日本小児循環器学会雑誌 Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 34(3): 87 (2018)
doi:10.9794/jspccs.34.87

特集特集

日本小児循環器学会第14回教育セミナー特集前文

広島市民病院循環器小児科

発行日:2018年9月1日Published: September 1, 2018
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今回の教育セミナーは,発生と心筋症について取り上げてみました.

地球が生まれて46億年,生命が生まれて40億年,原子真核細胞に酸素利用細菌や光合成細菌が取り込まれる形で真核生物が誕生し,10億年前に多細胞生物が出現しました.それから5億年が過ぎ脊椎動物が誕生したと考えられています.発生の教科書に描かれた胎児の発育過程の中に,脊椎動物の進化の過程を見つけて驚いたのは,私だけではないでしょう.振り返ってみると,発生について学ぶ中で,同様の驚きを何度も経験したように思います.すなわち,完全型房室中隔欠損とそっくりの心内構造を30~35日胚子の心臓に見つけた時,心臓の正常発生過程に両大血管右室起始の時期があるのだと知った時,両生類の段階からと考えていた動脈管が肺魚にもあると知った時などで,最近では,脊椎動物の左右軸がどのように決定されるのかを聞いた時も同じでした.「左右軸の決定」,それは無脾症・多脾症の心エコーを見た時,ほとんどすべての循環器小児科医が感じる疑問でしょう.そして,ほんの小さな細胞が10 μに満たない繊毛を回転させ,左右軸を制御していると聞いた時,われわれの体内に脈々と受け継がれている地球の生命の歴史を感じざるを得ませんでした.われわれは単細胞生物の集合体なのです.先天性心疾患を専門とするすべての医師は,発生学の基本的知識を身につける必要があると思います.そして,今回の特集がわれわれに,「発生学」への扉をもう一度開いてくれると信じています.

後半は心筋症.内科的に決定打がなく,外科的にもメスを入れにくい分野でしたが,最近は診断・治療両面において,大きな進歩がみられるようになってきました.「解剖から分子医学まで」,とても30分で話せる内容ではなかったでしょう.しかし,その基本を理解していただき,「これからの学び」へのステップとなるようにまとめていただきました.

最後に,再生医療はいったいどこまで進んでいるのでしょうか.臨床応用はもう可能なのでしょうか.移植の話をした時,「この子は一生,刺身を食べられなくなるんですね…」と,呟かれたお母さんがいました.自分の組織で心筋症を治せることができるのなら,どんなにすばらしいでしょう.現時点でOKということはできないでしょう.しかし,それを待ち望んでいる患者さん,そしてご家族に,できるだけ正しい知識で現状を説明できるよう,このセミナーの内容が役立ってくれることを願っています.

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