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特定非営利活動法人日本小児循環器学会 Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery
Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 33(5): 362-370 (2017)
doi:10.9794/jspccs.33.362

ReviewReview

Fontan手術の遠隔成績と再介入Long-term Results and Re-intervention after the Fontan Operation

福岡市立こども病院心臓血管外科Department of Cardiovascular Surgery, Fukuoka Children’s Hospital ◇ Fukuoka, Japan

発行日:2017年9月1日Published: September 1, 2017
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術式の改良と周術期管理法の進歩でFontan手術の成績は大きく改善し,術後患者の多くが成人領域に達している近年,Fontan循環特有の遠隔期合併症の発生や心室機能障害,運動耐容能の低下などFontan術後患者のQOLを低下させる要因が明らかにされ大きな注目を集めている.多くの因子がFontan循環を破綻させる危険性を持っており,良好なFontan循環を維持するためには綿密な内科的治療の継続に加え,病態に応じた適切なカテーテル治療および外科的治療の再介入が必要である.

The surgical outcome of the Fontan operation has improved with refinements of the surgical technique and advances in perioperative management. As a large number of patients survive to adult after the surgery, the factors responsible for deterioration of patient quality of life have become important concerns. To maintain a sufficient Fontan circulation, catheterization or surgical re-intervention must be considered at the appropriate time together with meticulous follow-up and medical treatment.

Key words: Fontan; late outcome; complication; re-intervention; Fontan failure

はじめに

GoldbergはFontan循環を高い中心静脈圧と低い心拍出量に特徴つけられた,正常の循環生理とは異なる“人工的に作成された慢性心不全循環”であると表現している1).近年の術式の改善や周術期管理法の進歩によりFontan術後患者の中期遠隔成績は大きく改善した.しかしながら肝臓をはじめとした全身多臓器の障害,および心室機能や運動耐容能の経年的低下など長期に及ぶFontan循環の懸念も次第に明らかにされてきている.術後もFontan手術に特有の遠隔期合併症や続発症の発生頻度は低くはなく,より低い中心静脈圧と良好な心拍出量を維持するために病態に応じて外科的,カテーテル的治療の積極的な再介入の必要性がある.本稿ではフォンタン術後遠隔期の諸問題と主要な外科的再介入に焦点をおき概説する.

生命予後

米国Mayo Clinicにおける1973年から2012年までの40年間における1,052例のFontan手術患者(Atriopulmonary connection(APC)法59%,Lateral tunnel(LT)法25%,Extracardiac Conduit(EC)法11%)のまとめによると,術後10年生存率は全体で74%,術式別ではAPC法70%,LT法75%,EC法94%であったが,2001年以降の症例では術後10年生存率は95%と大きく改善している2).またAustralia and New Zealand Fontan Registryによる1975年から2010年までのFontan術後患者(院内死亡83人を除く)1,006人の退院後追跡調査では10年生存率はAPC法89%,LT法97%,EC法97%であった3).術式別の遠隔成績の報告ではAPC法耐術の215例(観察期間中央値26年)では,遠隔死亡が52人,心移植が12例,take downが3例,Fontan conversionが39例で,20年の累積生存率およびFontan failure回避率は82%,および66%であった4).StammらはBoston小児病院における220例のLT法の遠隔成績(平均観察期間10.2±0.6年)を報告した.早期死亡を12例,遠隔死亡を7例に認め,4例がFontan take down, 4例が心移植を行い,術後10年の累積生存率およびFontan failure回避率は91%,87%であった5).我々はEC法の単独施設成績として500例のまとめ(観察期間中央値6.7年)を報告した.早期死亡2例,遠隔死亡17例認め,術後累積生存率は10年で96.2%,15年で92.8%であった(Fig. 16).これらの結果には手術適応,周術期管理法,術後管理法の違いなど時代背景の影響が大きく単純に術式のみの比較はできないが,EC法Fontan手術における良好な中期遠隔成績の報告が多い.

