日本小児循環器学会雑誌 Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 36(3): 247-248 (2020)
doi:10.9794/jspccs.36.247

Editorial CommentEditorial Comment

先天性心疾患術後遠隔期における再手術Redo Cardiac Surgeries for Adult Congenital Heart Disease

東京女子医科大学心臓血管外科Department of Cardiovascular Surgery, Tokyo Women’s Medical University ◇ Tokyo, Japan

発行日:2020年10月1日Published: October 1, 2020
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本邦では1951年に東京女子医科大学で行われた動脈管結紮術を先天性心疾患に対する外科手術の第一例として,およそ70年間にわたり全国各地で多くの先天性心疾患に対する外科治療が行われてきた.先人達の努力により多くの患者が生存し成人期まで到達した結果,現在は約50万人の成人先天性心疾患患者が存在し,2020年には成人先天性心疾患患者数は小児の先天性心疾患患者数をはるかに凌駕すると予想されている1).以前は外科手術にて「根治」できたと思われていた先天性心疾患患者でも,加齢に伴い心不全,不整脈,弁膜症,虚血性心疾患などの合併症を生ずることがあり,また「根治」できなかった患者では,当然合併症や遺残症を伴うことが多い.これらの成人先天性心疾患患者はいわば「新しい」疾患群の患者であり,旧来の小児/成人,先天性/後天性と言った枠組みから外れている2).現在,成人先天性心疾患を専門とする医師を中心とした循環器小児科,循環器内科,心臓血管外科,麻酔科,産科,内科,看護師,臨床心理士などを含む多職種によるチーム医療の診療体制を整えることが推奨されており,2021年からは日本成人先天性心疾患学会を母体とした成人先天性心疾患専門医制度も発足する予定となっている3).しかし,これら患者に対する再手術は手術リスクや合併症率も高く,また比較的新しい分野のために詳細な手術成績も明確ではなく,各疾患の手術時期や手術適応などには議論が残るところである.

修正大血管転位症は全先天性心疾患の約0.5%を占めるにすぎない疾患であるが,合併心奇形が存在しない患者や機能的修復術後の患者では右室が体心室となり,その房室弁である三尖弁閉鎖不全や右室機能低下が長期的な問題となる.またそれ以外にも大動脈弁輪拡大による大動脈弁閉鎖不全や肺動脈閉鎖を合併していた患者では肺動脈弁閉鎖不全/狭窄などの問題も生ずる.これらの原因により成人期以降に重度心不全を合併する患者が多く,米国での補助人工心臓レジストリであるINTERMACS databaseでは,体心室が右室の患者が全成人先天性心疾患患者の約1/3を占めている4).しかし心臓移植治療はいつでも行えるものではなく,また本邦でのきわめて長い心移植待機期間を考えると,移植治療の前に従来の治療法である弁置換(弁形成)手術やペースメーカー治療,心室再同期療法などを用いた最大限の治療を行い,心不全の改善を図るべきだと思われる5)

西島らの報告6)は,まさにこれらの治療を実践した貴重な報告である.過去に機能的修復術,肺動脈弁置換術,経静脈的ペースメーカー植込み術を受けたにもかかわらず三尖弁閉鎖不全症,大動脈弁閉鎖不全症による心不全状態が続いている修正大血管転位症の若年成人患者に対して,次の治療として心臓移植やそれに伴う補助人工心臓なども考慮し患者へ説明も行ったうえで,二弁置換術と心臓再同期療法を行い,良好な結果を得られている.術後遠隔期に右室縮小,心機能の改善,QRS幅の短縮を認め,心不全の再発も認めないと報告されている.しかしその外科手術は大変なものであったようで,鼠径部切開による緊急人工心肺の準備,癒着剥離,剥離困難による右内頸静脈からの脱血,左側左房切開と様々な手術手技を重ね合わせ,人工心肺時間405分,大動脈遮断時間219分と長時間に及んでいる.また術前からの心不全の影響もあったのか,術直後のIABPの使用や長期間のカテコラミン投与を要している.これらはまさに集学的治療の結果であり,先に述べた多職種によるチーム医療の診療体制の成果と言える.

成人先天性心疾患に対する手術は,成人期に診断された心室中隔欠損症や比較的単純な単弁置換術など手術成績が良好と思われるものから,本症例のように多大な集学的治療を要する再手術や重度心機能低下を伴い心移植などの考慮も必要なものまで様々であり,一律にその成績を述べられるものではない.今後は,成人先天性心疾患学会認定総合修練施設(全国40施設)を中心として情報共有,手術適応の明確化,手術リスクの判定や詳細な手術成績の検討などが求められると思われる.

注記:本稿は,次の論文のEditorial Commentである. 西島卓矢,ほか:修正大血管転位症術後遠隔期に二弁置換術と同時に心室再同期療法を導入し有効であった一例.日小児循環器会誌2020; 36: 241–246

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