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特定非営利活動法人日本小児循環器学会 Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

日本小児循環器学会
医学研究および発表される医学研究論文・演題発表に関する倫理指針
(平成17年7月策定、平成26年12月一部改正)

本指針は日本小児循環器学会会員すべての医学研究と、発表される医学研究論文・演題発表すべてに適応されます。医学研究者や発表者本人はもちろんのこと、その指導者、論文・演題の採択に当たる査読者や演題選考委員の方々も、この指針を踏まえていただくようお願い致します。

小児循環器学会倫理委員会

緒言

日本小児循環器学会(以下本学会)は小児心疾患の治療と研究の発展寄与することを目的として設立された。その倫理指針を策定するにあたって、第一に、「こども」の人権を特に重視する必要があり、患者であるこども自身の意思を尊重する倫理的配慮が必要である。第二に、こどもの周囲の家族、特に両親に対して、倫理的配慮をすべきことも強調したい。したがって、本学会およびその分科会のもとで行われる研究とその成果の発表は、こどもの権利を明示した児童憲章、こどもの権利条約の中のこどもの健康を守る権利、医療を受ける権利等の関係条項を踏まえたうえで行われるべきであることは言うまでもない。
 平成17年7月に本倫理指針が策定されてから早くも9年を経過し、文部科学省、厚生労働省などの倫理指針「臨床研究における倫理指針」、「疫学研究に関する倫理指針」、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」などの改訂がなされてきた。また平成22年には改正臓器移植法が全面施行され、新たな体制の下で15歳未満の脳死臓器移植が施行される背景が整ってきた。さらに、ゲノム研究の進歩により、遺伝学的検査が診療の中で実施されるようになり、日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」が策定された。このような背景において、医学・医療の進歩に合わせて、学会倫理委員会として本指針を改定することにした。

