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特定非営利活動法人日本小児循環器学会 Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery
Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 32(6): 473-484 (2016)
doi:10.9794/jspccs.32.473

ReviewReview

2Dスペックルトラッキング法と小児への応用Two-dimensional Speckle Tracking Echocardiography and Its Application to Children

長野県立こども病院循環器小児科Department of Pediatric Cardiology, Nagano Children’s Hospital ◇ Nagano, Japan

発行日:2016年11月1日Published: November 1, 2016
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2Dスペックルトラッキング法は,心エコー法による心機能評価法の比較的新しい方法のひとつである,超音波画像上のスペックルをフレームごとに追跡して,その位置情報から心筋の歪み:ストレイン値を測定する方法で,壁運動異常の定量評価を可能にした.近年では心不全の予後予測,種々の心筋病変に対する早期心筋障害検出に有用であることも明らかになってきた.小児ではまだ少数例の検討でしかないが先天性心疾患におけるストレイン値に関する報告が散見される.最新の超音波診断装置では,簡便に,精度よくスペックルトラッキング法によるストレイン測定が行うことができ,今後の臨床応用が小児循環器の領域でも期待される.本稿では2Dスペックルトラッキング法について,基本的な概念から方法論,そして最新の知見を小児の分野も含めて概説する.

Two-dimensional (2D) speckle tracking imaging is a relatively new method to evaluate cardiac function by echocardiography. Myocardial deformation was calculated by frame-by-frame tracking of the change in the location of the speckle in the region of interest on the ultrasound image. A quantitative assessment for wall motion abnormalities was made possible by strain value measurements. In recent years, the impact of left ventricular strain assessments, particularly “global longitudinal strains,” using speckle tracking echocardiography has been demonstrated, particularly in the prediction of prognosis and cardiac events in heart failure and early detection of subclinical myocardial damage in several myocardial diseases. Moreover, few investigations have analyzed ventricular strain in pediatric patients with congenital heart disease. The latest ultrasonic diagnostic apparatus allows more easy and accurate strain measurement using the speckle tracking method. Future clinical application is expected in the field of pediatric cardiology. This study reports the basic concepts, methodology, and latest investigations, including pediatric cardiovascular issues, related to speckle tracking echocardiography.

Key words: two-dimensional speckle echocardiography; JUSTICE STUDY; child

はじめに

スペックルトラッキング法は,心エコー法による種々の心機能評価法のひとつであり,2次元および3次元などの超音波画像上のスペックルをフレームごとに追跡して,その位置情報からROIにある心筋の歪みであるストレイン値を測定する方法である.これまで,成人の循環器領域では,ストレインによる局所心機能を用いて,イベント発症や予後予測,虚血部位診断,CRTの有用性予測などに応用できるのではないかとの報告が数多くされてきている1–5).また,小児でも先天性心疾患におけるストレイン値に関する報告が多く見受けられるようになった6–8)

最新の超音波診断装置では,高いフレームレートでも高分解能の画像を作り出せるようになり,さらに簡便にスペックルトラッキングの解析が行うことができるようになったため,今後さらなる臨床研究,臨床応用が小児循環器の領域でも期待できる.

本稿では心筋ストレイン法のうち,各venderのフラッグシップの装置にはほぼ備えられている2Dスペックルトラッキング法について,基本的概念,方法論,その特徴をまとめ,加えて小児における研究など最新の知見も交えて概説したい.

2Dスペックルトラッキング法

ストレインとは?

ストレインとは,物の歪み(伸縮や厚み変化)のことで,長さの変化率を表したものである.ある任意の2点の初期長をLとしたとき,その変化分をdLとするとストレインεはdL/Lとなる.心筋が収縮すると,長軸および円周方向に短縮し,短軸方向につまり厚み方向には壁厚が増加する.したがって,短縮率(ストレインは負の値)と壁厚増加率(ストレインは正の値)がストレイン値(%)となる.心筋障害などで局所壁運動の低下があった場合,このストレイン法を用いれば,壁の運動を定量化することができるわけである(Fig. 1).2点間の心筋の動きが正確に捉えられれば,心臓全体の動き“translation”や周囲の心筋からのtetheringの影響をキャンセルすることができる.さらに,ストレインを微分するとストレインレートとなり,心拍や前負荷などに依存しにくいデータになるとのではないかと期待されている.

