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特定非営利活動法人日本小児循環器学会 Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery
Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 38(1): 54-60 (2022)
doi:10.9794/jspccs.38.54

症例報告Case Report

極低出生体重児の大動脈縮窄症に対して経皮的大動脈バルーン拡張術後に外科治療を行った1例Successful Transcatheter Angioplasty Preceding Corrective Repair in an Extremely Low-Birth-Weight Infant with Coarctation of the Aorta

1産業医科大学小児科Department of Pediatrics, School of Medicine, University of Occupational and Environmental Health ◇ Fukuoka, Japan

2独立行政法人地域医療機能推進機構九州病院小児科Department of Pediatrics, Kyushu Hospital, Japan Community Healthcare Organization ◇ Fukuoka, Japan

3独立行政法人地域医療機能推進機構九州病院心臓血管外科Department of Cardiovascular Surgery, Kyushu Hospital, Japan Community Healthcare Organization ◇ Fukuoka, Japan

4地域医療機能推進機構九州病院病理科Department of Pathology, Kyushu Hospital, Japan Community Healthcare Organization ◇ Fukuoka, Japan

受付日:2021年8月3日Received: August 3, 2021
受理日:2021年12月23日Accepted: December 23, 2021
発行日:2022年2月1日Published: February 1, 2022
HTMLPDFEPUB3

大動脈縮窄症(COA)における乳児期の治療として外科治療もしくは経皮的バルーン拡張術(BA)が用いられる.特に低出生体重児の場合は,BAと外科治療のどちらであっても再狭窄率や合併症発症率が高いことが報告されている.症例は35週1,374 gで出生した女児,日齢6に収縮期血圧上下肢差64 mmHgを認めCOAと診断した.日齢25に最狭窄部1.3 mmのCOAに対し3 Frenchシースを使用して経動脈的にBAを実施した.冠動脈形成用バルーン(NC TREK®2 mm)で前拡張後に弁拡張用バルーン(TMP-PED®4 mm)で後拡張した.収縮期血圧較差9 mmHgまで改善した.BA後に体重増加が得られたが再狭窄が進行し,日齢108(体重3,050 g)に左側開胸で大動脈縮窄部切除と大動脈形成術を実施した.現在,生後7か月で再狭窄を認めていない.低出生体重児のCOAに対し,姑息的BA後に体重増加させ,外科治療を行うことは,合併症や予期せぬ再狭窄を予防できる点から有効であると考えられた.

For infants with coarctation of the aorta (COA), either transcatheter balloon angioplasty (BA) or surgical repair is used. COA recurs frequently in low-birth-weight infants who have had either BA or surgical repair. We present a case of a baby girl born at 35 weeks gestational age and weighing 1,374 g who underwent successful surgical repair of COA following palliative BA. A systemic blood pressure gradient of 64 mmHg between the upper and lower limbs was observed at the age of 6 days, confirming the diagnosis of COA. At the age of 25 days, we conducted BA for COA with a minimum diameter of 1.3 mm. Following the placement of a 3-French sheath in the femoral artery, we performed a predilatation with a coronary angioplasty balloon (NC TREK®2 mm) and a second dilatation with a valvuloplasty balloon (TMP-PED®4 mm). The systemic blood pressure difference between the upper and lower limbs was reduced to 9 mmHg after successful dilation. As a recurrence of COA developed along with body weight gain, coarctation resection and extended end-to-end anastomosis were performed at the age of 108 days and weight of 3,050 g. At the age of 7 months, there was no recurrence of COA. We believe that delayed surgical repair after palliative BA may be possible in low-birth-weight infants with COA to avoid recurrence of COA.

