小児大動脈弁疾患に対するグルタールアルデヒド処理自己心膜を用いた大動脈弁形成術
1 兵庫県立尼崎病院心臓センター心臓血管外科 ◇ 〒660-0828 兵庫県尼崎市東大物町一丁目1番1号
2 兵庫県立尼崎病院心臓センター小児循環器内科 ◇ 〒660-0828 兵庫県尼崎市東大物町一丁目1番1号
3 真星病院小児科 ◇ 〒651-1242 兵庫県神戸市北区山田町上谷上字古々谷12番地3
背景:近年,グルタールアルデヒド処理自己心膜を用いた大動脈弁形成術が注目されている.当院では2004年以降,小児大動脈疾患特に大動脈弁閉鎖不全に対して本術式を採用している.その適応,術式と中期成績について検討を行った.
対象と方法:2004年9月から2013年12月までに,グルタールアルデヒド処理自己心膜を用いて大動脈弁延長/形成術を行った小児5例を対象とした.手術時年齢は2歳7ヵ月~11歳7ヵ月(中央値5歳0ヵ月)であった.原疾患は,総動脈幹,心室中隔欠損,大動脈縮窄複合,完全大血管転位,先天性大動脈弁閉鎖不全が各1例であった.本術式の適応は,3尖弁で弁の高度な変性が1~2弁に限られる大動脈弁閉鎖不全ないしは総動脈幹弁閉鎖不全とした.術後観察期間は2年0ヵ月~6年7ヵ月(中央値5年0ヵ月)であった.
結果:手術および遠隔期死亡はなかった.再手術は1例であった.先行開心術が2度ある大動脈縮窄複合の症例で,大動脈弁閉鎖不全および狭窄の進行のため術後4年11ヵ月でRoss-Konno手術を行った.心エコーで大動脈弁閉鎖不全の程度は,術前severe 4例,moderate 1例から術後早期はmild 4例,mild~moderate 1例に改善した.再手術症例を除く4例で,最終観察時点ではmild 2例,moderate 2例で,大動脈弁位での流速は2.5 m/s以下であった.大動脈弁輪径は,術前18.8±4.3 mmから直近21.2±2.6 mmと,全例正常平均値曲線に沿って成長していた.
結論:小児の大動脈弁疾患に対するグルタールアルデヒド処理自己心膜を用いた大動脈弁形成術は,弁輪の成長が期待でき人工弁置換やRoss手術を行う時期を遅らせることができる有用な術式である.複数回の先行手術を有する症例では自己心膜の肥厚などを認めるため,より慎重な経過観察が必要である.
Key words: aortic valve repair; aortic insufficiency; glutaraldehyde; autologous pericardium
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