日本小児循環器学会雑誌 Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Online ISSN: 2187-2988 Print ISSN: 0911-1794
特定非営利活動法人日本小児循環器学会 Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery
〒162-0801東京都新宿区山吹町358-5アカデミーセンター Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery Academy Center, 358-5 Yamabuki-cho, Shinju-ku, Tokyo 162-0801, Japan
Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 36(1): 57-64 (2020)
doi:10.9794/jspccs.36.57

原著Original

日本における小児重症心不全患者の病院間搬送単施設経験の検討Interhospital Transport of Children with Severe Heart Failure in Japan: Analysis of a Single-Center Experience

1大阪大学大学院医学系研究科小児科Department of Pediatrics, Osaka University of Graduate School of Medicine ◇ Osaka, Japan

2大阪府立急性期・総合医療センター小児科新生児科Department of Pediatrics and Neonatology, Osaka General Medical Center ◇ Osaka, Japan

3大阪大学大学院医学系研究科心臓血管外科Department of Cardiovascular Surgery, Osaka University of Graduate School of Medicine ◇ Osaka, Japan

受付日:2019年5月30日Received: May 30, 2019
受理日:2019年11月21日Accepted: November 21, 2019
発行日:2020年3月1日Published: March 1, 2020
HTMLPDFEPUB3

背景:改正臓器移植法施行後,全国から小児重症心不全患者の相談が増加するのに伴い,ハイリスク患者の病院間搬送も重要な課題となっている.

方法:2010年7月~2018年12月に重症心不全のため病院間搬送となった42症例を対象とした.患者背景,搬送形態,搬送後補助人工心臓(VAD)装着状況,予後を調査し,病院間搬送に伴う課題を検討した.

結果:原疾患は,拡張型心筋症25例,拘束型心筋症12例,急性心筋炎5例であり,搬送形態は,陸路26例,空路16例であった.人工呼吸管理22例(52.3%),補助循環装着14例(33.3%)と集中治療継続下の搬送が多く,搬送直後に治療強化を要する例が8例あり,より低年齢の症例で必要となる傾向にあった.最終的に8割以上がVAD装着となり,10例が心臓移植に到達,死亡例は11例であった.

結語:小児重症心不全患者の病院間搬送には,早期からの情報共有と状況に応じた搬送計画が重要であり,人員の確保と経験を要する特殊な領域である.同時に中枢ルート確保時の留意や家族ケアにも配慮が必要であり,よりよい病院間搬送の体制づくりが望まれる.

Background: The number of medical consultations for severe heart failure in pediatric patients has been increasing in all regions in Japan. As a result, high-risk interhospital transport is becoming a more challenging task.

Methods: Forty-two pediatric patients with severe heart failure who were transferred to our hospital between July 2010 and December 2018 were reviewed. We investigated patient characteristics, type of transport, and outcomes after transportation, including implantation of a ventricular assist device. We also discuss practical issues of interhospital transportation in Japan.

Results: The underlying cardiac diseases were dilated cardiomyopathy in 25 patients, restrictive cardiomyopathy in 12 patients, and acute myocarditis in 5 patients. Twenty-six patients were transferred by land and 16 patients by air. The continuation of intensive care was mandatory especially in 22 cases (52.3%) with ventilator and 14 (33.3%) with PCPS. More than 80% of cases required VAD implantation after interhospital transport. In addition, 8 cases who needed treatment intensification after transportation tend to be younger. Ten patients underwent heart transplantation, whereas 11 cases were deceased. It is also important to consider appropriate blood access and to provide sufficient information to family members.

Conclusion: Early interhospital collaboration and transport planning based on a patient’s condition are essential for the treatment of severe heart failure in pediatric patients. Interhospital transportation should be supported by a medical team with special experience. To improve the prognosis of severe heart failure in children, we need to consider further improvement in the management of interhospital medical transport.

