日本小児循環器学会雑誌 Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 35(2): 125-126 (2019)
doi:10.9794/jspccs.35.125

Editorial CommentEditorial Comment

心室中隔欠損に対する経皮的カテーテル治療Percutaneous Transcatheter Closure of Ventricular Septal Defect

埼玉県立小児医療センター循環器科Department of Pediatric Cardiology, Saitama Children’s Medical Center ◇ Saitama, Japan

発行日:2019年5月1日Published: May 1, 2019
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はじめに

心室中隔欠損(VSD)は出生1,000人あたり5~50人で,先天性心疾患の約40%に認められる.自然閉鎖が多く,閉鎖術が必要となるのは約20%とされる1).VSD閉鎖は外科手術が一般的であるが,経皮的カテーテル治療(PCI)の報告は年々増加している.膜様部VSD(PMVSD)に対するAmplatzer PMVSD Occluder(APMVSDO)でのPCIは,完全房室ブロックなどの合併症が問題で,未だ米国FDAでは認可されていない.一方適応外使用であるが,PMVSDに対するAmplatzer Duct Occluder(ADO)I/IIを使用したPCIの報告は増加している.

VSD閉鎖術の適応

ADOを用いたPMVSD治療では,①VSD閉鎖術の適応の有無・②ADOでの治療基準に該当するか否かについての議論が必要である.

VSD閉鎖術は外科手術が一般的で,確実性・安全性ともに確立されている.PCIでは次項に示すような合併症があり,治療にあたってはVSD閉鎖術の適応があることが重要である.VSD閉鎖術の適応は,Mossの教科書1)では肺体血流比(Qp/Qs)2以上,日本循環器学会ガイドライン2)では1.5~2.0とされている.また,American Heart Association/American College of CardiologyではVSDの閉鎖基準として,有意な左室の容量負荷・左-右シャント(Qp/Qs≧1.5)があり,肺動脈圧が体血圧の50%未満・肺血管抵抗が体血管抵抗の1/3未満,と記載されている3)

浅田論文4)でもADO閉鎖適応基準の中で,この点について検討されている.心エコー上左室容量負荷は,本文記載の4項目中1項目以上を認めるとして,緩やかな基準となっている.また四腔断面像で右心系に比べ明らかな左心系の拡大,という抽象的な表現となっている.先に示したようにVSD閉鎖術の適応は,教科書・ガイドラインなどで異なる部分があり,国内の施設間でも適応は異なる.今後,日本国内で保険適応を目指す場合,確実な閉鎖基準が求められる可能性があり,十分な検討を重ねる必要がある.

またADOでの治療基準は定まったものがない.浅田論文4)では,過去の論文・ADO deviceの形態的特徴・合併症対策などから,適応基準・除外基準を設定している.おおむね妥当なものと考えられるが,経験を重ねながら適応・除外基準の再検討は必要と考える,

APMVSDOの合併症

PMVSDでは外科手術が標準的な治療であり,CIはchallenging procedureである.APMVSDOによるPMVSDの治療は安全かつ有効な治療法であるとの報告がある5, 6)一方,合併症の報告も少なくない3).最も多い合併症は不整脈で,APMVSDOによる治療の4.6~17%に認められる.完全房室ブロックは最も重大な合併症で,その他では右脚ブロック(6.4%),左脚ブロック(1.6%),洞性頻脈(3.2),II度房室ブロック(1.1%)などがあり,ペースメーカーが必要となるのは3.8%であった.術後の遺残シャントはtrivialで5~6.7%,大動脈弁閉鎖不全(AR)は3.4%に認められ,閉鎖栓の脱落は0.82%であった.

最も問題となるのはCAVBであるが,その合併頻度は5~22%と報告されている7).CAVBの原因は,deviceのdiskによるヒス束の直接圧迫・炎症性反応または繊維性瘢痕の波及,が指摘されている.APMVSDOは硬く,またoversizeによる圧迫で組織障害が助長される.これに対しChinese PMVSDOは硬度が低くwaistが長いため,CAVBを起こしにくく,その頻度は1.9%であると報告されている8).またAPMVSDOIIのtrialも行われている.