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Fig. 1 Definition of the strain and the strain in each direction

When the initial length is L (1 cm), L is shortened by–dl (0.3 cm), and strain “ε” is –dl/L (0.3/1=30%). In the left ventricular short-axis direction, the wall thickness increases and is expressed as RS. The radial time–strain curve is positive during systole. Conversely, the longitudinal and circumference time–strain curves are negative, reflecting myocardial shortening. CS: circumferential strain, LS: longitudinal strain, RS: radial strain.

スペックルトラッキング法

心エコーを用いたストレイン計測は,現在ではスペックルトラッキング法が中心となっている.以前は,組織ドップラーをベースとして2点間の速度情報からストレインレートを算出し,さらにその時間積分値からストレインを計算していた.カラー組織ドップラーを用いているため高いフレームレートにおける解析が可能であったが,一方でカラードップラーの特性として角度依存性という限界があった.ドップラーによる速度計測は探触子からのビーム方向しか正確に測定できない,したがってビーム方向に平行に位置する2点間の距離変化の測定が望ましく,垂直に存在する2点間では全く計測ができない.さらに任意の2点間の速度差を利用するため,コンピュータ演算処理の計算上,得られるデータはノイズも多く再現性も乏しかった.一方,スペックルトラッキング法は,B-mode心エコー図上の心筋のある一定のROIのスペックルを時間的および空間的位置を,フレーム毎にトラッキングすることで,心筋の運動であるディスプレースメント(移動距離),ストレイン,回転角度などを算出する.このスペックルは,超音波の反射,吸収,散乱によりB-mode画像の心筋内に生じる“つぶつぶ”である.スペックルトラッキング法ではこの“つぶつぶ”をフレーム毎にパターンマッチング(近似したつぶつぶのパターンを一致させること)してトラッキングしてゆくものである(一般的にブロックマッチング法という方法がとられる).これを一心周期にわたってすべてのフレームで関心領域の動きを表すことで時間変化曲線を作成する.ある心筋の2点間の運動や回転を角度の制限を受けずにどの方向からでも定量的に解析することが可能となる(Fig. 2).この方法はMRIによる心筋タギング法ともvalidation studyがなされており,局所壁運動を正確に表すことができるとされる5).(心筋タギング法とはMRI画像に電磁波による磁気標識:TAGを格子状に付加し,格子が歪んでゆく様子を時間的に追跡することで任意の局所壁運動を定量評価する.)

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Fig. 2 The principle of speckle tracking echocardiography

Block matching method: The two-dimensional (2D) positional information is obtained by detecting the similar speckle pattern in the region of NxN and tracking the same brightness pattern frame by frame. Based on this positional information, the change in the diameter between the two points is calculated, and the strain is obtained. Yellow, purple, and red circles indicate a “speckle” within the left ventricular wall in a 2D image of each frame.

ストレインによる壁運動評価

心筋の局所ストレインには,短軸方向(radial strain: RS,長軸方向の画像ではtransverse strainとも表される),円周方向(circumferential strain: LS),長軸方向(longitudinal strain: LS)の3方向のストレインが存在する.さらにそこから時間微分値であるストレインレートも算出することができる.短軸と円周方向のストレインは傍胸骨左室短軸断面の画像から,長軸方向のストレインは心尖部左室長軸断面,二腔断面,四腔断面の画像から解析する(Fig. 1).

小児では心拍が速く,成人と同様なframe rate 50~70 fps前後ではトラキングが難しい場合が多い.Frame rateが少なくとも心拍の80%以上から同等に,または100 bpm以上なら90 frame/sec以上は確保したい.画質の良否もトラキングの精度を左右するので小児ではむしろよい画像が得やすくその点ではスペックルトラックに有利といえる.一方遅い心拍ではframe rateが速すぎると動いていないと解析側で認識し,トラッキングしないこともあるので心拍とframe rateを意識して画像収集にあたる.