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Fig. 1 Actuarial survival after extracardiac total cavopulmonary connection in Fukuoka Children’s Hospital

AlsaiedらはこれまでにFontan術後の遠隔成績について報告された28の主要文献をまとめ,計6,707人のFontan術後患者のうち遠隔死亡を1,000人,心移植を138人に認めた.死因が判明した697人の主な内訳は心不全/Fontan failure(22%),不整脈(16%),呼吸不全(15%),腎不全(12%),血栓塞栓/出血性合併症(10%)であった7)

遠隔期合併症

不整脈

Fontan術後に発生する不整脈は心房粗細動や上室性頻脈などの頻脈性不整脈と洞機能不全や房室ブロックなどの徐脈性不整脈に大別される.Fontan術後に頻度が多い頻脈性不整脈は心房内リエントリー性頻脈で心房拡大を伴ったAPC法患者やLT法患者に多い8).Carinsらの多施設研究では1,034人のFontan術後患者のうち195人(18.9%)に不整脈が発生し,術後20年の不整脈発生回避率は66%(頻脈性不整脈69%,徐脈性不整脈85%)であった.また不整脈発生後の生存率およびFontan failure回避率は10年,15年でそれぞれ74%,70%,および55%,44%であった9).術後不整脈発生におけるEC法の有用性も多く報告されている.d’UdekemらのFontan手術生存者1,006人の追跡調査では術後中央値6.0年で59人(EC法0, LT法30, APC法33)がペースメーカー植え込みを必要としており,また上室性不整脈発生の回避率はEC法において有意に低かった3).またCarinsらの報告でも術後不整脈の発生は多変量解析ではEC法Fontanで有意に少なく,heterotaxyで有意に多かった9).不整脈発生後は適切な抗不整脈治療やablation治療が必要である.

血栓塞栓症

Fontan術後患者では凝固系優位に傾く血液凝固線溶系の異常が指摘されており10),血栓塞栓症はFontan術後遠隔期の重要な死亡原因の一つである11, 12).d’Udekemらは1,006人のFontan術後患者の追跡調査で56人に中央値7.6年(IQR: 1.9~14.0)で血栓塞栓症が発生(stroke 22人,Fontan経路内血栓19人,肺塞栓10人,その他6人)し,血栓塞栓症回避率は25年で82%であったと報告している3).また近年のMeta-analysisではFontan術後の血栓塞栓症の発生頻度は11%で,危険因子として低心拍出状態,非拍動性肺血流,過凝固状態などの関与を示唆している13).Fontan術後の血栓予防法についての一定の見解は得られていないが14),アスピリンまたはワーファリンの予防的投与症例では非投与症例に比べ発生リスクは有意に低くかったとの報告がある12, 13).一方でアスピリンおよびワーファリン単独投与群間の比較では血栓塞栓症の発生頻度に差はなかった15).また当院の経験から,継続中の抗凝固療法を何らかの理由で中断した時や急な脱水状態などでは血栓塞栓症の発症リスクがあり注意を要する.

蛋白漏出性胃腸症(PLE)

Fontan術後遠隔期の特異的な合併症の一つでFontan術後患者の4~13%に発症する.明確な発生機序および治療法は未だ解明されていない.1998年の多施設研究では発症後の生存率は5年で59%と不良であったが16),近年のMayo Clinicからの報告では発症後の生存率は5年で88%と大きな改善を認めている.死亡例では生存例に比べ中心静脈圧および肺血管抵抗値が高く,心室収縮率および心係数が低くかった17).発症例に対しては様々な内科的治療(アルブミン投与,高蛋白食,ステロイド剤,sildenafil, octreotide, heparinなど)18)および外科的治療(fenestration, Fontan conversion, Fontan経路の狭窄解除,房室弁置換など)が行われており,現在では早期発見,早期治療介入で寛解する例も少なくない17, 19)

肝障害

Fontan術後に生じる急性および慢性の肝構造異常および肝機能障害はFontan associated liver disease(FALD)と呼ばれ,近年大きな注目を集めている.慢性的な静脈圧の上昇と低心拍出が大きく影響していると考えられる.成人に達したFontan患者241例の検討(年令中央値25.8歳,術後経過中央値20.3年)ではほとんどの患者で様々な程度の肝線維化が見られ,約1/3の症例で肝硬変が見られ20),最終的に肝がんの発生素地になり得る21).腹部超音波検査での異常所見は不均一な肝実質所見や単発または多発性のhyper-echoic lesion(Fig. 2)がFontan術後遠隔期の患者の多くで認められ22),肝生検では類洞拡張,小葉中心性壊死,門脈線維化などの所見が特徴的である23).心臓カテーテル検査および一般の血清生化学検査,また血清線維化マーカーと画像所見,生検所見は必ずしも相関しない.FALDはFontan術後年数とともに増加し,現在のところFALDのスクリーニングと診断,治療法は確立されておらず予後の予測も困難である.そのためFALDを伴ったfailing Fontan患者の心移植の適応基準については明確なものがない21).またFontan術後患者の肝障害の指標として血漿クレアチニンとビリルビンによるModel for End Stage Liver Disease excluding INR(MELD-IX)やVAS score(varices, ascites, splenomegaly)などが予後と相関すると言われている24, 25)

