日本小児循環器学会雑誌 Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 34(1): 10-12 (2018)
doi:10.9794/jspccs.34.10

Editorial CommentEditorial Comment

左心低形成症候群のさらなる成績向上のためにStrategies to Improve Survival of Patients with Hypoplastic Left Heart Syndrome

地域医療機能推進機構 中京病院 心臓血管外科Department of Cardiovascular Surgery, Japan Community Healthcare Organization Chukyo Hospital ◇ Nagoya, Japan

発行日:2018年1月1日Published: January 1, 2018
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解剖学的サブタイプの影響

福永論文は,本邦を代表する施設の1つである福岡市立こども病院の,最近18年間の典型的左心低形成症候群(typical HLHS)119例の成績のサブタイプ別解析である.僧帽弁と大動脈弁の閉鎖ないしは狭窄の組み合わせの4タイプのなかで,症例数の少ないMA/ASを除いた主たるMA/AA, MS/AA, MS/ASの3つのタイプのうちMS/AAの予後が不良であり,そのこと自体が危険因子であることを示している.

著者らも述べているように,従来から死亡に対する危険因子として,早産児,低出生体重児,遺伝子異常や心外合併奇形,細い上行大動脈,狭小心房間交通,低右心機能,中等度以上の三尖弁逆流(TR),術後ECMO使用,予期せぬ追加手術などが指摘されているが,MS/AAと死亡率との関連については,1994年にJonas1)らがその可能性を指摘している.同様の報告は著者らも引用しているように,2008年にGlatzら2)が1996~2002年の72例の検討で,Norwood術後や,interstageでMS/AA例の死亡率が高かったことを示しており,同じくVidaら3)も2008年に2001~2006年のNorwood手術を行った165例の検討でMS/AAの38例の死亡率が高かったと述べている.さらには,2015年にShuhaiberら4)が2002~2011年のNorwood手術70例の検討でMS/AAの生存率が悪かったことを報告している.われわれの施設でも症例数は多くはないが,やはり同様な印象をえている.

一方で,MS/AAであることは予後と無関係であったとする報告もある.2000年にMahleら5)は,1984~1999年までのNorwood手術840例の検討でサブタイプは生存率に関係していなかったことを示し,2015年にAlsoufiら6)は2002~2012年のNorwood手術を行った219症例の検討で術後死亡にサブタイプは関連がなかったとの報告している.

“MS/AAであることが予後に対して不利な因子となるか否か”が報告によって異なる原因は,現在のところ不明であるものの,可能性として考えられることの1つは,各報告の検討対象症例の年代的な差であろう.Norwood手術全体の成績が悪い場合にはMS/AAであるということの悪影響が相対的に小さくなり,有意な因子として現れてこないことが考えられる.もう1つは施設によるNorwood手術時のBT shuntとRV-PA shuntの選択の割合も関連しうると思われる.著者らも述べているようにMS/AAでは左室冠動脈瘻(LV-CA fistula)を伴いやすく,RV-PA shuntを用いることで大動脈拡張期圧の維持,冠血流の改善につながり,LV-CA fistulaの悪影響を和らげられる可能性がある.そのほか様々な周術期管理の違いなども関連していると思われる.

MS/AAが予後に関連する要因

1. 冠動脈異常

福永論文が結論しているように,MS/AAが予後に悪影響を及ぼしている可能性は極めて高いと思われ,それに伴う冠動脈異常,とくにLV-CA fistulaによる心筋虚血が予後を悪化させている可能性がある.