Key words: pediatric heart failure; pediatric heart transplantation; transport; ventricular assist device

背景

2010年7月17日の改正臓器移植法により体格の小さな小児の心臓移植への道が開かれた1).心臓移植を必要とする小児の待機患者数が年々増加する一方,十分な臓器提供が得られる環境にはまだ時間を要する状況である2).当院では,他の小児心臓移植実施施設および小児用補助人工心臓実施施設と連携して全国から小児重症心不全患者の相談を受け,内科的管理から移植適応評価や補助人工心臓(VAD)装着を含めた重症心不全の管理を随時受け入れている.それに伴い施設間連携の基本として,紹介元病院を訪問し患者診察と心不全の評価を行い,家族に心不全治療と移植医療の説明を行う機会を作っている.当院への心不全患者受け入れに際して施設間搬送を要するが,搬送手段の選択や搬送中の呼吸循環管理などの搬送計画,その実施についてもサポートを行うようにしている.なかでも,集中治療管理を要する重症心不全患者の施設間搬送はハイリスクであり,かつ院内外の多くの部署との連携が必須となるため,小児心不全医療において高度な技術と経験が求められる重要な領域の一つとなっている.今回,小児重症心不全患者の施設間搬送の経験とその予後について後方視的に検討し,ハイリスク搬送における病院間連携の在り方について考察を行った.

対象・方法

改正臓器移植法施行後の2010年7月から2018年12月までの約8年間に,小児重症心不全に関連して相談を受けた症例のうち,心不全管理やVAD装着のため当院への病院間搬送を行った42例を対象とした.病院間搬送に限定し,市中で発生し直接当院に救急搬送された症例や他院から外来受診経由で入院した症例は除外した.対象42例の原疾患,発症年齢,搬送時年齢,発症から搬送までの期間,搬送元の地域,搬送時の患者治療状況,搬送手段を調査した.また,搬送後のVADの装着状況と装着までの期間,VADの種類,搬送後の患者の転帰を明らかにするとともに,今後予想される搬送とそれに伴う課題を検討した.数値の結果は,最小・最大値の範囲かつ中央値で表し,治療状況については全症例における割合を%表示した.搬送に伴う増悪因子と考えられる項目の検討は,JMP Pro13(SAS, USA)を使用して連続変数はMan–Whitney U検定で名義変数はFisher’s exact検定で解析を行った.

結果

搬送患者数の推移

心臓移植適応の相談を含め小児重症心不全に関する当院への相談件数の年次推移をFig. 1に示す.2010年以降,重症心不全相談件数は増加傾向にあり,この数年は年間20例を超える相談を受けている.そのうち,当院へ搬送に至る症例も増加傾向にあり,2013年以降は年間5例以上が緊急の転院搬送となっている.

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Fig. 1 The number of medical consultations and transportations on pediatric severe heart failure after the revision of the Organ Transplant Law in Japan

搬送患者背景

病院間搬送を行った小児重症心不全患者42症例の臨床像(性別,原疾患,発症年齢,搬送時年齢,搬送時の身長体重,心不全発症から搬送までの期間,搬送時心エコー所見とBNP値)をTable 1に示す.原疾患は拡張型心筋症,拘束型心筋症,急性心筋炎の3疾患で,拡張型心筋症が25例(59.5%)と最も多く,今回の検討では致死性不整脈の合併を2例に,先天性心疾患合併を3例に認めた.搬送時年齢は月齢3か月の乳児から学童に至るまで年齢層は広く,搬送時体重は同年齢の平均体重より低い症例が多かった.心不全発症から搬送までの期間は,発症当日に搬送に至った症例(心筋炎,拡張型心筋症)がある一方で,長期間紹介元病院で治療を行った後に心不全の急性増悪もしくは心臓移植待機のために搬送に至った症例(拡張型心筋症,拘束型心筋症)も見られた.心エコー所見は疾患の差異もあり,心機能,BNP値ともに様々な値を示していた.