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Fig. 2 Liver ultrasound findings in 97 patients after >10 years of follow-up after surgery in Fukuoka Children’s Hospital

その他の遠隔期合併症

以上述べてきた合併症のほかに,肺動静脈瘻の発生,腎機能の低下,耐糖能異常,plastic bronchitisなどもFontan術後遠隔期の合併症としての認識と対策が必要である.

運動耐容能

Fontan患者の運動耐容能は健常人と比べ低下しており,また経年的に更なる低下傾向を示すことが知られている26–29)Fig. 3に当院におけるEC法Fontan術後患者の運動耐容能テストの結果を示す.Peak VO2の補正値はテスト時の年齢が高いほど,またFontan手術からの経過年数が長いほど低下する傾向が見られた.GoldsteinらはFontan術後患者の運動耐容能における関連因子を調べ,心室の拡張障害と運動時の肺血管抵抗が低下しないことがpeak VO2の低下と有意な相関を持つことを示した29).また運動耐容能の低下と遠隔死亡との関連も指摘されている.Ohuchiらはpeak VO2が単独で遠隔死亡の予想因子であることを報告した26).またEgbeらはpeak VO2の補正値が3%/年以上低下する症例で心関連イベントが多いと報告している30).また日常の運動指導はFontan循環の改善につながるという研究結果も報告されている31)

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Fig. 3 Treadmill exercise tolerance test

The peak VO2 tended to decrease both with age and with elapsed time in patients after extracardiac total cavopulmonary connection.

Fontan failure

Fontan循環は肺動脈下心室がないことで慢性的な体静脈圧の上昇,心室の前負荷の減少とそれに伴う心拍出量の低下,心室後負荷の増大,肺血管抵抗の異常,心室収縮能および拡張能の低下を特徴とする32).Fontan術後の長期生存患者では72%に拡張能障害が見られる33).一方でFontan術後に残存,または増大する体肺側副血行路による血流量は心拍出量の11%から62%にも及ぶとの報告もあり,逆に心室容量負荷による心機能低下の懸念もありうる34).この特殊な血行動態ゆえ様々な遠隔期の合併症の発生と循環破綻の継続的な危険性がある.またFontan術後の経年的な心室の硬化(time-related progressive ventricular stiffness)がFontan failureの一役を担うことが認識されており35),SugimotoらはFontan術後のレニンーアンギオテンシンーアルドステロン系の活性上昇が心室心筋線維化の一端を担っている可能性を示唆した36).d’Udekemらの多施設共同研究によるとFontan failureを死亡,心移植,take down, Fontan conversion, NYHA III以上,PLE/Plastic bronchitis発症,と定義するとその回避率は20年で70%であり,また左心低形成症候群がFontan failureの危険因子であった3)

Catheter intervention

Fontan術後のcatheter interventionの種類と頻度は多く(Table 1),広く一般的に行われている.最も頻度が多いのは側副血行路のコイル閉塞術であり,心室の容量負荷を軽減しFontan循環を改善させる.Pulmonary AV fistula発生症例に対して経皮的カテーテルでステントを留置し,肝静脈血が罹患側の肺に流れるように血流方向転換してチアノーゼの改善を認めた報告もある45).Fontan術後患者の心房性不整脈に対するcatheter ablationの効果については,成功率は他の先天性心疾患患者に比べ低く(40~75%),再発率も60%/年と高いとの指摘もある46).またEC法Fontan術後でも心外導管穿刺によるカテーテルアブレーションは可能であり,良好な成績も報告されている43, 44)

Table 1 Catheter intervention after the Fontan
Aorto-pulmonary collateral occlusion37–39)
Veno-venous collateral occlusion39–41)
Fenestration creation/occlusion/enlargement37–39)
Pulmonary artery balloon/stenting37–39, 42)
Fontan conduit balloon/stenting37–39, 42)
Aortic arch balloon37)
Ablation for atrial arrhythmia43, 44)
Pulmonary AV fistula occlusion39)