さらに,心筋の局所ストレインを理解する上で重要な心筋線維の構造について概説したい.壁厚が増加したり,長軸方向の壁長が短縮したりするように見えているものは単純に心筋線維の短縮のみを見ているわけではなく,心筋線維が束となっている心筋シートが複雑な三次元構造を織りなし,統合された心室収縮を作り出してしている9, 10).左室心筋線維の方向は,Fig. 3のように心臓を外膜側からの視点でみるとわかりやすい.心外膜側では左上から右下の走行を示し,徐々に角度を変化させて心内膜側では右上から左下の斜走した状態となる.弁輪から乳頭筋レベルの左室中層はほぼ輪状になり,いわゆる三層構造となる11, 12)Fig. 4のように左室は全体として長軸方向にタオルを絞ったように捻れ運動を行うが,半径の大きい外側の斜走筋が大きいトルクを発生するため心尖部から見て,心尖部は反時計方向に,心基部は時計方向に回転して全体として反時計回転となる13)

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Fig. 3 Left ventricular myofiber orientation

It is easy to understand LV myofiber orientation when viewed from the epicardium. The LV myofiber orientation gradually changes from a left-handed helix in the subepicardium to a right-handed helix in the subendocardium. The myofiber direction is longitudinal in the inner and outer LV layers, whereas it is circumferential in the midlayer. LV: left ventricular.

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Fig. 4 Left ventricular twist. LV twists like a towel in the longitudinal direction

As the outside longitudinal myofiber with a large radius produces a larger torque, the apex rotates counterclockwise and the base rotates clockwise, viewed from the apex. LV, as a whole, rotates counterclockwise. When performing speckle tracking echocardiography on a short-axis apical image, the lower left figure shows that the speckle rotates counterclockwise. The lower right figure shows a time-rotation curve. Along the Y axis, the counterclockwise rotation of the apex is positive and the clockwise rotation of the base is negative. This net difference between the apex and base is twist, which is positive. In diastole, untwisting produces the driving force of LV recoil. LV: left ventricle. Reprinted with permission from the reference 13).

この捻れ運動は,心筋線維や心筋シートのシェアストレスを軽減して効率の良い左室駆出に重要な役割を果たしている.逆にほどけは左室の拡張初期の血液を吸い込む力であるsuckingの駆動力として働いていると考えられている.

心筋線維が束となって形成する心筋シートは心外膜から心内膜方向への心筋線維と連携しており,内膜側に沿うように倒れていく.この倒れた心筋シートが収縮期に立つと内膜側を中心に大きな壁厚増加を生じることとなる.このような心筋壁内をうねるような複雑な心筋線維走行により,心筋細胞の短縮は10%ほどしかないのに,集団として効率よく働き60%以上もの左室駆出をもたらすこととなる(Fig. 59–11, 14)

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Fig. 5 Left ventricular myofiber orientation

Myofibers arranged in a lateral direction form the myocardium sheet. The myocardial sheets lie at a sharp angle along the endocardium. The sheets stand up against the endocardium by thickening and shortening of myofibers. The deformation of the sheets produces a large radial strain, mainly on the endocardial side. LV: left ventricle. Reprinted with permission from the references 9), 11), 14).

ストレイン法による評価は心筋壁の複雑な収縮様式を3方向のいずれかに分けて心室壁短縮と壁厚増加として観察しているため,心筋線維方向,心筋シートの基本構造をもとに考えると,長軸方向:LSのストレイン計測は,主に内側の心筋の短縮を,円周方向:CSのストレインは中層の心筋の短縮を,短軸方向:RSのストレインは内側の壁厚増加を中心に見ていることとなる.