ADO Iでの治療

ADO Iは遠位部(skirt部)のrimは2~3 mmと短く,大動脈弁への影響が少ない.またrimが短いため,APMVSDOに比べて左脚へ接触が少ないことに加え,近位部のrimがないためHis束を圧迫することは少ない.このため,Off-label useにもかかわらず,ADO Iでの治療報告が多い9, 10).留置成功は218/222(98.2%),術後6か月での遺残シャントは10例(4.6%)と良好な成績であった.また完全房室ブロックの合併症はAPMVSDOに比べて低く3/218(1.4%)で,そのうち2人は一過性であった9).適応をしっかりすれば,APMVSDOに匹敵・あるいは凌駕するdeviceとして期待される.

ADO IIでの治療

ADO IIでのVSD閉鎖術も報告されている11).治療成績・合併症は他のdeviceと変わらず,コスト面で優れている.しかし,長さ・大きさ(6 mm以下)に制限があり,限られた症例が対象となる.

今後の展望

新しいdeviceの導入は,企業主体では限界がある.早期導入のためには,医師主体の治験,学会から厚生労働省への働きかけ,学術集会でPMDAとの会合など,我々も努力する必要がある.浅田論文4)もその一助となり得るが,正確なデータの収集とその検討・データに基づく論文作成,が求められる.今後このような論文の蓄積を期待したい.

注記:本稿は,次の論文のEditorial Commentである. 浅田 大,ほか:本邦における心室中隔欠損に対する経皮的カテーテル閉鎖術の可能性.日小児循環器会誌2019; 35: 119–124

引用文献References

1) Cohen MS, Lopez L: Ventricular Septal Defects, in Allen HD, Shaddy RE, Penny DJ et al (ed): Moss and Adams’ Heart Disease in Infants, Children, and Adolescents, Including the Fetus and Young Adult (9th ed). Wolsters Kluwer, 2016, pp 783–802

2) 中西敏雄(班長):先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン.循環器病ガイドシリーズ2014年版.日本循環器学会,2014, p 22

3) Brown KN, Kanmanthareddy A: Catheter Management of Ventricular Septal Defect. StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2019 Jan–2019 Feb 22

4) 浅田 大,富田 英,藤井隆成,ほか:本邦における心室中隔欠損に対する経皮的カテーテル閉鎖術の可能性.日小児循環器会誌2019; 35: 119–124

5) Holzer R, de Giovanni J, Walsh KP, et al: Transcatheter closure of perimembranous ventricular septal defects using the amplatzer membranous VSD occluder: Immediate and midterm results of an international registry. Catheter Cardiovasc Interv 2006; 68: 620–628

6) Hijazi ZM, Hakim F, Haweleh AA, et al: Catheter closure of perimembranous ventricular septal defects using the new Amplatzer membranous VSD occluder: Initial clinical experience. Catheter Cardiovasc Interv 2002; 56: 508–515

7) Kim SH: Recent advances in pediatric interventional cardiology. Korean J Pediatr 2017; 60: 237–244

8) Liu J, You XH, Zhao XX, et al: Outcome of transcatheter closure of perimembranous ventricular septal defect with modified double-disk occluder device. Zhonghua Xin Xue Guan Bing Za Zhi 2010; 38: 321–325

9) Udink Ten Cate FEA, Sobhy R, Kalantre A, et al: Off-label use of duct occluder devices to close hemodynamically significant perimembranous ventricular septal defects: A multicenter experience. Catheter Cardiovasc Interv 2019; 93: 82–88

10) Lee SM, Song JY, Choi JY, et al: Transcatheter closure of perimembranous ventricular septal defect using Amplatzer ductal occluder. Catheter Cardiovasc Interv 2013; 82: 1141–1146

11) Zhao LJ, Han B, Zhang JJ, et al: Transcatheter closure of congenital perimembranous ventricular septal defect using the Amplatzer duct occluder 2. Cardiol Young 2018; 28: 447–453

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