1982年にO’Connorら7)は12例のHLHS剖検心の検討で,LV-CA fistula,冠動脈壁肥厚,心内膜弾性線維症(EFE),心筋線維不整,石灰化や瘢痕化などを報告し,うち9例がMS/AAであったと報告している.1989年のSauerら8)の報告では,9例のMA/AA, 19例のMS/AAを病理学的に検討し,MS/AAでは全例にEFEがありLV-CA fistulaの合併も多かった一方で,MA/AAではほとんどそのような合併はなかったと述べている.Baffaら9)は1992年の151例のサブタイプ別の剖検心の検討で,やはりMS/AA例で心室冠動脈瘻が有意に多かったと報告している.2012年にNathanら10)は,1955~2009年の216例(MS/AA 134例,MA/AA 82例)もの剖検心の検討から,LV-CA fistulaが39例(29%)にみられ,全例がMS/AAであったと報告している.さらに興味深いことに,MS/AAでLV-CA fistulaを伴う剖検心の割合は1980年以前から10年ごとに,12.5%,21%,57%,60%と経時的に増えており,他のMA/AAやMS/ASの周術期死亡率の成績向上の程度が,MS/AAの成績向上の程度を上回っていた結果であろうと考察している.Sathanandamら11)は2010年に,4年間の前向き研究で連続100例のHLHSに対し心エコー検査でLV-CA fistulaを精査し,15例(15%)にfistulaを認め,すべてがMS/AA例で,MS/AA例全体の56%と高頻度に合併を認めたが死亡率には影響はなかったと報告している.これは,前向き研究により小さなLV-CA fistulaの診断率が向上したことで合併頻度が増加し,小さなfistulaは予後に影響しないため全体の死亡率にも影響しなかったのではないかと述べている.ただし,彼ら自身大きなfistulaが原因と思われる死亡例を経験しており,大きなfistula合併例には注意すべきとしている.また,fistulaを合併した15例のうち,1st stage Norwoodは13例でRV-PA shuntを,2例はhybrid治療を選択し,BT shuntとするとdouble shuntで拡張期の冠動脈stealが起きる可能性があるのでRV-PA shuntにしたと述べており,これも死亡率減少に寄与している可能性はある.

2. 左室の存在

福永らも,右室機能不全に対する残存左室の影響の可能性を述べているが,1999年にSugiyamaら12)が,血管造影18例の所見とともに剖検心22例の検討を行っており,MS/AAではMA/AAより有意に低いRVEDVIと右室後壁の運動低下が見られ,左室後壁と心室中隔(IVS)の壁厚増加と心内膜の肥厚が見られたとし,肥厚して機能していない大きな左室は右心機能に不利ではないかと指摘している.Wislerら13)は2008年に,Norwood術後例の心エコー検査で左室サイズと右心機能を検討し,残存左室サイズと右心機能低下との関連に有意差はみられなかったもののその可能性はあり,Norwood術を耐術できた例での検討であることや症例数が少ないことが影響しているかもしれないとしている.Walshら14)は2009年に,Norwood手術を行った108例を心エコーで検討している.IVSが厚いこと,すなわち左室肥大が,右心機能低下やTRとともにNorwood術後の予後の悪化と関係し,かつIVSが厚いほど死亡率が上がったと報告している.また,左室径の拡大は心移植と関連していた.これらより,左心肥大が死亡率と関連していたのは心筋虚血と関連し,左室径の拡大が心移植と関連していたのは,左室が右室を圧排することで,ゆっくりと右心機能を障害している可能性があるのではないかとしている.Tanoueら15)が示しているように,肺動脈閉鎖症で,小さくても高圧の右室がIVSを圧排し,左心機能を障害するのと同様と考えられると述べている.一方,僧帽弁や大動脈弁の形態は関連していなかったという.Schlangenら16)は2013年の57例のNorwood術後例の心エコーおよびカテーテル検査による検討で,左室のサイズは右室収縮能に影響しなかったものの,diastolic stiffnessはLV remnantが大きいほど高かったと報告している.

今後の成績向上のために

前述のような事実を考慮すると,MS/AAという診断に至った場合,あるいはサブタイプにかかわらず肥厚した左室の存在を認めた場合,HLHSの中でもハイリスク群である可能性を考える必要があると思われる.

まずはSathanandamら11)のように心エコー検査で詳細にLV-CA fistulaの有無や大きさを確認し,そのうえで必要なら心カテーテル検査を行うことは有用ではあるが3, 4, 9),著者らも述べているように全身状態を考慮するとカテーテル検査自体危険な場合が多く,昨今の造影心臓CT検査の解像度であればLV-CA fistulaや小さな左室の検出もある程度可能と思われ,次善の策と考えられる.

Norwood手術に際しては,Vidaら3)が述べているように明らかなLV-CA fistulaがある例では,fistulaにより心肺バイパス中の心筋血流が阻害されないよう,心肺バイパス中に左室内圧を減圧しすぎないように管理することが有用なのかもしれない.また肺血流は,福永らを含め多くの文献で指摘されているように2, 4, 6),RV-PA shuntを選択することが拡張期の冠血流維持により一層重要と思われる.