Key words: aortic coarctation; transcatheter balloon angioplasty; recurrence of aortic coarctation; extremely low-birth-weight infant; preterm infant

はじめに

先天性心疾患における外科治療技術の進歩により新生児心臓外科手術の治療成績は飛躍的に進歩したものの,低体重や早産児は手術リスクとなりえる.そのため早産児・低出生体重児の先天性心疾患への低侵襲治療としてカテーテル治療の役割も期待される.Changらは先天性心疾患を合併した低出生体重児の検討において,各疾患の占める割合はファロー四徴症16%,大動脈縮窄症(coarctation of the aorta: COA)12%,完全大血管転位症11%,房室中隔欠損11%の頻度であったと報告している1).特に早産児・低出生体重児のファロー四徴症や完全大血管転位症では,肺血流維持のための動脈管ステント留置術や右室流出路ステント留置術,有効肺血流維持のための心房中隔裂開術など,カテーテル治療で状態を安定させたのちに待機的に外科的手術を行う方法も選択される.

COAは先天性心疾患の6~8%を占める2).胎児右心拡大や大動脈峡部低形成などから出生前診断されるが,その発症機転が生後の動脈管閉鎖に委ねられるため出生前診断が困難な症例も多い.早産児・低出生体重児においては,心筋のCa2+ハンドリングやタイチンなど構造蛋白の未熟性から大動脈縮窄症など急激な後負荷増大に対する代償反応が不良であるため容易に心不全に至る3).また頭蓋内出血を生じるリスクも高いと考えられ,慎重な対応が必要となる.早産児・低出生体重児に対するCOAの外科治療は,術後合併症や再狭窄を伴うことも多く,再手術のリスクとなる一方で4, 5),低侵襲治療であるカテーテル治療でも再狭窄率が高い.低出生体重児のCOAに対する外科治療後の死亡率は7.1%と体重の大きい乳児の死亡率(2.7%)と比較して高いことが報告されている6).その一方で,外科治療の進歩によって体重差による死亡率に差がなくなったことも報告されている7).また,術後再狭窄率に関しては,極低出生体重児(1,500 g未満)とそれ以上の患児と比較して,極低出生体重児で有意に再狭窄率が高かったことが報告された4).さらに低体重になるにつれ再狭窄率が高くなることも報告されている7).術後死亡率および術後再狭窄率は,外科治療の進歩により確実に低下していると考えられるが,施設によっては早産児や低出生体重児のCOAを含めた先天性心疾患に対する術後死亡率や合併症発症率は有意に高い5)

以上のことから,早産児や低出生体重児に合併したCOAに対する適切な治療方針は確立していないのが現状である.今回,早産児・極低出生体重児の重症COAに対して,姑息術として経皮的バルーン形成術(transcatheter balloon angioplasty: BA)を行い体重増加や成長に伴う呼吸機能の獲得後に安全に外科治療を行えた症例を経験した.

症例

症例は,日齢6日の女児.