  • 1、研究に関する指針
    • 1)ヒトを対象とした医学研究に関する指針
      • ヒトゲノム・遺伝子研究では「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」(平成25年2月8日全部改正、文部科学省、厚生労働省および経済産業省)をよく理解した上でこれに準拠する必要がある。また同時に各施設の倫理委員会の承認を必要とし、論文・演題発表に際しては学会に報告する。主たる研究者が所属する施設で倫理委員会が整備されていない場合は、原則としてこの研究はするべきではない。研究協力者として、患者の検体を提供するような場合には、下記④の患者情報の提供に関する指針を考慮した上で十分な配慮と責任をもって行えるものとするが、各施設の管理機構の了解のもとに、それぞれの施設の基準を遵守する必要がある。
      • ヒトゲノム・遺伝子に直接関連しないヒトの組織・細胞・検体を利用した研究についても、「臨床研究に関する倫理指針」(平成20年7月31日全部改正、厚生労働省、ただし現在見直し中のため、改正版への変更が今後必要になる。)に従って各施設の倫理委員会の承認を必要とし、論文・演題発表に際しては学会に報告する。提供者の個人情報が漏れないように配慮を要する。また、インフォームド・コンセントのもとに提供された検体を当初の目的以外の研究に利用する場合には、改めてインフォームド・コンセントを得る必要がある。ヒト胚性幹細胞(ES細胞)、ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)やそのほかのヒト由来未分化幹細胞を用いた再生医療の臨床応用に関しては、最近策定または改正された以下の指針に従って、慎重に取り扱うべきものとする。
        ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針(平成25年10月1日全部改正、厚生労働省)
        ヒト胚性幹細胞(ES細胞)の使用に関する指針(平成22年5月20日全部改正、文部科学省)
        ヒトES細胞樹立及び分配に関する指針(平成22年5月20日改正、文部科学省)
      • 疫学研究については「疫学研究に関する倫理指針」(平成20年12月1日一部改正、文部科学省、厚生労働省、ただし現在見直し中のため、改正版への変更が今後必要になる。)による規定を遵守する必要がある。全国的な規模での疫学研究(介入研究は除く)については各施設の倫理委員会の承認を必要とするが、倫理委員会の設置されていない施設からの研究申請に関しては、他機関または本学会倫理委員会の審議承認が必要である。本学会およびその中の各種委員会・プロジェクト・各分科会の名のもとに行う大規模疫学研究については、本学会倫理委員会の審議承認が必要である。後方視的な症例検討(症例報告)や人口統計に関する研究では倫理委員会の審議を必要としないが、下記2の、論文および演題発表に関する指針に従うものとする。
      • 研究上の必要により、研究協力施設から患者情報(生年月日、姓名、居住地、病歴等)を主たる研究者に提供する必要がある場合は、その情報の管理責任を明確にしたうえで、研究に関与しない第三者に漏れないような措置をとるようにする。研究協力施設の責任者は患者個人を特定しうる情報を管理し、可及的に個人の特定をされないような配慮をする。個人を特定しうる情報を診療施設から提供する必要がある時には、原則として患者本人(小児および自己決定できない者では代諾者註))の了解を得たうえで行うものとする。
    • 2)ヒト以外を対象とした医学研究に関する指針
      • ヒト以外の動物などを対象とした医学研究でも、生命倫理や動物愛護の観点から倫理的検討が必要と考えられる場合は、各施設の倫理委員会の審議承認が必要である。
      • その他の分野でヒトまたは動物を対象としない研究での倫理的な問題は通常ほとんど認められないが、生命倫理の基本的なことには配慮が必要である。
    • 3)症例報告等の患者の個人情報保護に関する指針
      • 診療施設の個人情報の管理:検体・診療に関する情報を提供する診療施設の責任者は、患者の生年月日、姓名、居住地、病歴等で、研究の目的に関係しない個人情報については、可能な限り診療施設の内部のみ患者を特定できるようにし、情報提供の際には、できるだけ患者IDとは別の番号等で識別できるようにして研究施設(者)に提供する。
      • 研究の必要性から患者の個人情報を診療施設(もしくは同一施設内の診療部門)から研究施設(者)に提供する場合には、その研究の目的・趣旨と個人情報の管理責任を明確にしたインフォームド・コンセントを患者本人(小児および自己決定できない者では代諾者)から得たうえで必要最小限の情報を提供するものとする。
      • 研究責任者(施設)での個人情報管理:研究責任者(施設)は、提供された患に者の個人情報に関して厳重に管理し、特に患者を特定できる情報に関しては研究に関与しない第三者に漏れないように注意を要する。
  • 2、 論文および演題発表に関する指針
    • 1)個人情報保護に関する指針
      • 患者個人の特定が可能な氏名・イニシャル、各施設の患者ID等は発表に記載しない。
      • 患者の住所は記載しない。ただし、疾患の発生場所が病態に関連するような場合には大きな地域(県、市など)までの記載可とする。
      • 病歴・経過のうちで日付の記載は臨床経過を知る上で必要な時に年月までの記載は認め、できるだけ「第○○病日」というような記載にする。
      • 診療科名の記載により患者の特定ができるような場合には記載しない。
      • すでに他の施設で診断治療を受けているような場合の他施設名の記載については、その施設名・所在地の記載はしないことを原則とするが、発表内容に深く関連する場合には患者個人情報の特定にならないような配慮をし、当該施設の了解を得たうえで記載を認める。
      • 顔写真を示す場合には、眼を隠す。眼所見が疾患の発表に必要な場合には、顔全体が分からないように眼周囲までの拡大写真とするか、患者本人(小児および自己決定できない者では代諾者)の了解を得て行うこととする。
      • 画像情報、検体(剖検・生検等)からの標本呈示の際は、それに含まれる個人情報(施設の患者IDを含む)は削除する。特に循環器分野では心エコー、造影等の動画に個人情報が含まれる場合に注意を要する。どうしても削除できない時は、⑥同様、患者側の同意を得たうえで行うこととする。
      • 上記のような配慮のもとでも個人が特定される可能性のある場合には、発表に関する同意を患者本人(小児および自己決定できない者では代諾者)から得るか、施設の倫理委員会の承認を必要とする。
    • 2)研究倫理および不正行為の禁止に関する指針
      • 一般の自然科学の研究における研究倫理は本学会における研究、発表においても基本となるべきもので、研究の遂行、成果の発表において、下記の行為は厳に慎むべきことである。

        ねつ造(fabrication:存在しないデータの作成)
        改ざん(falsification:データの変造、偽造)
        盗用(plagiarism:他人のアイデア、データや研究内容を適切な引用なしで使用)

      • 研究発表における、不適切なオーサーシップ(発表の共同発表者、論文の共同執筆者が発表内容に同意していないこと等も含む)、重複発表、引用の不備、研究過程における安全管理の問題、実験材料の誤った処理・管理などが起こらないように、高い倫理観に基づく研究理念と実践が基本であることを強調する。