Surgical intervention

米国Mayo Clinicの40年のFontan手術の成績報告では術後生存者の外科的再介入の頻度はペースメーカー関連が23%,Fontan revision/conversionが13%,房室弁形成/置換が7%,ICD植え込みおよびFontan take downがそれぞれ2%であった2)

ペースメーカー植え込み

正常洞調律は良好なFontan循環を維持するうえで非常に重要であり,洞機能不全や房室ブロックなどの徐脈性不整脈の発生はFontan循環の破綻や生命予後の低下におおきく影響する47, 48).このような患者ではペースメーカー挿入で症状の改善と血行動態の改善を認める49).またMaze手術を併用したFontan conversionの症例の多くでdual chamber pace makerの植え込みが推奨される50).Fontan術後に心室の電気解剖学的な不同期を生じ心室機能の低下からFontan循環の破綻の危険がある症例ではペースメーカーによる心室再同期療法(cardiac resynchronization therapy)は有効な手段である可能性がある51)

Fontan conversion

Atriopulmonary connection型のFontan手術後の患者は心房の拡大による不整脈の発生や肺静脈の圧迫,また運動耐用能の低下などを来しやすく,EC法FontanへのconversionでFontan循環の改善が得られる50, 52).また心房が大きく拡大しFontan循環の効率が低下したLT法患者にもEC法conversionの適応がある.これらの症例の多くは治療抵抗性の上室性不整脈を合併しており4),EC法conversionに際して不整脈手術が積極的に併用される50).不整脈手術を併用したFontan conversionの中期遠隔成績は良好で,Dealらの140例の報告では死亡または心移植の回避率,および不整脈再発の回避率は10年でそれぞれ84%,77%であった53).高度の心室機能低下例に対するconversion手術の適応は疑問視されていたが,Mavroudisらは心移植リストに載った重症患者6人にconversion手術を施行し,5人にFontan循環の改善を認めている50).一方でPLE患者に対するconversion手術の効果には否定的な意見が多く,適応外とする施設もある16, 50, 54).Higashidaらの経験でもPLE患者4人にconversion手術を施行し症状の改善は得られなかった55).また無症状のAPC法Fontan患者の“予防的”Fontan conversionの是非については議論が残る56)が,Higashidaらは合併症を有しないAPC法Fontan患者の予防的conversionで心拍出量の増加が得られ,また心房性不整脈の発生も見られなかったとし,その有用性を示唆している55).PohらはAPC法39例のEC conversionの多施設報告をした.主な手術適応は治療抵抗性不整脈66.7%,Fontan pathway obstruction 15.4%,心房拡大を伴う心不全5.1%であった.36例にcryoablationを,16例にペースメーカー植え込みを併用し,病院死亡を4例,遠隔死亡を4例に認めた.この中でconversionの時期が早い施設は遅い施設より有意に死亡/心移植の回避率が高く(88% vs. 51%,術後8年),Fontan failureの早い時期でのconversionの重要性を強調している57).またEgbeらは運動耐用能テストによりconversionの至適時期を検討し,術前のpeak VO2>14 mL/kg/min以上あればconversion後の死亡率が低く,術後の運動耐用能の有意な改善が得られるとした58)

房室弁手術

一般にFontan術後患者の房室弁に対する手術は少なく,heterotaxyの共通房室弁においてもFontan後の外科的介入の頻度は低い59).これはFontan循環における心室の前負荷の減少の影響が大きいが,体肺側副血行路の発達や心室機能の低下による心拡大では房室弁閉鎖不全の発生,増悪は起こり得る.Fontan術後に残存または増悪する中等度以上の房室弁逆流には手術介入が考慮されるが,その手術成績は一般に不良とされる.MenonらはFontan術後の房室弁手術症例61例の検討で術後死亡を52%に認め,5年,10年生存率は67%,57%であった.また72%に術後不整脈を認め,20%でPLEの発生を見た.心室機能低下例,およびPLEの発生が房室弁手術後死亡の危険因子であった60).また治療経過中に房室弁手術を必要とする機能的単心室症例の中でもFontan手術後に房室弁手術を必要とした症例は死亡と心移植の頻度が高いとの報告もある61)