2Dスペックルトラキング法によるストレインの正常値について

ストレインについて臨床応用が困難であった理由の一つは,年齢別や性別ごとの正常値がないことであった.さらに機種や解析装置によっても差があることが問題であった.筆者が行ったJUSTICE STUDYでは,ひとりの検者で,0~88歳の広い年齢の健康人を対象に,3社の装置を用いて多数例(各300例以上)のストレインを解析した.そのデータから正常値を出すとともに,他の検者との検者間誤差(inter-observer),検者内誤差(intra-observer),同一被検者における検査施行間の誤差(test-retest),装置間誤差(inter-vender)などを明らかにした15).それによるストレインの正常値は,GE,Phillips,Toshibaで,RSは54.6±12.6%,36.3±8.2%,51.4±8.0%,CSは−22.8±2.9%,−22.2±3.2%,−30.5±3.8%,LSは−21.3±2.1%,−18.9±2.5%,−19.9±2.4%であった(Fig. 6).このように,各社で3方向のストレイン値は有意に異なる結果となった.同一被験者を用いた各装置間の直接比較でも,ストレインの相関関係は強くなく,検査間,装置間の差が大きいことがわかった.GLSの年齢や性別変化では,Toshiba,Phillipsでは加齢によって顕著に低下し,GEでは男性で有意に低下していたが,他の機種では性別による差異はなかった.このようなストレインの特徴でも機種間に違いが存在した.解析上ではブロックマッチングの処理,内膜側への重み付け,ROIの設定法,ポストプロセッシング(プログラミング処理)の相違があるためと考えられる.しかし,もう一つの大きな問題として解析方法が各vender間で異なることが大きい.内膜トレースの時相,方法,マニュアル補正の方法(内膜側で修正するか,外膜側で修正するかなど),解析結果が正しいかの自動判定など,検者間,検査間の誤差を生む要因が数多く存在する.その他に画像収集する段階での断面の差異,設定したFRの差異なども影響するであろう.

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Fig. 6 JUSTICE study

The normal values of each directional strain are different among venders. CS: circumferential strain, LS: longitudinal strain, RS: radial strain. Reprinted with permission from the reference 15).

そのような中,スペックルトラッキングの臨床活用を進めるべくEACVI/ASE/Industry Task Forceによるvender間の標準化の努力が少しずつ始まっている.手始めとして,このグループが行ったGLSに関する同一被検者を用いた装置間比較研究では,広く心不全例など壁運動の差のある症例を対象として組み入れたとき,各vender間には良好な相関関係があり,誤差もより小さく,再現性もよいものとなったと報告している(Fig. 716).JUSTICE研究ではすべてが健常者であり,母集団の設定の違いがこの差異を生じていると思われる.加えてここ数年間でも各venderのソフトウエアーの技術開発が進んでいることも反映している.しかしながら,数%のわずかなストレイン変化の検出は,異なる機種間では難しいのは明らかで,この論文でも奨めているように,臨床現場で同じ患者の心機能のフォローにスペックルトラッキングを用いる場合には,同一機種で行い,なるべく同一に近い断面で,解析のROIを慎重に設定にして行う必要がある.今後,スペックルトラッキングが組織ドプラ法のように広く用いられるようになるにはvender間での解析プラットフォームの統一などより一層の企業努力が望まれる.

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Fig. 7 EACVI/ASE/industry task force

GLS among seven venders is compared and analyzed with a single observer. When the subjects who have varied wall motion, such as healthy volunteers and patients with CHF, were included, few differences were identified among venders. CHF: congestive heart failure, GLS: global longitudinal strain. Reprinted with permission from the reference 16).