児の母親は自然妊娠成立後,一絨毛膜二羊膜双胎であり産業医科大学病院産科へ紹介された.妊娠10週6日に双胎間輸血症候群(Quintero分類stageIII)と診断され,妊娠18週で胎児鏡下吻合血管レーザー凝固術を施行された.妊娠33週1日に切迫早産のため当院産科に入院した.その後,子宮収縮は改善したが,妊娠35週3日に激しい下腹部痛を認め,切迫子宮破裂と診断され緊急帝王切開で児を娩出した.児は在胎35週5日,1,374 g(−2.95SD, 0.22%tile)[他児2,264 g]で出生した.入院時の心臓超音波検査で先天性心疾患を疑う所見はなく,動脈管も日齢1に閉鎖した.動脈管閉鎖後も循環不全なく経過した.日齢6に上肢の血圧が高値であり,COAを疑い血圧の上下肢差を測定したところ,上肢:110/60 mmHg・下肢:46/39 mmHgであった.下肢末梢動脈触知不良および尿量減少も認めた.胸部X線で心胸比47%と肺うっ血像を認め,血液検査でNT-proBNP 70,769 pg/mLと高値であった.心臓超音波検査で左室拡張末期径16.6 mm(139%),心室中隔壁厚2.9 mm(94%),左室後壁厚2.3 mm(127%),左室短縮率30.1%と左室壁厚増加があったが心収縮率は維持されていた.大動脈峡部は最小径1 mmと狭小化し,カラードプラー法では連続性波形を呈し,最大血流速度2.6 m/s,簡易ベルヌーイ法からの推定圧較差27 mmHgであった.大動脈弁や僧帽弁には構造異常はみられず,ほかの心内奇形はなかった.以上からCOAおよび急性心不全と診断し,フロセミド静注を開始した.利尿剤開始後より循環動態は安定したが,上下肢の収縮期血圧較差は30~50 mmHgで推移した.日齢22の心臓超音波検査で左室拡張末期径17.8 mm(158%),心室中隔壁厚3.1 mm(100%),左室後壁厚3.6 mm(200%),左室短縮率38.2%,最狭窄部の最大血流速度4.3 m/s(74 mmHg)と経時的な左心室肥大の進行および最狭窄部の圧較差の開大を認め(Fig. 1A),心不全に対する内科的な治療に抵抗性となったため,COAに対する外科的治療介入が必要と判断した.日齢22にCOAに対する治療目的に地域医療機能推進機構九州病院へ転院した.両親に病状を説明後,低体重児のため姑息的治療としてBAを選択した後に外科的治療を行うことを提案し承諾を得た.日齢25(修正39週0日・体重1,392 g)に人工呼吸・全身麻酔下にBAを行った.右上腕動脈に24 G針をカニュレーションして観血的圧モニタを行い,大腿動脈より3 Frシース(テルモ,東京)を挿入し,3 Frマルチパーパスカテーテル(ガデリウスメディカル,東京)を挿入した.治療前の右上腕動脈収縮期圧180/76(119) mmHg・下行大動脈収縮期圧65/51(57) mmHgであり,収縮期血圧較差は115 mmHgであった.COA最峡部直後の下行大動脈において造影を行った(Fig. 2A).下行大動脈造影で最狭窄部径1.3 mm・大動脈膨大部径8.4 mmであった.3 Frマルチパーパスカテーテルが直接峡部を通過したので,0.014インチガイドワイヤー(アグル,ボストンサイエンティフィック)挿入後,冠動脈用バルーン(NC TREK®2 mm,アボット)で前拡張を行った後,弁拡張用バルーン(TMP-PED®4 mm,東海メディカルプロダクツ)を用い,手圧で3気圧かけて拡張した(Fig. 2B).BA後,上腕動脈圧92 mmHg,下行大動脈圧83 mmHgとなり収縮期血圧較差9 mmHgへ改善し(Fig. 2C),大動脈狭部径は3.0 mmまで拡大した.その後,収縮期血圧較差15~20 mmHgで推移した(Fig. 1B).体重増加およびBA後のCOAの観察目的に日齢33(修正40週1日)・体重1,416 gで産業医科大学病院へ転院した.転院後は,利尿剤による抗心不全治療を継続した.また,水分制限を行いながら体重増加を促すために低出生体重児用の人工乳とMCTオイルを併用し,体重は緩徐に増加した(1日あたり19.7 g増加).しかし,COA部分の収縮期血圧較差も経時的に上昇した.日齢99(修正49週0日)に心臓超音波検査で最狭窄部の圧較差71 mmHg,左室後壁厚5.6 mmとなり(Fig. 1C),上下肢血圧差も上肢:115/61 mmHg・下肢:53/26 mmHgとなった.これ以上の内科的治療の継続は困難と判断され,COAに対する治療目的に日齢106に再度転院し,日齢108(修正50週1日・3,050 g)に左側開胸で大動脈縮窄部切除と大動脈形成術(拡大端端吻合)を施行した.COA部分の切除組織は内膜の肥厚のみ認め,内弾性板の断裂などは確認できなかった(Fig. 3).術後は問題なく経過し,術後2週間で退院した.術後2か月(生後4か月)時の心臓超音波検査で左室肥大は改善していた(左室後壁厚3.8 mm).現在,生後7か月(修正6か月)となるがBA前に撮像した胸部造影CT(Fig. 4A)で認めていた狭窄部の再狭窄は認めず経過し(Fig.4B),心臓超音波検査でも明らかな狭窄病変を認めず(Fig. 1D),体重増加も良好で明らかな発達の遅れもない.