Failed Fontanに対する循環補助

Failed Fontan患者における最終治療手段は心移植であるが,bridge to transplantationとしての機械的循環補助手段が必要である.しかしながら機能的単心室疾患,とくにFontan手術後はその特有の循環動態と解剖学的特徴から効果的な循環補助法の確立が困難とされている62).文献的にもEXCOR(Berlin Heart Inc, The Woodlands TX)やHeartWare(HVAD, HeartWare, Framingham, MA)などのventricular assist device(VAD)による短期間の補助で心移植に到達したいくつかの成功例が症例報告されているレベルである63–65).Failed Fontan患者における循環補助の導入にはまず患者の循環動態の病態生理の詳細な検討が必要である.GiridharanらはFailed Fontan患者の体心室機能をもとに効果的な循環補助法のアルゴリズムを提唱している(Fig. 466).体心室の収縮能が保たれた症例では右心補助(cavopulmonary support)のみで中心静脈圧の低下と心室の前負荷の増加で心拍出量は増加し循環は改善するが,体心室収縮能低下を合併した症例では前負荷増大のみでは心拍出量は増加しないため同時にVADの装着が必要となる.体心室の収縮能が低下した症例におけるVADによる左心系補助では,心室のfillingが十分であることが条件であるが,Fontan循環の特徴からそのような状況は非常にまれで,VADのfillingが不十分な場合は外科的にfenestrationを作成,または拡大して十分な心室前負荷を確保しなければならない65).また現在Fontan患者の右心補助の効果的な装置はなく,EXCORなどのVADを装着する際はFontan pathwayのtake downおよびfenestrationの閉鎖で心房脱血,肺動脈送血のシステムの外科的な再構築が必要となる63).理論的には心室収縮能がある程度保たれているならば右心補助でFontan循環は改善する67).経皮的に挿入可能な右心cavopulmonary assist deviceが望まれるが,今のところ臨床使用できるdeviceはなくFontan pathway中で上下大静脈血を肺動脈に送る特殊なデザインのimpeller pumpの研究,開発が行われている(Fig. 567, 68)

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Fig. 4 Algorithm for mechanical circulatory support for patients with non-restrictive Fontan failure

Reprinted with permission from Reference 66) Giridharan GA et al. ASAIO J 2014; 60: 707–715.

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Fig. 5 Concept of a viscous impeller pump to provide cavopulmonary assistance

Reprinted with permission from Reference 67) Rodefeld MD et al. J Thotac Cariovasc Surg 2010; 140: 529–536.

心移植

最大限の内科的治療により改善をみないFailed Fontan患者の最終治療手段は心移植である.しかしながらFontan術後患者の心移植に対する明確な適応基準は今のところなく,Fontan failureに陥った患者の正確な予後の予測とFontan患者の心移植後の生命予後との比較の上で決定される.そのためには正確なデータの蓄積と慎重な解析が必要である.1984年から2013年までに行われた351人のFontan術後患者の心移植に関する主要12施設のMeta-analysisでは移植時平均年齢は14歳で移植後生存率は1年で80.3%,5年で71.2%であり,他の先天性心疾患術後の心移植の結果と同等であった69).またMillerらの単施設47例の経験では移植前の体肺側副血行路の積極的なembolizationなどで移植心の容量負荷を軽減した結果,近年(2009年以降)は1年生存率90%まで向上した70).特に若年者での高い心移植後生存率のため,Fontan failure早期での移植の合理性が認められている.一方で成人例を多く含む施設の成績はFontan術後患者の移植後生存率は他の先天性心疾患術後患者に比べ低値であった71).心室機能が保持された成人症例での心移植後の成績が悪いという報告があるが,これは心臓以外の全身多臓器障害(肺血管床,肝および腎機能障害など)の存在が大きく関与していることが考えられる72, 73).またPLEは心移植後死亡の危険因子ではなかった74, 75)

おわりに

Fontan手術は機能的単心室疾患の最終目標手術として術式の改良を経て現在に至る.手術成績の向上で多くの術後患者が成人領域に達するようになった現在,その特異的でかつ姑息的な循環生理ゆえの多くの問題点が浮き彫りになってきている.多くの要因がFontan循環を破綻させる要素を持っており,いったんFontan循環の破綻を来したら有効な治療手段がない.このため良好なFontan循環を維持させるための各個人の病態に合わせた内科的治療の継続と必要に応じた外科的,カテーテル的再介入の適切な手段とタイミングについてこれからも多くの研究と努力が必要である.

利益相反

本論文に関して開示すべき利益相反はない.

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