スペックルトラッキングの疾患への応用

これまでストレインやストレインレート測定によって,心筋虚血や心筋梗塞での局所壁運動低下を検出する試みがなされ,有用性が高いとの研究は多い.たとえば,Ishiiら3)は,スペックルトラッキング法を用いて,虚血心筋の運動負荷直後の拡張遅延をストレインで検出できることを示し,感度よく虚血部位を判定することが可能であるとしている.この方法は,虚血からの回復時に生じる心筋のPSSや拡張障害の残存を壁増加の時間–ストレインカーブの解析し,健常部位との時間遅れを測定するものである.運動負荷後の安静時にストレインを計測するので,2Dの画質も担保でき,理論的には優れた方法であると考えられる.しかし,実際の臨床現場では,前述のようにvender間,検者間,検査間の誤差のあるストレイン法は虚血における責任冠動脈の検出,局所のストレインの変化を鋭敏にとらえるのが難しいと考えられてきた.そこで心筋全体のストレイン,Global strainが注目されるようになった.これは,心筋全体の平均ストレインカーブのピークを算出して,心筋疾患の心筋障害や心不全の予後評価に役立てようというものである.白血病や悪性腫瘍の化学療法で生じる心筋障害ではGLSがEFより早く低下するとの報告が相次ぎ,EACVI/ASEのguidelineでもGLSの測定は心筋障害早期検出のためのプロトコールに加えるべきとの推奨を得ている17, 18).また,同様な知見が肥満,心移植後の急性拒絶などにおける心筋障害の評価でも得られている19, 20).長軸方向のストレインは心内膜側の斜走筋の障害をみていると考えられ,心筋そのものの収縮性を評価し,サブクリニカルな異常を見つけることができる可能性がある.

小児でのストレイン研究

次に小児でのストレイン研究について述べる.まず左室の正常値については,Jashari Hらが28論文,1,023例のmeta-analysisを施行(そのうちGEを用いた研究は24論文,新生児から19歳までの正常値を調査したところ,LSは−12.9~26.5%,mean −20.5,95%CI −20.0~21.0,CSは−10.5~−27.0,mean −22.1,95%CI −21.5~22.5,RSは24.9~62.1,mean 45.4,95% CI 43.0~47.8との結果を報告している21).彼らはLV dimensionが大きくなるとLSが大きくなり,年齢が上がるとLongitudinal strain rateは増加し,RSはvenderの違いに大きく左右されるとしている.短軸断面では薄い心筋が倍近く厚くなり変化が大きいためトラッキングが難しく,このことが装置間での測定の違いを大きくしている一因ではないかと思われる.小児では心筋の厚みがなく(つまりストレインの初期長が短い),特にこの傾向が強く出ると考えられ,RSのpeak値の測定は実臨床での心機能評価には向かないと考えてよいだろう.右室のLSについてもLevy PTらが10論文,226例のsystematic reviewを出しており(すべてGEを用いた研究),GLSは−20.8%~−34.1%,mean −29.0%,95% CI 31.5% −26.5%,GLS rateは−1.30~−2.40/s,mean −1.9/s,95% CI −2.10 −1.59/sと報告しており,研究間に有意な差があるものの,どのデータもストレイン値の違いに影響を与えてはいなかった22).右室のLS測定に関しては施設間の画像収集や測定方法の誤差が大きいと考えられた.

また,LSの部位別の検討については,新生児を除いた小児においても,成人と同じように心基部から心尖部へストレインが大きくなるというストレイン勾配が右室,左室双方に存在するようである21, 22)

先天性心疾患では,ファロー四徴症でのストレイン評価の報告が多く,重度肺動脈閉鎖不全の術後ファロー四徴症において右室のLSが低下することが知られ,弁置換後のストレイン低下の改善は遅延することも報告されている6, 23).さらに,術後ファロー四徴症の左室においても捻れやGCSが低下しているのをTakayasuらが報告している7).また,単心室形態のFontan術後の症例でも,右室,左室ともにGSCとGLSが低下し,特に右室はstrain rateが低下している8).最近では,左心低形成症候群でも,longitudinal strain rateが負荷非依存性に右心収縮能を表すとの報告がされている24).右室の心筋線維方向は2層であり,内膜側は縦走に外膜側は輪状に走行し,主に収縮に寄与しているのは縦走する心筋でそのためにLSが感度よく心筋障害を検出できる可能性があるのではないかと考えられている.