Table 1 Patient characteristics
sexMale: 15, Female: 27
DiagnosisDCM: 25, RCM: 12, Myocarditis: 5
Age at onset0 days~14 years old (median: 9 months old)
Age at transport3 months~14 years old (median: 4 years and 6 months old)
Height at transport−5.1~+1.4 SD (median: −1.2SD)
Wight at transport−5.1~+1.0 SD (median: −1.65SD)
Time from onset to transport1 day~13 years (median: 153 days)
LVDd80.0~231.4% of Normal (median: 149.0%)
LVEF (%)1~66% (median: 22.3%)
LV Tei index0.1~1.84 (median: 0.52)
Mitral regargitationNone: 1, trivial: 9, mild: 17, moderate: 15,
BNP34.7~7485.9 pg/mL (median: 814.25 pg/mL)
DCM: dilated cardiomyopathy, LVDd: left ventricular end-diastolic diameter, LVEF: left ventricular ejection fraction, RCM: restrictive Cardiomyopathy,

搬送元病院は日本全体に分布し,当院に近い近畿・中部・北陸地方からの搬送が比較的多く,北海道や九州からの長距離搬送も経験している(Fig. 2).東日本からの搬送は,小児用補助人工心臓実施認定施設の体制整備の中で関東圏の補助人工心臓のバックアップが確保できなかった場合(4例)や長期にわたる移植待機期間の家族支援を考慮した場合(3例)であった.また東日本より直接依頼があっても,患者家族と話し合い,長距離搬送のリスクや心臓移植前後の管理を考慮して,関東圏の小児心臓移植認定施設への搬送に変更した場合もあった.

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Fig. 2 The distribution of hospitals from which area pediatric patients with severe heart failure were transferred to Osaka University Hospital

転院搬送の実態

搬送は可能な限り予定計画搬送を原則としているが,紹介元病院へ訪問した当日にそのまま転院に至った緊急搬送例(7例)と相談翌日に搬送を計画した準緊急搬送例(9例)が全体の38.1%であった.搬送可能な状態であるかどうかの明確な判断基準はないが,往診に出向いた当院のスタッフと治療を継続してきた紹介元病院の医師とが協議の上,決定した.搬送不可能と判断したのは搬送の時点で心臓移植適応外となる他臓器合併症の疑いが強い場合に限られ,それ以外であればリスクを加味して搬送を行った.

搬送手段は患者重症度と治療状況ならびに搬送距離により判断した.搬送時に補助循環装着(PCPSなど)や人工呼吸器を使用している状況では,近距離(150 km圏内)は救急車搬送,200 km圏内の距離であればドクターヘリもしくは防災ヘリ,それ以上の長距離であればICUジェット(機動衛生ユニット,自衛隊管轄)を考慮した.実際には,近隣地域からの搬送が多いため陸路の救急車搬送が20症例と最も多く,次いでドクターヘリ7例(うち防災ヘリ使用1例),新幹線などを利用した鉄道+救急車6例,ICUジェット6例であった(Table 2).2010年当初の病院間搬送は,紹介元病院の医師・看護師が主となり搬送を行っていたが,2013年より当院医療チーム(医師,臨床工学技師)もしくは紹介元医師と当院医師との混成チームで搬送を行うことが増えてきている.搬送中においても,適宜搬送チームと院内医療チームが連絡を密に取り合う事により,到着時に搬送による状況変化に対応できるよう準備を行った.また,搬送はできるだけ短時間で効率的に行えるよう計画をし,搬送に要した時間は平均3.5時間(0.5~7.0時間)であった.搬送時の治療状況は,重症度が高いことを反映して人工呼吸器装着22例,PCPS装着14例と大きな機材の移動と共に集中管理が必要な状況下での搬送であり,ドブタミン持続投与24例,ミルリノン持続投与25例と約6割で循環作動薬の持続点滴管理が必要な状況であった.搬送を安全に行えるようにカテコラミン持続点滴の追加もしくは増量を行った症例が4例,また体動による循環不安定を避けるため鎮静を行った症例が5例あったが,その理由は搬送距離や搬送時間が長いことに依存する傾向にあり明確な適応基準を設けているわけではない.搬送のためにPCPS導入を行った例はなく,重症心不全管理のために必要な治療としてすでに施行されていた(Table 3).PCPS装着14例は,救急車による搬送が近畿地方6例,中部地方と北陸地方がそれぞれ2例,中国地方が1例であった.一方,空路はドクターヘリ搬送が中部地方から2例,自衛隊ICUジェットによる搬送が北海道地方から1例であった.搬送中に急変した症例は1例もなかったが,到着後にカテコラミンの増量等の治療強化を余儀なくされた症例が5例や到着後すぐに予定外のVAD装着を行った例が3例存在した.また心筋症患者が37例と多いことを反映して,抗心不全治療としてβ遮断薬やACE阻害薬の内服も半数以上で紹介元病院より開始されていた.前述の到着後に治療強化を要した8例について,患者背景や治療状況などのリスク因子を検討したところ,搬送時の年齢が低いことが治療強化に影響するという結果が得られた.ただし,まだ症例数も少なく,年齢が搬送による症状増悪に影響するかどうかについては,さらなる検討が必要である(Table 4).

