日本小児循環器学会雑誌 Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 38(1): 70-71 (2022)
doi:10.9794/jspccs.38.70

Editorial CommentEditorial Comment

リードレスペースメーカーの小児における適応Indication of Leadless Cardiac Pacemaker in Children

静岡県立こども病院 不整脈内科Department of Electrophysiology, Shizuoka Children’s Hospital ◇ Shizuoka, Japan

発行日:2022年2月1日Published: February 1, 2022
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経静脈電極であれ心筋電極であれ,リードのないペースメーカーは永らく夢のデバイスであったが,2013年頃から人体に使用可能なリードレスペースメーカー(Leadless Cardiac Pacemaker,以下LCP)が発表された.小型の筐体でカテーテルによってデリバーし,スクリュー1)あるいはタイン2)と呼ばれるフック状のもので右心室心筋に固定されるタイプのものが開発されたが,最終的にはタインで固定するものが市販されることになった.

現在日本で使用可能なLCPはメドトロニック社のMicraである.体積は0.8 mLで全長は25.9 mm.重量は2 gと極めて小型である.VVI 60 ppmの設定で10~14年ほどの電池寿命が予想される.リリース後は最終的に心筋と接する箇所から部分的に内膜化して固定される.内膜化した後のペースメーカー除去はこの原稿の執筆時点では容易ではなく,成人の分野では追加して入れることが多いようである.

小児におけるMicra使用の報告は散見され,ケースレポートやケースシリーズ研究がなされている3–5).しかしいくつかの点で小児に使用するには問題がある.一つ目は留置に使用するシースが外径27Frと大口径であることである.そのため大腿静脈の血栓性閉塞のリスクがある.デリバリーシースのカーブをうまく合わせるために工夫が必要である.二つ目はバッテリーの寿命である.60 bpmで10~14年であれば90 bpmではその2/3ほどの寿命となる.抜去が不成功であった場合に,いくら小さいとは言え二つ目や三つ目のMicraを安全に入れるスペースはないと思われる.

今回佐藤らは心移植後の12歳女児に対しLCPを植え込んだ症例を発表した6).この症例は心移植後に抗体関連拒絶反応のため再移植待機中という特殊な条件で,発作性の洞機能不全による徐脈のため症状を呈していた.佐藤らは植え込み方法を慎重に検討し,LCPの植え込みを選択している.心移植希望者の待機年数が約3年ということを考慮すると,先ほどあげたLCPの小児適応に関連するデメリットのうち寿命に関する点はこの症例においてはクリアされていると考えることができる.また発作性洞不全であることからほとんどの時間心室センスのみで待機しており,電池の寿命も十分と考えることができる.体格的には129 cm,20 kgと過去の報告3)と比べても(median 13歳,37 kg)小さいが,4歳に植え込んだ報告5)もあり十分に慣れた術者であれば不可能ではない.大腿静脈を段階的に拡大し植え込みに成功している.新しいアイデアにより困難な状況を乗り越えた興味深い症例報告である.

有用である可能性を秘めていることは間違いないが,現時点で今回の症例報告を一般化して小児でLCPの利用を進めるのは問題があると言わざるをえない.しかしたとえば右内頸静脈からのアプローチによる植え込みや安全な抜去方法など,技術的問題を克服してゆくことで,小児においてもLCPの利用が標準的な方法として確立する可能性があると考える.

注記:本稿は,次の論文のEditorial Commentである.佐藤 要,ほか:リードレスペースメーカ植込み術を施行した小児の1例. 日小児循環器会誌 2022; 38: 63–69

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