日本小児循環器学会雑誌 Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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特定非営利活動法人日本小児循環器学会 Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery
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Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 31(5): 227-228 (2015)
doi:10.9794/jspccs.31.227

巻頭言Editorial

小児循環器医は孤立しているのか? 井(医)の中の蛙ですか?Are We All Alone?

国立研究開発法人国立循環器病研究センター病院小児循環器・周産期部門小児心臓外科Department of Pediatric Cardiovascular Surgery, Division of Pediatric Cardiology and Perinatal Period, National Cerebral and Cardiovascular Center Hospital, Japan ◇ 〒565-8565 大阪府吹田市藤白台五丁目7番1号5-7-1 Fujishirodai, Suita-shi, Osaka 565-8565, Japan

発行日:2015年9月1日Published: September 1, 2015
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本年の学術集会も大成功裏に終了し,大会長の佐地教授は胸をなで下ろしておられるのではないでしょうか.そして小川先生はあと1年を切った来年の学術集会に向けて日夜準備を進めておられることと思います.私は2年前から本学会誌の編集委員を仰せつかり微力ながら雑誌内容の充実に尽力させていただいております.情報がどこにいても瞬時にシンクロナイズされるネット社会において他産業の分野に比して遅すぎると思っていた電子化が,白石編集長の強力な実行力のもと,予想よりも早いペースで物事が進み成し遂げられたのは編集長の努力と会員皆様のご協力ご理解の賜物と思います.

ネット社会においてたとえ小さな地方都市であっても全く同じ情報が伝わりますが,診断や治療はそのようにはいきません.私事ですが,このお盆に田舎に帰ると私の出身小学校,中学校は子供が少ないので統廃合されてなくなってしまうと聞かされショックを受けました.当然小児科医,産科医も地方では不足しています.ましてや小児循環器医は私の田舎には常勤ではおられないと聞き及びました.はたしてこのような地方において未診断で突然TGAやHLHSが産まれたらどうなるのかと思うと背筋が凍る思いであります.

小児循環器学会には数多くの課題,役割が与えられている割にその規模は小さく,解決すべき山積みの各論の問題に対処するために大きなパワーが必要です.とはいえ,総論,大局的視点からの本学会の役割を考えると,小児循環器医療の標準化および本来すべての保険加入者(勿論日本では皆保険ですが)が平等に扱われるべき制度のもと,大都会に集中しがちな複雑かつ高度な小児循環器領域の診断治療がどこの地域にいても低いハードルで享受できるシステム作りではないかと感じました.これは離れ小島でノルウッド手術をするという意味では勿論なく,全国どこにいても速やかな診断と患者搬送のネットワークが整備されるべきであるということですが,少子高齢化社会において小児科医,産科医不足の中これは国策として必要なマターではないかと思われます.現代のインターネットテクノロジーを持ってすれば情報を得ようとすればいくらでも情報を得ることができ,それが生命や生活を脅かすことに関わるとすると人々は情報を求め正解にたどり着けることもあるのでしょう.戦争や自然災害に関する情報は10年前に比べると遥かに正確にかつ迅速に人々に届くようになりました.しかし反対に風説の流布をする輩にとっても情報発信が容易であることはよく知られる事実です.我々がいくら情報を発信してもこれが受け止められなければ無意味です.日常の臨床をしていて胎児診断のついた重症心疾患の新生児に対して適切な治療がなされていくのを見ると「この子は適切な病院に短時間でたどり着けたから助かったけれど……」と感じることも多いです.初療をした医師が適切な情報をもっていたか情報を手に入れる手段をもっていたからよかったものの,もしそうでなければと仮定すると,都会であっても私の田舎とあまり変わりないかもしれません.大阪近辺ですとそのような事態の頻度は減少していると感じられますが,それでも運が悪く手遅れの状態で搬送されてくる場合も少なくありません.小児循環器医療にとって正確な情報の供給とその普及こそが我々小児循環器学会の仕事でありますが,いかにこれを取り出しやすくかつ理解しやすくするかが重要ではないでしょうか?

ところが我々を取り巻く本邦の状況たるや,小児循環器医にとっては常識であることがそれ以外の医師にとってはわけのわからない概念であることは往々にしてあります.心臓外科の世界でしたら成人専門の同業者と話していても話が通じないことがあります.増加する成人先天性心疾患の患者を“いわゆる”循環器内科医にバトンタッチできるようにするためには,まず,ギャップを我々が理解すべきではないでしょうか? 高度専門化への道だけでは日本の小児循環器医,小児心臓外科医は孤立する方向にあるのではないかと不安になることもあります.

世間のニーズという点に目を向けると,小児心臓外科領域では一昨年のコンテグラ,本年になってBerlin Heart EXCORと,海外では何年も前に承認されているものが数年かけてようやく承認されましたが,これは欧米と比較して10年以上の遅れがあります.高齢者に対するTAVR(TAVI)のようなデバイスは,出だしは慎重でもあっという間に承認され今や多くの施設で行われるようになってきており,需要が少ないマイノリティーとはいえ現実にこのスピード感の違いにうんざりすることがあります.内科領域では高血圧,高脂血症,糖尿病などの治療薬は次々と新薬が認可される中,小児に対する使用の承認はなかなか得られることができません.

子供がいかに世の中に重要かということを世間,為政者が理解してくれればこのように我々が孤立しているという気持ちをもたずにいられるようになると思いますが,そのためにも小児循環器学会は専門化の一方でグローバルなわかりやすい存在であることが必要かと感じています.

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