVI症例の~30%程度に認められ11),初回PMVIを行う理由が狭窄である場合は逆流を理由とする場合よりステント損傷が多く,特に胸骨直下に留置された場合および狭窄が高度な症例で多いとされる9, 10).一方,初期のMelody valveではステントのバルーン拡張術後にステントの中心が凹みステント部分と内部の人工血管の間に隙間が生じるhammock effectの頻度が高いとされ12),本症例で24歳の時に使用されたMelody valveもFDA認可直前の初期製品の1つをRastelli術後の導管狭窄に対し用いたことが再狭窄の主な原因と推測された.

ステント損傷の有無はその重症度によりタイプI~IIIに分類されるが13),本症例のステント損傷はステントの基本構造が維持されているタイプIに分類され,胸部単純X線正面像のみでは判定困難であった.右室圧が亢進しRVOTSの進行が疑診される場合には透視下での確認が特に重要であると考えられた.

Valve-in-valve

PMVI後のステント破損による狭窄を原因とする再インターベンションには,ステント中央部に2個目のMelody valveを挿入する,いわゆるvalve-in-valve法が行われることが多く,本例でも再渡米後に実施された4).興味深いことに2個目の留置後のインターベンション回避率は2年89.4%で初回と同等以上に予後良好とされている14)が,原理的にプレステンティング14)と同じ効果が得られるからと推測される.本症例では9年前に留置されたMelody valveの変形が強かったためPalmazステントをまず挿入・拡大後,その内側にMelody valve再留置が行われた.手技は煩雑になるものの,Melody valveの狭窄部通過が容易になるだけでなく再留置したMelody valveの耐性がより増すことが期待できると言えよう.

ステント狭窄は通常ステント損傷によるがMelody valveに用いられた生体弁そのものの機能は遠隔期まで維持できるか十分わかっていない8).本例では開心術後やPMVI後のアスピリン投与が僅か1ヶ月間で終了し,ステント損傷と相まって狭窄が比較的早期に進行した可能性は否定できない.血栓やパンヌスが感染性心内膜炎の危険因子である5, 10)ことを考慮すると,右心系の生体弁についても抗血小板療法や抗凝固療法を比較的長期に行うことを検討する余地があるかもしれない.また本症例では肝逸脱酵素は正常化しHgbも14.8 mg/dLへと上昇,総ビリルビン値は術前2.4 mg/dLから術後1.2 mg/dLへと正常化していたことなどから,RVOTSにより生じていて機械的溶血が術後解消されたと考えられた.

4. 心不全に関する考察

米国からの報告では,PMVI後の効果は術後早期に明らかでRVEFやBNPなど客観的指標の改善よりも運動耐容や自覚症状の改善が顕著であるが,右室のみならず左室駆出率の改善など寄与すると報告されている15).さらにPMVI後には右室駆出率が有意な変化がなくても右室後負荷の軽減,心室中隔ストレインの軽減とそれによる右室–左室間の干渉の改善などがあいまって時間経過と共にNYHA機能分類の一層の改善が期待できる9, 16).本症例では再PMVI前に心エコーでの十分な心機能評価を実施しえておらず,PMVI前後での詳細な比較はできなかった.しかし再PMVI後には自覚症状がほとんどなくなり血漿BNPも正常化していただけでなく,再PMVI1年半前と施行後1ヶ月ではE/A比の改善,DcTの短縮傾向を認め拡張能が改善したと考えられた.しかし再インターベンションで心筋のリバースリモデリングが生じる訳ではないので,RVOTSや逆流が進行した症例では比較的早期に再インターベンションに踏み切るのが妥当であるとされ,再インターベンションの至適時期を検討する必要があろう4)

結語

先天性心疾患術後のRVOTSに対し本邦で認可されていないMelody valveの再留置術を米国で受けた症例を経験した.PMVIを含めたステント留置術は先天性心疾患に伴う大血管に対する重要な治療戦略の一角を占め,ガイドラインでもクラスI推奨とされている17).本邦では未だ先天性心疾患に対して薬事承認されたステントがないが,早期に認可され使用が可能になる日が待たれる.

利益相反

本論文について,開示すべき利益相反(COI)はない.

付記

この論文の電子版にて動画を配信している.

引用文献References

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