Table 2 The types of interhospital transport
Transportation time0.5~7.0 hours (median: 3.5 hours)
ConditionScheduled26
Urgent16
TransporterLocal Doctor29
Our team6
Together7
ModalityAmbulance20
Train+Ambulance6
Commercial airplane3
Helicopter7
Medical helicopter6
Disaster safety helicopter1
Self Defense forces ICU jet6
Table 3 Medical treatment during interhospital transport
Continuous infusionTransport patient (n=42)
Dobutamine24 (57.1%)
PDE III inhibitor25 (59.5%)
Diuretics14 (33.3%)
Medication
β blocker24 (57.1%)
ACE inhibitor25 (59.5%)
Anti-arrhythmic9 (21.4%)
Digoxin5 (11.9%)
Other
Pacing5 (11.9%)
Supplemental oxygen27 (64.3%)
Ventilation/Tracheotomy22 (52.3%)
PCPS/ECMO14 (33.3%)
Table 4 Patient characteristics that require therapy intensification after transportation
Stable group (n=34)Treatment group (n=8)p value
Age6y7m±5y5m2y8m±4y2mp=0.0435
Height (SD)−1.61±1.60−1.49±0.92p=0.7685
Weight (SD)−1.68±1.51−1.93±0.84p=0.4609
Transportation time (hour)3.45±1.993.56±2.23p=0.8723
Dobutamine civ19/345/8p=1.0000
PDE III inhibitor civ21/346/8p=0.6888
Diuretics civ9/345/8p=0.0924
Pulmonary Hypertension17/346/8p=0.2585
History of VT/Vf12/343/8p=1.0000
Supplemental oxygen20/347/8p=0.2225
Ventilation/Tracheotomy16/346/8p=0.2431
PCPS/ECMO9/345/8p=0.0924
LVEF (%)26.0±16.325.1±20.1p=0.7246
BNP (pg/mL)1663.8±2199.81592.7±1273.3p=0.2623
Stable group: no changes in treatment after transportation, Treatment group: requirement of therapy intensification after transportation, civ: continuous intravenous infusion

搬送後の治療経過

病院間搬送を行った小児重症心不全患者42例中34例(81.0%)がVAD装着に至った.装着時期は,搬送当日から入院691日(中央値3日)であり,転院搬送当日の緊急装着(PediMACS profile 1)が12例あった(Table 5).転院後に内科的治療を先行させ,その後の心不全増悪による装着(PediMACS profile 3→2への急性増悪)が9例,十分な検討下での予定装着(PediMACS profile 2~3を揺れ動く症例)が13例であった.VADの種類は,体格や患者の状態により適応が判断され,体外式VAD 27例(Berlin Heart EXCOR 15例,NIPRO 1例,Rota Flow 11例),植え込み型VAD 7例(HeartWare HVAD 3例,Jarvik 2000 3例,EVAHEART 1例)であった(Table 5).Rota Flowを用いた体外式VADを選択した11症例のうち,肺うっ血改善のため一時的に人工肺が必要であったが心機能が改善しVADを離脱した例が4例,死亡が7例であった.死亡の7例については,Berlin Heart EXCORが国内で使用可能になる以前の症例が3例,また心臓移植適応評価中に適応除外疾患の同定や脳血管合併症の発症によりVADに移行できなかった症例が4例であった.またBerlin Heart EXCOR(3例),Heart Ware(2例),Jarvik 2000(1例)については,緊急的にRota Flowによる一時的な体外式VADを移植適応判定に至るまでのブリッジとして使用し,適応判定後にそれぞれのVADに移行していた.