Fig. 8は,左心低形成症候群においる各方向のスペックルトラッキングによるストレイン解析データである.健常の左室と比較すると,GRSとGCSが著明に低く,GLSは低下しているものの比較的保たれているのがわかる.これは左心低形成症候群の主たる右室の心筋走行が長軸方向であることを示唆していると思われる25)

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Fig. 8 Global strain in hypoplastic left heart syndrome

This figure shows the results of the GS analysis of the RV in patients with HLHS. The GRS and GCS were markedly decreased in patients with HLHS compared with the average GSs of the LV in normal subjects. However, only a mild reduction of GLS was observed, which may suggest that the main myofiber orientation of the RV in HLHS is longitudinal. CS: circumferential strain, GCS: global circumferential strain, GLS: global longitudinal strain, GRS: global radial strain, GS: global strain, HLHS: hypoplastic left heart syndrome, LV: left ventricle, LS: longitudinal strain, RS: radial strain, RV: right ventricle.

心臓同期不全の評価

小児の拡張型心筋症,2心室や1心室の先天性心疾患の心不全症例でも,心室同期不全(ventricular dyssynchrony)を呈することがあり,CRT(cardiac resynchronization therapy,心臓再同期療法)が心不全改善に寄与することがわかってきた.だが,成人の循環器領域ではCRT適応とされる150 ms以上のwide QRS,EFの低下の心不全例であっても治療効果のない約20~30%のnon responderが存在し,その適応判断の方法として心エコー法による機械的非同期の検出が有用ではないかと期待されてきた.しかし,多施設間研究であるPROSPECT studyでM-mode法,組織ドプラ法,パルスドプラ法などの従来の心エコー法ではCRTの患者選択が難しいことが明らかとなった26).一方,スペックルトラキング法では,SuffolettoらがGE社製装置でRSを用いて心室中隔と後壁で130 ms以上のピークの時間差が同期不全のある再同期療法の反応例を検出できると報告した4).本邦におけるSTARTstudyでは,CSを用いた(おもにToshiba社製)最初のピークまでの時間の標準偏差で見てみると,ROC曲線解析のAUCは0.76で,スペックルトラッキング法単独での検出は難しく,決定的な適応判断基準ではないとの結論であった27).しかし,これらCRTの心エコーによる患者選択に関する研究においては,至適部位にリードを留置できているかの検証がなされていないために,常に限界が存在する.つまり,たとえ心エコーによる心臓非同期の検出がうまくいっても,至適部位にリードを留置できなかったために治療効果が出ていない症例が少なからず存在するためである.

近年のSTARTER studyでは,RSのピーク値を用いた左室リードガイド(興奮最遅延部位に左室リードを挿入する)が,予後を有意に改善し,特にQRS幅150 ms以下,non LBBB,非虚血性の心筋症の心不全改善に有用であったと報告された(Fig. 9).これにより至適ペーシング位置の検索もCRTの効果に影響をあたえることが分かった28–30).小児においても,今後,スペックルトラッキング法が患者選択や至適ペーシング位置の検索に有用であるかのどうかの多数例による検証が望まれる.これには,CRT施行時の適切なリードポジション挿入,心筋viabilityの評価が欠かせず,小児におけるそれらの方法も今後の課題である.

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Fig. 9 STARTER study

When the LV lead was guided to the optimal pacing site, which was identified as the latest contraction site in the LV by measuring the time-to-peak RS using STE, at CRT in the patients with CHF the event-free rate is higher compared with the CRT by routine method. CRT: cardiac resynchronizing therapy, LV: left ventricle, RS: radial strain; STE: speckle tracking echocardiography. Reprinted with permission from the reference 28).

