Online ISSN: 2187-2988 Print ISSN: 0911-1794
特定非営利活動法人日本小児循環器学会 Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery
Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 31(6): 299-300 (2015)
doi:10.9794/jspccs.31.299

Editorial CommentEditorial Comment

意志(医師)あるところには道(未知)は開けるWhere There's a Will, There's a Way

群馬県立小児医療センター心臓血管外科Department of Cardiovascular Surgery, Gunma Children's Medical Center ◇ 〒377-8577 群馬県渋川市北橘町下箱田779番地Hokkitsu-machi Shimo-Hakoda 779, Shibukawa-shi, Gunma 377-8577, Japan

発行日:2015年11月1日Published: November 1, 2015
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皆さんは胎児心臓手術の必要性についてはどのようにお考えでしょうか? また,その適応疾患についてどのような疾患が存在するか見当がつきますでしょうか? 胎児心疾患に対する経母体カテーテル治療の歴史は1991年にMaxwellらが重症大動脈弁狭窄症の胎児2例に対して超音波ガイド下に大動脈弁バルーン拡張術を実施して報告したのが最初で1),その後の治療成績は惨澹たるものであったが,2004年にTworetzkyらが臨床的成功例を報告した2).しかし,有効な点はバルーン拡張術後に左室の発育を認め,両心室循環が可能になった症例が存在するという程度のレベルであり,左心低形成の生後治療成績と比較して胎児治療成績の有効性を評価するところまでは至っていない.FETOLOGY(2nd ed.)より最近の報告例を表1に抜粋したが3),臨床的に有用といえる確証は,未だ得られていないのが現状である.もちろん日本での実施経験はなく,治験段階での実施が現在準備さているが,慎重にすすめるべきであると考える.一方で,Kohlらのグループは母体に酸素投与を行うことで,上行大動脈や大動脈弓の血流が増加して,狭小大動脈径が拡大したという臨床例を報告している4).前述の大動脈弁バルーン拡張術の治験を実施するよりも,国内での母体酸素療法の検証を急ぐ必要があると思われる.

Table 1 最近のFetal Balloon Valvuplastyの治療成績
Table 5-2 Compilation of All Fetal Balloon Valvuplasties Reported Including the Method, Technical Success, and Fetal and Neonatal Outcome
Ref.No.GAMethodTechnical SuccessOutcomeNeonatal Outcome
Fetal DeathIUD/TOPDA
Kohl et al.1226–33P8/12462
Tulzer et al.825–52P5/826
Tworetzky3820–32P, TU29/3851228
Gardiner/Kumar423–27P, F4/41111
Suh/Huhta2n/a-23P2/211
Total6448/641321037
Reproduced with permission from the reference (3).

ところで,本論文の主旨である「体外循環を使用した胎児心臓手術」に実施については,個人的には必須な手技であるとは考えていない.しかし,EXIT(Ex utero intrapartum treatment)やEXIT to ECMO(Extra extracorporeal membrane oxygenation)を必要とする症例が存在した場合に,心臓の手術を実施しなくても体外循環の実施が必要に迫られる場合がある.本論文に記載されているような,子宮収縮・弛緩の調整を安全にコントロールするための麻酔方法の確立,胎盤機能温存を維持させるための薬物療法,体外循環時間の長期化を目指したTiny Pumpの開発など解決すべき問題は多岐にわたるが,是非解決してほしい問題である.

いずれにしても,胎児手術や胎児心臓手術の実施にあたっては,遵守すべき幾つかの重要な項目があると考えている.

  • ①胎児の利益
    • 新生児期治療よりも胎児期治療の方が,治療後の成績が明らかに良くなければならない.
  • ②母体の安全性
    • ‌胎児の利益を重要視する一方で,母体の危険性を軽視しないようにすること.母体の死亡率は0%でなければならない.
  • ③臨床研究の重要性
    • 臨床動物実験を繰り返し行い,手技成功率100%が達成できるようにならなければならない.
  • ④チーム医療の充実
    • 産婦人科,新生児科,小児循環器内科,小児心臓血管外科,麻酔科,臨床工学科,看護科,検査科,理学療法士など複数の職種,診療科が一体となって胎児診療に従事しなければならない.
  • ⑤社会のルール改正
    • 胎児手術は妊娠後半での実施では成果が乏しく,妊娠20~30週が望ましいとされている.妊婦に対する胎児エコー診断を普及させ,“胎児診療科”の社会的必要性を啓蒙しなければならない.
    • 小児循環器,小児心臓血管外科の担う役割は非常に大きいと考える.

胎児体外循環や胎児心臓手術はいまだ実験的治療の領域にあり,ヒトへの応用には宇宙移住に匹敵するような多くの未知の難問を抱えている.更に,日本と欧米を比較すると,この分野への研究費が非常に乏しく,日本からの成果は希薄である.海外で研鑽を積まれた藤井先生の今後の活躍に是非期待したい.

注記:本稿は,次の論文のEditorial Commentである.

  • 藤井泰宏,佐野俊二:体外循環を使用した胎児心臓手術開発の現状と可能性.日小児循環器会誌2015; 31: 292–298

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