Table 5 The details of VAD implantation (n=34)
Time from transport to VAD implantation1~691 days (median: 3 days)
OperationUrgent (just after transport)12
Scheduled13
Unscheduled (for acute exacerbation)9
Ventricular assist deviceBerlin Heart EXCOR15
HeartWare HVAD3
EVAHEART1
Jarvik 20003
NIPRO1
Rota Flow (BiVAD)11(3)

転院搬送後にVAD装着に至った34例を原疾患別に比較した(Table 6).急性心筋炎症例は,学齢期に発症し,発症直後に搬送・VAD装着に至っていた.左室の拡大はなく,収縮力低下とBNP値の著明な高値を認めた.拡張型心筋症症例は,乳児期(中央値7か月)に発症し,心不全急性増悪からコントロール不良と判断して搬送に至るまでに約10カ月の期間を要していた.体重増加不良があり,左室拡大と収縮力低下,BNP値の中程度の上昇を認めていた.一方,拘束型心筋症症例では,発症から搬送に至るまでの期間が長い例が多く,相談のあった時点で他臓器(肺,肝臓,腎臓)への影響が懸念される例も多く,搬送後比較的早期にVAD装着が行われていた.罹病期間の長い拘束型心筋症では,拡張型心筋症と同様体格は小さい傾向にあり,長期間に及んで成長障害があることが推察された.また心機能は,左室は正常の大きさで収縮力も比較的保たれ,BNP値の中程度上昇例が多かった.

Table 6 Patient characteristics with LVAD implantation by underlying myocardial diseases
DCM (n=19)RCM (n=10)Myocarditis (n=5)
Age at onset0d~13y3m0d~11y4m5y0m~13y7m
[median]7m2y10m8y0m
Age at transport3m~14y3m1y2m~14y11m5y0m~13y7m
[median]10 m8y8m8y0m
Time from onset to transport (days)3~382761~45321~5
[median]12212023
Time from transport to VAD implantation (days)1~6911~2001
[median]3121
Height (SD)−4.4~+0.7−4.1~−0.6−1.0~+1.4
[median]−1.8−1.5+0.1
Weight (SD)−4.6~−0.2−2.9~+1.0−2.0~+0.7
[median]−1.9−1.85+0.3
LVDd (% of Normal)106~231.480~13472.5~85.3
[median]167108.981.7
LVEF (%)3.0~37.81.0~66.09.0~25.0
[median]14.944.7512.4
LV Tei index0.21~1.840.15~1.210.1~1.48
[median]0.560.370.68
Mr≥Moderate9/254/120/3
BNP (pg/mL)52.5~7485.934.7~996.1787~6942.4
[median]2120621.91419.1

予後

病院間搬送を行った全42例中VAD装着に至らなかった8例は内科的治療を継続し,3例は外来管理に移行,3例は入院を継続しカテコラミン持続投与により移植待機,2例はカテコラミン持続投与から心臓移植に至っていた(Fig. 3).VAD装着となった34例の予後は,10例が心臓移植に到達(国内6例,海外4例),入院加療中の5例(Berlin Heart EXCOR装着4例,カテコラミン持続点滴1例),外来管理の8例(心機能が回復しVAD離脱し内服管理6例,植え込み型VAD装着2例)は移植待機中であった.一方でVAD装着後11例が死亡しており,死亡原因はVAD装着による合併症(脳梗塞・脳出血)もしくは肝腎等の多臓器不全によるものであった.

