日本小児循環器学会雑誌 Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 32(4): 352-353 (2016)
doi:10.9794/jspccs.32.352

追悼文追悼文

大國眞彦先生を偲んで

日本大学医学部小児科学系小児科学分野

発行日:2016年7月1日Published: July 1, 2016
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Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 32(4): 352-353 (2016)

日本大学名誉教授 大國眞彦先生は,去る2016年3月27日に享年89歳でご逝去されました.

大國先生は,昭和2年に釜山のお生まれで,姫路高等学校から東京大学医学部へ進まれ昭和26年にご卒業されました.昭和33年に東京大学で学位を取得され,昭和34年から38年まで東京大学医学部講師を務められ,同年7月から日本大学医学部小児科に助教授として着任されました.昭和42年にHarvard大学に留学後,昭和48年2月からは小児科教授に就任され,同じく東大から日大の小児科に来られ教授を務められた馬場一雄先生とともに,平成5年まで約20年間日本大学医学部小児科を指導されました.平成元年~4年には日本大学板橋病院の病院長,平成4~5年には日本大学総合医学研究所長を務められ,平成7年10月に退任後,日本大学名誉教授となられました.この間,小児科医として社会的に意義の大きい多くの画期的な診療と研究をされてきました.その御功績に対し,平成20年に瑞宝中綬章を受章されました.

大國先生と小児循環器病学との出会いは,昭和26年のインターン研修中,東京女子医大と東大で日本初のFallot四徴に対するBlalock手術が行われ,その主治医になったことがきっかけでした.まだ小児循環器病学を専門とする小児科医は非常に少ない時代であり,診察所見,特に心音聴診を大変に重要視されており,原田研介先生が「大國先生の聴診の正確さには敵わない」と評されたことが思い出されます.その後,カテーテル,心エコーが普及する時代となり,同志の先生方と昭和40年の第1回小児循環器研究会が開催される基盤を作られました.この時期から,日本でも急速に小児循環器学の花が開きました.昭和52年から日本小児循環器研究会,昭和56年から同学会と発展した現在の本学会創始者のお一人であり,理事長を務められました.国際化を推進され,Londonでの第1回World Congress of Pediatric Cardiology開催に尽力されました.大國先生は,日本小児科学会でも会長を務められましたが,循環器領域の中でも先天性心疾患に限らず,さらに広い総合的な視野で小児循環器病学を追及されました.以下,特筆すべき4つの領域について記したいと思います.

まず,昭和30年代当時,猛威を振るい多くの心臓弁膜症を合併していたリウマチ熱の臨床統計をまとめ,不顕生発症による心炎に着目して,治療基準の作成と経口ペニシリンによる再発予防基準の策定を行い,その後の我が国の弁膜症の著しい減少を実現されました.平成3年には,小児科医として日本リウマチ学会を主宰されました.

さらに,ドイツで研究が進んでいた起立性調節障害(OD)の概念を導入して,日本でも多くの患者がいることを昭和33年に報告し,診断基準を作成し,全国的に小児科医にその概念が普及して多くの患児が認知され,治療法を確立されました.日本大学を退職後も,都内の表参道や成城にご自分のクリニックを開かれ,全国から難治性のOD患者が大國先生の診療を受けに来られていました.

昭和30年代までは,小児の心雑音は即運動制限という時代でしたが,心疾患の早期発見とその適切な措置のために,文部省,厚生省の研究班や日本学校保健会で委員長など中心的役割を務め,学校心臓検診の実現に努められました.そのための日本人小児の心電図正常値や,心室肥大判定基準を作成し,小児心疾患の学校生活での管理基準を整えられ,並行して,小児の突然死について調査研究し,その予防を可能にするために,全国的に心臓検診の充実を目指して活動を続けられました.

小児の突然死を研究される中で,米国の青年兵士の剖検報告において,進行した冠動脈硬化を認めたことや,日本人小児のコレステロール値が欧米並みに高値であることなどから,小児期からの成人病予防の重要性に着目され,昭和51年から厚生省の研究班を率いて,多くの研究を行い,血清脂質のトラッキング現象や運動とHDLコレステロール増加の関係など注目される発表をされてきました.

その業績を振り返るたびに,これらのいずれの領域も,東京大学,日本大学を含め全国に多くの後継の先生が輩出され,わが国の小児循環器病学の基盤を整え,小児医療に多大な貢献をされた先生であったと実感されます.

温和な人柄の中に,鋭い観察力と広汎な情報収集力を持つ一方で,お仕事を離れれば歌とワインがお好きで,いつも笑顔を絶やさず,我々にのびのびと診療,研究を続ける環境を与えてくださった先生でした.

ここに大國先生のご逝去を悼み,謹んでご冥福をお祈り申し上げます.

平成28年6月

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