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Fig. 1 Echocardiography; Color Doppler view and flow pattern in COA area

(A) Before BA at 24 days old, (B) After BA at 26 days old, (C) Before extended end-to-end anastomosis at 106 days old, (D) After extended end-to-end anastomosis at 121 days old.

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Fig. 2 Transcatheter balloon aortoplasty

(A) Pre-treatment angiography (White arrow indicates COA area), (B) Balloon aortoplasty, (C) Angiography after treatment.

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Fig. 3 Histological specimen of COA after surgical treatment

The aorta has a thickened intima. (A) H&E staining, (B) Elastica van Gieson. COA, aortic coarctation

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Fig. 4 Computed tomography; Three-dimensional computed and contrast-enhanced computed tomography

(A) Pre-operation at 106 days old, (B) Post-operation at 7 months old. Vessel diameter in COA area was 0.8 mm and 4.5 mm, respectively.

論文投稿については保護者に説明し同意を得た.

考察

今回,新生児期に姑息的BAを行い,体重増加後に安全に外科治療を行った重症COAの極低出生体重児例を経験した.心内構造異常を伴わない単純型COA(Native COA)に対する治療方法としては外科治療(端端吻合,端側吻合,鎖骨下動脈フラップ法,拡大大動脈吻合術),BA,経皮的ステント留置術が選択される.BAや経皮的ステント留置術は,外科治療に比べ低侵襲であり,入院期間も短期間である.その一方で,BA後の再狭窄率は,生後4か月以降の治療例(20%)に比べ,4か月未満の治療例(52%)で高いことが報告されており,新生児期・乳児期早期の治療例では再狭窄および再治療を念頭に置く必要がある8).早産児・低出生体重児のCOAに対するカテーテル治療としては,日本循環器学会のガイドラインでステント治療は体重25 kg以上の症例で推奨されていることから,基本的にはBAが選択される.低出生体重児のCOAに対する新生児期BAを施行した報告をTable 1にまとめた.BA後の再狭窄は17症例中6症例(35.8%)に認め,合併症も11症例(64.7%)に認めた.他の年齢層と比較して治療効果が高いものの,血管損傷などの合併症が高い傾向があった.既報では特に太いシース(4 Frもしくは5 Fr)を用いた症例での血管合併症が目立っており,血管合併症はシースの太さとの関係性が示唆された9).新生児・乳児例は年長児期以降の発症例と比較して組織学的に異なる所見を呈することが報告されている10, 11).年長児期以降のCOAでは狭窄部の加速血流や乱流による微小血栓形成からフィブリン沈着が生じて,内膜の増殖性変化が生じている10).一方で新生児・乳児期のCOAに関してはこのような内膜の増殖性変化がみられない11).そのため,新生児期COAにおいて過度な血管拡張は損傷リスクを高めると考えられ,BA治療においては慎重さを必要とする.BAにより内膜の断裂が生じ,その亀裂は外膜近くまで生じることもある.BA後の組織学的検討では,①内皮細胞と内弾性板の分離,②内膜増殖および中膜の平滑筋の変性,③嚢胞性内膜壊死を認め,これらの所見は将来的に動脈破裂や動脈瘤へ進展する一因となると考えられている11).本症例の組織学的所見では内膜の増殖性変化は観察されたが,幸いなことに内弾性板の断裂や平滑筋細胞の変性など破壊的変化は生じていなかった.