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Fig. 3 Outcomes of pediatric severe heart failure patients after interhospital transport. HTx: heart transplantation

自衛隊ICUジェットの使用経験

自衛隊ICUジェットを使用した6症例は,北海道地方,関東地方,北陸地方,九州・沖縄地方からの長距離移動かつ人工呼吸管理・深鎮静・複数の循環作動薬持続投与などの集中治療管理を要した重症度の高い症例であった(Fig. 4).自衛隊の協力のもと集中治療管理を継続した状態で搬送を行うことが可能であり,予後は心臓移植待機例が2例,心臓移植到達が2例,心臓移植適応除外例が2例であった.自衛隊ICUジェットの出動要請には,まず紹介元病院から都道府県知事への自衛隊出動要請が必要である.また自衛隊ICUジェットは基本的に空港または自衛隊基地の発着となるため,発着空港の協力要請に加えて,発着地点と病院間の搬送(救急車搬送)についても十分な計画と協力要請が必要であった.

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Fig. 4 Summary of interhospital medical transport

考察

2010年の改正臓器移植法が施行された後,病院間搬送という形で患者受け入れを行った42症例について検討した.小児重症心不全症例の相談件数が増えるとともに,病院間搬送を要する例も増加傾向にあり,心臓移植を含めた重症心不全治療における病院間連携の重要性が増している.

小児重症心不全患者の搬送方法を計画する上で重要なポイントは,患者の治療状況,Mechanical circulatory supportの有無と移動距離である.多くの場合,陸路(救急車,鉄道)または空路(ドクターヘリ,防災ヘリ,ICUジェット)の選択を行うことになるが,各々の搬送手段の対応能力(治療スペース,装着可能な機材,同乗人員,搬送時間帯)と搬送経路の適性(発着地点,移動距離,所要時間)について検討を行い,安全かつ搬送時間をできるだけ短縮できる搬送手段の選択と組み合わせを考慮することになる.

空路の場合,ドクターヘリ,防災ヘリ,ICUジェットの順に,治療スペース・使用可能な装着機材・同乗人員ともに規模の大きな集中治療体制をとることが可能となり,1回の飛行可能距離が200~250 km圏内であるかどうかが目安となる.患者の治療状況により必要な治療スペースが異なり,人工呼吸管理はどの空路手段でも可能であるが,Mechanical circulatory support(PCPS, ECMO, VADなど)を要する場合にはICUジェットの利用を考慮する.また発着地点の検討も重要であり,ドクターヘリは病院へリポートで直接発着可能であるが,大型機材を乗せるために防災ヘリを使用した場合は病院に近い広場(大きな公園もしくは駐車場など),ICUジェットでは空港または自衛隊基地に発着するため,病院と発着地点の間は救急車を利用することになり,乗り換えという移動作業についてもシミュレーションが必要となる.空路の場合,天候や時間帯により運行できない場合があることも考えておく.また搬送を安全に行うための管理(人工呼吸管理導入・鎮静導入・カテコラミン持続点滴の追加増量など)も考慮する.ただし,鎮静導入などは現在落ち着いている血行動態を破綻させる可能性もあり,できるだけ現状管理を基本に搬送を行うことを心がけているが,今回の検討で42例中8例に搬送後の治療強化を要したことからも,搬送による循環動態への負荷はある程度避けられないのかもしれない.加えて,搬送を行うためのPCPS導入は移動の困難さや機器トラブルも含め,必ずしも最善の策ではないため,症例ごとに慎重な検討が必要である.

これまでの重症心不全患者や重症小児患者の搬送に関する報告では,ドクターヘリのリスクマネージメント3)を十分行うとともに,電源の確保とコメディカルを含めたスタッフの必要性が重要であると述べられている4, 5).搬送に要する人員は,搬送手段に乗り込める人数にも左右されるが,Mechanical circulatory supportがある場合には,医師2名,看護師1名,臨床工学技師1名で構成されるチームが理想的である.しかし現実には必要なスタッフの確保が十分なされないまま搬送を行わざるをえない状況もあり,今後の課題の一つである.また病態が不安定な重症心不全状態での搬送となるため,搬送により心不全が増悪する可能性や,搬送中に救命することすら困難になる場合があることを含め家族への搬送リスクの説明も必須である.搬送中のスタッフの事故に対する補償も問題の一つであり,搬送業務が病院の業務として認定される体制や制度が必要であると考えている.