著者らのデータのように,いったんFontanまで到達したのちは他のサブタイプと予後に差はないようだが,動脈血酸素飽和度が上昇し,心筋虚血が改善した可能性や,Bjurbomらの報告17)のようにある程度小さな左室は経時的により小さくなり右心機能への影響も小さくなっていく可能性もあるものと思われた.

今後は,さらにBT shuntかRV-PA shuntかの選択が成績に与える影響や,両側PA bandingを介す場合と介さない場合の成績の差などが検討され,成績の改善につながっていくことを期待したい.

引用文献References

1) Jonas RA, Hansen DD, Cook N, et al: Anatomic subtype and survival after reconstructive operation for hypoplastic left heart syndrome. J Thorac Cardiovasc Surg 1994; 107: 1121–1127

2) Glatz JA, Fedderly RT, Ghanayem NS, et al: Impact of mitral stenosis and aortic atresia on survival in hypoplastic left heart syndrome. Ann Thorac Surg 2008; 85: 2057–2062

3) Vida VL, Bacha EA, Larrazabal A, et al: Surgical outcome for patients with the mitral stenosis-aortic atresia variant of hypoplastic left heart syndrome. J Thorac Cardiovasc Surg 2008; 135: 339–346

4) Shuhaiber J, Morgan B, Gottliebson W: Survival outcomes following Norwood procedure for hypoplastic left heart. Pediatr Cardiol 2015; 36: 57–63

5) Mahle WT, Spray TL, Wernovsky G, et al: Survival after reconstructive surgery for hypoplastic left heart syndrome: A 15-year experience from a single institution. Circulation 2000; 102 Suppl 3: III136–III141

6) Alsoufi B, Mori M, Gillespie S, et al: Impact of patient characteristics and anatomy on results of Norwood operation for hypoplastic left heart syndrome. Ann Thorac Surg 2015; 100: 591–598

7) O’Connor WN, Cash JB, Cottrill CM, et al: Ventriculocoronary connections in hypoplastic left hearts: An autopsy microscopic study. Circulation 1982; 66: 1078–1086

8) Sauer U, Gittenberger-de Groot AC, Geishauser M, et al: Coronary arteries in the hypoplastic left heart syndrome: Histopathologic and histometrical studies and implications for surgery. Circulation 1989; 80: I168–I176

9) Baffa JM, Chen SL, Guttenberg ME, et al: Coronary artery abnormalities and right ventricular histology in hypoplastic left heart syndrome. J Am Coll Cardiol 1992; 20: 350–358

10) Nathan M, Williamson AK, Mayer JE, et al: Mortality in hypoplastic left heart syndrome: Review of 216 autopsy cases of aortic atresia with attention to coronary artery disease. J Thorac Cardiovasc Surg 2012; 144: 1301–1306

11) Sathanandam S, Cui W, Nguyen NV, et al: Ventriculocoronary artery connections with the hypoplastic left heart: A 4-year prospective study: Incidence, echocardiographic and clinical features. Pediatr Cardiol 2010; 31: 1176–1185

12) Sugiyama H, Yutani C, Iida K, et al: The relation between right ventricular function and left ventricular morphology in hypoplastic left heart syndrome: Angiographic and pathological studies. Pediatr Cardiol 1999; 20: 422–427

13) Wisler J, Khoury PR, Kimball TR: The effect of left ventricular size on right ventricular hemodynamics in pediatric survivors with hypoplastic left heart syndrome. J Am Soc Echocardiogr 2008; 21: 464–469

14) Walsh MA, McCrindle BW, Dipchand A, et al: Left ventricular morphology influences mortality after the Norwood operation. Heart 2009; 95: 1238–1244

15) Tanoue Y, Kado H, Maeda T, et al: Left ventricular performance of pulmonary atresia with intact ventricular septum after right heart bypass surgery. J Thorac Cardiovasc Surg 2004; 128: 710–717

16) Schlangen J, Fischer G, Steendijk P, et al: Does left ventricular size impact on intrinsic right ventricular function in hypoplastic left heart syndrome? Int J Cardiol 2013; 167: 1305–1310

17) Bjurbom M, Iyengar AJ, Moenkemeyer F, et al: Evolution of left ventricular size in late survivors of surgery for hypoplastic left heart syndrome. Ann Thorac Surg 2017; 104: 926–931

注記:本稿は,次の論文のEditorial Commentである. 福永啓文,ほか:典型的左心低形成症候群の僧帽弁/大動脈弁サブタイプ別による小児期予後.日小児循環器会誌2018; 34: 3–9.

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