Table 1 Cases of low-birth-weight infants who underwent the transcatheter balloon aortoplasty during neonatal period
CaseGestational age, dayWeight at birth, gDay old of treatment, dayWeight at treatment, gSheath, FrBalloon diameter, mmStenosis diameter, mmre-COAComplicationAuthor
132N.D.241,20034×201.5Prada, et al16)
2N.D.N.D.161,20034×121.5Garg, et al17)
3284801846043.5×203–4Schamberger & Lababidi18)
4N.D.5301053032.5×131Kanagawa, et al19)
5301,300171,3004N.D.N.D.VIVaran, et al9)
6321,300151,3004N.D.N.D.VI
7341,400141,4004N.D.N.D.VI
8321,500221,5004N.D.N.D.VI
9321,80061,8004N.D.N.D.Arrest
10391,700111,7005N.D.N.D.VI
11362,000102,0005N.D.N.D.
12321,00011,0004N.D.N.D.VI
Portal gas
13351,800211,8004N.D.N.D.
14331,300121,3004N.D.N.D.
15341,70071,7004N.D.N.D.VI
16331,800141,8004N.D.N.D.VI
17321,500261,5004N.D.N.D.VI
18351,374231,39232×12⇨4×201.3This case
COA, aortic coarctation; N.D., no data; VI, vascular injury

前述のような組織学的所見を念頭に,低体重・早期産児のCOAに対するBA治療においては工夫が必要と考えられる.バルーンサイズとしては,一般的に①横隔膜レベルの下行大動脈径,②狭窄部の手前の大動脈径,③狭窄部遠位側の下行大動脈径のいずれかを参照血管として,参照血管径を超えないものを選択し,病変が高度の場合は,狭窄部に対するバルーン径が300%を超えない程度とされてきた12).過去の報告では一度の拡張で狭窄部血管径の350%以上に拡張した場合は大動脈解離等の血管損傷を来すことが報告されており13),血管損傷を懸念して段階的な拡張を推奨する報告もある14).本症例は狭窄部1.3 mm,下行大動脈8 mmであったため,冠動脈用バルーン2 mmで前拡張後,最終的に4  mm径バルーン(狭窄部に対するバルーン径300%)で拡張した.このバルーン径で十分な拡張を得ることができた.また,今回はシャフト径や追従性の良さから弁拡張用バルーンであるTMP-PEDを使用した.ただし,血管造影で狭窄近位部が逆行性に造影されず,TMP-PEDバルーンが通過しないと判断し,小径バルーンで前拡張を行った後にTMP-PEDで本拡張する方針とした.今回は前拡張に入手可能であったNC TREK®を使用したが,前拡張にはセミコンプライアントバルーンでもノンコンプライアントバルーンのどちらも使用可能と考える.極低出生体重児のCOAに対して使用するバルーンの種類に関しては,ノンコンプライアントバルーンのほうがコンプライアントバルーンに比べて小血管で使用でき,COA部分をしっかりと拡張できることが報告されているが15),血管アクセスの問題から3Frの小口径シースを選択し,なおかつ十分な拡張を得るためにはTMP-PEDのような十分なバルーン径のセミコンプライアントバルーンを使用する選択もあると考えた.

本症例のような極低出生体重児の重症COA症例においては,過剰なバルーン拡張による動脈瘤形成・動脈解離が懸念され,狭窄部の血管径に対するバルーン径およびバルーンの種類に注意しながら慎重に拡張すべきである.

COAに対する治療として,BAのみでは組織学的な観点から再狭窄の発生が懸念された.また低出生体重児に対する手術は,近年の外科治療技術の向上で死亡率・合併症発症率は低下してきているが,施設間での差が懸念される.低出生体重児のCOA治療に関しては,各々の施設に応じたストラテジーの構築が必要であるが,本症例のような極低出生体重児の重症COA症例において姑息的BA後に体重増加を待ってから外科治療を行うことは,安全に合併症なく治療を完遂できる一つのストラテジーになる可能性がある.

利益相反

日本小児循環器学会の定める利益相反に関する開示事項はありません.

著者の役割

宮本智成は,論文の構想,デザイン,作成に関与した.清水大輔と宗内淳は論文作成において指導的役割を担い,論文の構想,デザイン,データ分析と解釈,論文の統括に関与した.土井大人,杉谷雄一郎,古田貴士,江崎大起,小林優,城尾邦彦,立石悠基は論文の構成や批判的校閲において貢献した.渡邉まみ江,落合由恵,楠原浩一は論文において指導的役割を担い,校閲に関与しました.また,すべての著者が原稿出版の最終承認を行った.

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