今回の検討において,患者重症度,治療内容,搬送手段,搬送距離,搬送時間などハイリスク搬送の背景は個々の症例で多様であったが,搬送中の急変が1例もなかったことは,通常の病院内の臨床の枠を超えた病院間・民間・行政を巻き込んだ綿密な計画と連携があった結果であると考えている.一方で,搬送直後の強心薬の増量や,予定外のVAD装着などの治療強化が必要であった事実を忘れてはならず,さらにより良いハイリスク搬送のための連携の在り方を模索する課題が残されている.

搬送症例は結果的にVAD装着に至った症例が8割以上を占めており,同時にVAD装着後の合併症による死亡例が少なくないことを直視すれば,VAD装着により心不全の改善が得られる代わりに合併症という大きなリスクを抱えることになることを十分に認識しておかなければならない.もちろんVAD装着のタイミングを逸してはならないし,小児用補助人工心臓Berlin Heart EXCORが使えるようになり大きな合併症は減っていると考えられている6).一方で,まずVAD装着を回避できるような内科的心不全治療をいかに行うかということも重要であり,VAD装着を前提とした極めて重篤な状態での搬送は可能な限り避けられなければならないと考えている.そのためには,小児重症心不全の管理について,できるだけ早期から紹介元病院と連携を行いながら綿密な内科的管理を図ることが必要である.

病院間搬送からVAD装着,移植に至るまでの症例を経験して,小児重症心不全の治療と管理において,心不全症例の情報共有・病院間連携と共に小児重症心不全治療の進め方が重要なポイントであると考える.各病院で発生した小児重症心不全症例は,早期より診療情報を共有し,移植実施施設および小児用補助人工心臓実施施設と共に重症心不全治療をいかに進めていくかを議論することが,搬送までの管理や移植申請などを少しでも円滑に行う助けになると思われる.現在,日本小児循環器学会が「小児重症心不全治療相談窓口」を開設しており,同学会ホームページの各種活動・報告から問い合わせが可能で,早期の段階であっても相談は随時受け付けている.

最後に,今回の検討結果に提示できていないが中心静脈ルートの温存と家族のケアの重要性もついても無視できない.集中治療のため中心静脈ルートを確保するのは当然であるが,長期にわたる心不全治療や移植後の拒絶反応などの管理を含めブラッドアクセスとしての大静脈の温存は極めて重要である.ルート確保の部位も,右内頸静脈や右大腿静脈を極力温存するように努めるような管理も必要である.加えて,遠方より転院してくる患児と共に家族の負担も非常に大きなものであり配慮が必要である.家族によっては搬送先病院の近くへ転居する,もしくは両親・同胞が離れて生活をすることを余儀なくされる場合がある.ソーシャルワーカーなどの協力を得てできるだけ公的支援を活用する対応を行う.同時に家族全体の精神的サポートも重要であり,数カ月もしくは数年に及ぶ入院生活を支えていく必要がある.

病院間搬送に伴う小児心不全治療の課題はまだまだ山積しており,今後も小児重症心不全患者の受け入れを行う上でより安全で確実な体制作りを目指していきたい.

利益相反

すべての著者は開示すべき利益相反はない.

引用文献References

1) 臓器の移植に関する法律 改正:平成21年7月17日(平成21年 法律第83号)

2) 小野 稔:重症心不全に対する補助人工心臓治療の現況と展望.日小児循環器会誌2011; 27: 111–117

3) 早川達也:ドクターヘリのリスクマネージメント.ICUとCCU 2012; 36: 597–602

4) 児玉 泰,西原裕幸,市原利彦:重症心不全患者の手術目的での防災ヘリコプターによる搬送経験.体外循環1999; 26: 62–65

5) 竹内一郎,今木隆太,和泉 徹,ほか:心臓移植が必要な重症心不全患者を災害支援車にて陸路搬送した1例.日救急医会誌2012; 23: 856–860

6) 小野 稔:小児補助人工心臓の現状と課題.小児科2016; 57: 1361–1367

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