註(代諾者の定義):上記の文部科学省・厚生労働省「臨床研究に関する倫理指針」の「第4インフォームド・コンセント」の2「代諾者等からインフォームド・コンセントを受ける手続き」に記載された「代諾者」に従う。それによると、「研究責任者は、一般的には、被験者の家族構成や置かれている状況等を勘案して、以下*に定める者の中から被験者の意思及び利益を代弁できると考えられる者を選定することを基本とし」とされている。

  1. 当該被験者の法定代理人であって、被験者の意思及び利益を代弁できると考えられる者
  2. 被験者の配偶者、成人の子、父母、成人の兄弟姉妹若しくは孫、祖父母、同居の親族又はそれらの近親者に準ずると考えられる者

小児および自己決定できない者に対しては、以下のことを遵守する。

  • 患者が満16歳以上の未成年者の場合
     代諾者からインフォームド・コンセントを、患者本人からからはインフォームド・アセントを、それぞれ文書で得なければならない。インフォームド・アセントの場合、文書への署名および日付の記入は患者本人が行う。患者本人が発表に関する同意を与えることを拒否した場合には、患者の拒否の意向を尊重する。
  • 患者が満16歳未満の未成年者の場合
    中学生以上
     代諾者から文書でインフォームド・コンセントを得るとともに、患者本人から文書でインフォームド・アセントを得る。患者本人からインフォームド・アセントを得る場合、文書への署名および日付の記入は患者本人が行う。患者が発表に関する同意を与えることを拒否した場合には、患者の拒否の意向を尊重する。
    小学生以上中学生未満
     代諾者から文書でインフォームド・コンセントを得るとともに、患者本人から文書でインフォームド・アセントを得る。患者本人からインフォームド・アセントを得る場合、文書への署名および日付の記入は原則として患者本人が行い、それは不可能な場合には代諾者が行う。患者が発表に関する同意を与えることを拒否した場合には、患者の拒否の意向を尊重する。
    小学生未満
     代諾者から文書でインフォームド・コンセントを得るとともに、患者本人の理解能力に応じて説明し、患者本人の理解を得るように努めなければならない。また、患者本人に口頭で説明した場合は、その旨を代諾者がインフォームド・コンセントの文書に記載するものとする。
【参考とした関係各指針】 学会会員の研究活動・発表における倫理審査に関する注釈

日本小児循環器学会会員すべての研究活動や発表を、倫理的問題無く遂行するために、各個人または共同研究者は以下の内容を遵守する。本学会倫理委員会における審査対象と、各施設から本学会倫理委員会への承認結果報告を、具体的に以下に示した。なお本学会倫理委員会は、学会会員である個人または研究組織からの倫理審査に関する問い合わせに、臨機応変に対応することとする。

  1. 本学会主導の研究(本学会の研究委員会が認定した研究、および本学会の分科会代表者が主導する研究)に関しては、研究責任者(または代表者)が所属する施設の倫理委員会における審査承認とともに、本学会倫理委員会における審査承認を必要とする。両者の審査承認内容をもとに、各研究員が所属する施設の倫理委員会における審査承認を原則的に必要とし、その承認結果を本学会倫理委員会に報告する。
  2. 本学会員が研究代表者となって行う共同研究に関しては、本学会主導の研究とは異なり、研究代表者が所属する施設の倫理委員会における審査承認のみを必要とする。研究代表者から本学会倫理委員会への報告をもとに、本学会倫理委員会では審査せず承認のみとする。両者の承認をもとに、各研究員が所属する施設の倫理委員会における審査承認を原則的に必要とし、その承認結果を本学会倫理委員会に報告する。
  3. 倫理的問題が非常に大きいと考えられる研究(たとえば、重篤な先天性心疾患に対する胎児カテーテル治療など)の場合には、本学会倫理委員会委員に複数の外部委員や患者会などのオブザーバーも加えて審査する必要性がある。場合によっては、日本医学会を通して合同で見解を発表することとする。
  4. 各施設(各個人または共同研究責任者(代表者)施設)の倫理委員会が無い場合には、本学会または本学会以外の倫理委員会の審査承認を必要とする。後者の場合には、本学会倫理委員会へ承認結果を報告する。

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