日本小児循環器学会雑誌 Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 36(3): 230-231 (2020)
doi:10.9794/jspccs.36.230

Editorial CommentEditorial Comment

10%免疫グロブリン製剤の有用性Usefulness of 10% Immunoglobulin Preparation

日本医科大学小児科Department of Pediatrics, Nippon Medical School ◇ Tokyo, Japan

発行日:2020年10月1日Published: October 1, 2020
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2013年に献血ポリグロビンN10%が,2018年に献血ヴェノグロブリンIH10%が発売され,免疫グロブリン10%製剤が広く市場に浸透してきている.メーカーの資料によれば,これまでの5%製剤との違いはほぼ免疫グロブリンの濃度のみであり,効果や副反応の出現率も同等とのことである.10%製剤の考えられうる最大のメリットは薬液量が半分になったことによる投与時間の短縮である.添付文書では5%,10%製剤ともに「投与開始から1時間は0.01 mL/kg/分で投与し,副作用等の異常所見が認められなければ,徐々に速度を上げてもよい.ただし,0.06 mL/kg/分を越えないこと.」とあり,これに従えば最短投与時間は5%製剤で12時間半,10%製剤であれば7時間弱となる.川崎病急性期治療では可及的速やかに血管炎を抑え込むことが冠動脈後遺症発症抑制のカギとなると考えられている.このため10%製剤の使用で初期治療がより早期に完了しその治療効果を判定できるようになることで,初期治療不応例に対して追加治療をより早く行うことが可能となり,より速やかに血管炎を抑えられる可能性がある.この結果,心血管後遺症発症のさらなる抑制が期待される.加えて輸液量が少なくなることから,川崎病急性期の循環動態をより安定させることも期待できる.

美馬論文1)では川崎病の免疫グロブリン治療に対し,5%製剤と10%製剤の資料症例をRetrospectiveに調査し報告している.5%製剤と10%製剤とでは,有害事象の出現や初期治療不応の出現率に差はなく,心血管後遺症の出現にも差はなかったが,初期治療不応例に対する追加治療開始までの時間が10%製剤で有意に短縮されることが示された.本論文での5%製剤の投与時間は15時間,10%製剤で7.4時間と約7時間半の短縮を認めている.しかし一方で初回治療開始から追加治療開始までの時間は5%製剤で48.8時間,10%製剤45.3時間で約3時間半の短縮となっている.実臨床において短縮された投与時間が即追加治療開始の時間にそのまま反映されることは難しいが,免疫グロブリン治療不応予測スコアが高値で難治例と判断される症例に対してはより注意して初期治療不応を判断することで追加治療実施までの時間が短縮できることは期待できる.また本論文は1施設の報告であり,比較的症例数も少ないために心血管後遺症合併に差を認めることまでには至らなかった.10%製剤に関するこれまでの報告は少ないが,10%製剤のほうが免疫グロブリン投与時間の短縮から早期に解熱が得られたとされる2, 3).しかしいずれも単施設の報告であり症例数も少なく,10%製剤が冠動脈後遺症の減少に寄与することまでは証明できていないが,本報告を含め少なくとも10%製剤が5%製剤に比較して有害事象に差はない.今後全国的レベルでの症例の集積があれば,心血管後遺症発現の抑制効果も含めて10%製剤の優位性が証明できるかもしれない.

注記:本稿は,次の論文のEditorial Commentである.美馬隆宏,ほか:免疫グロブリン5%製剤と10%製剤の川崎病に対する治療効果・安全性の比較.日小児循環器会誌2020; 36: 223–229

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