小児期のDCMや術後先天性心疾患症例では,アプローチの問題からCRT植え込みには心外膜リードが選択されることが多い.我々は,MRIのLGEで心筋viabilityの有無を判断した後,実際に術中にリードポジションを変えながら壁運動変化をリアルタイムに心エコーで観察し,septal flushやapexの左右へのrotationが最も改善する部位にリード位置を固定している.同時に,血圧,大動脈弁位でのvelocity time integral,心電図のQRS幅も計測して判断の補助とする.Fig. 10は,7ヶ月のDCM症例で,CRT施行前の中隔と後壁のRSではtime to peakが272 msの差があるのがわかる.スペックルトラックで検出した最遅延部位の近傍をさらに丁寧にリードポジションを変えて術中ガイドの心エコーをしながらCRTを施行したところ,CRT前から直後,長期の経過で著明に左室同期および収縮能が改善,正常化した.この症例は,NYHA class VIでカテコラミン離脱できなかった重症例であったが,至適ペーシング位置の挿入が心機能改善に大きく寄与していることを示唆していた.

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Fig. 10 Speckle tracking echocardiography before and after cardiac resynchronizing therapy in infant dilated cardiomyopathy

In a DCM patient of 7 months, the difference between time-to-peak septal and posterior RS in the LV was 272 ms. During CRT, the optimal pacing site was located by changing the LV pacing position simultaneously. Echocardiography showed a serial and remarkable improvement of LV contraction, both immediately and 5 years after CRT. Moreover, the LV mechanical dyssynchrony was also recovered in time-to-peak RS curves by STE. CRT: cardiac resynchronizing therapy, DCM: dilated cardiomyopathy, LV: left ventricle, RS: radial strain, STE: speckle tracking echocardiography.

小児での2Dスペックルトラッキングに至適な撮像から解析まで

最後に小児での2Dスペックルのやり方を簡単にまとめる.

まず,2D画像を鮮明に収集することが大事である.全体の心筋が明瞭に映し出されるfocus位置を選択する.四腔断面を撮像するときには心尖部がlowになりがちである場合が多いので筆者はやや心尖部よりに置いている.短軸断面を撮るときは,断面がout of plane(拡張期と収縮期で同一断面でない)するため,心基部の,特に後壁側の心筋が拍動中に欠けることがあるので注意を要し,一方,心尖部像では,DCMなどで画角に収まらない場合があり,画角の設定にも配慮する.さらに,慎重な評価が必要なCRT施行前後の評価には同一検者で画像を撮ったり,解析を行ったりするとよいだろう.

近年の心エコーでは深い位置までの画像がよくfocusの設定も必要のないももの出てきているのでその場合はdynamic rangeを下げすぎて心筋が抜けないように注意する.

また,frame rateの設定は非常に大事である.心拍とほぼ同等になるように調節したい.心拍が100 bpm以上なら90 fpsは確保したほうがよい.選択するプローベの周波数もなるべく高いものを選ぶと周波数が高くなる.内膜トレースの方法や心筋の厚みを決めるROIの設定も解析結果に影響するので施設でしっかり確認すると誤差が少なくなる.

小児や先天性心疾患では,心拍とframe rateのmismatchや息どめができない,肺がかぶるなどよって生じる画質不良などが問題となり,しばしばすべてのsegmentを解析できないことも生じる.自動解析でトラッキングの可否を判定する機能がついているものもあるが,肉眼で実際に内膜面がトラッキングされているかを必ず確認し,トラッキングしていなければ必ずそのsegmentの解析は棄却する.また,ROIの設定以外でマニュアル補正する機能がついている場合,むしろ手間をかけた補正をしないないほうがよい.なぜなら,補正によって再現性が落ちてゆくからで検者間,検査間誤差を生じやすい.むしろそのようなsegmentは棄却したほうがGLSなどの正しいデータを得ることができると思われる.

おわりに

2Dスペックルトラッキング法は,超音波装置の進歩による画質向上や解析ソフトのトラッキング機能の改善によってさらに精度を増しているのは間違いない.特にGLSは,自動解析機能も付加されルーチンの心機能評価となることが予想される.小児心疾患の分野でもこれに遅れることなく,臨床データを積み上げていく必要がある.増谷論文31)でも奨めるように,日本の若い小児循環器医が最新の心エコー技術に興味を持ち,積極的に活用し,実践していくことがさらなる発展を生み出すことと信じる.

引用文献References

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