Online ISSN: 2187-2988 Print ISSN: 0911-1794
特定非営利活動法人日本小児循環器学会
Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 33(5): 349-361 (2017)
doi:10.9794/jspccs.33.349

Review

臓器錯位症候群の発生機序

1大阪大学大学院医学系研究科心臓再生医療学共同研究講座

2大阪大学大学院医学系研究科先進幹細胞治療学共同研究講座

3大阪大学大学院医学系研究科心臓血管外科学

発行日:2017年9月1日
HTMLPDFEPUB3

臓器錯位症候群は,臓器の左右非対称性に異常を来した奇形スペクトラムであり,相同心の原因となる.この20年余のモデル動物を用いた遺伝学・分子生物学的なアプローチにより,脊椎動物の臓器の左右非対称性形成のメカニズムに対する理解は飛躍的に深まった.まず,初期胚で,オーガナイザーであるノード(結節)に「対称性の破れ」が生じる.この最初の左右非対称の情報が胚の側方にある側板中胚葉に伝達され,これに従いTGFβスーパーファミリーの一つであるNodalが左側の側板中胚葉でのみ排他的に発現する.次いでNODAL分子によるシグナルが直接的にビコイド型ホメオドメインを有する転写因子Pitx2の発現を左側に誘導し,これが左側臓器の形態形成を担う.これら一連の事象における発生異常は,いずれも臓器錯位症候群の原因となり得る.残念ながら,モデル動物から得られた知見とヒトの臨床遺伝学的知見は有機的に統合されている状況とは未だに言えず,更なる知見の集積と総括が臓器錯位症候群と相同心の成因の理解に必要である.

Key words: heterotaxy; monocilia; nodal flow; nodal; pitx2

This page was created on 2017-09-05T17:03:21.842+09:00
This page was last modified on 2017-10-31T16:58:40.394+09:00


このサイトは(株)国際文献社によって運用されています。